騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第111話 魔眼の踊り子

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まどろみの中、声が聞こえる。

「人の子よ。その身に、我が力の写し身を取り込んだ愚かで傲慢な子よ。

何故、更なる力を。我が『闇と時』の力を求める。

そなたは既に明るく希望に満ち溢れた道を自ら閉ざし、闇の道を選んだ。

だが更なる力を求めんと『契約』を求めるか。

何故、そこまで求める。何故、傲慢さが収まらぬ」

姿は影がかかっていてよく見えないが周囲の情景からあの時の祠だということは、理解できた。小さな少女が泣き晴らした目もとを上げ、答える。


「……もう居ない友達と。この世界に住む皆を……私が見た未来から助けたいんです。

でも、私には力がありません。剣はまるっきりダメだし、魔法は唱えても発動しないし、魔力も人より全然少ない、運動もからっきし……。

何より、私は臆病で……だから。先生を守れず、友達も守れなかったんです……

私はみんなに助けてもらって、ここまで生きてきました。なのに……私は……貴方様のお力を取り込んでも、まだ友達と、皆を助けるための力が足りません」

最後の光景が走馬灯のようによぎる。自分の情けなさに涙が溢れそうになるが、ギリっと歯を噛みしめて堪える。


「だから……今度は私が友達と皆を助けたい。助けたいんですっ!!お願いしますっ!何でもやりますっ!何でも差し出します!」

祠の中の光は叫びに対して点滅を繰り返し、闇色の光は明るさと暗さの明減が見られたが、やがてそれは止む。


「……そなたの覚悟。しかと受け止めよう。しかし、『契約』には『代償』も必要なことはわかっておろうな。

すでに『魂』は闇に染まった暁には我に捧げると魔具を通じて契約している。次は何を捧げるのだ」

「……私の『寿命』と、『光と希望に包まれた全ての未来を』」

闇色の光が点滅を繰り返す。今度はそのまま点滅を繰り返しつつも、闇色の光が大きくなり少女の身体に宿った。


「『契約』の成立を宣言しよう。

代償を捧げた代価として、貴様には『寿命』と引き換えの『再生』の力。

制限はあるが、時間を支配し干渉する力を『回数』つきで与えよう。

孤独と闇と絶望と引き換えに。

貴様は人類史上、比類なき力を得たな魔女になろう。その力を持って栄えるも、滅ぶも好きにせよ。

『禁忌の魔女』よ」


………。

マサキ「っ……!ここは……」

まどろみの夢から目を覚ますとまったく見覚えのない。土とゴツゴツした壁が広がっていた。

洞窟、だろうか……


マサキ「痛っつ……俺は、まだ…生きてるみたいだな……」

身体を動かすと走る痛みに顔をしかめながらも辺りを見回す。あの時、魔力と気力を搾り出して攻撃したあとから記憶がない……あの後、何があってここに……

というか、ここは何処だ。

ーーーー

「……まったくぅ…いくらフォウさんの頼みでも、なんで私が魔族領に単独潜入なんて危ないことしなければならないのよぉ…

まぁ仕方ないかぁ…こんな深部まですぐに来れるのは私だけよね…
それになんでか知らないけど、この子の寿命 絞りカス程度もなくて、どのみち適任は私しかいなかったかぁ…
といぅかあの人 知ってて私を行かせたでしょ…ほんとぅに食えないおじぃさんだわ…

はぁ 暇ねぇ…この子は起きないし…とぃうか やり遂げた顔して眠っちゃって…私もそんな表情 一度でもできる身体ならよかったのにね…
ほらぁ はやく起きないと噛み付いちゃうぞ?」

洞窟の中 マサキの他に、金髪で右目に黒の眼帯をつけた女性がいて、彼女はぐぃーんっと身体を伸ばし、暇そうにしながらつぶやいて。

暇を持て余した、踊り子 衣装の彼女は マサキの寝顔を覗き見し…
少し悲しそうな表情をさせた後、つんつんっとマサキの頬を指でつついて。


「あらぁ…やっとお目覚めかしら、魔女さん? 安心しなさいな、結界を張ってあるから魔族たちに見つかる心配はないわ。

覚えてるかしら? 魔女さんは敵さんに勝ったんだろぅけど、そこで力尽きて倒れてたの。
そこに私が間に合って 魔女さんを助けてあげたんだけどぉ、魔女さん 全然 目を覚まさなかったんだからぁ…
まぁ 寿命がない状態からの治癒だったから、時間かかったのは仕方ないんだろうけど。」

