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第2節 過去編 人魔大戦(アイリス)

第34話 コトリの過去②

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あの事件から3月後..あれから、ある者はあの戦いの傷を癒し、また別の者は日頃の職務に日常に戻っていた。


季節は映り変わり、梅雨に入り珍しく晴れたその日に

アイリス「....よく来たね♪ほらほら、座って♪1ヶ月ぶりかな?
どうだった、山岳戦闘模擬演習は?ちゃんと活躍できたかな?..はいどうぞ♪」

扉を叩くノックの音から来た人物を察し、扉を開けてコトリを自分の部屋に招き入れ、長期の模擬演習から帰ってきた彼女に質問をしつつ、コーヒーを差し出して


ーーコトリ視点ーー

あれから時間が流れ、季節が移り変わった。

レインは教会の方に戻っていった…でも今までと変わらず、週に何回か手紙を書いたりしている。
そして、私はというと……。


コトリ「……お邪魔します…。
アイリス教官…お久しぶり…。」

コンコン と軽くノックをして中へとお邪魔する…久しぶりに私はアイリス教官の部屋へと来ていた。

一ヶ月の間 訓練で騎士学校を離れていたので、アイリス教官と会うのも久しぶりで…私はクールな表情だけど、少し嬉しそうにしていて。


コトリ「ん、ありがと。
一応活躍できたかな…身体からクロがいなくなってから調子が良くなかったけど、やっと元の状態のように戦えるようになれた。

セイバーの方は私より成績をあげてたし…モニカも強くなってて、普通より上くらいの成績を取ってた。
二人とも、まだまだ強くなると思う…んっ…ずずっ…。

逆に私は、入学した時から成長出来てないかもね…剣の方もまだまだだし…。」

コーヒーを飲みながら、私は模擬演習の成績などを話す。

巨大な魔力を持つクロが身体からいなくなったため…
魔力の量が大幅に減り、今の私は魔の魔力を持つ ただの珍しい半魔族の魔法騎士になっていた。

さらには一時期クロと分離した影響により、魔力の制御が出来なくなり魔法を使うことも出来なかった。
今は問題なく使え、クロと融合してない状態でもある程度のレベルの魔族化 状態になれる。

セイバーやモニカが成長しているのに対し、私はあまり成長出来てないような気がして…
少しだけ自信を無くし、それをアイリス教官だから 私は弱音の言葉に出来て。


ーーアイリス視点ーー

アイリス「そっか。まぁ、元気にやってるみたいで良かった♪安心したよ」

自らも椅子に腰掛け模擬演習についての話しを聞いていると、彼女が少し落ち込んでいるのをみて


アイリス「こらこら、あんまり気にしないの。成績なんて実戦になったら関係ないんだから。実際に私の友達なんて、学校の成績ビリッけつだったけど、すごい活躍したんだよ♪頭は弱いけどね♪」  

