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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第123話 マサキの決意
しおりを挟むマサキ「……どこから話したものか。」
オフェリアに真相を明かすことには同意したものの、あの紅玉結晶を破壊した以上。
優先順位をつける必要がある。後回しに出来ることは後回しだ。
マサキ「とりあえず、今後の事を話しておく。が、その前にだ。
奴らからの指令書。時限式の魔法が掛けられていてもう1度開封すると、2分と経たんうちに燃える。
…読んでみろ」
懐から取り出したそれは、2人の壮絶な戦闘にも関わらず綺麗な状態を保っている。
それをオフェリアに向かって、躊躇いもなく放ると、懐から煙草を取り出し火をつけ煙を燻らせる。
内容は以下の通りだった。
~親愛なる小娘へ~
恐らくリュネメイアの救出に向かうであろうキール様。
彼女に手を貸すことは許可しません。
友人たるリュネメイアの存在の消滅はキール様にとってこの上なく、闇の魔力を馴染ませるよい機会。
魔王への覚醒を数段進める機会となります。
仮にキール様が危なくなったとしても、副官の女がなんとかするでしょう。
そんな些細な事より、もっと重要な任務があります。
『我々』を邪魔する、魔王復活反対派の魔族。
今度こそ首を持ってきなさい。
2度目の失敗は許しません。
この言葉がどのような意味を持つのか。
偽物の力に頼る小娘でも、わかるでしょう?
よい結果を期待しています。
~御主人様より~
ーーーー
オフェリア「っと…ふぅん…指令書ねぇ…どうせろくでもないことが書かれてるんでしょうけど…まあ見せてもらうわね。」
マサキから放られた手紙を受け取り、彼女の説明を聞いたのち読み始めて…
これを最初に受け取ったマサキの様子からして、内容としては気に食わないものであるのは予想できて…。
オフェリア「……何がご主人様よりよ…人を道具みたいに…。
…とりあえず一ついいかしら?
マサキあなた、キールさんの他にも…何か脅されてる理由があるんじゃないかしら…違う?」
ぐしゃっと手紙を握りつぶす…
優しいマサキに友達を見殺しにさせといて…しかもそんな些細なこと…?
そのせいでいろんなマサキが…
うん…倍返しとはいわず、何百倍返しで落とし前をつけさせてあげるわ。
なんとか怒る気持ちを抑えながら、私はマサキに聞いてみて…
手紙の内容からしてキールさんには様をつけているし、魔王の素体としてのキールさんには手出しはしないでしょう…いい意味ばかりではとれないけど…
となると、マサキを従わせるための何かをもう一つくらい持ってるんじゃ…と、私は推測を話してみて。
オフェリア「内容的に私たちがやることは、この反対派の魔族を倒すことかしら?
それとも…この反対派の魔族を仲間に引き入れて、このご主人様気取りの奴に一泡吹かせることかしら?
それと…魔王復活反対派っていうのは誰のことを指してるの?
私と合流する直前に倒したのがその反対派?」
マサキに尋ねながら、今後の私たちことを聞いていく…
キールさんとリュネメイアって人の方は、彼女たちに任せる他ない…おじいさんの残してた都合の手札も もうないし…はてさて…。
ーーーー
マサキ「……流石だな、その読みは当たっている。
奴らは用意周到だ。
保険をかけないなんてことは有り得ない。」
握り潰され、捨てられた指令書は炎に包まれ直ぐに灰になる中、白煙を吐き、そして小さく溜息をつく。
マサキ「俺の過去の関係性で言えば……キールは恩人。そして、もう1人。
俺の先生だった人がいる。
最も俺は才能がからっきしだったもんだから
主に基礎戦闘、基礎魔法学や人としての在り方。
取引や交渉術。物事の考え方等の教えを受けた」
思い出される懐かしい日々に少しばかり頬が緩むが、現状を思い出し表情を引き締める。
マサキ「順序立てて話す。
とりあえず今後の事は、この後だな。
話を戻すがー………オフェリア。
キールが棺として、次期魔王として、覚醒の道を歩んでいるのは貴方も知っての通りだ。全く忌々しいことこの上ないが。
だがー……疑問には思わないか?
