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1巻
1-3
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「っ……」
ジンジンと火照る私の頬。
……強くてカッコいいと自慢だった兄は、ただの筋肉馬鹿なのね。
次の瞬間、ジェイコブお兄様はハッと我に返って、慌てて私の頬に触る。
「すっ、すまない! 大丈夫か? だが、お前が悪――ッゲホ‼」
私は無言で目の前にいるお兄様に腹パンチをお見舞いした。
「え、ちょ。ソフィア……ガハッ、兄に暴力とはー!」
「あんたが言うな」
「ぎゃう‼」
お腹を押さえてよろめくジェイコブお兄様のお尻に一発蹴りを入れて部屋から叩き出す。
お兄様は真っ青な顔で去っていった。
その後。
ヨロヨロと廊下を歩くジェイコブを見つけた、アメリがスキップしながら声を掛けた。
「ジェイコブ兄様ー‼ 人参大魔王のお絵本読んでー!」
「……うるさい! そこらへんのメイドに頼め!」
「がーん‼」
いつも爽やかで笑顔のジェイコブが苛々している姿に、アメリは固まる。
「……これは、お兄様が最近人参を食べてないからかも! あわわ大変!」
その日の夕食、ジェイコブの皿の上は何故か人参だらけだった。誰の仕業なのかはすぐに分かったが、ジェイコブは黙って食べた。
次の日。
剣術大会に向けての練習をと、私はアルに会いに行った。
アルは私の頬が赤く腫れているのを見て驚く。
昨日のことを説明すると、いつも冷静な彼にしては珍しく感情を剥き出しにする。
「……は? なんだ、それ? ちょっと殺ってくる」
「ストップストップ! アル! 大丈夫よ、頬は冷やせば治るわ」
アルは私の腫れた頬を優しく撫でる。
けど、それは一瞬だけで、お説教の時間が始まってしまった。
私を心配してくれているのが凄く分かる……。お説教がとても嬉しいと感じるのだから、私も相当なお馬鹿だよね。
「……何ニヤニヤしてるんだよ。あの馬鹿兄が悪いけど、ソフィアは女の子なんだ。もっと自分を大事にしろ」
「……そうだね……」
真剣な眼差しで私を見つめるアルに、なんとなく、そう、なんとなくドキッとしてしまう。
子供の時からの友人――あの小さな少年が、立派な青年になったなあ。
ドキッとしたのは……夏の暑さのせいね。きっと……
私たちはその後、黙々と剣の練習をした。
翌日――
オスカー様の家の執事が一人で我が家にやってきた。
「フォルフ家に来てほしい?」
「はい、奥様がソフィア様にお話があるとのことです」
「オスカー様の婚約者はアデライト姉様だけど……」
「本日、お屋敷にはソフィア様しかおられないと知った上で、参りました」
元婚約者であるオスカー・フォルフの実家、フォルフ家は由緒ある厳格な家だが、その他にも有名なことがある。
オスカー様のお母様――ペリドット様は、王妃様と仲が良く、貴族社会の中心人物なのだ。若い頃は社交界の女王とも言われていた。オスカー様は、厳しくて苦手だと愚痴っていたわね。
そのペリドット様が会いたいと言っているという。
とりあえず、言われるがまま私はフォルフ家の迎えの馬車に乗った。
大事な息子の前歯を折ったことを怒っているのかもしれない!
