騎士学生と教官の百合物語

第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第99話 覚醒の兆し

ー幕間ー

ウルフヘイム「おかしい……」

力の差は歴然だ。剣技は大したものだが。

僅かに持たせたものも束の間、魔法爆弾の雨霰を浴びせてやって、こいつはボロ布のように転がった。

鎧からはおびただしい血液が流れ落ち、臓器が損傷していてもおかしくない。足はガクガクと震え、口元からは吐血している。しかし


ウルフヘイム「なぜ、動ける……？」

吹き飛ばされ、殴られ、それでも尚向かってくる。

人間はここまで固くないはずだ。

それに剣の一振り、一振りを重ねる度に剣筋は素早く、威力は増し、こいつを包むオーラは禍々しさを増している。


キール「……が……より……た……て……っする……！ 」

ブツブツとうつむき様に何かを呟いた女の姿が暗い光りを帯びたと感じた瞬間、凄まじい衝撃波が女を中心に我が軍を襲った。すぐに最硬防壁で防ぐ。

やがて煙が晴れ、我が軍の半数以上が壊滅し、恐れおののくのを横目に女を見る。

女の額や頬、腕や首もと等には魔族特有の古代文字が浮かび上がっている 。


ウルフヘイム「なるほど……女。いや貴女様が『棺』だったか」

思わぬ収穫だが、いま敵として認識されている以上、ここから先はこちらは『壊滅』の危険性がある。

現に彼女からは白い煙が立ち上ぼり、たちまち傷が癒えているのが確認できる。対照的なのは、その瞳がどこまでも闇を讃えているところだが。

ウルフヘイム「総員、撤退だ。いまは戦うな。いずれお迎えにあがる時が来るその時まで」