目覚めたばかりのマサキに、金髪の彼女は手のひらを軽くひらひらと振っていて…
状況がわからないであろうマサキに、彼女は一から順番に説明していく。

彼女は独特の言葉遣いで、マサキに寿命が残されてなかったことを知っている風に話…
マサキが自身の確認をすると、尽きていたはずの寿命がなぜか回復していて。


「んっー…そういえばぁ 魔女さんって名前なんだっけ? フォウさんに聞いてたけど忘れちゃってさぁ…。
あぁ 私はギルド所属のAランク冒険者 オフェリアよ。『魔眼の踊り子』っとか言われてるわねぇ…まぁ しばらくの間よろしくねぇ。

実は魔女さんをタイミングよく助けに来れたのは、ギルドマスターのフォウさんからの指示でねぇ…
きっとあの人、魔女さんが敵さんと相撃ってこうなるの予想してたんじゃないかなぁ…
まぁ そういうわけでぇ、魔女さんは助かったのでした…あぁ まだ寝て安静にしときなさぃよ? 身体 完全には治っていないんだから。」

マサキの名前を尋ねつつも、金髪の彼女は自己紹介をし、ここにいる経緯を話して。

オフェリアと名乗る彼女は水とパンをマサキに差し出し、休んでなさいと言って…
しかしマサキにとって一番重要な、肝心なことは一切 説明していなく。

ーーーー

マサキ「…………マサキ。マサキ=ジェイド=サーティナーだ。呼び方は好きにしてくれ」

目の前にいる女性を見てみればその佇まいから実力者であることはすぐにわかった。

……敵であれば俺を生かしておくはずはないのだろうし、取り敢えずは信じてもいいだろう。水と食料をひとまず受け取り自分の前に置く。

あのお人好しの世話好きじいさんがやりそうなことだともわかる。だが…


マサキ「いろいろ聞きたいことはあるが……どうして俺は生きてる?

