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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第95話 救出作戦【女騎士シャロン】
しおりを挟む戦争が開始され半年。
魔族軍の電撃戦により、1部の実力者を擁する部隊を除く準備不足の王国騎士団、教会騎士団は敗戦の連続。
王国の国土面積は60%まで縮小し、四方を魔族軍に包囲される孤立状況に追い込まれていた。
東部戦線グレートブリッジに向かう、キール隊は道すがら魔族部隊の襲撃を受けながらも、馬を使って一月ほどでグレートブリッジに近い砦に到着した。
キール「痛たた…長距離の移動はお尻が痛いわ。取り敢えずお休みしたいところだけど……」
砦内に到着するとどの兵士も疲労の色が濃い。負傷した兵士だらけだ。空気もどこか重苦しいものがある
「お待ちしておりました、キール隊長、オーレリア副長。ここの部隊の指揮官です。……長旅でお疲れでしょうが、どうぞこちらへ」
壮年の男性士官に導かれ参謀や指揮官のみが入れる作戦部で軍議が始まる。
「早馬で伝わっているかもしれませんが……戦況は思わしくなく。アメット隊、グーラ隊は壊滅。
我がタイロン隊の損耗率は40%。次の攻撃には耐えられません。貴女方が間に合って本当に良かった」
キール「よくここまでの寡兵でこの期間、耐えられましたね……」
戦図を見るとグレートブリッジを包囲するようにいくつもの部隊が橋を囲んでいる。対してこちらは、壊滅間近のタイロン隊と、あたしの部隊のみ厳しい戦いになる……。
「いえ、私どもも危なかったのです。とてつもなく強い敵が現れ、最早これまでと思ったところ……ある女騎士が来て『時間を稼ぐ』と、我々を助けました」
キール「その女騎士はいまどこに……?」
「それが交戦したきり連絡がありません。やられたか……囚われたのかと」
キール「ふむ。……オーレリア心当たりはある?」
ーーーー
オーレリア「……ふぅ…それに加え 魔族による襲撃も昼夜関係なくあったからな、より疲れた移動だったな…まあ 彼らは私たちより疲労が蓄積していそうだが…。」
馬から降りたあと キール隊長と会話しながら、私は真剣な表情のまま 砦内を見回し…
そしてそうしていると声をかけられ、私たちは作戦部に案内され。
オーレリア「ふむ…とてつもない敵に女騎士か…敵についてはわからないが、女騎士については戦い方や容姿からの推測になるが…おそらくはシャロンという女騎士だろう…。」
キール隊長たちに聞かれ、私は自分が知っている女騎士の情報を話していく。
ーーーー
キール「ふ~ん…シャロンね。
あたしは直接会ったことはないけど名前は聞いたことはあるなぁ……
さて、どうしよっかなぁ……話を聞いて、状況を見るに……まともにやり合えば敗北は目に見えてるし~……いくらあたしらでもこりゃ無理か」
戦略図面を見るに味方部隊と敵部隊の戦力比は5倍ほどの開きがあり、更に長距離移動で疲労している自分の隊と、壊滅間近のタイロン隊のみでは負けることを言い切り悩む様子を見せる。
キール「援軍も期待出来ないし……作戦やるにしても…う~ん……」
各戦線で様々な部隊が激戦を繰り広げ、援護を出す余裕がないのを念頭に置きながら腕組みをしながら、頭を働かせる。
キール「よし!逃げよう、逃げるが勝ちだ。コレは無理」
あっさりと諦めの言葉を告げる言葉に指揮官の男は怒りの声を挙げる。
「何を弱気な!それでも貴女は王国騎士団副団長ですか!ここで引けば王国の重要な補給線が絶たれるんですぞ!それに散っていった兵士に顔向けが出来ません! 」
キール「じゃあ、残りの兵士もアンタは地獄送りにするつもり?」
それまでの明るい態度から一転表情を変えると、敬語も捨ててぶっきらぼうに疑問をぶつける。
キール「戦力差はアンタもわかってるはず。それに部下たちが消耗している今、勝てる見込みが薄いことも。
あたしから言わせりゃ、『名誉』も『王国』も、『任務』もどうでもいい。
あたしら部隊を任せられている人間の最も重要で守るべきものは1つ。『命』を守ることだ。それには、王国の民だけじゃない。部下の命も入ってる。
アンタもそれがわからないほど、愚かでもないでしょ?」
誇りと名誉を重んじるはずの騎士としては異例のキールの価値観を告げられた、壮年の指揮官は押し黙り、やがて頭を下げる。
そして頷いて彼女の指示に従うことを示し。
キール「ーーとっ、はは♪悪いね説教臭くなっちゃった。とはいえ、まだ生きてる可能性のある人間なら話は別だ。さて……」
図面を眺めシャロンが最後に目撃された砦付近を眺めると、小さく頷いてオーレリアを見つめる。
キール「オーレリア。ここは東部戦線の最前線だけど、防衛ラインをまだ戦略が充実している第5砦まで下げる。
端的に言えば逃げるから、全力で♪
ただ逃げればどうせバレて追撃が来る。それならこうしよう」
図面上にいくつかの駒を置いてそれを動かして説明を始める。
キール「部隊の最後尾にアタシがついて、被害を減らす。ま、殿(しんがり)ってやつ。
その追撃してるときは、敵の戦力は間違いなく本隊に向くでしょ?
