騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第113話 ユラミルティ

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マサキ「悪いな。だが、目の前の問題は……そう長いことはかからないだろ。俺がいる。問題にもならん」

禍々しい魔力を見逃す訳にはいかない。

恐らく魔王軍一派の手先だろう。

だが、こちらは負傷明けとはいえある程度のレベルまでの魔力は回復している。

精霊獣の速度は想定より早く、やがて前方の光景が見えてくる。

少数の魔族と『王国軍旗』を掲げた兵士団が合同で

『1台の馬車』を襲撃している様だ。

その馬車を1人の『女性』が鬼気迫る様子で守護しているものの、敵数が多い上に守る馬車が大きいため、その場から動けず防戦一方になっている。


マサキ「オフェリア。少し待っててくれ……すぐ終わる」

1つの大杖を取り出し精霊獣の上から渾身の力を込めて投擲する。そのまま手で印を連続で組む。

直ぐ様、大杖が集団の上に届くと、雷鳴が轟き馬車の周囲の襲撃者に強力な雷が降り注ぐ。

そのまま精霊獣から大きく跳躍し、回避した少数の敵を手早く魔力を込めた拳で片付け辺りを見渡す。


マサキ「……終了だな。少し待ったか?」

後ろについていたオフェリアに手を差し出し、精霊獣から降りるのをエスコートするようにしていると、馬車を護衛した女性が近づいてくる。


「どなたか存じませんが、危ないところをありがとうございます♪スマートな魔術裁きの魔法士様に、ノーブルな御使いを従える精獣使い様。

そして神の御心に感謝を。しがないシスターをしております、ユラミルティと申すものです」

独特な言葉を挟みながらも、髪の毛や身体のラインを隠した『教会騎士団』シスター服、ガーネット色の瞳の女性は丁寧に頭を下げる。

この女。邪悪さは感じないが、何だ……違和感があるな。

そう考えているときユラミルティの背後で、大柄の魔族たるオーガがグググ……と立ち上がり、最後の力を振り絞ったのか、大きな『火球』を馬車に放った。

馬鹿な。先ほど全て麻痺状態には持ち込んだはずっ。

反射的に防御魔法陣を展開しようとするも、術が発動しないっ。大火球が馬車を飲み込もうと…

ーーーー

オフェリア「ふぅん…まぁ このまま見逃すのはなんか心配だしぃ、それにマサキの実力を見れるならいいかな。」

フェンリルに揺られながら、このまま見逃して 他に被害が出たらと心配と口にし…
マサキの実力も見れるなら、と私はそのまま魔力を感知した方にレグルスたちを走らせて。


オフェリア「あらぁ…魔族はわかるけどこんなところに王国軍の…しかも魔族と協力してるなんてぇ…どういうことかしらぁ…。

…へぇ…そこまで力を使いこなせるんだ…今の状態でそれならぁ、本調子でなら私より強いんじゃ…。
んっ ありがとう…全然よ、マサキがすごくて、ますますあなたに興味が湧いたわぁ。」

戦争中なはずなのに 魔族と王国軍が協力して馬車を襲ってる光景を見て、私は首を傾げ 考え込む様子をみせて。

マサキ 自身の力ではないものを制御し、そしてそれを完璧に扱えてる様子をみて…
私はマサキの実力をある程度推測しながら、彼女の手を取ってフェンリルから降りて。


オフェリア「ノーブルって…私はそんな柄じゃないわよぉ…それにしても…あなたもしかして…む…?

……魔眼・照準固定っーーっと…マサキ、そぃつなんだか普通のオーガと違った感じよ…説明するならぁ タフってやつね。

さぁて…レグルス、フェンリル やっちゃって…まぁ 私たちの方の力はこぉんな感じよ。」

レグルスとフェンリル「おふぅ!」

高貴と言われ そんなんじゃないと苦笑いし、そしてユラミルティと名乗る女性の違和感とその正体がなんとなくわかった時、後ろのオーガの異変にも気づいて…

びっと眼帯を外し、私は大火球を意識して魔眼の視界に入れる…
すると大火球はぴたりとその場に止まり、燃え盛りながは前に進もうとするが、まるで固定されたかのように身動きが取れず。

眼帯の下からは緋色の魔眼が現れ…
マサキと喋っている最中も、魔眼を発動中の私の魔力は徐々に消費していっていて…
魔眼の能力を見せながら、私は大火球とオーガに氷と焔で実力を示すようにとどめを刺す。

