騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第3節 過去編 マリスミゼルとエリシア①

第56話 学生の二人

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学園長室。

エリシア「……ふぅ…マリス、こっちの書類は終わったよ。
アイリスの体調不良も何事もなく治ったし、これでひと段落ついたな?」

私は自分の分の書類を終わらせ、同じく終わったマリスのところへ行き…手に持ったお茶をマリスへ差し出し、人前ではあまり見せない微笑みをマリスだけに見せて。

刻印が刻まれなかったため…歴史の辻褄合わせのために、アイリスは原因不明の体調不良に悩まされていたことになっていて。


エリシア「……そういえば私とマリスが出会ったのも、ここの学生の時だったな…。」

自分用に淹れたもう一つのお茶を飲みながら、マリスとの出会いと思い出が蘇り。

ーーーー

マリスミゼル「..ありがとう♪
..そうですね♪一時はどうなることかと思ったのだけれど..結果オーライということでいいでしょう。....ん~っ..はぁ....」

エリシアからお茶を受け取り、ゆっくりと口元に運び、彼女に同意する言葉を続けるとカップを机に置いて座ったまま背伸びをしてやや気だるげにため息を


マリスミゼル「ふふ....♪珍しい♪エリシアが昔話を始めるなんて。そうねー....あの頃の貴方は..可愛かったけどツンツンして..そう。ハリネズミみたいな感じ♪」

クスクス笑いながら二人だけということで、口調を崩しつつ当時を思い出しながらエリシアをからかうように話に乗って

ーーーー

エリシア「いちゃいちゃしてるコトリやアイリスを見ていていると、なんだか思い出してしまってな。
ふふっ…そうだった…。あの頃の私は、全部自分一人でやろうとしてたからな…マリス、君と仲良くなるまでは…♪」

自分たち以外の女性同士のカップルが誕生して、仲の良い二人を見ていて思い出したと口にしながら…マリスに少しからかわられ、私は はにかむように恥ずかしそうにして。


マリスミゼル「ふふ....♪あれもまた、古きよき私たちの思い出♪懐かしい..♪」

エリシアの言葉に瞳を閉じ軽い笑みを浮かべると、そばにいる彼女の暖かみを感じ過去の出来事に思いを馳せ

マリスに近づいて、二人身体を寄り添い合わせると、昔話を始めて……。


………。

エリシア「ふっ…ふっ…んんっ…!」

昼休み…校庭から少し離れたところで、エリシアは剣の素振りをしていて。

有名な騎士家系のエリシアは、同着の首席でこの騎士学校へと入学し、騎士候補生の身でありながら、正式な騎士が受ける危険な任務などを手伝うこともあり、それ以外の時間は剣の自己練習に励む毎日で。


エリシアには大切な妹がいて…
どちらが家を継いでもいいと親は言っているため、戦争が起こりそうな今 妹に騎士の家を継がせるのは色々と危険だから反対していて、自分が家を継ぐためにひたすら努力する毎日で。

危険だから反対はしているが、将来はどうしてもというなら騎士になってもいいが、妹にはなんでも自分の好きなことをさせてあげたいというのも本音であり。


エリシア「……またお前か…毎日飽きずに私に話しかけてくるが、私は周りの評価通りの性格だ、そんな私と居て楽しいか?

まあいい…今日もお前が来ると思ってお茶菓子を買って置いた、そこにあるから勝手に食べていいぞ。」

稽古中の私の前にマリスミゼルが現れる…私と同じく首席で入学していて、なぜかよく彼女に話しかけて にこにこ としている変なやつだ。

私は学園でも他の人を寄せ付けない雰囲気を持っていて、その凛々しさと誰にでも厳しくする姿は少し怖がられてるみたいだ。

私の荷物が置いてある木の日陰には、お茶の入った水筒と、そしてマリスミゼルのために買ってきておいたお饅頭が置いてあって。

ーーーー

マリスミゼル「あら。そうですねぇ....楽しいか楽しくないかと言われれば、楽しくありません。だってエリシアさん、私が話しかけてもお話すぐ打ち切っちゃいますし....でも..」