その隙に、オーレリアが手薄になった敵砦に押し入ってシャロンが生きてれば助けてきてほしい。
それで別ルートで、第5砦に帰ってきて。
どう?出来そう?」
最後尾を守るという危険な任務を実行することを告げつつも、オーレリアを信頼してこその重要任務を打診して、彼女の返答を待つ。
ーーーー
オーレリア「私も直接の面識はないが、魔法騎士として優秀だと聞いている。
キール隊長が強いのは知っているが…まあこの状況はさすがにな…。」
シャロンの話をしながらも今の置かれてる状況をあらためて確認し、私も隊長と同じ意見で、だけど何かいい手はないかと顎に手を当てながら考えて。
オーレリア「む……ふっ…。
(私の出る幕はないか…やはり隊長はすごい人だ…。)」
怒る指揮官の散っていった兵士たちという言葉には共感を覚えるが、このまま続けたら 彼らの死が無駄になると言おうとして…
だがその前にキール隊長に口にしようとしていた言葉などを言われ、私はキール隊長の部下になれてよかったと思いながら見守り。
オーレリア「ああ 隊長の言う通りそちらに向くだろうな…ふむ なるほどな…了解した、こちらは私に任せるがいい。
私の方も危険が多いがそちらの方がより危険だ、あまり心配はしてないが十分に用心するがいい。」
キール隊長の作戦を聞き、私は二つ返事でそれを了承して…
心配する言葉はかけるも不安はなく、隊長なら切り抜けるだろうと、キール隊長のことを信頼してみせて。
ーーーー
キール「なぁに、あたしは死なないよ。この剣にかけてね。何て言ったって、今の王国騎士団を正常な形に戻すって野望があるから。
あたしの野望のその先を見たけりゃ、オーレリアもくたばらないように♪戦ってのは『命』がありゃ勝ちだよ。
さ、悪いけど。準備が整い次第すぐに出発して。敵さんいつ襲撃をかけてきてもおかしくない。この距離なら1日もあれば着くはずだし。
撤退開始は明日の明朝開始するから、敵の様子を見て上手くやってよ」
ポンポンと背負った蒼の大剣を示し、副官の腕に信頼を置いているのか特に心配を思わせるような声はかけず、すぐに出発するよう促す。
オーレリアが退室するのを見届けると、消耗したタイロン隊を囲うようにキール隊を配置する陣形を組み立てながら更に準備を進め、時間は過ぎて行った…。
………。
部隊が砦を放棄し足早に出立するのを見届けながら、銀筒に入った液体の『薬』を飲みつつ、砦上で1人愛剣を磨く。
その刃は鋭く研ぎ澄まされ、朝日を浴びて自分の顔が刃身に映る。まるでこれからの戦いを待ち望んでいるかのようだ。
キール「うへぇ……すんごい数。アレだけの数だと、そう長くはもたないなこりゃ。本気出さないと、死んじゃうわ。
それに気配からして……なかなか強い奴もいるし。
こんなとき砲台役のマサキか、高名な魔術師が居てくれたら楽なのに……」
土台無理な話とはわかっている。高名な魔術師は、騎士を主体とする王国では数えるほどしかおらず各戦線を支える貴重な戦力。
マサキはここ数ヶ月行方知れずだが、大方、秘密任務にでも就いているのだろう。期待はできない。
眼前の荒野を埋め尽くす軍勢に、小さく溜め息をつき立ち上がりながら蒼の剣を背負う。
今ごろ、オーレリアが砦にたどり着いているころだろう。
ただ、シャロンを救出するにしろ、部隊の殿を守るにしろ、時間が足りない。
大きく跳躍して、砦から飛び降りる。
敵の軍勢を前に蒼の剣を構え、小さく息を吸う。
簡単な話だ。逃げる余裕を残しつつ敵を斬って斬って斬りまくればいいだけ。
キール「さあさあ!お立ち会い!王国騎士団の副長様のお成りだ!この首高く付くけど、生憎渡す気はない!
アタシの剣に斬られたい奴から……かかってきな!」
研ぎ澄まされた殺気に奴らは一瞬怯んだものの、野太い咆哮をあげて一斉に駆けてきた。
さあ……楽しい戦いの始まりだ。
………。
オーレリアが訪れた魔族軍砦では、静けさが満ちていた。
砦からは声1つ聞こえず、入り口の見張りの低級魔族2体もアクビを躊躇いもなく出す。
上手くキールの読みが当たったのか手薄なのは間違いなさそうで、その砦の中にある1つの建物。
植物の蔦に覆われたその建物からは、不気味な魔力反応が発せられていて、時おり怪しい魔力光が点滅を繰り返している。
ーーーー
オーレリア「ふっ…そうか…なら私も死なないだろう、なんせキール隊長の野望を手伝うのが私の使命だからな。
私の方はそう簡単にはくたばらんさ…なんせキール隊長の返事をまだ聞けてないからな。」
キール隊長の野望実現のために死なないと宣言し、そして隊長からの返事をまだ聞けてないからと微笑みながら言って。
了解と返事をし、準備のために私は部屋を後にして……。
………。
オーレリア「……ふむ…キール隊長の読み通りか…気配からするにほとんどの魔族たちは楽だろう…だが…。
…あそこから強い気配を感じる…あまり近寄りたくないが、シャロンと対峙した魔族のことを考えると多分あそこが当たりだろうな…よし、いくか…。」
砦についた私は見張りの魔族を確認し、そして気配からも砦内部には強い敵がいなく、また数も少ないのを確認して…
しかしある砦の中から不穏な気配が察知でき、私は気を引き締め、身を隠しながらその砦まで潜入を開始して……。
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