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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第120話 マサキvsオフェリア
しおりを挟むパラドックス「おお、怖い怖い。君は本当に私を燃やしたことがあるからね。その言葉が脅しじゃないということはわかるのだよ……やれやれ。
よろしい。オフェリア君には借りもあるからね」
大袈裟に演技をするように後退りつつ、呆れた表情を浮かべつつ白衣のポケットに右手を入れ、そこから取り出した眩しく輝く深いエメラルド色の石。
『翠色の結晶』をオフェリアに投げる。
パラドックス「それは『彼』の魔力を退け鎮める力を宿す『翡翠石』を、特別な製法で純度を高め圧縮し、魔力結晶にしたものだ。
それを割って結晶の魔力を吸収したまえ。
なに、これは別の時間軸で既に『不要』となったもの。心配はいらないのだよ。
まあ、効力はこの戦闘に限りはするがね。
……その魔力を宿した君の魔力で、マサキ君の『胸部』に浮かび上がっている核(コア)を破壊すれば、君の勝ちと言えよう」
そうこう話している間に漆黒の球体には亀裂が幾重にも入り、やがて大きな音を響かせて破裂する。
闇の魔力が晴れたそこには瞳を閉じた『禁忌の魔女』が佇むが、その胸部には血を思い起こさせる赤紫色をした六角形の結晶が埋め込まれている。
彼女はゆっくりと目を開けると、ぼんやりとオフェリアを見つめて、口を開く。
「……『契約の違反を感知』……マサキ=ジェイド=サーティナーの人格の凍結を完了しまシた。
同時に『代理人格』ヲ起動。こレより、マスターのご命令にヨリ情報の漏洩対象ヲ、速やかに削除シます。削除対象1メイ。固有名称……オフェリア、ヲ。確認。
戦闘フェーズに移行……スタンバイ……!」
まるで人形のような語り口で紡ぎながらも、次第に強烈な闇の魔力を身体にたぎらせながら大杖を召喚しつつそれを手に取りオフェリアへ向かって大きく跳躍し、空中から強烈な闇の魔力弾丸を放つ。
ーーーー
オフェリア「よく言うわ…凍らせても燃やしても平気なくせにぃ…っと…これは…?
彼って…ふぅ…まぁいいわ…知ってても喋れないんでしょうし、この件はマサキを救ってから自分たちで真実を見つけるわ。
とりあえず礼は言っておく…あとは私がやるからあなたは下がってなさい。」
ジト目でパラドックスを見ながら 軽くため息をついて…
この男も相変わらず 変わらないわねぇ…
まぁいつもこちらが困ったタイミングで現れるから、狙ってやってるのかと思うけど、役には立つから文句を言えないのよね…
っと…今はそれより マサキを元に戻すために集中しなくちゃね…
受け取った結晶の説明をされ、私は説明通り結晶の魔力を吸収して宿し…
相変わらず いろいろと知っているようね…それもとりあえず置いとく…聞いても答えれないだろうし…
パラドックスになんだかんだ感謝をしつつ、私はマサキの方を向き…
やっぱり最初から全力でいかないとだめそうね…あれって単純な戦闘力なら私より…。
オフェリア「あぁ なるほど…だから『悪いな』なのね マサキ…。
…どこの誰だかわからないけど、勝手に人様の人格を凍結とかしてるんじゃないわよ…その子は私のなの…返してもらうわよ?
無駄よっーー魔眼・照準固定…っと!
来なさいフェンリルにレグルス! 凍てつけ! 燃やし尽くしなさい!」
レグルスとフェンリル「オォンッ!」
マサキを返してもらうわよと啖呵をきり、私は高速で迫る魔力弾を意識して見つめ…
魔眼が発動し 魔力弾はぴたりと動きを止め、魔力を消費しながら私は着弾地点から離れる…
そして意識を解くと魔力弾は動き出し、先程まで私がいたところに着弾 爆発して。
そのままは私は左右にレグルスとフェンリルを呼び出し、右手をかざして彼らの氷と炎で闇マサキを攻撃して…
もちろん彼女は避ける…すると着弾地点は紅蓮の炎に包まれたり、凍てつくように吹雪が巻き起こり あとには氷柱が出来たりし…
致命傷だろうとなんだろうと私が治してあげれる…手加減なんてしてたら勝機はない…
あのクラスの相手には、魔眼で動きを止めれる時間は限られてる…私の魔力消費が激しいからね…
だけど躱せないやつは魔眼で防いで、それ以外は魔法で防ぎきって、あの魔力の核を…魔力の拳でぶん殴ってやれば解決よ…!
