騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第122話 2人でなら

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マサキ「……ああ、もちろんだ…♪」

『雪下紅梅九段録』で砕けた氷の欠片が所々に、赤い梅の花を咲かせる中。彼女の手のひらを、ぎゅ…♪と優しく握り穏やかに微笑む。


マサキ「なあ、オフェリア……俺は…」

擬似治癒魔法が彼女の身体を治癒する中、もう片方の手で彼女の頭を優しく撫でる。


マサキ「…俺は。いや…俺が『私』のころから。

私は自分を信じることができなかった。自分に価値があるとは、今でも思えない。

だからこそ、目的の為に手段は選んでこなかったし。

『奴ら』の使い捨ての道具になることも、皆を救うためと考えれば、それほど苦しくはなかった。

闇の道を選択して歩いてきた。その末路も覚悟の上で。この戦争を生き残るつもりもなかった。

パラドクスから、強引に聞き出したこともある。

ほとんどの時間軸で俺は戦争中に孤独に『消える』という事実を。

だけど……」

瞳を閉じて小さく息を吐く。短いが、彼女との濃密でいつ真摯な姿勢が思い起こされる。


マサキ「貴方と会って……触れ合う中で、我儘を言いたくなってしまった。子どもみたいだろ?でも、な。

貴方ともっと……一緒に居たい。甘えることもしてみたい。

貴方となら、もう一度、自分を信じることが出来るかもしれない。立ち上がれるかもしれない。

貴方となら……どの時間軸でも実現していない、未来を歩めるかもしれない。闇の中の1条の光を掴めるかもしれない。

今は強く思ってる。

そう考えたら……貴方を消すかもしれない。その危険性があるのに…話してしまった。

賭けは確かに俺の勝ちだ。オフェリア。貴方は生き残ったのだから。

だが…本当にすまない。

『奴ら』の道具になったとき……俺は逆らうつもりはなかった。そうすれば、自分1人の犠牲で済ませれる結果があったから。

だからこそ、大切な人を傷つける結果は予想しなかった。…俺のミスだ」

苦笑いを浮かべながら、これまで伝えることの出来なかった自分の本音を伝える。

そうして彼女をここまでした自分が言えたセリフではないなと小さく自嘲する。

そうするうちに彼女自身の不死性と治癒魔法により、まだ完全ではないが、ほぼ外傷は見えないものになる。

ーーーー

オフェリア「んっ…あり…がとう…♪ 誰かに手を握ってもらうのって…こんなにいいものなのね…。
あっ…んんっ…// な、なにかしら…?//」

マサキに手を握ってもらい、その温もりを感じていると…
彼女が私の頭を撫でてくれ、私は頬を赤らめながらも嬉しそうにして…。

そういえば私…手を握ってもらったことも…頭を撫でられたこともなかったわね…
これ…恥ずかしいような…でも嬉しいような…温かくて…幸せな気持ちになれる…のね…。


オフェリア「…マサキ……私も似たようなものだわね…ほとんどがろくでもないものだった…
あまりにも酷すぎて…時間軸に干渉する魔法を探し歩いたくらいよ…。

私も自分に価値があるとは思えなかったわ…あなたと出会うまではね…。」

ぎゅっとマサキの手を握り返しながら、私は彼女の話を聞いていく…
どこか似ている私たち…でも…マサキの方が、私より心が強くて優しい…

彼女は覚悟の上で、自分を犠牲にしてみんなの幸せを願っていた…
そんな彼女が価値のない人間であるわけがない…マサキがそう思っていようと、私は彼女が幸せになるべき人間だと思ってる…

他の誰かが彼女に手を差し伸べないのなら…私がマサキに手を差し出す…そして…彼女を闇に染めようとも、この手で幸せに…。


オフェリア「……いいんじゃないかしらぁ…私としても、あなたに甘えてもらえると嬉しいわね…そのかわり、私と一緒にいて…私だけに甘えて、あなたをひとりじめさせなさいな…♪

