騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

文字の大きさ
上 下
116 / 365
第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第115話 大切に想うもの

しおりを挟む

ー幕間ー

砦の大門前。腰までの金色の髪にスカイブルーの瞳の騎士が、馬の毛並みを撫でつつ出立の準備をしていた。


キール「なんだ、もう行くの?ん~……アタシ的にはもうちょっと話たかったんだけどさ。それ言うのは野暮かね?♪」

彼女の率いる1軍は、あたしたちの砦を通過してそのまま北進する。先日、その拠点を守っていた味方部隊が壊滅して後任を任されたためだ。


アイリス「あはは♪……ううん、気持ちは嬉しい。ありがとう、キール♪……少しなら時間あるから、話そうか」

戦争が始まり教え子をなくして、取れなくなった目元の隈が痛々しいが、彼女の穏やかな笑みはその気持ちを薄れさせてくれる。

お互いの状況はある程度伝えあった。

彼女が精神の均衡を崩そうとしていること。

アタシの方は、覚醒のことはそれとなく濁して、『帰れなく』なる可能性を伝えた。


キール「アイリス。こうして2人きりで話すのは久しぶりじゃない?アタシは凄い懐かしい気がするよ……学生時代以来かぁ」

私の言葉に彼女は何も答えず、ただ横に並び瞳を閉じ穏やかな笑みを浮かべた。きっと、当時を思い出しているのだろう。


アイリス「キール……貴女はずいぶん立派になったね♪私は友達として誇りに思うよ。さっき会った優秀な副官ちゃんもきっと、貴女のことをそう思ってる♪」

オーレリア……さっき『抜いて』あげたときのエロい顔がよぎり頬が赤らめるも、それを打ち消すようにブンブンと首をふった。

目の前の彼女は不思議そうに首をかしげている。


キール「アイリス。考えたんだけど……アタシはさ。アンタに頼むことにしたんだよ」

そうだ。今のうちに伝えておかなくては。

アタシがアタシであるうちに。

この『蒼の剣』を。


キール「もし、アタシが倒れるようなことがあったら。……コイツを受け継いでほしい」

アイリス「それは……蒼の大剣?」

オーレリアには頼めない。なんだか、アタシはアイツを巻き込む気にはなれない。ここ最近、凄いその想いが強い。

……危ない目にあってほしくない。だから。

この剣の秘密と後継は。『剣鬼』と呼ばれながらも、優しい心を持つアンタに……託すことにしたよ。

ーーーー

オーレリア「先程の彼女があのアイリスか…キール隊長の友達で…そして…。
いや…私じゃ彼女を救えはしないか…救えるとしたらキール隊長…それか同じくらい彼女を知って、想ってる人くらいか…。

……しかし…キール隊長 何か大事な話がある様子だったな……何か私に力になれることはないだろうか…?」

キール隊長とアイリスさんが二人きりで話せるようにし、私は一人になりアイリスさんに起きたことや今の様子知り…
彼女のことをよく知らない私では力になれないことを理解し、私は彼女に救いがあることを祈って。

二人っきりにする時 キール隊長の表情がどこか真剣なものだったので、私はそれが気になっていて。

ーーーー

話が終わり私はキールの頼みに首を縦に降った。

彼女は安心したのか穏やかな笑みと、私にお礼の言葉と激励の言葉をかけて、そうして砦に戻っていった。

……だけど、出来ることなら。その時は来ないでほしいと思わずにはいられないね。

この頼みが実現するとき。それは、キールが…  

いや……信じなきゃダメだ。そんな未来は来ないと。

私たちは、絶対にこの戦争を生き抜く。

…リュネにも、そう約束したしね。


アイリス「さあ、私も……軍に合流しないと……ん?」

愛馬に跨がり少しだけ馬を進ませると、こちらに佇んでいた友人の副官を目に捉えた。


アイリス「ふふ♪……こんな夜遅くまで起きて上官の心配、かな?同じ隊長を勤めるものとしては、貴方の健康に良くないから減点だけど。

でも……キールの友達として、私は嬉しいと思うよ♪ありがとう、オーレリア。

だけど、ほどほどにしなきゃだよ。貴方自身が倒れちゃったら、ね?キールには貴方が必要なんだから♪」

友人を健気に大切に思ってくれるオーレリアに対して、温かい気持ちがこみ上げる。

だけど、彼女のような人材は頑張りすぎる傾向にあるからやんわりと注意を促しつつ、自分の想いを織り混ぜて伝える。


アイリス「戦争も中盤。国土と戦力は次々に失われて、どんどん追い込まれてる……なかなか厳しい戦局だけど、私は諦めてないよ。

お互いに、お互いが大切に想うもののため頑張っていこう。それじゃ、またね♪……はっ!!」

オーレリアに『大切に想うもの』のため。

と、『嘘』をついてしまったことに…私が何を大切に想っているかわからなくなってしまっているにも関わらず、偉そうに振る舞ったことに罪悪感を覚えるも、それを振り払い愛馬を走らせる。

次は、防衛戦。厳しい戦いになる……急ごう。

剣鬼にふさわしい戦いぶりを披露しないと、ね。

ーーーー

オーレリア「あっ…お疲れさまです アイリス隊長…ふふ 減点されるのは確かにですね…
いえ 隊長を…いや 違うか…大切な人を心配するのは当然です お礼を言われることでは…
ですが心配とアイリス隊長の気持ち伝わりました…ありがとうございます。」

キール隊長とアイリス隊長のことを考えていると、そのアイリス隊長がやってきて…

心配とアイリス隊長の想いが伝わってきて、私は自分の気持ちを伝えつつ、頭を下げて 心の底からお礼を言って。


オーレリア「私も諦めません…この戦争の勝利も…キール隊長のことも…。
はい それではまた生きて会いましょう…アイリス隊長によき出会いがあることを祈っています…。」

戦争で勝利することは民、そして仲間たちのために…
そしてキール隊長のことも…
大切なもののため絶対に負けられない、私は絶対に諦めてやるものか…。

アイリス隊長が大切に想うものと言ってくれ、私は彼女にも再び大切なものになる者が現れることを…心から願って…。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...