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十.☆
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まもなく戻ってきた若人に連れられ、書斎を後にしたオディーナは別の一室へと案内された。既に食膳が整えられていたが、パン生地はやたら湿っていて、サラダはキャベツにきゅうりをまるごと一本乗せただけ、主催の肉は前日焼いたのが丸わかりなぐらい冷えて固まっている。
「浮浪者には余り物で十分。そう言いたげなラインナップですね」
オディーナは結構頭に来て、「傲慢、無礼、ケチ、嫌な男の三拍子じゃないですか。これのどこがおもてなしですって。あぁ、腹が立ちます」と呟いてみるも、結局腹の虫が鳴くのには勝てない。
文句を言いながら食べ終わると、家の中が徐々に騒がしくなってきた。
どたどたと足音のうるさい様子や、多数の行き交う人影、話し声などが確認できる。
もはや誰も、オディーナのことを気にしてはいないようだ。
「——これはチャンス到来、でしょうか」
オディーナは独り言を言った。「ではでは、探検開始と行きましょう」
彼女は人がいないときを見計らい、そっと立ち上がって廊下へと出た。
——この場所に監禁されているとしたら、どの部屋が一番怪しいのでしょう。
建物の構造は把握できても、人間の配置までは特定できない能力である。足を使って確かめるしかないのだ。
左右を眺めても、人の来るようすはない。
オディーナは奥へ続く道を左折し、忍び足で内庭が見える部屋まで進んでいくと、隣の部屋から不意に一人、中年の男が現れた。
「何奴だ」いきなり飛び掛かってきそうな勢いで問い詰める男に対し、
「ごめんなさい、実はお手洗いをお借りしたくて」
「なんだと、貴様大体にして何だ、そのふしだらな恰好は。どこの浮浪者だ、目当ては何だ」
やいユウ、ユウのやつはどこにいる。その男がわめく声にすっ飛んできたのは、何度も顔を合わせたあの若人だった(どうやらユウという名前だったらしい)。
ユウがせわしなく耳打ちすると、男は唸るような声を出してオディーナを見つめ、頷くと「勝手に動き回るのは止してもらおう」と言い残して立ち去って行った。
「なんだか物々しいですね、さっきから」手洗い場への案内を受けながらオディーナが言う。
「特に奥の方なんて、ひっきりなしに人が動いてますし」
「客人ですよ」ユウがぶっきらぼうな声で返事をする、「きっと、何か内密の相談があるのです。あまり詮索はしない方がいい」オディーナの恰好を直視するのが憚れるのか、それとも余計なことを言ったと思ったのか、目を合わせることはなかった。
「こちらです」手洗い場の前で短く言うと、ユウは別の部屋へと入って行った。
その瞬間である。
突如開かれた手洗い場の扉から、太い二の腕が伸びてきたかと思うと、あっという間にオディーナを引きずり込んでしまった。彼女はそのまま床へと打ち付けられ、きゃん、と短い悲鳴が上がる。
顔を上げると、一度見かけた顔が散見された。
入り口で応対した初老の男、さきほど対面した中年の男、それに加えて三人、三十代と見られる男たちが薄笑いを浮かべてオディーナを見下している。
手洗い場は中々の広さで、小便用が三つ、奥に便座付きの個室が二つと、随分な力の入れようである。
「痛いじゃないですかぁ。女性はもっと丁寧に扱ってくださいませんと」
嘲るようなオディーナの言い草に、中年の男がくいっと彼女の顎を掴んで言うには、
「口答えが上手だな、この淫売め。そのような恰好でうろついて、何を盗るつもりだったかは知らないが、そう上手くいくとは思わないことだ」
どうやらこの男、未だにオディーナを盗人か何かだと疑っているらしい。
「入り口でも怪しげな行動があったと、こちらのご老体から報告だ」
