騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

128話 キール&オーレリアvsリーゼ

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オーレリア(魔族たちは見当たらない…スリスさまたちの作戦のおかげか……しかし…なんだこの違和感のようなものは…。)

キール隊長と2人 市街地を駆け抜ける…
魔族に占領されたのだ、わかっていたが人1人も見当たらない…
時間がない私たちには走り抜けるしかない…何もできない歯がゆさを感じながら、私は何か引っかかるものを抱いていて…。


オーレリア「あそこが目的地かっーーむっ…! ……なるほど…違和感の正体はお前だったか…いくらスリスさまの作戦とはいえ、何一つアクシデントもないのは些か出来すぎてると思っていたが…。

さて…私たちを待ち構えていたところをみると、一連の流れからして…この展開 お前の描いたものの通りなのかな?」

強烈な寒気を感じ取りキール隊長と後退し、その後 現れた彼女を私は睨みつけて…

腰から剣を抜き、剣先を魔族である彼女に向けながら…
リュネメイア隊長の一連の流れから、全て計画をしていたのかを私は尋ねて。

ーーーー

リーゼ「ははっ♪買い被りすぎだよぉ、オーレリア副長。私がこの作戦を見抜いたのは戦いが始まってからだ。

だいたいおかしぃと思うさぁ。だってそうだろ?

スリス=エインズワースと言えば魔王軍にもその名が轟いた、数々の作戦立案を考案し王国に数々の戦果をもたらした名参謀だぁ。

そんな彼女が勝算もなしに戦いなど挑んでくるはずがない。

だが、新兵しか手駒はなく、武器も糧食も、時間も。それに援軍もないこの状況ではいくら彼女でも勝つのは不可能だぁ。

矛盾している。

勝算がない戦いを挑んできたんだよぉ、彼女は。

ならば、別の狙い。言い換えれば別の勝利があると私は考えたわけだ。

玉砕するような女じゃあないからねぇ。

だから、1番前で戦ってた新兵たちをある程度纏めて私が直々に『説得』して、作戦を教えて貰ったと。

いやあ、前途ある有望な若い人間の泣き叫ぶ顔は新鮮でついつい『説得』にも熱が入ってしまったがねぇ。

とまあ、こういうわけさぁ」  

懐から煙管を取り出し口に咥え、楽しげに話し出す。

そこには若干のテンションの高さに隠れてはいるが、確かな冷たさが感じられる。


キール「なるほど……相も変わらず、憎々しい残酷さだね全く。アタシ達があの時取り逃がしたことは後悔しかないよ」

リーゼ「取り逃がした?はは♪誤解があるねぇ……私が『見逃して』あげたんだろぅ……『魔王様』?」

キールに向けて強烈な殺気が飛ばされ、反射的に蒼の大剣の切先が悪に向けられる。

灰色の髪を揺らしながら開かれた瞳をまた、糸目に戻しながら白煙が現れ消える。


リーゼ「だけど、そんなことを聞きに来たんじゃあないんだろう?

オーレリアぁ。同じ副官仲間じゃないかぁ。君を…いや、君たちを肉片に変える前に。

質問ぐらい答えるぐらいの慈悲は持ってるよ?」

ーーーー

オーレリア「ふむ…なるほどな…しかし…説得だと…? ……本当にオブライエンの時は猫をかぶっていたようだな…。」

魔族の彼女の話を聞き、作戦が見抜かれた理由はわかった…
だが自分の号令のもと戦場に出た兵への『説得』の話を聞かされ、私は彼女への怒りと自分自身への怒りを覚えて。


オーレリア「やはり魔王や柩を知っていたのは、お前が魔族幹部だったからなのだな?

