騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第5節 魔族領編 リュネとクロ

第75話 クロvs人形少女

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やがて、コツコツ………と、ヒールの音を響かせながら、出ていったローブの人物が部屋に戻る。

扉が閉まると、それぞれが円形のテーブルを前に椅子に腰を下ろす


「さて………どこまで話しましたかな。」

「ふっふっふ。思い出させては気の毒だ。統括官様のお心を害してしまうぞ。足りない頭で只でさえ不自由しておられるのだ」

「ちっ………あの偽善者のことまでだろーが。とっとと話を進めてくれ。貴方様が居なければミンチにしているところなんだがなぁ!」

両脇に座る黒ローブの人物たちは、オーガを侮辱するように言葉を続け、応答するオーガは腹を立てつつも中央に座る黒ローブを睨み付け捨て台詞を。


「………………」

「ふっふっふ、では話を整理しましょうか。
現在、各部族は概ね75%が我ら『新政府』に臣従を誓いました。
ユラミルティは現在、力を封じ込めて監禁済み。現在、『調整中』です。

頑固な彼女ですが……ふふ、時間の問題でしょう♪『反政府勢力』の鎮圧も順調です。すこぶるいいことずくめ♪
ふふ………領内を制圧したら次はやることは分かってますか?」

「人間領への侵攻か…確か今は……当時の人間側の幹部格で存命と聞くのは『騎士隊総督』『魔剣公主』『氷帝』『雷帝』『炎帝』…教会の『聖剣騎士』…冒険者ギルドの『剣聖』連中ぐらいと聞くが……」

だんだんと話の要旨が見える中、中央の黒ローブだけは沈黙を守り言葉を発さず。

ーーーー

クロ(…この人たちあまり仲はよくない…?
っ…ユラミルティさんの話題がでた…やっぱり情報を持ってたみたいだね…
ていうか人間領に進行って…なんだか話が大きくなってきたね…。)

テーブルには近づかず 少し遠目から話を聞くことにして。

ユラミルティさんの話がでてやっぱり当たりだったみたいだねと思いながら、話の続きを聞くことにして。


クロ(……この中央のローブの人は話さないけど これでいつも通りなのか…それとも…私に気づいてる…?

退くべきか…でもまだユラミルティさんの監禁場所も知れてないし…人間領に進行の内容も重大だからもっと知りたい…
ユラミルティさんの監禁場所がわかる方法は一つだけあるけど…リスク高いし 可能性としても低いんだけど…さてどうしようか…。)

実力的にもっとも高そうなオークのボスらしき人物と中央のローブの人をちらりと見ながら その二人だけ警戒していて。

もう少しだけ話の様子を伺うことにして…
自分が捕まればもしかしたらユラミルティさんと同じ場所に連れてかれるかもと考えるが そう上手くいくかな? とか考え込み。

ーーーー

「………ふふ、まあその侵攻の際には貴殿に先鋒を勤めてもらいたいとゆうことです。
まあ、1年もあれば魔族の部族を全て纏め挙げることができるでしょう。抵抗する穏健派を根絶やしにして、ね」

「………あのユラミルティがなぁ。恐ろしいもんだ『東の監獄』ってのは……?」

「………」

そうこう会議が進んでいるとガタッと椅子をどかし、中央の黒ローブが立ち上がる。

見えていないはずだが、ゆっくりとクロの方を振り替えるとコツコツ……
と音を立てて歩み寄り、やがて手を伸ばせば届く位の位置で立ち止まり、佇む


「………………」

「あの………どうされました?」

「まだ会議は途中ですが………」

困惑する左右の黒ローブからの問いにも答えず、ただただ其処に佇む。

しかし特に殺気を放つ様子はなく。

ーーーー

クロ(東の監獄…そこにユラミルティさんが…調整中って言ってたし…早く助け出した方がいいよね…
でも まだ進行の情報がいまいちわからない…もう少し聞いておこっか…っ…。)

どこにユラミルティさんがいるか情報を得て、あとは人間領に攻め込む情報をもう少し手に入れればとそのまま待機して。

しかし中央のローブの人が自分の近くまで来て 私は驚く。


クロ(……やっぱり…この人私に気づいて…。
でも実力が未知数なうえに数が多い…だから戦闘は極力させたい…この人が何かアクションを起こすまでは耐えるしか…。)