あぁ、お土産を持ってくるべきだったわね。殴ったことに後悔はないけれど、義理のお母様になるはずだった人だもの、憎まれたくはないわ。
気が重くなったところで、フォルフ家に着く。
私はペリドット様の待つ部屋に案内された。
コンコンと、執事がドアをノックする。
「入りなさい」
厳しい感じの声が応えた……オスカー様のお母様だ。
私はドアを開けると、ペリドット様を見つめた。青い髪を一つにまとめている彼女は、いつも姿勢がビシッとしていて華のある人だ。
「……お久しぶりです。ペリドット様」
ペコリと頭を下げて挨拶をすると、私を立って迎えた彼女はソファに座る。私も続いて向かいの椅子に腰掛けた。
長い沈黙が続いた後、ペリドット様は紅茶を一口飲んで質問をする。
「私が何故、アデライト嬢ではなく、貴女を婚約者に選んだのか、理由を分かっている?」
「え? あの、オスカー様を殴った件では?」
「ハア……。あの阿保息子のことは、今はどうでも良いわ」
……今、自分の息子を阿保って言ったわね。それにしても、質問の意図がよく分からない。どういうことかしら。
「私が選ばれた理由は、姉は病弱で、私は健康が取り柄だったからだと認識しておりました。世継ぎを産むには最適かと――」
そう答えると、キッと私を睨みつけるペリドット様。
え? 違うのかしら。
分からない!
彼女が黙って紅茶を飲み続けているのが辛い。
不意にペリドット様が口を開く。
「……手の平を見せなさい」
「はい? 手の平ですか?」
私はそっと手の平を見せた。するとペリドット様も白い手袋を外し、私に自分の手の平を見せてくれる。
……これは⁉
私とペリドット様に共通するものを見つけた。
「私と同じ……剣ダコですね……」
私はパッとペリドット様の顔を見る。彼女はまた手袋をはめ直した。
「……昔は騎士になるのが夢だったのよ。でも時代と周りには逆らえなかったわ。今は趣味程度だけね」
「そうだったんですね」
いや、趣味程度にしてはかなり剣を握っている手だったわ。一度手合わせをお願いしてみたい。
無理かしら? 自分の息子の元婚約者なんて、印象が悪いわよね。
色々と考えていると、ペリドット様が突然、頭を下げた。
「……ごめんなさいね。私が旅行中で不在だったとはいえ、息子がとんでもないことをしたわ」
「どうか頭を上げてください。あの……私はオスカー様の話より、ペリドット様と剣術についてのお話をしたいです」
ペリドット様は優しく微笑んでくれる。
「来月は剣術大会ね。参加するの?」
「ハイ、もちろんです」
「……そう。貴女は変わったわね。少し前までは自信なさそうな感じだったのに、今は前を向いてるわ。私が貴女をフォルフ家の嫁に選んだのは、小さい頃の貴女に自分に似たものを感じたからだったのよ。私が言うのも変だけど……剣術大会、頑張りなさい。応援してるわ」
そうして私たちは楽しい時間を過ごす。
うん、以前は厳しい雰囲気のせいで苦手意識があったけれど……とても良い人だわ。なのに何故、オスカー様はあんななのかしら⁇ 謎だわ。
私はフォルフ家からの帰りの馬車で首を傾げたのだった。
◇ ◇ ◇
朝は四時に起きて、剣術の自主練をしてからシャワーを浴びて読書をするのが、最近の私のルーティン。
朝食の時間は家族とずらすことにした。
ジェイコブお兄様もお父様も口うるさい。あのうるさい口を殴りたくなるから、家族の朝食後、食事を運ばせて自分の部屋で食べることにしたのだ。
アデライト姉様が私を見てビクビクするのも気に障るし。『ふり』なのか、なんなのか、よく分からないけれど、どういうつもりなんだろう。
たまに妹のアメリが「人参食べたよ!」と報告しに私の部屋へやってくるくらいが、唯一の家族との接触だわ。あの子はお馬鹿だけど、きちんと教育をすればまだ間に合うかもね。
「んー。今日は特に何も予定がないし、好きな本をゆっくり読み漁るのもいいわね」
朝食後。自分の部屋から出て、家の図書室に足を運ぶ。
……最近、私が出歩いているとメイドたちが怯えるのよね。
「ソフィア」
私の名前を呼ぶ声がする。