「はい。その者は、私の眼を惑わそうと四肢を惜しみなく曝け出し、加えて弱みに付け込むような言動もいくつか……」
「そおら見たことか。やはり貴様、娼婦の類であろう。偶然得た情報で一儲けしようと画策したか、愚か者め」
鬼の首を取ったような、歓喜の表情を浮かべる男。
実際、本質的には当たらずも遠からずである。しかし、敵陣営の間者であるという発想にまでは至らなかったようだ。
淫魔の身体は、細部に至るまで男を篭絡するためにある。
吸い込まれるような瞳、撫でまわしたくなるほど美麗な髪、接吻で塞ぎたくなる唇、延々と揉み上げていたい乳房、股間を擦り付けたくなるような腿、絡めとられたい足。
少しでも意識してしまったのなら、何者でも逸る気持ちを抑えつけられない。
「情報を得た今、実質おまえは用済みなのだ。何か不幸な事故が合ったとしても、こちらにとって何も不都合では無い」
「加えてあんたは余計なことを知ってる爆弾だ。王都にでもばらされたらたまったもんじゃない。だから、俺たちが立派に有効活用して処理すれば解決だろう?」
愉悦に満ちた笑い声を上げる三十代組が、オディーナを取り囲んで立つ。
いずれも股の間をぷっくりと膨らませ、待ちきれない様子である。
「最高の時間の始まりだ」
正面の男が呟く。
忙しなく衣服を脱いで、立ち上がった愚息をオディーナの眼前に見せつける。やや左曲がりの下反りで、十四か十五ほどの大きさのそれを、彼女の頬へとすりつける。
「そのシルクのように綺麗な肌も、こいつで台無しに出来ると思うとそそるねぇ。じゃ、さっさとしてもらおうか」
オディーナの口元に集める、男どもの下卑た視線。まるでお手並み拝見とでもいうかのように、挑発的に押し付けてくる正面の男。
彼らは未だ、気づいてはいない。
この空間で絶対的優位に立っているのは、目の前にいる捕食者だということを。
「れろぉ、んちゅ……」
一切の口答えをすることなく、その女は唾液に光る舌先を亀頭の先へと当て、なぞるようにひと舐め。そのまま鈴口へ、唇が軽く触れるように口づけをする。
そこからカリ首へ向かって円を描くように、亀頭に舌を這わせていく。
「れろれろれろ、んじゅるるるっ……じゅる、じゅる、じゅるり……」
エラの張ったくびれに到達した舌が、段差部分に溜まった恥垢を取り除くように何度も舐め上げる。飴玉を転がすように、ちろちろと舌先を窪みにねじ込み、丹念にカスを取り除く。
やがて剥き出しになった陰茎の先端は、興奮を示すかのように真っ赤に染まっている。
まだ口の中に入ってすらいない、しかし男はその卓越した舌の動きに言葉を失っていた。
「はぁむ、じゅるるっ……じゅぽじゅぽ……んちゅ、ちゅううぅ……ちゅぱっ、じゅるじゅる……」
その空白を見逃さず、女は猛る陰茎を口腔粘膜へと迎え入れた。
竿の部分へと舌が伸びていき、絡みつくように頬が吸い付く。
唾液腺から分泌される冷たい潤滑油が、女の口内を満たしていくほど、扱き上げる舌の動きが活発さを増していく。
「んっ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、じゅるるるっ……じゅぱ、じゅぱ、じゅるるるっ……」
亀頭を口全体で包み込むように咥え、短い往復で吸い上げる動きと、根元まで一気に迎え入れて吸い上げる動き。緩急のある舐め上げ方に食いしばる力が強くなる男。
周囲の二人も、この尋常ならざる口淫に息を呑んだのか、罵倒するはずの声が思わず止まっていた。
「ぢゅ、ぢゅぱ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、んふっ、じゅるじゅるじゅるじゅるるるる、んっ、じゅぷぷぷぷぷっ、んぷっ、じゅぷぷぷぷぷぷっ」
部屋全体に響くほど激しいむしゃぶりつきに、腰を引きたいのか小刻みに足が震えている男。動けないのは、黒衣から覗く上目遣いの瞳、その赤色に魅入られたからか。