中央のローブの人が私に気づいてるかもと確証に変わり、それなら私より強いかもしれないと、迂闊に手を出さずに私もじっとローブの人を見つめて。

ーーーー

「………………ふぅ………」

クロが手を出さずに暫く居るとそのまま中央の黒ローブは、振り替えるとそのまま元いた席に座り直し、そのまま小さくため息をつく。


「あの………?」

「………どうしたってんだよ?」

困惑する左右の黒ローブと統括官が困惑するなか、やがてその人物はゆっくりと口を開く。


「………私がいいというまで部屋の外で休憩してなさい。
………異論は言わせない。」

「は、はあ………」

「けっ………」

中央ローブの人物の声は女性の声であるが、抑揚がなく淡々と述べる冷たい声に聞こえる。

その指示を受けた他の面々はそれぞれ文句や困惑した様子を受け、ゾロゾロと退出していく。

やがて扉が閉まると、パチンと指を鳴らす…そしてクロの方は向かずに口を開く


「人払いはした。防音の魔法もかけてあげた。ここには『二人きり』。
………私の正面の椅子に座って」

淡々と口を動かすものの、その言葉には力強さが感じらる。

ーーーー

クロ(…? …この人女性だったんだ…ていうかその指示はもしかして…。)

私の近くから離れ 仲間に指示を出してるのを見て ロープの人は女性であるとわかり…
それにその彼女の指示が何を意味するかを何となく理解していて。


クロ「……一瞬でそんな魔法を…それにやっぱり私に気が付いてたみたいだね…結構負担かけて気配とか消してたのに…。
でもなんで私のことをあいつらに言わなかったの? あなた的に私は敵じゃないの?」

やはり自分に気づいていることがわかり 私は透明化の魔法を解いて椅子へと座る。

どうして私をオークたちにつきださなかったの? そして私に何をさせたいの? などその意図を聞いてみて。

ーーーー

「………ふふ♪」

それまで感情を現さなかった彼女からは初めて感情のある声が漏れる。


「貴女、面白そうだから。
あいつらに貴女の事を告げるも、敵かどうかも………話して決める」

再び淡々とした口調に戻るとフードをかぶったまま、クロを見つめる。


「ねぇ、貴女も人形にならなきゃ。
貴女ほど才能と実力がある魔族はその力を無駄にしちゃダメ。無駄にすること。
それは天に逆らう行為。それは神に弓を引く行為。それは暗愚な道。」

クロに向かって淡々と言葉を紡ぐが、それはどれも感情の抑揚がなくどこか不気味な雰囲気を醸し出す


「私のように人形になり使役されるのは楽。何も考えず、ただ従う。
マスターの命令だけを考えるの。貴女はきっと、そうゆうの凄く向いてる。
壊れることを恐れない無敵の存在になれる。今のままだともったいない」

殺気はないものの、先ほどまで喋らなかったのが嘘のように饒舌にクロに対して話と提案をする。

ーーーー

クロ「…? 私が…面白い…? どこが…?
まあさっきは黙っててくれて助かったとだけ言っとく…まあ敵って判断されたら逃げさせてもらうけど。」

自分に面白い部分なんてあったかな と少し考え込む…
やっぱり思い当たらない、そんな笑いをとれるような人間 いえ魔族って柄でもないですし。


クロ「人形…? えっと…話が難しすぎるんだけど…神とか天とかって…。

んっと…つまりは私を誘ってる…仲間になるよう勧誘してる…?
いや まあ考えるのは苦手だし 命令だけ聞いてるのは楽だと思う…だけど…それじゃあ相手には近づけないって最近わかったから…そばにいてちゃんと意見も言える…私的にはそんな関係になりたいかな…。

まっ これは私の意見だけどね…それに…壊れるのを恐れないのが無敵っていうのはないね…
自分が壊れることで大切な人が悲しむとしたら それが一番の恐れで…
そんな思いさせたくないって気持ちが溢れて より生き残るために足掻く…
その時に出せる力は測れない…つまりは恐れを持つ者が本当の強さを知っている…そう私は思ってる。」