俺はあの時、『消えた』はずだ。」

そうこうしている間に闇の魔力が再び自分を包み、ダメージを再生させるのがわかる。

俺の回復能力は『再生』魔法。自らの『寿命』と引き換えに『常に』戦いに最適な状態へと身体を活性化させる、闇の恩恵。

『寿命』を使い切った俺は消えるはずだった。しかし、この再生が発動している感じから、どうやら3年程度の寿命が残されているのを感じる。

真の治癒魔法なんて『都合のいい』奇跡の魔法は神の祝福を受けたサクヤ=ウギしか使えない。

俺の『契約』に干渉できるはずもない。なら、こいつは一体どうやって俺を復活させた。

こいつは俺のことを何処まで知っている。


マサキ「……まあ……いい。手間をかけさせて悪いな、『魔眼の踊り子』。だが、俺には時間がない。

あの兵器と魔王軍のNo.2を退けたとはいえ、『棺』の『覚醒』は迫っている。

俺の魔力供給が弱まった今、キール=ゴールドウィンに施した封印も心配だ」

立ち上がりながら自分の服装に気づく。

いつも纏う黒いローブはボロボロの布切れにされてしまったため、魔術師衣装の自分だ。どこかでローブを調達しなければ。

転移魔法を展開しようとして……やめる。

そういえば自分は彼女に助けてもらって、謝りこそしたものの……お礼は言ってない。

『助けられるのは』、遠い昔ぶりだからか。

1人の戦いが随分長かったからかはわからないが。

どうやら、自分は人としての礼儀も忘れかけているようだ。

彼女に振り向き、いざ話掛けようとすると何となく戸惑いと気恥ずかしさを覚え、頬が熱い感覚がわかる。いかん。平静に行かなければ。


マサキ「あー……コホン。素っ気なくてすまない、オフェリア。どうも俺は……こう。人付き合いってのが苦手な口みたいでな。親友からもよく不器用と言われる。

だが、感謝はしているんだ。

助けてくれて、ありがとう。

俺にはどうやったらお礼を返せるかはわからないが、だがいつか礼は返すつもりだ」

表情を隠せた、だろうか。ひとまず、自分の気持ちは伝えた。後は受け取り側の問題だ。伝わるかどうか。

転移魔法陣を発動させるため、指をパチン。と鳴らす。


マサキ「ん……?」

術が発動しない。何度も指を鳴らすがそれは同じだ。

瞳を閉じて体内の力の源『呪怨の魔具』の状態を確認する。

7つの魔具のうち、『転移・状態異常付加』の能力を司る魔具が消耗しきっている。ウルフヘイムとの高速戦闘において使い過ぎたことが原因だろうか。

この様子だと4日は力は元に戻らないと見られる。


マサキ「はぁ……ウルフヘイムとのデートで、はしゃぎすぎたな。これじゃ移動1つできん。忌々しい…」

苦い表情で独り言がでる。さて、走っていくには馬鹿らしい距離だ。どうやって移動したものか。

ーーーー

オフェリア「あぁ そういう感じだったかしら、急いで出てきたからちゃんと覚えれてなかったのよねぇ…それじゃあ マサキって呼ぶわ。

…あら…なるほどね、そうやって寿命を減らしてたわけだ…
あぁ 言っとくけど私はマサキのことなぁんにも知らないわよ、フォウさんに容姿とか少し聞かされてただけだし…
マサキが生きてるのは…まあ企業秘密? とかいぅやつでお願いするわ。」

マサキの名前を聞けて、私は彼女のことをマサキと呼び…
そして彼女の纏う闇の魔力の動きを見て、彼女がなんで寿命が減っていたのかわかり…

マサキについてはフォウから少ししか聞いていなかったと話し、なぜ生きてるのかは秘密…と 私は軽く苦笑いしながら言って。


オフェリア「んっ 気にしないでいいわよ、私は自分の依頼を果たしただけだから。

? 棺に覚醒…とキール=ゴールドウィンに封印…? 何よそれぇ…私が知らない重要そうな話ねぇ…闇の魔力といい、マサキは何者で何をやってる人なのかしらぁ?」

マサキから聞きなれない言葉が何個か飛び出してきて…
私は首を傾げたあと 興味と少し心配の混じった目で、マサキのことを聞いて見て。


オフェリア「どぅしたの? ってあら…ふぅん…フォウさんから言葉の悪い子って聞いてたけど、なぁんだ 実はいい子だったのね…♪

あら 次はなぁに? ふぅん 転移魔法ね…マサキってそんなことまで出来るんだ…
んー……はぁ…まぁ仕方ないかぁ…今は非常事態だしね…それに私、マサキに少し興味が湧いたから今回は特別…だからね?
まずはそれを食べなさぃ、移動手段はこっちで用意してあげるから。」

マサキにお礼を言われ 私はきょとんとした後、フォウに聞かされてた印象と違うと話し、興味がある目でからかうように微笑み。

マサキから移動手段がないことを聞かされ、私は少し考えた後 軽くため息をつき…
渋々といった感じで移動手段は用意すると言いつつ、マサキにも興味が湧いたから 特別にとも口にして…。


………。

オフェリア「さぁて、ここなら呼び出しても大丈夫かな…あっ 最初に言っとくけど、この事は極力 周りに秘密だからねぇ?

……来なさい…レグルスにフェンリル…!
…ほっと…ほぉら マサキも早くその子に乗りなさいよ…何か聞きたいことあるなら、走りながら質問 受け付けてあげるから。」

洞窟から外に出て 広い場所を確保し、私はマサキに秘密だからね? と約束させ…
身体から闇の魔力を溢れさせると、その魔力で召喚を試みて…

すると瞬間だけ 熱さと寒さがその場に溢れたのち、毛がもふもふした精霊獣…
レグルスと呼ばれた緋色の獅子と、フェンリルと呼ばれた蒼色の魔狼が私の左右に現れ…

私はフェンリルの背中に乗り、ぽんぽんと魔狼の背を叩き、マサキにも同じようにレグルスに乗るようにと促して…
それに加え 先程の寿命などの質問も合わせ、マサキからの質問も特別に受けつけてあげると話して…。
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