騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第106話 勅命

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「……であるからして、我々の戦力は既に出し尽くしており他に兵力を出す余裕はありません」

「我々は教会騎士団。必要以上の戦いは神の思し召しに反しますゆえ……」

軍議が続き各勢力の高官が円卓のテーブルを囲い会議をする中、膠着状態の様相を呈している。

そんな中、議席に座っていた高官たちはカクンと糸の切れた人形のように意識を失いあるものは机に突っ伏し、あるものは椅子からバタンと転げ落ちる。

気づけばサクヤ以外のものは意識を失ってしまっていて、通常では信じられないほど髙威力の『意識昏睡』魔法がかけられている状況が前にある。

直後に円卓のテーブルを踏みつけ黒いローブにフードを深くかぶったものが現れ、サクヤの方を向き直る。


「教会騎士団筆頭サクヤ=ウギ。俺と一緒に来てもらおうか」

クラリッサ「やはり……お嬢様っ!御下がり下さい!
その闇の魔力……あなた、何者ですかっ。教会騎士団本部の結界を破ったのですね。ここを議事の場と知っての狼藉と見ました」

サクヤから強力な魔法加護を得ているクラリッサが扉を蹴り破り現れ、彼女を庇うように前に立ち油断なく闇の魔力を纏う侵入者を警戒する。

ーーーー

サクヤ「(ふぅ…まったく…うちもそうですが、どちらもお堅いといいますか…今は言い争っている場合ではないでしょうに…。)

あの、ひとつよろしいでしょうか……っ…今のは…それに…これは…。」

自分が所属しているとはいえ 戦争の最中、それなのに必要以上の戦いを…っと言っている上層部に、私は心の中で呆れていて。

溜息を漏らしたあと、私が意見しようとし…
だけどその時 魔力の気配を感じ、それを感じた瞬間から私以外の人が倒れ 驚き。


サクヤ「……あなたは…? あっ…クラリッサ…いえ あなたもお下がりなさい…結界破り そして先程の魔法…この方の魔力は底知れません。

あなたと一緒にですか…? なるほど、私が目的というわけですか…その理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

声からして女性だろうか? 私の前に現れた彼女に名前を尋ね…
そうするとクラリッサが私を庇うように部屋に入ってきて、私はクラリッサに言葉をかけながら 謎の女性に質問して。


フォウ「……一瞬 意識がとんでおったか…ふむ…この状況は…? …それに…おぬし どこかで見覚えが…。」

謎の女性の魔法を受け 気を失っていたギルドの長 フォウだったが、少しして頭を手で軽く押さえながら立ち上がって…

彼は今の状況を確認しながら、謎の女性をどこかで見たことがあるような…と話しかけて。

ーーーー

「なるほど……お前もいたか。フォウ=ウィング。サクヤもそうだが、平和ボケしたお前など問題にもならん……だが、今日はその為に来たんじゃない」

クラリッサ「…っ!!お嬢様、あいつ。人体に何か『取り込んで』いますっ。恐らく、『呪怨の魔具』…それもかなり強力なもので、複数。

それに、他にももっと強い『何かが』……あります!信用なさらぬようにっ」

クラリネッサの片方の瞳がモノクル(片眼鏡)越しにエメラルド色に変わり、侵入者の情報を伝える。サクヤに下がるように言われつつも、護衛として退けないとその場は動かず。