人形という言葉に引っかかりながらも話を聞いていて、いきなり天とか神とかの話をされて少し困惑しながら 話を整理していく。

命令だけ聞いて楽していたら どこかその主人との距離を置いてるんじゃないか? と口にし…
対等な関係を築きたいからちゃんと自分の意見も言わなきゃ というのが今の私の考え方で。

ーーーー

「貴女の話は難しくてよくわからない。でも、2つだけわかってることがある。
私は貴女を勧誘なんかしてない………どうあろうと私は貴女をマスターに『献上』するだけ。
そして、もう1つ………貴女はこの部屋からは『逃げられない』」

黒ローブが椅子から立ち上がり指をパチンと鳴らすと部屋の風景がグニャリと歪む。

すぐに元に戻ったように見えるが、彼女が近くの窓を開けてグラスを外に放り投げる。

すると、外に投げたはずのグラスがクロの正面上空から降ってきて、勢いよくクロの目の前で割れる。


「………逃げられないことがわかったなら、大人しく人形になることを認めて。
貴女も私と同じ『マスター』に忠誠を誓うの。これから仲間になる『人形』を傷つけたくない。抵抗………しないで」

黒ローブの女性は淡々と口を動かすが、既に彼女の中ではクロを新しい『人形』と見ているようであるが、台詞を紡ぎ終わると強烈な殺気をクロに向ける

ーーーー

クロ「献上ね…っ…どういうカラクリかわからないけど…それがあなたの能力なの?

……一つだけ確認したいことがある…そのマスターってユラミルティさ…あの人を監禁してる人なの?」

彼女が立つのに合わせて私も椅子から立ち上がり、魔力で衣服を戦闘に適した姿(黒のマフラーと黒の競泳水着のような戦闘服)へと変えてゆっくりと彼女を見つめる…

そうするとグラスで部屋の変化を見せつけられ、私はどういうカラクリなのか思考し始めて。

会ったことないけど 自分がユラミルティさんの部下であるかのようにみせ、そのマスターとは何者なのかを探ってみる。


クロ「うわ…すごい殺気だね…まあ そういう好戦的なところ好きだけど。

でも…あんまり私を舐めない方がいいよ…あの子と分離して力は弱くなってるし、自分の真名もわからなくて本来の力には程遠いかもだけど…それでも私はあの人の従者だから 簡単には負けられないから…ね!」

なんとかくロープの人物を嫌いになれないと思いながら、姿だけでも似てて彼女に何か危害が及ぶかもしれないからコトリの名前は伏せておき…あとはリュネの名前も伏せて。

もう自分が負けることが確定してるかという言い草にカンチンときてるのもあるが、お互いに主人がいる従者対決ぽいから尚更負けられなくて…私は魔族特有の黒い闘気を発現させて同じく殺気を相手にぶつける。


クロ「まずは先手必勝…! あなたはこれをどう対処する…?
(出られないとか言うなら、この部屋ごと全部魔法で吹き飛ばすのもありだけど…それは最後の手段に置いとく…。)」

相手の能力を探るためには様子見より 力をぶつけていった方が近づけると判断し…
私は一つ大きな闇の魔力弾をローブの彼女に向かって放ち。

ーーーー

「ユラミルティ………あの人も哀れな人。『魔族と人間の共存』なんて……大した力もない癖に叶うはずない、理想を唱えて散った愚かな女。でも心配ない。
……マスターに『調整』されて生まれ変わる」

淡々とクロに対して冷たい声を続ける。

しかしクロの発言自体は否定することなく聞き入る。

闇の魔力弾を目の前にしても避けることはなく、そのまま手を翳すと魔力弾は跡形もなく消え去る


「………この程度なら避けるまでもない。貴方のものは貴方に返す」

パチンと指を鳴らすとクロの背後から彼女目掛けて闇の魔力弾が轟音を立てて彼女にせまる。


「続けて踊るといい」

パチンと指を鳴らすとクロの頭上から大量の長槍が雨のように降り注ぎ始める。

表情はフードに隠されたまま伺い知ることはできないものの、大して息を切らしている様子はない

ーーーー

クロ「そっか…それじゃ あの人を監禁してるのはあなたのマスターなのね?
(でも…魔族と人間の共存か…やっぱりいい人そう…早く助け出して リュネと仲直りさせてあげよう…リュネが前に進めるように…ね…。)」