振り向くと、お母様だった。
いつも家族に優しいお母様。お父様を立てて三歩後ろに控えて陰で支えている姿は、そうね、前世で見たドラマの典型的な昔の人みたい。
いや、今のこの世界では、女性というのはそういうものなのかもしれない。
お母様は私の顔を窺いながら話す。
「ねえ貴女、最近本当にどうしたの? アデライトの用事やお茶会の準備もしてくれないし、この前ジェイコブに……暴力を振るったらしいわね? お父様もカンカンに怒ってるわ。とにかく一度みんなに謝りましょう」
「嫌です。お母様は何を見て聞いて、私に謝れと言ってるのです?」
「ソフィア、お父様は怒ってるわ。お父様やジェイコブの言う通りにしなければ――」
笑えてきた。
何を謝罪しなければならないと考えているのかと質問しているのに、父が兄が、としか答えない母親を見て、私はクスッと笑ってしまう。
そんな私をお母様は不思議そうな顔で見る。
「……ソフィア? 何故、笑ってるのかしら。私の話を聞いてるの? 貴女の悪い噂ばかりが流れてて、お父様たちが困ってるわ」
私はフウとため息を吐き、別の質問をしてみた。
「お母様は私の好きな食べ物をご存じですか?」
「……え?」
「私の誕生日は覚えてます? 知りませんよね。毎年毎年、ジェイコブお兄様の大会やアデライト姉様とのお茶会、買い物、看病などを優先しているもの。それに私の部屋に一度も来たことがありませんよね。私の部屋がどんな感じか、お分かりですか?」
「貴女はとても素直で、なんでも言うことを聞いてくれていたのに……どうしたものかしら。家の仕事を手伝ってもくれないなんて、お父様が怒るわよ」
「……ふふ、お母様ってご自分の意見をお持ちではないようですね。本当につまらない人だと分かりました」
私の言葉に、お母様は顔を真っ赤にする。
「お、親に向かってなんてことを‼」
「事実でしょう? お母様は何もできない、何も意見のない空っぽな方です」
この人は、とにかく人の顔色を窺ってばかりだ。自分が周囲にどう見られるかを重視して、私のことなど何も考えてくれなかった。
風邪が酷くても気にかけてさえくれない。
小さな頃、誕生日を祝ってくれたのは、メイド一人だけだった。
どんなに私が母親の愛情を欲しがっても、手を差し伸べてくれない。
私が冷たい眼差しを送ると、お母様は目を逸らす。だから、私はお母様を無視して図書室に向かう。
お母様はただ、黙って俯いていた。
沢山の本に囲まれて気に入ったものを読もうと開いた時、珍しい人が現れた。
アデライト姉様だ。
「……夜更かしのせいで、寝不足なのでは? まだ寝てなくていいんですか、アデライト姉様?」
「あら、ふふ。何を言ってるの? ……ねえソフィア、今度、仲直りに二人でお茶をしましょう?」
「いえ、結構です」
彼女のお誘いをぴしゃりと断る。
シンと静かになるものの、アデライト姉様はめげずにニッコリと私に微笑みかけた。近くにあった本を手に取り、ページを一枚一枚めくる。そして、話を始めた。
「……そういう反抗的な態度は良くないわ。そういえば昔、私やお父様たちに反抗的なメイドが一人だけいたわね。『ソフィアお嬢様を蔑ろにしすぎてる!』って、うるさかった。なんだか彼女を思い出しちゃったわ」
「……は? なんの話を……」
「私ね、それがとても腹が立ったの。妹のソフィアをみんな可愛がっているのに、意味が分からなかったわ。だから、お母様の宝石をそのメイドのポケットに入れておいた。ねえ、その後、そのメイドがどうなったと思う?」
私が五歳くらいまでは、この家に優しいメイドが一人いた。幼い頃に別れてしまったきりなのでもう名前も思い出せないけど、本当に優しい人だったのは今でも覚えている。
ある日、彼女は突然、屋敷からいなくなったのだ。
それって……
アデライト姉様は私に微笑み続ける。
「ふふ、辞めさせられたのよ」
「え、ちょ――⁉」
不意に彼女は、自分が持っている硬い本を自分の顔にぶつけた。アデライト姉様の額から血が流れ出る。
意味が分からない。頭がおかしくなったのかしら⁉