ーーーー

マサキ「……悪いな、助かった。しかし……いや、いい。この話は後だ……」

オフェリアの瞳に、失われた魔法の1つたる空間に干渉する『空間固定』魔法。

発動しなかった防御魔法陣に、麻痺させれなかった雷魔法。

気になることはいろいろあるが、今は後回しだ。

1体ずつ見て回り確実に倒れているのを確認し、ようやく安全が担保できたのを確認し、頷く。

安心した表情のユラミルティが馬車に近寄り声をかけると、その声に反応したのか荷台から10人程の子どもたち。

人間や魔族問わない彼らが姿を表し、ユラミルティに抱きつく。


ユラミルティ「精霊獣使い様、重ね重ねありがとうございます♪
……私はこの子らを避難させようとしていたところ、いきなり現れた一団に襲撃されこの様な有り様を晒したところです」

マサキ「……なるほど、貴方も魔族という訳か。これほど深部の敵領土で活動できる人材は教会騎士団のシスターにはいないはずだ」

違和感の正体に気付き詰問する。

シスターは小さく笑いフードを降ろすと、彼女の燃えるような赤髪の頭には2本の短い角、鬼族の証が現れる。


ユラミルティ「お察しの通りです……神の御心のまま、私は魔族であっても人間であっても分け隔てなく接しております。

聖典の95説。私は人間と魔族の共存は可能と解釈していますしね。

それに……ふふ♪血は繋がってはいませんが、私の自慢の娘も人間なんですのよ♪しばらく会ってはいませんが……貴女方の知り合いかもしれませんね」

特に恐れを示すこともなく淡々と誇らしい様子で自分の思いを伝える彼女は寂しさを見せるが、自慢気な様子で娘を紹介した。だが、ここは襲撃地だ。


マサキ「……派手に騒いだし、またいつお友達が現れるとも限らん。ここは俺達が後始末をしておく。そいつらが大事なら早く行くことだ」

そう告げると彼女は、迷うことなく一礼し馬車に戻る。そして『お二人に神のお導きありますよう』と告げ、去っていた。


マサキ「ひどいお人好しの女がいるもんだ。アイリス以上だ。……さて……こいつら……」

気になっていたことがある。倒れたこの王国軍兵士たち…

どこかで見たことがあると思ったらやはり。


マサキ「……とっくに壊滅したはずの部隊の連中が何でここにいる。こいつらは開戦当初やられたはずだ。

オフェリア。貴方はどう思う?」

魔王軍幹部の中に『消した』敵を操作する固有能力持ちはいないはず。

ウルフヘイム、エルメス、ヴィレーヌ、ベアトリーチェ、リリス、リーゼ。

考えられるとすれば…リーゼが『禁術』に手を出したか。もしくは、ヴィレーヌあたりに高度に魔法再現された『幻覚』か?

ーーーー

オフェリア「気にしないでいぃわよ…マサキの実力を見れて、私の力も見せれたし…でもぉ…気になる点がいろぃろとあるわねぇ…。」

魔眼である右目を閉じ、再び眼帯をし…

マサキに気にしなくて大丈夫といいつつ、私は顎に手を当てて少し考える様子を見せ…

んっー…マサキが病み上がりにしても魔法が発動しなかったり、魔法の効力がちゃんと発動しなかったりと変な点が多い…
さっきの魔物が特別だったのか…うーん これだけじゃ正確な答えは出せないわねぇ…。


オフェリア「ふぅん…やっぱりあなた魔族だったのね…しかも子連れかぁ…
そぉの慕ぃよぅ…人攫いとぃうわけではなさそうねぇ…馬車も守ってたしぃ。

……人間と魔族の共存…ね…。
あぁ はぃはい…あなたたちこそ気をつけてぇ避難しなさぃよ。」

ユラミルティの正体については 何となくわかってたと言いながら、私はマサキの横に並んで話に加わって。

自慢の娘と共存の話を聞かされ、私の表情が曇るのが自分でもわかった…

今でこそ身分を隠して人間として彼らと生活を共にしてるが、私の正体を知ったら…
きっと親しい人たちのほとんどが、今までの人間同様 私を化け物って呼ぶんだろうな…
うん、今は考えないようにしよう…そう思いながら、私はユラミルティに注意を呼びかけ。


オフェリア「ものずきなぁお人好しは、人間 魔族どちらにもいるものなのねぇ…。

ふぅん…開戦当初にねぇ…そぅねぇ…うーん…ごめん、ちょっと現時点ではわからないわ…。
あくまでぇ推測でしかぁないけど…
死人を操る魔法…
消した人物を正確にトレースしたホムンクルス…
または消したように見えて別空間に閉じ込められ、そのまま連れ去られて洗脳されてた…
って感じかなぁ…。」

フォウおじぃさんとユラミルティのお人好しを知った私は、マサキのつぶやきに うんうんと頷いてみせて。

マサキの話を聞いて、少し考え込む様子を見せたあと…
魔族幹部とかの能力知らないのよ、と言いつつ私は推測を話してみて…。
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