この人のマスターがユラミルティさんを監禁してることがわかり…
そして調整中ということは何か催眠術? 暗示? とかを施してる可能性があると考え 早く救出した方がいいと考えて。

とりあえずこの人を倒して、早く情報をリュネに持って帰ろうと思い。


クロ「急に消え去って…っ…くっ…!
なっ…っ はっ くっ…避けきれない…なら…全部 薙ぎ払うまでよ…!

(この部屋にたぶん最初っからなかった長槍…ということは何らかの空間に武器やらを収納しとくのが彼女の能力…?
でもそれじゃあこの部屋から出れないのは納得いかないし…どちらにせよ魔法型の私には相性わるいかも…。)」

魔族にはそれぞれ【特異な力】を持ってるけど、私は自分の本当の名前を忘れてるから、そんな特異な力は行使できなく。

自分の魔力弾を避けたと思ったら次は長槍の雨が降り注ぐ攻撃をされ、私はなんとか避けたりするが数が多くて躱しきれなくて…

だから魔力弾を複数自分の周りに作り出し、それを飛ばして槍を迎撃 撃ち落として。


クロ「遠距離からがダメなら…直接確かめる…七翼流剣術 風の型…疾風…ふっ…!
(魔法の攻撃は効かないのはわかった…じゃあ私の剣での攻撃はさっきみたいな方法で躱せる?)」

このまま遠くから攻撃していてもこちらに分が悪いと思い、私は魔力で剣を両手に作り出すと ローブの人の方に走り出し、そのまま剣での攻撃に移り。

ーーーー

「………っ!………重い」

クロが攻撃を切り替えると魔法ではなく、フードの袖もとから取り出した小太刀で受け止める。

クロが打ち込んだ一撃の剣圧に苦しげな声をあげるも、接近するクロに対抗して、素早く切り結び始める。


「離れてくれない………暑苦しいのは嫌い」

大きく飛び退いて魔法を繰り出そうとするも、クロに間合いを詰められ、魔法を使う暇がないのか、激しい剣の打ち合いが続く。

甲高い金属音が何度も場を支配すると、ようやくフードの彼女も息が切れ始め、大きく飛び退く。


「……実力は拮抗。このまま抵抗されるの面倒……よし」

再度クロに突撃して切り結ぼうとするが、その直前、今度は小太刀を捨て そのままクロの剣が、フードの彼女の左肩に食い込む。

鮮血が噴き出すも、そのままノータイムで、どこからか取り出した注射器をクロの首元に差し込む。

それを確認すると、そのまま大きく飛び退いて膝をつく。

その際にハラリとフードが捲れ、彼女の表情が露になる。

肩までの銀色の髪、サファイアブルーの瞳のツリ目はその状況を平然と受け入れている。

鮮血が吹き出しているにも関わらず、その表情は痛みに歪むことなく無表情。

ただ身体のダメージはそのままのようで、左腕は挙げることができない様子。


「その薬はマスター特製の『即効性のお薬』…麻痺効果と睡眠効果がある。
………どうやら、貴方はある程度の耐性があるみたいだけど、それは時間の問題。直ぐに効果が出始める。
徐々に……徐々に………ゆっくり、薬の効果が貴方を支配するの」

『5秒以内に象でも昏倒させるのに………』と、効果が現れるのが遅いクロに、不満気な様子を

ーーーー

クロ「…どうやら私を…人を直接どこかに飛ばすとかはできない…または時間がかかるかのどちらかみたいだね…ふっ…っ…んっ…はぁあ…!」

何度か切り結ぶたびに魔力の剣は壊れてしまうが、その場からすぐに再び魔力の剣を作り出し 斬り結び続け…
魔力の剣を精製するのに慣れてきたのか次第に強度も上がり、切り結んでも壊れない精度になり。