亀頭が限界を超えて膨らみ出すと、もう射精することしか男の頭には無かった。
遂には、今までで一番強いバキュームに合わせるように、決壊。
どぷっ、どぷっどぷっどぷっ。
逆さまにした瓶の入り口を塞いでいた親指を、すぽっと抜いたような吐精。
女の淫らな口の中に、数日溜まっていた子種が吐き出されていく。
女は射精中であっても、飲みかけをストローで吸い上げるかのように、フェラチオを続けていく。喉元が小さくうねるたびに、嚥下された精液が食道を通過する。
やがて蒼白になった男がしゃがみ込むまで、女は咥えるのを止めなかった。
「へっ、何だよ座り込んで。たかが一発だろう、情けない」
まだ状況が分かっていない二人目の男が、強引に胸のさらしを解いていく。
抑えられていた爆乳が、どたぷんと元の柔らかさを取り戻していった。
「はじめからここに目を付けていたんだ。口とは違って長く楽しめそうだぜ」
男の陰茎は上へと反り立ち、十七は超えるほどであるが、やや先細りであった。
その長さ自慢の逸物を、下乳へと宛がう。
継ぎはぎの多い白布で緩く保持された爆乳へ、まるで挿入するかのように差し込んでいく。
シルクのような柔肌は、驚くほど抵抗なく陰茎を受け入れ、赤ん坊を抱き上げるように優しく包み込む。
「うおっ……なんて柔らかい感触だ。着たままのパイズリにして正解だったわい」
満足げに男が言うように、この体位は着衣のまま乳房に出し入れすることで、母性の象徴と言える柔らかさを能動的に堪能し、征服感や背徳感から快楽をより高めていく狙いがある。
サイズにしてHカップ、百五十に満たない背丈の女が持つには、あまりに暴力的な大きさ。
男は目一杯広げた手で、両脇から乳を鷲掴みにすると、たぷたぷと脈打つように揺らして陰茎へと刺激を与えていく。
ゆさゆさと軽く動かすだけでも、もちもちに吸い付く両乳が擦れるだけでいやらしい水音を発し、堪らなくなっていく。それだけ既に、我慢汁が漏れていたのだ。
辛抱できないといった表情で、男は乱暴に腰を突き出す。
ずっぷん、と乳肉に打ち付ける音が聞こえた。
パイズリ穴をリズムよく行き来すれば、にゅこにゅこと柔肉に包まれた亀頭が這い出るかのように顔を出す。
女はその部分に黙って舌を構えると、まるで注ぎ込むように唾液を垂らしていった。
にっちゅにっちゅ、一連のストロークが円滑になるほど、腰の振りが大きくなっていく。
まるで心臓に届かせるかのように、乳の最奥へと陰茎を潜り込ませる。
不意に、されるがままだった女の手が、ぎゅっと白布の切れ端を引っ張った。
「っはぁ!締め付けが急に強く」
緩く楽しんでいたはずの男の様子が一変する。
きつく締まったさらしにより、乳内は先ほどまでの甘やかし空間から、男汁を搾り取るための肉壺へと変貌を果たす。
乳圧は比較にならないほどであり、一往復するだけで逸物が食べられているかのような錯覚を覚えるほどだ。
それはまさしく、おっぱいによる咀嚼行為であった。
「あっ、ああっ、と、止まらない」
長く楽しむと豪語していたはずの男が、自分から進んで腰を振って、乳房に食べられることを望んでいる。少しでも休めばいいはずなのに、強烈な射精欲求がそれを良しとしない。
——早く、このスケベすぎる爆乳を精液塗れにしたい。
——赤ん坊が吸い付くはずの乳房を、大人のいやらしい白濁液に染め上げたい。
——乳内に注いだ男汁が、さらしを外して漏れ出すのを見せびらかしてほしい。
早く、早く、早く、早く。
ぱんぱんぱんぱん、一心不乱に打ち付ける男に止めを刺すように、女は思いっ切り乳を両脇から押し付けた。
びゅるびゅる、びゅるるるるるるっ、どっぴゅん。
望み通り、男は溜まりに溜まったスペルマを、全て乳内へと吐き出していった。
「あっ、はぁぁぁっ、うぅん」