呆然とする私の前で、アデライト姉様はうるうると涙を流した。
「メイドを辞めさせたのは私なの。ごめんなさい…………ご、ごめんなさい!」
美しい顔を涙で濡らし、本を置いて図書室の外へ出る。近くにいたメイドたちがアデライト姉様の額に流れている血と目から零れる涙にビックリしていた。
同時に、片手に本を持っている私の姿も見られる。
今の屋敷内で、私は完全に悪だ。
「……はあー……なるほど。アデライト姉様は女優ね」
やっぱりアデライト姉様は私を悪者にしたいみたいだわ。
喧嘩売ってきたのよね? これ。
「……本当、面倒な姉だわ」
そう呟く。
その様子をコッソリと小さな我儘末っ子が見ていた。
アメリは絵本を両手に持ち、顔を青くする。
「……姉様たちが喧嘩してる! これは人参の呪い⁉」
慌てた様子で散らばっていたお菓子を自分のポケットに入れ、アメリは急いで図書室を出ていったのだった。
◇ ◇ ◇
――現在、私は何故かお父様たちに呼び出されていた。
お父様はふんぞり返ってソファに座り、その隣でアデライト姉様がハンカチを握りしめて涙を流している。そんなアデライト姉様の肩を抱き、お母様は優しく寄り添っていた。ジェイコブお兄様もお父様の逆隣に腕を組んで座っている。
一方、私は立たされていた。
お父様は顔を真っ赤にして腕を組み、私を怒鳴りつける。
「お前は頭がおかしくなったのか⁉」
「いいえ。頭がおかしくて残念なのは、お父様のほうでは」
私はチラリとお父様のとても薄い髪の毛を残念そうに見る。
もうハゲなのは確かなんだから、少ない毛をそんなに頑張って集めなくても良いのに……
そう考えていると、ジェイコブお兄様が「バン!」とテーブルを叩いて怒鳴った。
「ソフィア! 最近のお前は本当にろくでもないぞ⁉ 俺にだけならまだしも、アデライトにまで手を出すとは! なんて妹なんだ! 家族に手を上げるなんて!」
それ、貴方が言う台詞なわけ?
私は拳を握りしめてキッとお兄様を睨む。ジェイコブお兄様は咳払いをしながら、目を逸らした。
ジェイコブお兄様は一体何がしたいのだろう。意味不明なので、本当に黙っていてほしい。
私は泣いているアデライト姉様にチラッと視線を向けた。
姉様は私に怯えている様子を見せる。
「私はアデライト姉様に暴力を振るってなどおりません。ご自分で傷をつけたんです。頭がおかしいのはアデライト姉様ですわ」
そう説明すると、お父様とお母様は私を化け物でも見るかのような目で見てきた。
「ソフィア! なんという態度だ。嘘まで吐くとは、反省しろ。とりあえず……まだ夏休みだ! その間、シリウスの所に行って頭を冷やせ‼」
お父様の言葉に、すかさずアデライト姉様が割って入る。
「お父様! シリウス伯父様は変わった方で、既にマカロン家の者ではないわ! 可愛いソフィアが可哀想よ!」
「アデライト……こんなことをされたのに、なんて優しい子なんだ」
「それに比べてソフィア……お前は」
私がウンともスンとも返事をしていないのに、アデライト姉様は前に出て、妹を庇う優しい姉を演じた。そんな姉様を見て、お父様たちが感動したように涙ぐむ。
「え? そこ感動するところです?」
その一言に、お父様はプルプルと真っ赤な顔を小刻みに震わせる。少ない髪の毛が猫のように逆立っていた。
「うるさい! ソフィア! お前は夏休み明けまで、あの馬鹿兄貴だった奴の所にいろ! そこで充分反省するんだ!」
「まあ! 馬鹿兄貴とは、ジェイコブお兄様のことでは?」
「「ソフィア‼」」
お父様とジェイコブお兄様は更にヒートアップする。お母様は悲しそうな顔をして、アデライト姉様は……困った顔をしつつも口元が笑っていた。
「……分かりました」
今の私には、反撃できる武器が何もない。
残念だけど、あるのは口だけだわ。
とりあえず、伯父様の家で謹慎しろ、ということね。
シリウス伯父様――一度も会ったことのない、お父様のお兄様。本来ならマカロン家を継ぐはずだった方だけど、変わり者? らしく、絶縁されたと聞いている。
絶縁した人の所へ行けというのは、本格的に私は見捨てられたってことかしら?