ーーーー
『魔を極めし』2人がぶつかり合う壮絶な戦闘は轟音と、強烈な魔力のぶつかり合い。闇の魔力同士が相手を喰らおうとせめぎ合う。
パラドックス「……ふむ。お互いの力はほぼ互角と行ったところかね。しかし…人間性を亡くしている『人形』が、なるほど1歩リードだ。
さあ……この時間軸はどうなるのか……オフェリアが人形を潰す未来か。人形がオフェリアを潰す未来か。
どちらにせよ辿る結末が悲惨だったことを思えば……2人が出会わなかった時間軸の方が、まだマシと言わざるをえないがね」
無意識に禁忌の魔女への攻撃を躊躇しているのだろう。オフェリアは押されているものの、彼女の実力はこんなものではない。
人形は、雷撃を放ち広範囲殲滅攻撃で全体を多いながら牽制しつつ、水魔法で雨を降らせつつ、その水分を凍結させ拳ほどの大きさのつぶてを降らせる。
地面に大穴が次々と空き、オフェリアや精霊獣を襲う。
まるで天候を支配しているかのような、複合魔法に勝負運び。
……だが、真祖としての彼女の全力は禁忌の魔女と互角に渡り合えるだけのものがあるはず。私はそれを幾度となく見てきたのだからね。
2体の精霊獣が人形の左右に向かって炎と氷のブレスを放ち逃げ場をなくしたところに、真祖が強烈な魔力波を叩き込む。
人形はノータイムで右腕を突き出し、何重もの防御魔法陣を展開するが、オフェリアの魔力を完全に防いだはずのそれは。
防御魔法陣を貫通して、彼女の右腕を吹き飛ばす。
闇の魔力『再生』が発動し、何事にもなかったように右腕がもとに戻るなか人形は大きく距離を取る。
オフェリアに宿る闇の魔力を包むようにして、『翡翠の魔力』の翠色が見え隠れするのを警戒したのだろう。
「……右半身損傷率35%……再生完了……ッガガ…身体全体に高負担の敵性魔力ヲ検知しまシタ。翡翠反応。
……削除対象の危険レベルヲ引キ上げしまス。
マサキ=ジェイド=サーティナーの記憶カラ、術を強制出力……本体人格損傷の危険性アリ。
代理人格にヨリ危険性ヲ強制承認。……承認ヲ完了しまシタ」
更に威圧感を増した人形の周囲に幾度もの多重魔法陣が展開され、最初にオフェリアが彼女を助けたとき見た光景……
巨大な氷塊が一瞬にして生み出され、頭上から轟音を立てて落下する。
「『ワルズ86式多重魔法陣術 雪下紅梅 九段録』」
ーーーー
オフェリア「っ…ぐぅ…! レグルス フェンリル 私を気にかけずアレの動きを止めなさい!」
レグルスとフェンリル「オォオオンッ!」
オフェリア「ふっ…はぁああ…! くらいなさいっーー天蒼の氷結矢…!
……はぁはぁ…破損て…ちぃ…。」
魔眼に氷の壁や火の壁で魔法を防ぐが、全てを交わし切ることは不可能で…
脇腹を魔法で穿たれ、血が噴き出し 私は苦痛の顔を浮かべるが、マサキの攻撃が続くので足を止めるわけにはいかない…
身体のあちこちに…着ている踊り子の衣装がボロボロになっていくなか、私は両手を胸の前に突き出し 氷の魔力を貯めて…
レグルスとフェンリルで逃げ場をなくすと、私はその魔力の矢をマサキに放つ…
氷結の魔力矢はマサキの防御を凍らせ貫通し、彼女の腕を飛ばし…だがすぐに回復し…
くそ…魔法陣に軌道をずらされた…しかもマサキの人格が破損の危険ですって…?
まずいわね…時間をかけてられないわ…マサキのこともだけど、私の魔力も残り少ない…賭けにでるしかないわね…。
そうしているとマサキが跳躍し、見覚えのある魔法を放ってきて…。
オフェリア「っ…その技は…! いいわよ…こうなりゃ…! レグルス フェンリル フォローしなさいっ!」
レグルスとフェンリル「オン!」
オフェリア「っ!! ぅ…あぁあああああああ!!」
致命傷クラスのダメージを受けたら、回復のために一時的に動けなくなる…
あれを受けたらマズイ…だけど魔眼はあと1回しか使えない…こうなったら…!
炎と氷を纏うレグルスとフェンリルと一緒に私もジャンプし…
左手で頭と右手を隠し、ダメージ覚悟で氷塊に突っ込む…頭と右手さえ無事なら何でもいい…マサキを救うためたら何だろうと耐えてやるわ…!
レグルスたちに防いでもらってるとはいえ、マサキの繰り出す技を真っ向から受け…
私は苦痛の表情と叫び声を響かせ、右手と頭以外から血を噴き出し 凍てついていき…。
オフェリア「ぐっ…おぉおお!! っ…魔眼を照準固定! マサキ! 私の全身全霊の想い 受け取りなさいなっ!!」
氷塊の真ん中を突き破り、私はマサキの正面に辿り着く…
やば…意識が飛びそう…だけどこの一撃だけは届かせてみせる…あぁああ!
左腕が吹き飛び、全身ぼろぼろの瀕死状態になりながら…
魔眼でマサキの動きを止め、私は魔力と想いを込めた右手で核をぶん殴って……。
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