私も…あなたに一筋の光をもらったおかげで…もう一度だけ、誰かと寄り添える日が来るんじゃないか…そう思ってたところよ…。
ふふ…そうね…1人じゃ無理でも…2人でなら挫けずに光の未来へと辿り着けるはずよ…♪」

マサキは誰かに甘えるべきよ…まぁ今からは私に甘えてくれるといいわね…私が嬉しい気持ちになれるから…

でも…多分昔はキールさん辺りに甘えてたんだろう…
うん…やっぱり2人の…いやもしかしたらもっと沢山の人の未来を歪めた奴らは…絶対に許さないわ…

私は色々と思いつつも、マサキとなら全部を変えていけるはずと微笑み…
そして誰かと寄り添える未来に…私はマサキを思い浮かべていて…。


オフェリア「気にしないでいいわよ…多分マサキが襲ってくると事前に知らされていたとしても、私はマサキを救うために賭けの方を必ず選んでいたわ。

それも気にしなくていいわ…まぁすっごく痛かったのだけど…
でもマサキが苦しんできた心の痛みを…私が身体で受け止めれたのだから…少しでも痛みを軽くできてたならいいのだけど…
どう…気分はすっきりした? 最初の甘えをしてみたご感想は?♪

さて…魔力とか本調子に戻るにはもうちょいかかりそうだけど、この通り私はマサキのことに関しては無敵であるつもりよ…だからいつでも甘えて頼りなさいな…♪」

少しからかう様子をみせながら、私は甘えてみた感想を聞いて…
マサキ的にも私的にも、あんな血まみれの甘えはもうごめんだけど…
マサキが甘えてくるのなら私はそれを受け入れ、どんなことも叶えてみせれるのを証明できたのだから…

だからこれからも甘えたことを叶えてあげると、私は彼女と手を繋ぎながら穏やかに微笑んで…。

ーーーー

マサキ「どう、だろうな。まあ……複雑…だな」

苦笑いを浮かべながら困ったような表情を浮かべていることだろう。

気持ちは楽だったが、彼女を傷つけたことは気持ちいいことではない。半々といったところか。


マサキ「………///」

オフェリアの真摯で大人びた言葉を聞いて、幼いころの欲求が湧き上がる。しかしあの頃とは違う…思わず頬が熱くなるのがはっきりわかった。

ここには…2人しかいない…。

…………。

マサキ「……あ、あの……そ、それじゃ……///」

オフェリアの袖を片手で軽く掴みながら、俯く。彼女の顔を直視は出来ない。オフェリア以外に、この言葉を聞いたやつがいたら…消してやると思える。


マサキ「……ぎゅっ…て。抱きしめて……なでなで…して、いい子って言って…ほしい……です……///」

ーーーー

オフェリア「まぁマサキはそうでしょうね…私はあなたを救えたことで、気持ちは晴れやかだけどね…♪」

膝枕は名残惜しいが私は起き上がり、癒えた身体をくぃんっと伸ばす…
うーん…しかし今の私ひどい格好ね…仕事着でお気に入りだった踊り子衣装もぼろぼろ…

だけどマサキを…大切な彼女を救えたのだからいいか…マサキの代わりになる人なんていないのだから…。


オフェリア「……? マサキ…? っ…ふふ…いいわよ…ほら…おいで…♪

んっ…よしよし…マサキは本当にいい子 いい子…一人で頑張るの辛かったでしょ…
でもこれからは私があなたのそばにいるから…辛い時はいつでも私に頼りなさい…私があなたを守ってあげるからね…。」

ぼろぼろになりながらも残る袖をくいっとマサキに引かれ、さらには彼女が俯いてるので私は首を傾げて…

そうしているとマサキが甘えるようにつぶやいてきて…
い、今のマサキ…すっごく かわいい んだけど…しかも頬赤らめてるし…!
うん…これは我慢できないわ、言われなくてもぎゅってしたくなっちゃうから…。