構わないけど、うん、そうね。やられっぱなしと言われっぱなしは身体に悪い。
私は部屋を出る前に、お父様に近づく。
お父様は私が泣きつくのだろうと思っているみたいだけれど、違うわよ。
そっと手を伸ばして、一気にお父様の髪の毛を引っ張った。
ブチィ‼
「ぎゃあああああ‼ わ、わわわ私の髪の毛が‼」
「きゃあ! お父様⁉」
「あわわわ‼ ちっ、父上!」
見事に綺麗なハゲができて、スッキリしたわ。
「ソフィア! お前は悪魔か‼ 私の大事な髪の毛があ!」
「天からの声が聞こえたの。そのウザったい髪の毛を引っこ抜けと」
「……何、馬鹿なことを言ってる⁉ あわわわ! く、薬を! せっかく、生えてきそうだったのに! 何をしている、早く毛生え薬を!」
私はお父様の肩をポンと叩いて優しく教える。
「お父様、既に毛生え薬は全て捨てましたわ」
「なっ……え、ちょ……あれは凄く高い……」
「捨てました」
そこで私は、みんなにレディらしくお辞儀をした。
「それでは明日にでも、伯父様の所に行きますわね」
ニッコリと微笑んで部屋を出る。
そして自分の部屋に戻った私は、明日出発する準備を進めた。
出発前にアルに会えるかしら?
ジンジンと火照る私の頬。
……強くてカッコいいと自慢だった兄は、ただの筋肉馬鹿なのね。
次の瞬間、ジェイコブお兄様はハッと我に返って、慌てて私の頬に触る。
「すっ、すまない! 大丈夫か? だが、お前が悪――ッゲホ‼」
私は無言で目の前にいるお兄様に腹パンチをお見舞いした。
「え、ちょ。ソフィア……ガハッ、兄に暴力とはー!」
「あんたが言うな」
「ぎゃう‼」
お腹を押さえてよろめくジェイコブお兄様のお尻に一発蹴りを入れて部屋から叩き出す。
お兄様は真っ青な顔で去っていった。
その後。
ヨロヨロと廊下を歩くジェイコブを見つけた、アメリがスキップしながら声を掛けた。
「ジェイコブ兄様ー‼ 人参大魔王のお絵本読んでー!」
「……うるさい! そこらへんのメイドに頼め!」
「がーん‼」
いつも爽やかで笑顔のジェイコブが苛々している姿に、アメリは固まる。
「……これは、お兄様が最近人参を食べてないからかも! あわわ大変!」
その日の夕食、ジェイコブの皿の上は何故か人参だらけだった。誰の仕業なのかはすぐに分かったが、ジェイコブは黙って食べた。
次の日。
剣術大会に向けての練習をと、私はアルに会いに行った。
アルは私の頬が赤く腫れているのを見て驚く。
昨日のことを説明すると、いつも冷静な彼にしては珍しく感情を剥き出しにする。
「……は? なんだ、それ? ちょっと殺ってくる」
「ストップストップ! アル! 大丈夫よ、頬は冷やせば治るわ」
アルは私の腫れた頬を優しく撫でる。
けど、それは一瞬だけで、お説教の時間が始まってしまった。
私を心配してくれているのが凄く分かる……。お説教がとても嬉しいと感じるのだから、私も相当なお馬鹿だよね。
「……何ニヤニヤしてるんだよ。あの馬鹿兄が悪いけど、ソフィアは女の子なんだ。もっと自分を大事にしろ」
「……そうだね……」
真剣な眼差しで私を見つめるアルに、なんとなく、そう、なんとなくドキッとしてしまう。
子供の時からの友人――あの小さな少年が、立派な青年になったなあ。
ドキッとしたのは……夏の暑さのせいね。きっと……
私たちはその後、黙々と剣の練習をした。
翌日――
オスカー様の家の執事が一人で我が家にやってきた。
「フォルフ家に来てほしい?」
「はい、奥様がソフィア様にお話があるとのことです」
「オスカー様の婚約者はアデライト姉様だけど……」
「本日、お屋敷にはソフィア様しかおられないと知った上で、参りました」
元婚約者であるオスカー・フォルフの実家、フォルフ家は由緒ある厳格な家だが、その他にも有名なことがある。
オスカー様のお母様――ペリドット様は、王妃様と仲が良く、貴族社会の中心人物なのだ。若い頃は社交界の女王とも言われていた。オスカー様は、厳しくて苦手だと愚痴っていたわね。
そのペリドット様が会いたいと言っているという。
とりあえず、言われるがまま私はフォルフ家の迎えの馬車に乗った。
大事な息子の前歯を折ったことを怒っているのかもしれない!