震えた声で喘ぐたびに、洪水のようにあふれ出る精液がさらしを汚す。
ぽた、ぽた、と収まりきらない分が、下乳から垂れ出ていて、床に小さな染みを作っていた。
間もなく二人目の男も、望んでいたザーメンブリッジを拝む前にしゃがんでしまった。
さすがに、これはおかしい。
残る三人がようやくその異常性に気づく。
射精後の脱力にしても大げさな、あたかも魂ごと吸われてしまったかのような、へばり方。
娼婦だとしても、あまりに凄すぎる女の性の妙技。
突然、今までに感じたことの無い気味の悪さが襲ってきた。
「すぐに応援を」
そう叫んだ三十代組の最後の一人は、扉に手をかけた瞬間崩れ落ちるように倒れてしまった。
「あーあ、作動しちゃいましたか」
黙々と性行為をしていたはずの女が、突然口を開く。
その容姿、明らかに違う部分が三つ。
二本の短角、黒の両翼に、先端が食虫植物のような尾。
「ば、化け物め」
中年の男と初老の男、二人がかりで斬りかかろうとしても、思うように足が動かない。
「残念ですけど、もう手遅れなんです。始めにずばっとしておけば、勝ち目はあったんですよぉ。それを放棄しておたのしみを選んだ時点で、貴方たちの負・け・ですから♡」
今この場には、オディーナが展開した精気を吸う罠が作動している。
最初に連れ込まれたときに、扉に仕込んでおいたそれは、誰かが逃げようと手をかけた瞬間発動する仕組みであった。
「正直もう飽きちゃったので、残りのお二人をぱぱっと済ませちゃいますね。あぁ、だからって不満に思うことはないですよ。だって……」
壁に寄りかかるようにへたり込む中年の男、その眼前でオディーナはローライズをずらしていく。
淫魔の愛液で濡れた禁断の入り口は、少し視界に入っただけで釘付けになるほど、淫靡な匂いを漂わせていた。
「ここで貴方の立派なモノをお世話したら、きっと十秒も持たずに終わっちゃいますから。一瞬が永遠に感じるほどの強烈な快感でぇ、二度と正気に戻れないぐらいトリップしちゃって下さぁい♡」
オディーナがお手洗いに入っておよそ二十分、わずかそれだけの時間で、五人の男たちは自らの欲望に溺れ、為すすべもなく敗れ去った。
「浮浪者には余り物で十分。そう言いたげなラインナップですね」
オディーナは結構頭に来て、「傲慢、無礼、ケチ、嫌な男の三拍子じゃないですか。これのどこがおもてなしですって。あぁ、腹が立ちます」と呟いてみるも、結局腹の虫が鳴くのには勝てない。
文句を言いながら食べ終わると、家の中が徐々に騒がしくなってきた。
どたどたと足音のうるさい様子や、多数の行き交う人影、話し声などが確認できる。
もはや誰も、オディーナのことを気にしてはいないようだ。
「——これはチャンス到来、でしょうか」
オディーナは独り言を言った。「ではでは、探検開始と行きましょう」
彼女は人がいないときを見計らい、そっと立ち上がって廊下へと出た。
——この場所に監禁されているとしたら、どの部屋が一番怪しいのでしょう。
建物の構造は把握できても、人間の配置までは特定できない能力である。足を使って確かめるしかないのだ。
左右を眺めても、人の来るようすはない。
オディーナは奥へ続く道を左折し、忍び足で内庭が見える部屋まで進んでいくと、隣の部屋から不意に一人、中年の男が現れた。
「何奴だ」いきなり飛び掛かってきそうな勢いで問い詰める男に対し、
「ごめんなさい、実はお手洗いをお借りしたくて」
「なんだと、貴様大体にして何だ、そのふしだらな恰好は。どこの浮浪者だ、目当ては何だ」
やいユウ、ユウのやつはどこにいる。その男がわめく声にすっ飛んできたのは、何度も顔を合わせたあの若人だった(どうやらユウという名前だったらしい)。
ユウがせわしなく耳打ちすると、男は唸るような声を出してオディーナを見つめ、頷くと「勝手に動き回るのは止してもらおう」と言い残して立ち去って行った。