……そうだな…そのことについても問い質したいところだが、今は後回しだ…
単調直入に聞こう…リュネメイア隊長はどこにいる?」

彼女がオブライエンに化けて、初めて会った時のことを思い出し…
彼女には色々と聞きたいことはあるが、スリスさまたちが戦っている今は時間が惜しい…。

剣先を魔族の彼女に向け、そして殺気をぶつけながら、私はリュネメイア隊長の居場所を尋ねて…
こいつが素直に見逃してくれるはずがない、なら一矢報いつつ押し通らせてもらうまでだ…。

ーーーー

リーゼ「ははっ♪誤解だよ誤解。別に猫を被っていたつもりもないよぉ。……だって、そうだろ?あの時、ただの一言でも、私が1度でも。

『君の味方』であると宣言したかな?」

ゆったりとした雰囲気を漂わせながら煙が霧散するかのように彼女が姿を消すと、背後からオーレリアの肩に右手を乗せて嘲笑を浮かべる。

キールの一閃をそのまま大きく跳躍して躱すと、距離を取り再び煙管をくわえ。


リーゼ「それにその質問は。…私を信じたい気持ちがまだ、あると言っていいのかな。だとしたら実に甘い目算だぁ。

狂気と羅刹に染まるこの私を前にして、ねぇ?」

灰色の髪が、かき上げられ靡くのと同時に金属がバキィ!!と破壊される嫌な音が響き、キールの脇腹部分の鎧に風穴が空く。


キール「……っかはっ…!!」

瞬間的に彼女の口から血が吹き出すのを、口元を押さえ込みながらその場に膝をつく。


キール「ぐっ……く、そっ……!」

鎧が全く意味を為さないことを悟り自らそれを脱ぎ捨てつつ、止血魔法を素早く負傷箇所に打ち込むと敵を睨みつけながら剣を構え、再び立ちあがる。


リーゼ「魔剣公主の居所を知りたくば、私に勝ってみるといぃ。1度言ってみたかったんだよねぇ、この三流の台詞回しをさぁ」

キールの血液で真っ赤に染まった右腕を天に翳しながら、不敵に笑う。

ーーーー

オーレリア「確かに宣言はしていなかったなっーーっ…!? くっ…!
(いつの間に後ろへ…気配が一瞬にして消えたが…魔法か何かか…?)」

話を聞きながらも警戒を緩めず、目の前のリーゼに集中していた…
にも関わらず彼女の姿を見失うのと同時に背後を取られ、私は振り向きざまに剣で斬りつけるが手応えがなく。


オーレリア「っ…えっ…キ、キール隊長…!
……言いたいことはそれだけか…? ならその期待に答え吐かせてやろう。」

嫌な感じがして剣を盾にした瞬間、横から嫌な音が耳に届き…
すぐに振り向くとキール隊長が血を吐いていて、私は心配した表情で叫んで。

キール隊長を傷つけたリーゼの方を振り向き、静かに…しかし殺意の篭った瞳で睨みつけ…
その私の感情に呼応するかのように、身体から発せられる魔力が高まっていく…。


オーレリア「ふっ…ぜいっ! っーーそこ!」

私は大剣を肩に抱えてリーゼに向かって飛び上がり、そのまま垂直に剣を振り下ろす…
剣閃はリーゼを捉えることはなかったが、その衝撃で地面が叩き割れ。

そのまま躱したリーゼに背後を取られるも、その場で私は足と腰を軸に回転し…
動きを先読みしつつ、先程よりキレの増した横薙ぎの回転斬りで背後のリーゼを一閃して。

ーーーー

リーゼ「ははっ♪その殺意、いいねぇ。ようやく出来そうだぁ、命のやり取りってやつがさぁ」

鋭い一閃が、顔を掠め頬が薄く裂けるも何故が血液は流れない。

オーレリアの太刀筋を補うかのように、挟み込む形で斬り掛るキールの剣撃をも軽くいなし、常人には考えられない身軽な様子で2人の剣閃のギリギリの隙間を縫い攻撃を躱しながら小さく嗤う。


リーゼ「だけどまだまだぁ。殺意も威力も速度も、何もかも足りない。そんなんじゃあ、私を殺せやしないよ。

やるなら、これぐらいはやらないと。ねぇ?」

硬化された両腕で2人の剣を殴り飛ばし、その衝撃で自分から遠ざけ距離を空ける。

そして腕を2人に向けて翳すと、リーゼを守護するかのように千変万花、様々な形状・特徴を持った大量の剣が浮遊する。


キール「あ~…やっぱりリュネの技をパクッてる。…オーレリア、踏ん張り時だかんねっ」

リーゼ「なに、屍人に口無し。あの哀れな女も黄泉の路で仲間がほしいだろう?