あぁ、お土産を持ってくるべきだったわね。殴ったことに後悔はないけれど、義理のお母様になるはずだった人だもの、憎まれたくはないわ。
気が重くなったところで、フォルフ家に着く。
私はペリドット様の待つ部屋に案内された。
コンコンと、執事がドアをノックする。
「入りなさい」
厳しい感じの声が応えた……オスカー様のお母様だ。
私はドアを開けると、ペリドット様を見つめた。青い髪を一つにまとめている彼女は、いつも姿勢がビシッとしていて華のある人だ。
「……お久しぶりです。ペリドット様」
ペコリと頭を下げて挨拶をすると、私を立って迎えた彼女はソファに座る。私も続いて向かいの椅子に腰掛けた。
長い沈黙が続いた後、ペリドット様は紅茶を一口飲んで質問をする。
「私が何故、アデライト嬢ではなく、貴女を婚約者に選んだのか、理由を分かっている?」
「え? あの、オスカー様を殴った件では?」
「ハア……。あの阿保息子のことは、今はどうでも良いわ」
……今、自分の息子を阿保って言ったわね。それにしても、質問の意図がよく分からない。どういうことかしら。
「私が選ばれた理由は、姉は病弱で、私は健康が取り柄だったからだと認識しておりました。世継ぎを産むには最適かと――」
そう答えると、キッと私を睨みつけるペリドット様。
え? 違うのかしら。
分からない!
彼女が黙って紅茶を飲み続けているのが辛い。
不意にペリドット様が口を開く。
「……手の平を見せなさい」
「はい? 手の平ですか?」
私はそっと手の平を見せた。するとペリドット様も白い手袋を外し、私に自分の手の平を見せてくれる。
……これは⁉
私とペリドット様に共通するものを見つけた。
「私と同じ……剣ダコですね……」
私はパッとペリドット様の顔を見る。彼女はまた手袋をはめ直した。
「……昔は騎士になるのが夢だったのよ。でも時代と周りには逆らえなかったわ。今は趣味程度だけね」
「そうだったんですね」
いや、趣味程度にしてはかなり剣を握っている手だったわ。一度手合わせをお願いしてみたい。
無理かしら? 自分の息子の元婚約者なんて、印象が悪いわよね。
色々と考えていると、ペリドット様が突然、頭を下げた。
「……ごめんなさいね。私が旅行中で不在だったとはいえ、息子がとんでもないことをしたわ」
「どうか頭を上げてください。あの……私はオスカー様の話より、ペリドット様と剣術についてのお話をしたいです」
ペリドット様は優しく微笑んでくれる。
「来月は剣術大会ね。参加するの?」
「ハイ、もちろんです」
「……そう。貴女は変わったわね。少し前までは自信なさそうな感じだったのに、今は前を向いてるわ。私が貴女をフォルフ家の嫁に選んだのは、小さい頃の貴女に自分に似たものを感じたからだったのよ。私が言うのも変だけど……剣術大会、頑張りなさい。応援してるわ」
そうして私たちは楽しい時間を過ごす。
うん、以前は厳しい雰囲気のせいで苦手意識があったけれど……とても良い人だわ。なのに何故、オスカー様はあんななのかしら⁇ 謎だわ。
私はフォルフ家からの帰りの馬車で首を傾げたのだった。
◇ ◇ ◇
朝は四時に起きて、剣術の自主練をしてからシャワーを浴びて読書をするのが、最近の私のルーティン。
朝食の時間は家族とずらすことにした。