「なんだか物々しいですね、さっきから」手洗い場への案内を受けながらオディーナが言う。
「特に奥の方なんて、ひっきりなしに人が動いてますし」
「客人ですよ」ユウがぶっきらぼうな声で返事をする、「きっと、何か内密の相談があるのです。あまり詮索はしない方がいい」オディーナの恰好を直視するのが憚れるのか、それとも余計なことを言ったと思ったのか、目を合わせることはなかった。
「こちらです」手洗い場の前で短く言うと、ユウは別の部屋へと入って行った。
その瞬間である。
突如開かれた手洗い場の扉から、太い二の腕が伸びてきたかと思うと、あっという間にオディーナを引きずり込んでしまった。彼女はそのまま床へと打ち付けられ、きゃん、と短い悲鳴が上がる。
顔を上げると、一度見かけた顔が散見された。
入り口で応対した初老の男、さきほど対面した中年の男、それに加えて三人、三十代と見られる男たちが薄笑いを浮かべてオディーナを見下している。
手洗い場は中々の広さで、小便用が三つ、奥に便座付きの個室が二つと、随分な力の入れようである。
「痛いじゃないですかぁ。女性はもっと丁寧に扱ってくださいませんと」
嘲るようなオディーナの言い草に、中年の男がくいっと彼女の顎を掴んで言うには、
「口答えが上手だな、この淫売め。そのような恰好でうろついて、何を盗るつもりだったかは知らないが、そう上手くいくとは思わないことだ」
どうやらこの男、未だにオディーナを盗人か何かだと疑っているらしい。
「入り口でも怪しげな行動があったと、こちらのご老体から報告だ」
「はい。その者は、私の眼を惑わそうと四肢を惜しみなく曝け出し、加えて弱みに付け込むような言動もいくつか……」
「そおら見たことか。やはり貴様、娼婦の類であろう。偶然得た情報で一儲けしようと画策したか、愚か者め」
鬼の首を取ったような、歓喜の表情を浮かべる男。
実際、本質的には当たらずも遠からずである。しかし、敵陣営の間者であるという発想にまでは至らなかったようだ。
淫魔の身体は、細部に至るまで男を篭絡するためにある。
吸い込まれるような瞳、撫でまわしたくなるほど美麗な髪、接吻で塞ぎたくなる唇、延々と揉み上げていたい乳房、股間を擦り付けたくなるような腿、絡めとられたい足。
少しでも意識してしまったのなら、何者でも逸る気持ちを抑えつけられない。
「情報を得た今、実質おまえは用済みなのだ。何か不幸な事故が合ったとしても、こちらにとって何も不都合では無い」
「加えてあんたは余計なことを知ってる爆弾だ。王都にでもばらされたらたまったもんじゃない。だから、俺たちが立派に有効活用して処理すれば解決だろう?」
愉悦に満ちた笑い声を上げる三十代組が、オディーナを取り囲んで立つ。
いずれも股の間をぷっくりと膨らませ、待ちきれない様子である。
「最高の時間の始まりだ」
正面の男が呟く。
忙しなく衣服を脱いで、立ち上がった愚息をオディーナの眼前に見せつける。やや左曲がりの下反りで、十四か十五ほどの大きさのそれを、彼女の頬へとすりつける。
「そのシルクのように綺麗な肌も、こいつで台無しに出来ると思うとそそるねぇ。じゃ、さっさとしてもらおうか」
オディーナの口元に集める、男どもの下卑た視線。まるでお手並み拝見とでもいうかのように、挑発的に押し付けてくる正面の男。
彼らは未だ、気づいてはいない。
この空間で絶対的優位に立っているのは、目の前にいる捕食者だということを。
「れろぉ、んちゅ……」
一切の口答えをすることなく、その女は唾液に光る舌先を亀頭の先へと当て、なぞるようにひと舐め。そのまま鈴口へ、唇が軽く触れるように口づけをする。
そこからカリ首へ向かって円を描くように、亀頭に舌を這わせていく。
「れろれろれろ、んじゅるるるっ……じゅる、じゅる、じゅるり……」