彼女を励ましながら少し昔を思い出したように楽しそうに話して


アイリス「でも、あの戦いからもう3ヶ月か。早いねー....気がつけばもう梅雨。今日は珍しく晴れてるから、洗濯物が乾くから、テンションあがっちゃうな」

瞳を閉じながらも頷いて、昔を懐かしみながらも話題をかえて


ーーコトリ視点ーー

コトリ「そんな人がいたんだ……アイリス教官の学生時代か…友達もいっぱいいて、羨ましいな。
あと…ありがと…励ましてくれて…//」

教官の騎士学生時代のことを聞けて、もっとアイリス教官のことを知れて私は嬉しくなる。

アイリス教官は私を励ましてくれたので、私は恥ずかしそうにしながら小さくつぶやいてお礼を言う…少しずつだけど私も素直になってきていて。


コトリ「……うん…相変わらずクロたちの行方は掴めてないけど、元気にやってたらいいな。
あっ、洗濯物取り込む時 手伝うね…♪

…………。」

昔を懐かしむアイリス教官と私は会話を楽しむ。

リュネたちや何気ない会話をしていた私だけど、少し考えるように黙り込んでしまって…その顔つきは何かを決心した表情で。


コトリ「ねぇ、アイリス教官…今日は聞いて欲しいことがあるの……私の…昔のこと…。

あれから何度かタイミングがあったけど、話すの怖くて言えなかった…けど、やっと決心がついたの。
……聞いてくれる…かな…?」

昔のことを話して、アイリス教官は他の人たちのように怖がったり距離を置くなんてしないはず…それが分かっていたけどやっぱり怖くて言えなかった。

でも一ヶ月離れて考えた結果、アイリス教官にちゃんと話そうと思った…アイリス教官の側に居たいから。


ーーアイリス視点ーー

アイリス「コトリは私の生徒だからね。当然だよ♪」

嬉しそうな表情を浮かべる彼女をみて、こちらも自然と笑みがこぼれ


アイリス「そっか。....もちろん。私でよければ、きちんと聞かせてもらうよ♪
ゆっくりでいいからね。後、無理しないで。話したくないことは、話さなくてもいいから」

コーヒーをゆっくりと口に注いで、カップを机におくと、穏やかな笑みを浮かべて彼女に答えて、気遣う言葉をかけてあげ


ーーコトリ視点ーー

コトリ「ん、ありがと…。
でも…ちゃんと話すよ……アイリス教官に私のこと…知って欲しいから…。」

あと一つ口だけコーヒーを飲み、そのカップを机の上に置くと目を閉じる。

そして次に目が開くと、自分の過去のことを話し始める……。


コトリ「初めて会った面接の時にアイリス教官、私のこと『綺麗な瞳に可愛い顔』をしているって言ったよね?
あとは…えっちなことに対して私、人より過敏に反応して少し嫌っていたでしょ?

あの時の私は自分の容姿が嫌いで、そして女であることも嫌いだったの……もちろん、えっちなこともね。
『貴方も男をたぶらかす、いやらしい女たちと同じなのね…!』……そうお母さんに言われたことがあったから…。」

私は遠い日のことを思い出しながら、さらに言葉を紡いでいく……。


コトリ「レインに聞いたと思うけど、私の父は ろくでもない人だったらしい。
何が目的でその男がお母さんに近づいたのか分からない…でもその男は私の身体に魔族を下す儀式を行い、そしてある日 突然 お母さんとは違う他の女性たちと共に蒸発した。

女性と共に行方をくらませた父、そして残されたお母さんと私。
お母さんはその男に依存させられていて、父がいなくなったのは他の女に騙されたからと思い込むようになり…私が女性であったことも災し、心身ともに弱ったお母さんは私に酷いことを言ったりすることもあったの。
『貴方もその女の身体を使って、男を誘惑したりするのね。』……とか、ね…。

お母さんが亡くなるとき、泣きながら今までのことを私に謝ってくれたりしたし…お母さんもその男の被害にあったから 私は許せたよ…。
でも私はその時から、優しかったお母さんを苦しませてしまったかもしれない…この女の身体が嫌いになったの…。」

言葉を一度区切り、そして少ししてから私はまた言葉を紡いでいく……。


コトリ「お母さんを亡くして残された私には、お母さんの知り合いたちから…お母さんを裏切った男から取ったあだ名…『裏切り者の娘』…という言葉を言われたこともあったけ…。
あとは私の身体の中に魔族がいることが分かったら…同い年の子供たちからは…『穢れた魔族の娘』…とか言われたりもしたな…。

お母さんがいなくなった私には何処にも居場所なんてなくて、流れるように私は教会に引き取られて レインと出会い……そしてレインのおかげで剣の…騎士の道を見出せた。
……それが私の昔話で、偽りの優等生を演じる女の真実だよ…。」

また言葉を一区切りし、少ししてから残りの全部も言葉にして紡ぐ……。


コトリ「……その裏切り者である男の穢れた血が流れてるが私なんだ…。

そんな私だから、いつ仲間や友達を裏切るか分からないよ…だから私は誰とも仲良くするつもりなんかなかったの……誰も悲しませたくなかったし、私自身いつ裏切ってしまうか分からない恐怖があったから…。

あとは……人の温もりなんて知りたくもなかったから…一度誰かが私に向けてくれる愛情とかを知っちゃうと、それを失った時のショックはなんともいえないものだったから…。


そして、その男の血が流れる私は……案の定 アイリス教官たちを裏切った…お母さんが嫌っていた、いやらしい女に堕ちてね…。

結局 私は裏切り者の血が流れていて、また同じように大切な人たちを裏切るかもしれない……そんな女と一緒に居れる人の方が不思議だよね…。
ははっ…私のこと 嫌いになったかな…?」

