騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第6節 過去編 エリシアとマリスミゼル②

第79話 ギランバルトとお付きの女性

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騎士学園戦闘訓練場。
開けた大きなグラウンドには、学生同士の模擬戦闘訓練が始まっているため、ほとんどの生徒が集まっていた。

中でもアイリス……それにリュネメイアとか言ったか。末の後輩たちは粒揃いが多いようだ。見事な剣技に魔法の応酬であった。


マリスミゼル「やはり、全学生と教官が一同に会するというものは壮観です。そうは思いませんか、エリシア?」

本日の自分の対戦相手となる彼女に話をふる。

私としてはエリシアなら心置きなく戦に興じることができるため、下手な相手よりは気楽なものだ。


マリスミゼル「ご覧なさい。王国騎士団に…教会騎士団、それに…ふふ、皇太子殿下に姫殿下までお見えですね。
まあ、この試合は私たち学生の卒業後のスカウトの役目も兼ねている…と言ったところでしょう。あら、緊張しているのですか?♪」

一段高く備えられた来賓席には、各機関の団長や王族が軒並み身を連ね、御前試合という形になる模擬戦闘戦を前に彼女に笑いかける。

ーーーー

エリシア「あ、ああ そうだな…後輩たちの練度も高い…特にあの2人はすごいな…あの頃の私だとあの域には達していなかった。」

マリスに話をふられ、私は緊張した様子で答えていく。

アイリスとリュネメイアという後輩を見て、あの歳の私より強いなと口にして…なぜなら"今の戦闘スタイル"になる前だからで。


エリシア「それは…うん 少し…いや かなり…かな…。
依頼とかで騎士の仕事とかしたりしたことはあるけど、今までこんな大勢が見てる中で戦ったことないからね…
マリスは緊張してないのか? 普段と同じ…いや 少しテンションが高いか?」

笑みを見せてくれたマリスに、私は緊張しているとこくりと頷き。

でもマリスと会話していると少し緊張が和らぎ、私も笑みを浮かべながら会話を続けて。

ーーーー

マリスミゼル「いえいえ……私も緊張はしています。ただそれ以上に…貴女とこのような大舞台で剣と杖を交わらせることが出来るのが楽しみなのです♪」

ご機嫌な様子で杖を見つめ、エリシアに笑いかける。そのまま時計を見つめると、開始時間が迫っていることに気付く。


マリスミゼル「とにかく。せっかくの機会です……緊張するなんてもったいない。私と貴女だけの時間ですよ?楽しみましょうね♪」

『それでは』と手を軽く振ると、ゲートに向かって彼女は小走り気味に一方のゲートに向かう。

彼女の姿は人混みに紛れ、すぐに見えなくなると入れ替わりにエリシアに気付いたのか、初老の男性が通り掛かる。


初老の男性「おぉ?君は…エリシア君じゃないかね!聞いておるぞ、この前の護送任務では勇敢な活躍を上げたそうではないか。いやー!学生だというのに見事な働き、将来有望なことだ、がっはっはっは♪」

両側に、美女と呼んで差し支えないほどの二人の女騎士を控えさせ、大柄で豪快に笑う初老の男性の胸には、騎士団長のみが着用を許される3本の剣が交差したエンブレムが掲げられている。

初老の男性「どうかね?卒業後は我が王国騎士団に入団せんか?我が王国騎士団は完全実力主義。実力さえあれば、2、3年で幹部に就任もできるぞ。
先ほども、有望な学生……キール君といったか。彼女もスカウトしてきたところでな♪」

明るく豪快な様子を見せ、エリシアに対して卒業後の進路のスカウトをかける。

ーーーー

エリシア「マリス…そうだな…私も君と本気で戦えることが楽しみだ…ふふ 手加減なんかしないからな?

二人だけの…ああ もちろんだ、存分に楽しむことにする。
だが君も知っての通り私は負けず嫌いだ…やるからには勝たせてもらいからな…♪」

マリスの私と戦えると言う言葉を聞き、緊張が解け 私は嬉しそうに微笑みをみせて。

楽しみましょうと言われそれに同意し、そしてやる気に満ちた目をさせて。


エリシア「ん? あなたは…? っ…そのエンブレムは…! 
お、お初にお目にかかります…王国騎士団長であるギランバルト殿にそう言っていただき 光栄です…。」

私がマリスが走っていくのを見送っていると、男性に声をかけられて…
しかもそれが王国騎士団長だと気づき、私は姿勢を正し 緊張した様子をみせて。


エリシア「私を…ですか…? それは光栄な話です…そのお話 この後の試合が終わったのち 前向きに検討させていただきます。
(この人が王国騎士団のトップ…そういえばマリスがなんか嫌ってたようだったけ…?)」

普段 あまり丁寧な言葉遣いをしていない自覚があり、しかし騎士団長と話しているので言葉を選びながら 会話をして。

ーーーー

ギランバルト「あー、そう固くならんでくれ♪だが…なるほど、確かに試合前に勧誘とは、ちと不作法だったか。次は君の試合だとか、期待しているぞ。頑張ってくれたまえ♪」

そう言いながら背を向けヒラヒラと手を振りながら、謁見席に向かう。

お付きの騎士も従うが、その内の1人がじっ…と、エリシアを見て佇み厚ぼったい唇に人差し指を当てて小さく呟き、笑いかける。 


お付きの女性「…ふふ…♪なるほど…今年は豊作ね。貴女も『候補』よ♪」

ギランバルト「おい、早く来んかリリス!エリシア君が困るだろう」

お付きの女性「……ちゅっ♪ふふ……それじゃ、頑張って♪」

目にも止まらぬスピードでエリシアの背後に立ち、後ろから彼女の頬に軽くキスをすると、妖艶な笑みをエリシアに向け、ギランバルトのもとへ駆けていく。

『次の試合開始時刻まで、五分を切りました。出場選手は至急ゲートまで。繰り返します……次の試合開始時刻まで……』

拡声魔法を使った審判の場内アナウンスが流れる。マリスミゼルが向かったことを考えると、エリシアにゲートに向かうよう促すアナウンスなのは間違いなく。

ーーーー

エリシア「はい ありがとうございます。」

頑張ってくれたまえと言われ、私は頭を下げて 頑張りますと答えて。


エリシア「? えっと…私の顔に何かついてますか…?
えっーーっ!?
(い、いつのまに背後へ…油断してたとはいえ反応すらできなかった…。)」

お付きの女性がこちらを見ていたので、私は首を傾げて尋ねて。

急に視界から消えたと思うと背後からキスをされ、私はその妖艶な笑みを見つめながら驚きを隠せなくて。


エリシア「あれが王国騎士団 騎士団長のお付きか…すごい実力者揃いというのは確かなようだ…しかし…私が候補とはいったい…?

とと、時間か…マリスを待たせるのもあれだ、気合を入れていこうか。」

騎士団長のお付きの女性の実力に関心するも、彼女が言った 候補 とは何か気になって。

気になるが気持ちを切り替え、私はマリスとの大事な試合へと向かって……。
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