ジェイコブお兄様もお父様も口うるさい。あのうるさい口を殴りたくなるから、家族の朝食後、食事を運ばせて自分の部屋で食べることにしたのだ。
アデライト姉様が私を見てビクビクするのも気に障るし。『ふり』なのか、なんなのか、よく分からないけれど、どういうつもりなんだろう。
たまに妹のアメリが「人参食べたよ!」と報告しに私の部屋へやってくるくらいが、唯一の家族との接触だわ。あの子はお馬鹿だけど、きちんと教育をすればまだ間に合うかもね。
「んー。今日は特に何も予定がないし、好きな本をゆっくり読み漁るのもいいわね」
朝食後。自分の部屋から出て、家の図書室に足を運ぶ。
……最近、私が出歩いているとメイドたちが怯えるのよね。
「ソフィア」
私の名前を呼ぶ声がする。
振り向くと、お母様だった。
いつも家族に優しいお母様。お父様を立てて三歩後ろに控えて陰で支えている姿は、そうね、前世で見たドラマの典型的な昔の人みたい。
いや、今のこの世界では、女性というのはそういうものなのかもしれない。
お母様は私の顔を窺いながら話す。
「ねえ貴女、最近本当にどうしたの? アデライトの用事やお茶会の準備もしてくれないし、この前ジェイコブに……暴力を振るったらしいわね? お父様もカンカンに怒ってるわ。とにかく一度みんなに謝りましょう」
「嫌です。お母様は何を見て聞いて、私に謝れと言ってるのです?」
「ソフィア、お父様は怒ってるわ。お父様やジェイコブの言う通りにしなければ――」
笑えてきた。
何を謝罪しなければならないと考えているのかと質問しているのに、父が兄が、としか答えない母親を見て、私はクスッと笑ってしまう。
そんな私をお母様は不思議そうな顔で見る。
「……ソフィア? 何故、笑ってるのかしら。私の話を聞いてるの? 貴女の悪い噂ばかりが流れてて、お父様たちが困ってるわ」
私はフウとため息を吐き、別の質問をしてみた。
「お母様は私の好きな食べ物をご存じですか?」
「……え?」
「私の誕生日は覚えてます? 知りませんよね。毎年毎年、ジェイコブお兄様の大会やアデライト姉様とのお茶会、買い物、看病などを優先しているもの。それに私の部屋に一度も来たことがありませんよね。私の部屋がどんな感じか、お分かりですか?」
「貴女はとても素直で、なんでも言うことを聞いてくれていたのに……どうしたものかしら。家の仕事を手伝ってもくれないなんて、お父様が怒るわよ」
「……ふふ、お母様ってご自分の意見をお持ちではないようですね。本当につまらない人だと分かりました」
私の言葉に、お母様は顔を真っ赤にする。
「お、親に向かってなんてことを‼」
「事実でしょう? お母様は何もできない、何も意見のない空っぽな方です」
この人は、とにかく人の顔色を窺ってばかりだ。自分が周囲にどう見られるかを重視して、私のことなど何も考えてくれなかった。
風邪が酷くても気にかけてさえくれない。
小さな頃、誕生日を祝ってくれたのは、メイド一人だけだった。
どんなに私が母親の愛情を欲しがっても、手を差し伸べてくれない。
私が冷たい眼差しを送ると、お母様は目を逸らす。だから、私はお母様を無視して図書室に向かう。
お母様はただ、黙って俯いていた。
沢山の本に囲まれて気に入ったものを読もうと開いた時、珍しい人が現れた。
アデライト姉様だ。
「……夜更かしのせいで、寝不足なのでは? まだ寝てなくていいんですか、アデライト姉様?」
