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ヴァイオレット・スカーレット編①中身はすみれ

初めてのパーティーの夜

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パーティー当日、私はレオン君が送ってくれたドレスを着た。周りにいたメイド達は歓声をあげていたけれど、そんなに凄いドレスなのだろうか?やっぱり‥‥うん、高そうだ。

落ちついた青というか、紺色に近い色のドレスに、星空のようにキラキラと小さな宝石が飾りつけてあり、シンプルだけど可愛いらしいデザインだった。鏡越しで見る自分の姿に改めてヴァイオレットさんは美女だなあと感じてしまう。本来の私なら似合わないもの。

「ヴァイオレット、準備はできたかーー」

「セシリスお兄様、‥‥あの?セシリスお兄様?」

「わ、私が用意した薄い青色のドレスは‥‥おい!お前達!これはどういうことだ!?」

と、何故かセバスチャンさんやメイド達に何か騒いでいた。

「あ、あの‥‥似合わなくてすいません」

「違う!ヴァイオレット!君は世界一美しい!この私が断言する!ただ、そのドレスの色はーー」

「あ、このドレスはレオン君が送ってくれて‥‥色々とダンスを教えてもくれて」

「ふぁー!?ゲホゲホッ!!」

そう説明をするとセシリスさんは、深く息を吸っていた。セバスチャンさんはそんなセシリスさんの背中をさすっていた。

馬車の中では、また独り言を言っているセシリスさん‥‥ドレスを用意してたみたいだったから‥気を悪くしちゃったかもしれない。王宮へ着くとセシリスさんにエスコートをされて中へ入ると‥‥煌びやかなシャンデリアと豪華な食事、飾り、全てが凄かった。

「やあ、ヴァイオレット。セシリス様もご機嫌よう」

そう私達に話しかけてきたのはレオン君だった。セシリスさんは何故か私の前に出て話し出す。レオン君が見えない。

「やあやあやあやあ、レオン様ではないですか。レオン様ほどの方に、可愛い妹に素敵なドレスを送っていただいて!自分と同じ瞳の色のドレスをね!?」

「セシリス様は相変わらず妹想いな方ですね。今まで溜まっていたものが爆破しているようで見てて、まあ面白いですよ」

二人は笑って話し合っているのに、何故かここだけ寒いのは気のせい‥‥かな。

音楽が流れ始める。レオン君は私にダンスを申し込む。

「ヴァイオレット、ダンスの成果をお兄様に見せてもいいんじゃないかな」

「なっ!?ダダンス!?ヴァイオレットと君がか!?このドレスを着て君とダンスを踊るなんてーー」

私はレオン君に頭を下げて丁寧に断る。

「ごめんなさい、ダンスを教えてくださったし、ドレスを送ってくれて‥‥だけど‥」

沢山ダンスを練習をしたのは、セシリスさんの為だった。いつも妹想いで仕事が忙しくても私のために時間を作ってくれているそんなセシリスさんが本当の兄のように感じていた。

「セシリスお兄様にビックリさせたくて‥‥一緒に踊りたいです」

私には家族というものに憧れていた。いつも一緒にいてくれる家族をーー

「ヴァイオレット‥そうか。君は私が1番なんだね、わかっているさ。可愛い妹の頼みだ、レオン様、妹は貴方ではなく、私、のようです!はははは!!さあ!踊ろう!」

無邪気な少年のように、私の手を取るセシリスさんに私も釣られて笑った。
こんな人がお兄ちゃんだなんて、ヴァイオレットさんが羨ましいな。

ダンスを断られたレオンは、ただジッとヴァイオレット達を見つめていた。銀髪で瞳が紫色の青年がレオンの耳元で甘く囁く。

「フラれちゃったかなあ?レオン」

「ヘメロ‥‥耳元で囁くのはやめて下さい。気分が悪くなります」

「なあんだよ?お前もこのかっこいい兄ちゃんと踊るか?!なっ」

「兄でもなんでもないでしょう。ただの従兄弟関係ですよ」

王太子であるヘメロカリスは、ヴァイオレットを興味津々に見つめる。

「へえーなんか雰囲気変わったな?」

そんなヘメロカリスに笑顔で話しかけるレオン。

「ヘメロカリス、自分のその王太子の座にずっと付きたいのならば彼女だけは手を出すのは許しませんよ」

「‥‥レオン‥‥お前‥‥可愛いやつめ!!おーい!セシリス!!」

そうダンスを終えた二人に話しかけにいくヘメロカリス王太子だった。



銀髪で紫色の瞳‥‥この方がヘメロカリス王太子。この国の次期国王となる方‥‥。

「ねえねえ、ヴァイオレット嬢、君本当に記憶無くしたんだって?いやあーウチのセシリスがね、いつもいつも自慢げに話すわけよ。君の事を。嫌われてても健気で馬鹿だなあと思ってたけど、これまた急に仲良くなるものだから、隠れたシスコンがもう今じゃ凄いわけよ!あ、それと、今度デートしない?」

「「しません!!」」

私が何も言わずにいると、セシリスさんとレオン君はヘメロカリス王太子に向かって止めてくれた。

なんというか‥‥チャラチャラした人、かな?

「はは‥‥」

ヘメロカリス王太子とセシリスさんは、色々な人に挨拶へとまわり、私は人目が気になったので静かな場所を探していた。

景色を見たかったので、誰もいない事を確認してバルコニーへと出た。

うん、風が程よく気持ちいい‥‥。

「ヴァイオレット」

「レオン君」

レオン君は私を探していたようで、ブドウジュースを渡してくれた。

「ダンスを踊ってから、何も飲んでいないでしょ?ヘメロも来て、従兄弟とはいえ、ごめんね」

「そんな事、えっと明るい方かと‥。あ、ジュース、ありがとうございます」

私はもう一度夜の景色を見る。

「へえ。以前の君は賑やかな方を好んでたけど、今は違うみたいだね」

「え、そうなんですか?‥‥えーと‥‥
私‥‥‥夜が1番好きなんです。静かな場所が好きで‥‥」

「僕も好きだよ。特に誰も来ないような庭園で本を読むのが好きかな」

「あ、だから以前あの場所にーー」

「うん、花を育てたりするのも好きかな」

「素敵ですね」

そう私が褒めると、レオン君は何やら困った顔をしていた。

「男性が花を育ててるんだよ?」

「好き嫌いに男女は関係ないかと‥‥」

「はは、そっか。ありがとう」

私達はまた夜空を見上げる。特にこの後何も話さずただ黙って景色を見ていた。






屋敷へ戻り、真夜中になる。
私は光る手鏡を見てパーティーは無事終わった事を告げる。

「ところでヴァイオレットさん、学校生活はどうですか?あの‥‥静かに暮らしてますか?」

最近、こちらの暮らしに慣れるのにいっぱいいっぱいだったけれど、正直周りのあの視線を感じる限りヴァイオレットさんは‥‥

『大丈夫よ。私はいつでも完璧よ』

「良かった、静かに過ごしてくれてるんですね」

『ふふ、下僕共が数人できたわよ』

「な、なななな、何してるんですかー!!?」

そう私が悲鳴をあげているのに、彼女は得意げな顔をしていた。





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