クロ「はぁはぁ…私は暑苦しいの好きな方だけどね…。
(この戦法では初めての実践だったけど…魔力の剣の精製にも慣れてきた…このままなら…とっておきでギリギリ押し切れる…。)

ふっ…っ…!? えっ なっ くっ…ま…ずっ…うぐっ…!」

魔法での攻撃はもうしてこない…そう相手は思ってるだろうと予測し、私は密かに編み出したとっておきの剣術と魔法の合わせ技でケリをつけようと考えていて。

しかし次の切り結びでは防御せずに斬られ そしてその隙に注射器を首に差し込まれ、私は予想外のことに顔を歪ませながら 首を抑え 慌てて後ろへと飛び下がって。


クロ「はぁはぁ…ま…さか…こんな方法で反撃してくるなんて…ね…うっ…それが恐れを捨てる…ってことか…な…?
はぁはぁ…そんなことまでさせるあなたのマスターって人に…ちょっとだけ言ってやりたいことあるか…も…あぅ…!

(やばい…かも…たとえこの人を倒せてもこの身体じゃ邸から逃げ切れるかどうか…。
でも倒せなきゃこの部屋から逃げられないし…よし…一か八か倒して 逃げれる方に賭けよう…彼女の身体を考えて気絶させれるくらいの威力にとどめなきゃ…。)」

相手の顔を確認でき 傷の痛みすら感じさせない様子を見て、私は彼女のそのマスターという人がどうしてこういう風にさせてるのか疑問やらを思ったりして。

麻痺してきてる身体じゃ追っ手から逃げ切れるかわからないけど今捕まるフリをするのは得策じゃなくて、だから私はふらふらの身体だけど奥の手を使うために…魔力で右手に2本 左手に2本 計4本の剣を作り出し持って。


クロ「っ…はぁはぁ…せぁああっ!
うっ…狙いが…くっ…はぁああっ!
はぁはぁ…回避不可能な右翼と左翼からの同時攻撃…これが私のとっておき…。」

まずは2本の剣をローブの彼女に向かって回転させながら投げつけるが、その2本は的を外れて彼女の後ろへと飛んでいく…
そのことを気にしないように間髪入れずにすぐさま残りの2本を投げると それは正確に彼女へと向かっていく。

実は最初の2本は身体の麻痺やらで狙いが逸れたよう見せかけてるだけで、ブーメラン状の形態にした2本の剣は後ろから彼女の方に向かって飛んでいき…
そこで私は4本の剣をただの魔力の塊へと戻し、前に気を取られて死角をとっただけではなく、避ける隙間がないくらい大きな魔法弾4発が左右から彼女を挟み討ちして。

ーーーー

「なかなかいい分析力。だいたい当たってる……でも、眼前の敵の私でなくマスターのことを考えてるあたり……まだまだ甘い」

勢いよく噴き出す左肩にゆっくり右手を当てると鮮血の出血が止まる。

クロに対して分析力を褒め称え、自身の能力の一端を認める。


「………!………吸収……っ!………あ……」

前後左右回避不能な投剣からの魔法弾が迫り、空間を開こうとするも、先ほどのクロの攻撃で右腕しか使えず、更に大量出血しすぎて、フラついてしまい次の瞬間全ての攻撃が轟音を立ててフードの彼女に炸裂し、煙が上がる


「………動けない……私の負け………」

その場に倒れ、身体を動かそうとしているようだが、クロの攻撃のダメージで力が入らないようで、小さく呟く。


「残念。私の手で貴女をマスターに献上したかった。………でも、しょうがない。マスター特製のお薬で、まだ意識を失わない貴女。
最後の力を振り絞ってでも、私を倒した貴女。つまりは貴女は特別な人。強い人………」

クロに対する賛辞なのか彼女なりに褒めているようで、倒れたままマジマジと見つめる。

やがて空間を維持する力がなくなったのかグニャリと目の前の景色が歪む。


「2号」

元の空間に戻ったようだが透き通るような声とともに、今度はクロの目の前に白ローブの人物が現れていて、その姿を見た2号と呼ばれた彼女は

「マスター……」

と小さく返した……
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