私の真実を知った人は、ほとんどが私から距離を置く人たちばかりだった…
誰だっていつ裏切るか分からない人の側になんて居たくないし、大戦で魔族を嫌い、正体不明で魔族の力という得体の知れないものを宿す私となんて関わりたくないはずで…。

自分の過去のことを全て語った私は…瞳に涙を貯めて、小さな身体を震わせていて。

そして、自分自身に対して皮肉な笑みを漏らして……。


ーーアイリス視点ーー

アイリス「そっか。....お父さんとお母さんが..」

コトリの表情、感情を考えて教官として一人の人間として真摯な態度で、彼女に口を挟むことなく頷きながら話を聞いていき、彼女の話を聞き終わると大きくため息をつき、瞳を閉じたまま首をふると


アイリス「ふー....まーた、そうゆうことを言う。私、怒っちゃうよ?だってさ」

瞳を開けてコトリに優しく笑いかけると


アイリス「前に言った通り、あんなのは裏切りにならないよ?誰もいなくなってないから。

それに、コトリが本当に裏切ったその時は、私の指導不足っ。貴女のせいじゃないんだよ。

だいたい魔族の力を持ってても、私は怖くない。私は強いし、そう簡単に死なないからね♪」

最後にニヤッと笑うとコーヒーを口に運び、再び机をおくと真面目な表情で


アイリス「お父さんやお母さん、魔族下ろしのこと....辛かったと思う。それこそ私には考えられないくらいにね。
気持ちがわかるなんて軽いことは言えない....私は貴女と同じ体験はしてないから。でも....」

再びコトリの瞳を見つめると


アイリス「コトリはコトリだよ。例え、親がどうゆう人だろうと、どんな血が流れていようと....大切なのは貴女がどうありたいか、どうしたいか。それを決めるのはコトリ自身なんじゃないのかな。よいしょ....」

そうゆうとゆっくり椅子を立ち上がりコトリに近寄ると


アイリス「だいたい私が貴女を嫌いになるなんてあり得ない....コトリは私の大切な生徒だから、ね♪」  

しゃがみこみ彼女の視線に瞳をあわせ、言い終わると最初に会ったときのようにコトリの額にキスをして優しく微笑み


ーーコトリ視点ーー

コトリ「でも…でも……やっぱり私は…自分自身のことが嫌いで…いつも好きになれなかった…の…。

だって…こんな私を愛してくれる人はいない…愛される資格なんてないと思ってた……だって私は…誰からも生きてることを望まれてないから…!」

アイリス教官は自分の指導不足や裏切りなんかじゃないと優しく言ってくれて…
だから私は自分自身がいつも思っていたこと、感じていたことをアイリス教官に打ち明ける。

私は小さな身体を震わせながら、涙目でアイリス教官を見つめていて。


コトリ「わ…たしが…どう在りたい…か…?
だけど…私は…過去のことから…ずっと立ち直れない…弱虫…だから…。

でも…でも…私は…アイリス教官…と……アイリス教官の側に…居たい…それで…守り…たい…大事な…人だか…ら…。」

アイリス教官の側に居たい、そして大事な彼女を守れる騎士でありたい…それが私のなりたい自分で、そうありたい自分で……。

だから過去の籠の中から出るため、私は勇気を振り絞って小さく言葉を口にして。


コトリ「……あっ…んっん…っ…//
……ねぇ…生徒ってだけなの…? わ、私は…その…それだけじゃ…もう…この気持ちは…お、抑えられそうにない…の…//

アイリス教官も同じ気持ちなら…こっちに…キス…し、して…欲しい…//」

出会った時みたいに額にキスをされて、私は嬉しそうに赤くなる…でも、もっとして欲しい気持ちも溢れてきて……。

私はゆっくりと目を閉じて、唇を少しだけ突き出して…赤くなって恥ずかしそうにしながら、アイリス教官のキスを求めていて。

いつの間にか 私は少しだけ欲張りさんになっていて……。
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