エリシアの問いかけに瞳を閉じ腕を組み明瞭にはっきりと答え言い切るも、ほんの少しだけ間をあけ


マリスミゼル「不思議と貴方とは友達になれそうな気がするんですよね、うん♪
エリシアを見てると、ああ、自分も頑張ろう!って思えてくるし...なんか、こう。まさに女騎士っ!って感じで眼の保養にもなるし....あ、褒めてるんですよ?カッコかわいいって♪」

エリシアのことを見つめニコニコと表情を変えつつ、彼女が持ってきたお饅頭を手に取ると


マリスミゼル「あぁ、これはありがたくいただきます♪ちょうどお腹が空いていたので..ありがとう♪」

もきゅもきゅと食べながらそのままエリシアの訓練をみつめ

ーーーー

エリシア「お前、はっきりと言うな…まあ私は人と話すのは苦手だから、仕方ないといえば仕方がないけどな。

私と友達に…ね。かわいい? かっこいい…はたまに言われることがあるから分かるけど、私がかわいいなんてありえないよ。」

にこにことしながらマリスはいろんなことを口にして、私は剣を振りながら答えていく…

人と話すのが苦手と言いながら、かわいいと言われたことを追求して…他の子たちより発育もよくて、自分の身体がえろえろだということに気づいていない。


エリシア「ああ、気にするな…私が勝手にしたことだからさ……ふっ!」

マリスにお饅頭やお茶のことでお礼を言われ、私が勝手に用意しただけだからと言って…
なんだかんだいって以前と比べると、最近はマリスミゼルにだけは少し優しくなったような気がする。

そのまま稽古を続ける私…たまに少しだけマリスミゼルを気にしながら。


エリシア「ふぅ…隣り、失礼するよ。
本当に最後まで見てたな、お前…ふふっ…私より変わった奴だな…。」

マリスの隣へと腰を下ろし…
着ている白のレオタードはぐっしょりと汗で濡れていて、汗と甘い香り鼻をくすぐって…少しだけ乳首が透けて見え、同性から見ても健康的でいろいろと目を惹かれ。

ずっと見ていたマリスミゼルに、私は優しく微笑んで…それが彼女に初めて見せた笑顔で。

ーーーー

マリスミゼル「ふーん?....なるほど、なるほど..おお♪」

まじまじとエリシアの剣術の練習を見つめ時折、鋭い視線を送りつつも激しい動きで揺れる彼女の胸を見てテンションを上げ


マリスミゼル「ふふ..褒め言葉として受け取りましょう♪だけど、よくもこう毎日毎日..練習できますね。

私は剣士ではないので、剣は振り回しませんが....毎日毎日、魔導書を読む気にはなれないです..。貴方は凄いですね♪

ささやかですが..これは私の気持ちです。邪魔くさくなければ、どうぞ♪」

彼女の笑顔に、こちらも穏やかな対応で迎え自分の感想を素直に告げつつ、腰の小袋から小さな石を取り出すとそれを差し出し


マリスミゼル「見たところ剣先がわずかに刃零れを起こしている様子。まぁ、これで整備するといいですよ♪」 

ーーーー

エリシア「そうだな…私には守りたいものがあるだ、それのためにがんばってるといえばいいかな?

お前は知っているか分からないけど、私の家はそれなりの騎士の名門でな…私には妹がいて、その妹と私どちらが家を継いでもいいことになってるんだ…
だけどやっぱり妹に危ない目にあって欲しくないし、妹には自分の好きなことをして欲しいと私は思っているんだ…。

だから私は家を継ぎたいと思ってる…そのために私は毎日訓練をしてる…継ぐ者として、一人で強くあるためにな。」

毎日よく訓練できるですね、とマリスミゼルに言われ…エリシアは守りたいものがあると言って、穏やかな表情で家族について話す。

妹はまだ小さくて、その妹のことを可愛がっていて…戦争が起こりそうな今の騎士は危ないことも多く、また家を継ぐにあたって嫌なこともあるだろうと思ってエリシアは自分が継ぐために訓練をしてると言って。