魔眼を晒したまま、私は穏やかに微笑み…
彼女をぎゅっと優しく包み込むように抱きしめ、彼女の頭をなでなでしながら甘やかしてあげて…
今まで甘えられず一人で頑張っていた分、これからは私が守って甘やかしてあげる…とあらためて約束してあげて。

ーーーー

マサキ「はぅ…///……んん…いい子で頑張ったから…///もっと…///

…いい子にするから、これからも優しくして……///」

彼女の暖かさを感じながら、身を預ける。頭を撫でられ、褒められるのが嬉しい…///自分を見てくれて、その価値を認められているようで。

顔をうずめて彼女にスリスリ♪と甘える。遠い昔に感じた暖かさとは、また別の暖かさから…心からの安心の気持ちでため息がでる。


マサキ「ねぇ……1人にしないで、ずっと傍にいて…///うっ……ひっく…ううう…」

頬を赤らめているのは自分でもわかった。彼女の暖かさに包まれながら、瞳が揺れた。

頬を伝う水滴はとめどなく溢れるが、それは悲しみから来ることではないこともわかっていた。

それからひとしきり彼女に身を預け、禁忌の魔女は泣いた…。


………。

マサキ「………あの。すみません……取り乱しました…///」

広大かつ円形の中庭を囲うようにして聳える壁からは、ところどころ清流が吹き出し、差し込む日差しにより虹がかかる。

その中庭の一角で背を背けながら、ボソボソと呟く。

泣いたのは何年ぶりかわからないが、取り乱した自分に恥ずかしさは禁じ得ない。

この空気は耐えられない。…話を変えよう。


マサキ「俺たちがやる事はたくさんある。

………とはいえ、さっきの話も途中だったな。どこまで話したかあまり覚えてないが。状況を整理しよう。

とりあえず、把握したいことはあるか?

ここまで来たからには、地獄の果てまで付き合って貰うつもりだが」

冗談めかしながらも、オフェリアに話題を提供する。

しかし、どこかその様子は以前よりは角がとれていて。

それでいて自然と俺『たち』と呼んでいることには気づいていない様子を見せる。

ーーーー

オフェリア「ふふ…マサキは甘えたがりやね…でも本当に今までよく一人で頑張ったね…んっ…なでなで…♪ 

マサキはいい子だから…違うわね…マサキは優しい子だから、甘えてくれたらいつでも優しくしてあげるわ…♪」

今までのマサキの境遇もあり…
私はぎゅっと優しく抱きしめながら、彼女に優しい言葉をかけながら頭を撫でてあげ。

いい子とか関係なく、マサキだから私は優しく甘やかしてあげると微笑み。


オフェリア「マサキ……大丈夫だから安心なさい…私はあなたを一人にはしないから…ずっとそばにいて…私があなたを守ってあげるからね…。」

泣くマサキを見て…
私はよりぎゅっと彼女を抱きしめ、ずっとそばにいるからねと約束してあげて。

初めて感じる温かく穏やかな感情で…
私は穏やかな表情を浮かべながら、私はマサキの頭を撫で続け…。


………。

オフェリア「ふふ…いいのよ 別にもっと甘えてくれても…♪
私も長い時間生きてきたけど、誰かに甘えてもらえるって経験は初めてで新鮮だったし…私も温かくて嬉しい気持ちになれたから…♪」

マサキに甘えてもらえ、私も生まれて初めて心が満たされていて…
んー♪ 身体はまだ本調子じゃないけど、心はあったかくて満たされて幸せだわ…かわいいマサキも見れたし…♪


オフェリア「ふふ…♪
んっー…とりあえず、話せること全部話しなさいな…あなたの闇を一緒に背負って、あなたを苦しめた奴らは、全部まとめて私が倍返ししてあげるから。」

いい表情してるじゃない…♪
マサキに信頼してもらえて嬉しいわ…まあ私もマサキを信頼してるけど…
その証拠に作ってたキャラも言葉遣いも、彼女の前では素に戻ってるし。

優しいマサキに辛い思いをさせていた相手を許さないと思いながら、彼女に抱えてたもの全部話して…私にも背負わせなさいなと言って…。
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