「なるほど。…その片眼だけの深いエメラルド色の瞳…『看破の瞳』か。

お前はヴァングネス家のものだな。……サクヤ。いい犬を飼っている。だが…少し黙っていろ。それ以上、見られても困る」

パチンと音が響くと、クラリッサを加護していたサクヤの魔法防御を簡単に貫いて『昏睡魔法』が作用し、その場に意識を失い崩れ落ちる。


「さて…どこまで話したか。いや、まだ何も話していないか」

名前を名乗ることもなくクラリッサが崩れ落ちるのを確認すると、思い起こすように2人に振り返る。


「……俺はここに長居しておきたいわけじゃない。用件だけ話す。
お前が居たのは想定外だが、聞きたければ勝手に聞け。排除するのも面倒だ。時間もない。

信用するかどうかはお前らの勝手にしろ。」 

パチンと指をもう1度鳴らすと辺りが闇に包まれ、足元が巨大な王国風景に変わる。


「魔族領土奥地に、荷魔高度粒子砲撃施設。

簡単に言うと『超遠距離魔法爆撃』が可能な建造物が完成した。

発射されれば王国は火の海だ。だが、いつ発射されてもおかしくない」

魔族でも幹部クラスしか知らないはずの情報、しかもスケールの大きな話を淡々と話し始める。


「俺は今からこいつを1人で破壊しに行く。しかし、恐らく幹部の中でも強力なやつが待ち構えているはずだ。

その戦闘の最中では、いくら俺でも発射された爆撃を防ぐことなどできん。そこでだ」

フードをもう1度深くかぶり直しつつサクヤに向き直る。


「サクヤ=ウギ。お前なら王国全土を守護する強力な結界を張れるだろう。いつ発射されてもいいように準備をしておけ。

失敗すればまとめて吹き飛ぶ。万全の状態でな。

じいさんは俺が抜けたことで戦力が瓦解するだろう南部防衛線でも援護してくれ。どこもヤバいが、リュネメイア隊もジリジリと押し返されてる」

ーーーー

フォウ「ほぅ…その生意気な話し方と態度…どこかで会ったかと思ったら、あやつの連れであったか…くく 言いおるわい…。」

サクヤ「…? フォウ殿はこの方を知って…?
クラリッサ…? …なるほど…確かにあなたの言う通り、複数の何かを感じますね…。」

ヒゲを手で撫でながら、フォウ殿は謎の女性と話していて…どうやらお互い知ってるような感じで、私はフォウ殿に尋ねる。

クラリッサからの情報で私も謎の女性の気配を探ってみて、クラリッサほどではないが私も彼女のなか から不穏の気配を感じて。


サクヤ「…クラリッサは飼い犬ではありません、私の大切なパートナーです…っ…クラリッサ…! …私の魔法を容易く…それで、私に話とは…?」

クラリッサは大事なパートナーと言うと…
謎の女性の力でクラリッサが気を失ってしまい、私は倒れそうになったクラリッサを抱きしめ受け止めて。


サクヤ「遠見の魔法か何かですか…っ…これは…超遠距離魔法爆撃ができる兵器…こんなものいつの間に…それになぜあなたがそれを知って…?」

辺りの風景が変化し、その光景と話しから 私は驚きの表情を見せ…
それと同時になぜそれをあなたが知っているのかと、尋ねてみるが答えは返ってこなく。


サクヤ「……なるほど、それが私に会いにきた理由ですか…確かに私の『聖剣』を用いれば可能です、そのかわりにそちらに程いっぱいになるでしょうが…。
…いいでしょう、あなたが何者かは知りませんが、その依頼 受けましょう。」

フォウ「リュネメイア殿の方か…シリウスのやつを呼び戻そうにも、あやつの方も手一杯だろうし…いいじゃろう、そちらの方は儂が行って相手をしてこよう。

……あと余計なお世話じゃろうが、おぬしが一人で行くことは あの娘は知っておるのか?
なんなら おぬしの方は 儂が行ってやってもいいぞ?」

謎の女性の正体はわからないものの、彼女がここに現れたリスクも念頭に入れたところ、その話が真実だと証明できるもので、私はその依頼を受けて。

フォウ殿は謎の女性の依頼を承諾するも…その正体を知っているのか、彼女と話をしていて…その表情は真剣なもので。

ーーーー

「じいさんも相変わらず甘いな。だが一体誰のことを言っているのか俺にはわからん。

それに俺はどの任務にも『勅命』を受けて動いている。この任務も元より『俺が1人で行け』とのお達しだ。例外は認められん」

フォウの声に特に口調を荒げることなく、淡々と語り自分が3勢力より上位の指揮系統で動いていることを暗に仄めかす。


「……俺は行くぞ。せいぜいしぶとく生き残ることだ」

転送魔法陣が展開され、やがて黒いローブ姿の人物は立ち消える。その場に昏睡していた人物は、次第に眼を覚まし始める。


クラリッサ「……う、お嬢様……っ!す、すみませんっ。遅れを取りました……」

自分が抱き締められていることに気付いて慌てて直立すると少し顔を曇らせ素直に謝罪をした。

ーーーー

フォウ「まあ おぬしなら あの娘には言っておらんと思ったわ…
儂が相変わらず甘いのなら、おぬしも相変わらず一人で抱え込むやつじゃわい…。

それに勅命か……まあよい、こちらは儂らで何とかするからおぬしこそ生きて帰ってこい。」

謎の女性の言葉に、フォウは少し呆れた表情 そしてジト目をしながら言い返し…

そしてヒゲを手で撫でながら 何かを考え込み、息をひとつ吐いたあと、生きて帰ってこいと 去る彼女に言葉をかけて。


サクヤ「クラリッサ 目を覚ましましたか…いえ 大丈夫ですよ、彼女が底知れぬ相手だったのですから。」

クラリッサが目を覚まし 謝るのを見て、私は大丈夫ですよと優しく声をかけて…。
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