エラの張ったくびれに到達した舌が、段差部分に溜まった恥垢を取り除くように何度も舐め上げる。飴玉を転がすように、ちろちろと舌先を窪みにねじ込み、丹念にカスを取り除く。
やがて剥き出しになった陰茎の先端は、興奮を示すかのように真っ赤に染まっている。
まだ口の中に入ってすらいない、しかし男はその卓越した舌の動きに言葉を失っていた。
「はぁむ、じゅるるっ……じゅぽじゅぽ……んちゅ、ちゅううぅ……ちゅぱっ、じゅるじゅる……」
その空白を見逃さず、女は猛る陰茎を口腔粘膜へと迎え入れた。
竿の部分へと舌が伸びていき、絡みつくように頬が吸い付く。
唾液腺から分泌される冷たい潤滑油が、女の口内を満たしていくほど、扱き上げる舌の動きが活発さを増していく。
「んっ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、じゅるるるっ……じゅぱ、じゅぱ、じゅるるるっ……」
亀頭を口全体で包み込むように咥え、短い往復で吸い上げる動きと、根元まで一気に迎え入れて吸い上げる動き。緩急のある舐め上げ方に食いしばる力が強くなる男。
周囲の二人も、この尋常ならざる口淫に息を呑んだのか、罵倒するはずの声が思わず止まっていた。
「ぢゅ、ぢゅぱ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、んふっ、じゅるじゅるじゅるじゅるるるる、んっ、じゅぷぷぷぷぷっ、んぷっ、じゅぷぷぷぷぷぷっ」
部屋全体に響くほど激しいむしゃぶりつきに、腰を引きたいのか小刻みに足が震えている男。動けないのは、黒衣から覗く上目遣いの瞳、その赤色に魅入られたからか。
亀頭が限界を超えて膨らみ出すと、もう射精することしか男の頭には無かった。
遂には、今までで一番強いバキュームに合わせるように、決壊。
どぷっ、どぷっどぷっどぷっ。
逆さまにした瓶の入り口を塞いでいた親指を、すぽっと抜いたような吐精。
女の淫らな口の中に、数日溜まっていた子種が吐き出されていく。
女は射精中であっても、飲みかけをストローで吸い上げるかのように、フェラチオを続けていく。喉元が小さくうねるたびに、嚥下された精液が食道を通過する。
やがて蒼白になった男がしゃがみ込むまで、女は咥えるのを止めなかった。
「へっ、何だよ座り込んで。たかが一発だろう、情けない」
まだ状況が分かっていない二人目の男が、強引に胸のさらしを解いていく。
抑えられていた爆乳が、どたぷんと元の柔らかさを取り戻していった。
「はじめからここに目を付けていたんだ。口とは違って長く楽しめそうだぜ」
男の陰茎は上へと反り立ち、十七は超えるほどであるが、やや先細りであった。
その長さ自慢の逸物を、下乳へと宛がう。
継ぎはぎの多い白布で緩く保持された爆乳へ、まるで挿入するかのように差し込んでいく。
シルクのような柔肌は、驚くほど抵抗なく陰茎を受け入れ、赤ん坊を抱き上げるように優しく包み込む。
「うおっ……なんて柔らかい感触だ。着たままのパイズリにして正解だったわい」
満足げに男が言うように、この体位は着衣のまま乳房に出し入れすることで、母性の象徴と言える柔らかさを能動的に堪能し、征服感や背徳感から快楽をより高めていく狙いがある。
サイズにしてHカップ、百五十に満たない背丈の女が持つには、あまりに暴力的な大きさ。
男は目一杯広げた手で、両脇から乳を鷲掴みにすると、たぷたぷと脈打つように揺らして陰茎へと刺激を与えていく。
ゆさゆさと軽く動かすだけでも、もちもちに吸い付く両乳が擦れるだけでいやらしい水音を発し、堪らなくなっていく。それだけ既に、我慢汁が漏れていたのだ。
辛抱できないといった表情で、男は乱暴に腰を突き出す。
ずっぷん、と乳肉に打ち付ける音が聞こえた。
パイズリ穴をリズムよく行き来すれば、にゅこにゅこと柔肉に包まれた亀頭が這い出るかのように顔を出す。