エリシア「私は凄くないが…えっ? あっ、本当だな…ありがとう、マリスミゼル…♪
いや、ただで貰うのは…そうだな、お礼をしないとな…私にできることは何かないか? 何でもするぞ?」

マリスは私のことをよく見ていて、自分が気付かなかった剣の刃零れも気付いていて…
ただで受け取るわけにもいかなく、私はマリスのお願いならなんでも聞くと言って。

そしてお前ではなく、初めてマリスミゼルの名前を呼んでいて。

ーーーー

マリスミゼル「....素晴らしいし、立派だと思います♪けれども..」

エリシアの話を聞きながら、小さく笑みを浮かべながら彼女への称賛の言葉を送るも、間を開けて


マリスミゼル「貴方はそれでいいのですか?いくら妹さんのためとはいえ..自分を犠牲にはしていませんか?....っと、すみません。立ち入りすぎましたね」

やや鋭い瞳で言葉を紡ぐも言い終わると、彼女を気遣いながら謝り


マリスミゼル「ふふ...何でも、ですか♪そうですねぇ..♪それでは....ふふ♪良いことを思いつきました♪今度会ったときに、そのお願い聞いてもらいましょうかね♪

それでは、私はこれにて♪..あまり無理をしてはいけませんよ。右肩の位置が下がって、剣先がぶれはじめています。

その様子だと筋肉痛もでるでしょうしね」

やや怪しく笑いながら楽しそな様子を見せつつ、ゆっくりと立ち上がるとエリシアを労う一言と冷静に私見を述べ

ーーーー

エリシア「……えっ…?
えっと…ん、別に気にしなくていいさ。」

マリスミゼルに自分を犠牲に…と言われ、私はきょとんとした表情を浮かべて…そしてそのあとマリスに謝られ、私は気にしなくていいと微笑んで。


エリシア「そういえば学園に来る前に、妹にもそんな感じのこと言われたことがあるよ…お姉ちゃんは自分のことも大事にするべき、ってさ。

でも何もしたい事が思いつかなかったんだ…私 人と喋ることとか基本苦手だし、一緒に遊びに行く友達もいないし、騎士を目指す時に男に負けないために女であることは捨てたし…化粧や着飾るなんてどうやればいいか分からない。
ははっ…よく考えると私、何にも持ってないな…。」

ふと思い出したように語りだす…それは妹に言われたことのようで。

不器用なため、周りから少し距離を置かれていることもあり…
今までの人生で一度も息抜きなどもしたことなく、何をどうすればいいかも分かっていない様子で苦笑いをして。


エリシア「ん? ああ、何でもいいぞ。
えっ…ほ、本当か? マリスミゼルは本当によく私を見てるな…ありがと、今日はこれくらいにしておくよ…♪」

怪しく微笑むマリスミゼルに、私は ? を浮かべて首を傾げ、もう一度何でもと言って。

マリスミゼルの言葉に驚きながらもお礼を言って、今日の自己練習は終わることにして…

ーーーー

マリスミゼル「......」

エリシアの話を真剣な表情でただ、黙って聞き彼女が話し終わるのを見ると、ゆっくり口を開いて


マリスミゼル「この世界に、どこを探しても何も持っていない人何ていませんよ。
この私もエリシアも....教官たちや学生たちも。町にいる市民たちだって、1人1人良いところがあるものです。

まあ、私も気まぐれな面があるので、こうして教会の司祭や神官のように説法を垂れるのは柄ではないのですがね♪」

エリシアの言葉を背に受けながらも、そのまま街へとあるきだしその場を去り…

ーーーー

エリシア「……ああ また明日な…。」

去り際のマリスミゼルの言葉を気にしながらも、私は少しだけ小さく手を振って彼女と別れる。
また明日…なんて言って、友達みたいに…。
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