あの女も。君たちも。亡骸は血を抜いて防腐処理して剥製にしてやる……役に立たない愚かな君たちでも、魔王の城を飾り付ける程度の価値はあるからねぇ」

キール「お前…!」

リーゼ「ははっ♪踊ってみるといぃ『舞え…剣たちよ』」

大量の剣が独りでに、勢いよく敵たる2人の女騎士に殺到する。リュネメイアが魔剣公主と異名をとるきっかけになった技の1つ。

攻め入る敵を一斉に葬るもの。

2人は背中を互いに預けつつ剣を撃ち落とし続ける。けたたましい金属音が鳴り響く。


キール「ぐっ…!!」

脇腹を負傷しているため強烈な痛みが走り、絶え間無く剣を動かし続けるため、意識が削がれ徐々に剣が鈍り始める。

歯を食いしばりながら集中力を高める。


キール「っ、あぁ!!はぁ…はぁ…」

剣の攻撃の第1波を弾き返す。口元の血を拭いながら強烈な殺気を持ってリーゼを睨み付けるが、まだまだ大量の剣が周囲に浮遊していて。


キール「…オーレリア。一点突破する…アイツは許さない。余の力を持ってして…バラバラにしてやる」

何処と無く明るく穏和なキールの雰囲気が、ドス黒く冷酷なものに変化し、肌も若干の浅黒さを帯びるが、オーレリアに指示を送る。

ーーーー

オーレリア「ちっ…ぐっ…!」

私とキール隊長の攻撃を躱され、さらにはその後の何度かの剣閃をも軽くいなされ…
そうしているとリーゼの反撃に見舞われ、私は大剣で防ぐもガードごと弾き飛ばされ。

私だけの剣技だけではなく、キール隊長の剣撃まで躱すとは…何という身体能力だ…
しかも速いだけではなく重い…これが魔王軍の幹部か…それに…これだけで終わりではないようだな…。


オーレリア「なるほど…あれがリュネメイア隊長の技ですか…はい キール隊長。

……思った以上に悪趣味な奴だ…っ…ふっ…ぐっ…はっ…キール隊長! むぅ…!」

リーゼが繰り出す技の説明を隊長から受け、私は剣を構えながら警戒を強め…
あの技…どこかレインの聖剣技と似て 共通点が多そうだが…今は考えてる暇もなさそうだ。

リーゼの言葉に怒りを覚えつつ…
キール隊長と私は剣の雨を撃ち落としていく…が 数が多く、呼吸をするのも忘れ ひたすら剣と身体を動かしていく…
まずい…負傷してるキール隊長をフォローしたいが、こちらも自分ので手一杯だ…。


オーレリア「はぁはぁ…んっ…ふぅ…キール隊長……いえ…今のあなたにそれをさせるわけにはいきません。
代わりに…奴は私が討ち取ります…だから『キール隊長自身の剣』でそのための道を切り開いていただけませんか?」

私は何とか呼吸を整え…隊長の肩に手を乗せ、キール隊長を止める…
闇の感情に流されるまま 彼女に剣を振るわせるわけにはいかない…
だが私も隊長と同じ気持ちだ…なら闇の力じゃなく、隊長自身の剣で大切なものへの道を掴み取るべきだ。

私自身の想いをキール隊長に伝え、私は大剣を肩へと担ぐ…
そしてある技を繰り出すため、高ぶった魔力を剣へと集中させる…
彼に軽く指南していただいただけで 実戦では初めてだが…当てることが出来れば 勝利を呼び込む一閃となろう。
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