女はその部分に黙って舌を構えると、まるで注ぎ込むように唾液を垂らしていった。
にっちゅにっちゅ、一連のストロークが円滑になるほど、腰の振りが大きくなっていく。
まるで心臓に届かせるかのように、乳の最奥へと陰茎を潜り込ませる。
不意に、されるがままだった女の手が、ぎゅっと白布の切れ端を引っ張った。
「っはぁ!締め付けが急に強く」
緩く楽しんでいたはずの男の様子が一変する。
きつく締まったさらしにより、乳内は先ほどまでの甘やかし空間から、男汁を搾り取るための肉壺へと変貌を果たす。
乳圧は比較にならないほどであり、一往復するだけで逸物が食べられているかのような錯覚を覚えるほどだ。
それはまさしく、おっぱいによる咀嚼行為であった。
「あっ、ああっ、と、止まらない」
長く楽しむと豪語していたはずの男が、自分から進んで腰を振って、乳房に食べられることを望んでいる。少しでも休めばいいはずなのに、強烈な射精欲求がそれを良しとしない。
——早く、このスケベすぎる爆乳を精液塗れにしたい。
——赤ん坊が吸い付くはずの乳房を、大人のいやらしい白濁液に染め上げたい。
——乳内に注いだ男汁が、さらしを外して漏れ出すのを見せびらかしてほしい。
早く、早く、早く、早く。
ぱんぱんぱんぱん、一心不乱に打ち付ける男に止めを刺すように、女は思いっ切り乳を両脇から押し付けた。
びゅるびゅる、びゅるるるるるるっ、どっぴゅん。
望み通り、男は溜まりに溜まったスペルマを、全て乳内へと吐き出していった。
「あっ、はぁぁぁっ、うぅん」
震えた声で喘ぐたびに、洪水のようにあふれ出る精液がさらしを汚す。
ぽた、ぽた、と収まりきらない分が、下乳から垂れ出ていて、床に小さな染みを作っていた。
間もなく二人目の男も、望んでいたザーメンブリッジを拝む前にしゃがんでしまった。
さすがに、これはおかしい。
残る三人がようやくその異常性に気づく。
射精後の脱力にしても大げさな、あたかも魂ごと吸われてしまったかのような、へばり方。
娼婦だとしても、あまりに凄すぎる女の性の妙技。
突然、今までに感じたことの無い気味の悪さが襲ってきた。
「すぐに応援を」
そう叫んだ三十代組の最後の一人は、扉に手をかけた瞬間崩れ落ちるように倒れてしまった。
「あーあ、作動しちゃいましたか」
黙々と性行為をしていたはずの女が、突然口を開く。
その容姿、明らかに違う部分が三つ。
二本の短角、黒の両翼に、先端が食虫植物のような尾。
「ば、化け物め」
中年の男と初老の男、二人がかりで斬りかかろうとしても、思うように足が動かない。
「残念ですけど、もう手遅れなんです。始めにずばっとしておけば、勝ち目はあったんですよぉ。それを放棄しておたのしみを選んだ時点で、貴方たちの負・け・ですから♡」
今この場には、オディーナが展開した精気を吸う罠が作動している。
最初に連れ込まれたときに、扉に仕込んでおいたそれは、誰かが逃げようと手をかけた瞬間発動する仕組みであった。
「正直もう飽きちゃったので、残りのお二人をぱぱっと済ませちゃいますね。あぁ、だからって不満に思うことはないですよ。だって……」
壁に寄りかかるようにへたり込む中年の男、その眼前でオディーナはローライズをずらしていく。
淫魔の愛液で濡れた禁断の入り口は、少し視界に入っただけで釘付けになるほど、淫靡な匂いを漂わせていた。
「ここで貴方の立派なモノをお世話したら、きっと十秒も持たずに終わっちゃいますから。一瞬が永遠に感じるほどの強烈な快感でぇ、二度と正気に戻れないぐらいトリップしちゃって下さぁい♡」
オディーナがお手洗いに入っておよそ二十分、わずかそれだけの時間で、五人の男たちは自らの欲望に溺れ、為すすべもなく敗れ去った。
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