それならば『当代の魔王はどこに居るのか』と」
戦争が開幕して半年余り。
笑う髑髏に、悪魔の翼。そして魔王を表す逆十字を組み合わせた紋章の御旗の下。
魔族は戦っている。
しかし、戦争の指揮官たる魔王は出て来ていない。
王国側の指揮官の1人。
あの『サクヤ』でさえ。
直接戦闘は行ってこそいないが、飼い犬と周囲の、強烈な反対を振り切り、士気を高めるため前線に訪問し演説を行っている。
歴史を紐解いても、魔王という存在は破壊衝動に塗れ常夜の世界を為すものとされ。
どの事象でも虐殺を行ったとされるにも関わらず。
マサキ「…簡単なことだ。奴らが確保している。
ただし『封印状態』のままで、な。
……ああ、安心しろ。内と外。古代上位語魔法による
『両側』からの永久凍結・永久石化封印だ。
封印は絶対に破れん。」
パチンと指を鳴らすと、オフェリアの眼前に。
腕を胸元で組み、瞳を閉じた女性の石像が大きな氷塊の内部で眠りについている様子。
そしてその氷塊が左右、2本の大鎖で固定され暗闇の中吊るされている様子が映し出される。
マサキ「封印状態が続いて長い年月が経つが、この石像の当代魔王に蓄えられた莫大な魔力は正当に行使されないことから、この世界の事象は……いや。
その世界の事象を悪用した奴らは。
次の候補を選定した、それがキールという訳だ」
ーーーー
オフェリア「たく…余計な悪巧みばかり思いつく相手ね…。
ふふ…いい日々だったのね。安心なさいな…キールさんも含めて、その先生さんも取り戻してあげるから。」
予想が当たっていて 軽くため息が漏れる…
用意周到な奴…しかも悪い連中は特に嫌いよ…妙に悪知恵だけは働くし…
それに…どこまでマサキを苦しめれば済むのよ…。
頬の緩むマサキを見て、私も微笑みを見せ…
ぽんっとマサキの頭に手を置き、優しく撫でながら、私はマサキの大切な物を取り戻してあげるわと約束して。
オフェリア「うーん…確かにそうね…今更だけど、なんでキールさんが魔王に選ばれたのとかも含めて疑問ね…。」
マサキの問いに、私は顎に手を当てて考え込む様子を…
そういえば指揮官として魔王が戦場に姿を現したことないわね…
うーん…というかもしかして…キールさんが時期魔王ということは…つまり今の魔王は…。
オフェリア「ああ やっぱりそういう感じなのね…大丈夫よ…魔力の流れを見た感じで封印とわかるわ…。
なるほどね…それでキールさんが……これは今 聞いてもいいのかしら? その連中…私たちの敵は何者なの?」
映像とともにマサキに説明され、私は自分の予想と事実をもとに考えを組み立て直す…
というかすっごい封印ね…いくら私が不死でもこんなのくらった…うん その先は考えないでおこう…今はそれより…。
マサキの話を頭で組み立て 内容を理解し、私はキールさんたちの事情もある程度把握して…
そうすると疑問が残る、魔族や魔王すらも利用しようとしてる奴らは何者かということだ。
ーーーー
マサキ「…あの………///まだ話の途中なんで、その辺で…その…はああ…///」
彼女からの撫でられるのは心地いい。本音を言えば、子どもみたいにもっとスリスリしたいし、あやされたい…///
もっと、いい子って。優しい子って言って欲しい。
でも、とりあえずは話の本題を話さなければ。
マサキ「コホン……それじゃ…。今こそ明かそう。
この戦争の裏。王国と魔族を操りし者。
そして俺たちの真の敵。
それはー……」
この戦争には負けるかもしれない。
敗北の屈辱と、汚泥にまみれ、凄惨な末路を辿るかもしれない。
だが、それでも……孤独ではなくなった。
寿命少なく、血塗れの私を抱き締めてくれた彼女。
これからは、共に肩を並べ背中を預け合う彼女。
彼女が居るならば。
俺自身が選択した道を後悔しないために。
これまで散っていった者たちに恥じぬように。
道を切り開こうと思う。
禁忌の魔女の全力を持ってして。
人類最強と語られる力を持ってして…。
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