騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

文字の大きさ
上 下
128 / 365
第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第127話 潜入…そして

しおりを挟む

森林が覆う中、僅かに開けた木々と木々の間から前方を見つめる。その先には目的地である下水道の入口が、その大きな口を開けていた。

周辺には魔族はおらず、下水道からは様々な匂いの入り交じった。鼻のまがる瘴気が周辺に立ち込める。


キール「さ……スリス様から指定された時刻まで、もうじきだ。突入前の最終点検をしとこ。 

そうすれば、ま…気も紛れるよ♪

でもリュネ助けたら、速攻お風呂入るけど」

蒼の大剣の刃を見つめ、鎧の接合部などを手でふれながら指示を出す。

ーーーー

オーレリア「ふむ…これは中々…ああ 私も隊長と同じくだな。

……キール隊長…スリスさまたちのお助けもあります…そして…あなたの背中は私がお守り致します…だから一緒にリュネメイア隊長を助け出しましょう。」

目的である場所にたどり着き、その状況を確認した私たちは軽くため息が漏れ…
騎士たる者 これくらいの瘴気なら耐えられる…のだが…耐えられるだけであって、辛いのは辛いのだ。

最終点検をしながら私は隊長に約束を…
友であるリュネメイア隊長の安否で不安になっているかもと心配し、それを払拭させるためにキール隊長は1人ではないと声をかけて。

ーーーー

キール「心配してくれてんの?はは♪気持ちは嬉しいけど、大丈夫……リュネは、アタシが言うのもなんだけど。

あの子けっこうワガママな暴れ馬だし、屈服するほどヤワじゃないさ」

肩をクイクイッ♪と小刻みに回しながら背伸びをする彼女の表情には不安は浮かんでおらず、両手で頬を叩くと「よしっ」と声を挙げる。


キール「それに…背中は随分前から預けてるさ♪むしろ、アタシが心配なのは…」

躊躇いがちな表情を浮かべ何かを話そうとしたとき。正門の方から轟音と兵たちの歓声が響き渡り、付近上空から岩石が降り注ぎ魔族の野太い声が上がる。


キール「参謀殿の『岩破荒天崩』!……よし!オーレリア…パーティーの始まりだ!行くよっ!!」

下水道に侵入しすると細い脇道の横には濁った汚水が仄かな明かりに照らされ先が続いているのがわかる。

スリスの策が的中したのか、広く幅がある道の脇には魔族のものであろう剣や棍棒など武器が揃えられていたり、点々と巻に焔を灯した明かりが設置されているものの、魔族の姿はほとんどない。


キール「こりゃ楽でいいね!敵の大将まで、一直線だ!」

走るスピードを緩めず通路ですれ違いざまにゴブリンを斬り捨てながら、水路を辿り、曲がり、目的地を目指す。

暫くそうしていると光が強く差し込む箇所があり、そこを防いだ格子を蒼の剣で一閃する。


キール「出口だ!」

ーーーー

オーレリア「そうか…信頼しているのだな…なら大丈夫か、その友を大事にするといい。
(……そういえばあいつは…レインのやつは大丈夫だろうか…?)」

無事を疑わないキール隊長の姿を見て、私は軽く微笑み…

そして隊長たちの関係を見て…私にも1人…信頼できる友で好敵手のことを思い浮かべる…
開戦後 あいつとは会えていないが…いや…あいつは私より強い、なら心配はいらないか。


オーレリア「隊長…? む…キール隊長…!」

珍しく歯切れの悪い言葉と、躊躇うような表情のキール隊長…
私は首を傾げながら、どうしたのかを尋ねようとして…

しかし聞こうとする前に合図が確認でき、私は隊長の名前を呼び…
そしてお互いの目を見てこくりと頷き合うと、私たちは潜入を開始して。


オーレリア「そうですね…しかし…ふっ! 相手は幹部クラス…油断はなさらずに。」

走りながら剣でゴブリンたちを斬り捨てながら、私はキール隊長と会話をして…

先に待ち受けるのは、キール隊長とリュネメイア隊長の2人を相手取った相手だ…
私は気を引き締め直しながら、キール隊長と出口まで駆け抜けて…。

ーーーー

「スリス様!て、敵の第2波っ!進撃を開始しましたっ。我が方の罠で数を減らしつつも距離を詰めていますっ!!」

仕掛けていた落とし穴や、踏んだ瞬間地面に仕込んだ薬材が爆発する圧力式地雷に怒りの声を挙げ、魔族が突貫してくることに顔面を蒼白にした兵が報告を挙げる。


スリス「落ち着きなさい。兵よ!!引き続き蓮華の陣形を維持したままゆっくりと後退!弓で遠距離攻撃を続けなさいっ!我が方に敵の到達するのを出来る限り遅らせよっ!」

ゴブリンやグレムリンと言った低級魔族は倒れるが巨漢かつ強靭な身体を誇るオークやガーゴイルは倒れない。怯ませるのがせいぜいなのか、薄ら笑いを浮かべている。

なるほど慰みものにするつもり……といったところ。


スリス「弓を打ち尽くしたものは下がり、次の段階の作戦用意!迅速に行動しなさい!あの配置……右翼から突破するつもりと見ました!陣形を白藤に移行!敵を近寄らせるなっ!」

兵が慌ただしく動く。訓練を続けてきたかいが合ったのか、表情こそ恐怖に塗れるも形は維持できている。

最初から敗けが確定の戦。

後方には、第3波、第4波の敵の軍勢が見える。


スリス(やはり装備も兵も時間も何もかもなかったのは厳しい……長くはもたない……!

せめて、ケーガンぐらいいれば……。いや…ないものねだりは仕方ない。

次の段の幕を開けます)

ーーーー

光の先は街路の端にある開けた空き地だった。

何も無い荒地ではあるが、数区画先にダウンドベルという歴史の街、建立当時からのシンボルである巨大な時計塔(オールド・クロック)が見える。

建立された当時から街の中心に存在する、その区画には行政や医療等の街の中核機能があったと聞く。

魔族が占拠した後だとしても、速やかに自分たちの拠点とするために機能はそのままにしているはずだ。

当然、捕虜の収容所もそこにあるはずと見た2人は頷き合い、街の中心を目指し走る。


キール「………!」

市街地を走るが、遠くから戦の喧騒は聞こえるものの人や魔族の気配はない。2人の足跡のみが響く。

人間たちは自らの家に立てこもっているのか、捕虜収容所に連れて行かれたのか。あるいは、他の街に移送されたか。

とにかく人の姿は見えないが、今の2人には確かめるすべはなく、そして時間もない。

魔族の姿もスリスの作戦がハマったのか、妨害に合うことはなかった。

やがて、かつてダウンドベルの区長が収めていたであろう旧式の造りが特徴の区長屋敷前についた。

質素かつ暖かな雰囲気を放つ屋敷の背後には巨大な時計塔が聳える。

しかしその雰囲気が暗さと重さを帯びた冷たいものに変わるのを2人は見逃さなかった。


キール「オーレリア!」

大きな跳躍で後ろに後退する。先程まで2人が立っていた箇所の地面には大穴が空いていた。


リーゼ「やぁ、キール=ゴールドウィン隊長。オーレリア=イークレムン副長。待ちかねたよ。

全く君たちは本当に私を待たせてくれる。

まぁ私も器はでかぃ方だぁ。許そう。

遠路はるばるご苦労さまだねぇ、とりあえずお茶でも飲むかぃ?」

時計塔から軽く跳躍してきて2人の前に立つ女。

糸目に灰色の髪を風に揺らしながら、浮かべつつも一分の隙なく不敵に笑う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...