「あら、ふふ。何を言ってるの? ……ねえソフィア、今度、仲直りに二人でお茶をしましょう?」
「いえ、結構です」
彼女のお誘いをぴしゃりと断る。
シンと静かになるものの、アデライト姉様はめげずにニッコリと私に微笑みかけた。近くにあった本を手に取り、ページを一枚一枚めくる。そして、話を始めた。
「……そういう反抗的な態度は良くないわ。そういえば昔、私やお父様たちに反抗的なメイドが一人だけいたわね。『ソフィアお嬢様を蔑ろにしすぎてる!』って、うるさかった。なんだか彼女を思い出しちゃったわ」
「……は? なんの話を……」
「私ね、それがとても腹が立ったの。妹のソフィアをみんな可愛がっているのに、意味が分からなかったわ。だから、お母様の宝石をそのメイドのポケットに入れておいた。ねえ、その後、そのメイドがどうなったと思う?」
私が五歳くらいまでは、この家に優しいメイドが一人いた。幼い頃に別れてしまったきりなのでもう名前も思い出せないけど、本当に優しい人だったのは今でも覚えている。
ある日、彼女は突然、屋敷からいなくなったのだ。
それって……
アデライト姉様は私に微笑み続ける。
「ふふ、辞めさせられたのよ」
「え、ちょ――⁉」
不意に彼女は、自分が持っている硬い本を自分の顔にぶつけた。アデライト姉様の額から血が流れ出る。
意味が分からない。頭がおかしくなったのかしら⁉
呆然とする私の前で、アデライト姉様はうるうると涙を流した。
「メイドを辞めさせたのは私なの。ごめんなさい…………ご、ごめんなさい!」
美しい顔を涙で濡らし、本を置いて図書室の外へ出る。近くにいたメイドたちがアデライト姉様の額に流れている血と目から零れる涙にビックリしていた。
同時に、片手に本を持っている私の姿も見られる。
今の屋敷内で、私は完全に悪だ。
「……はあー……なるほど。アデライト姉様は女優ね」
やっぱりアデライト姉様は私を悪者にしたいみたいだわ。
喧嘩売ってきたのよね? これ。
「……本当、面倒な姉だわ」
そう呟く。
その様子をコッソリと小さな我儘末っ子が見ていた。
アメリは絵本を両手に持ち、顔を青くする。
「……姉様たちが喧嘩してる! これは人参の呪い⁉」
慌てた様子で散らばっていたお菓子を自分のポケットに入れ、アメリは急いで図書室を出ていったのだった。
◇ ◇ ◇
――現在、私は何故かお父様たちに呼び出されていた。
お父様はふんぞり返ってソファに座り、その隣でアデライト姉様がハンカチを握りしめて涙を流している。そんなアデライト姉様の肩を抱き、お母様は優しく寄り添っていた。ジェイコブお兄様もお父様の逆隣に腕を組んで座っている。
一方、私は立たされていた。
お父様は顔を真っ赤にして腕を組み、私を怒鳴りつける。
「お前は頭がおかしくなったのか⁉」
「いいえ。頭がおかしくて残念なのは、お父様のほうでは」
私はチラリとお父様のとても薄い髪の毛を残念そうに見る。
もうハゲなのは確かなんだから、少ない毛をそんなに頑張って集めなくても良いのに……
そう考えていると、ジェイコブお兄様が「バン!」とテーブルを叩いて怒鳴った。
「ソフィア! 最近のお前は本当にろくでもないぞ⁉ 俺にだけならまだしも、アデライトにまで手を出すとは! なんて妹なんだ! 家族に手を上げるなんて!」
それ、貴方が言う台詞なわけ?
私は拳を握りしめてキッとお兄様を睨む。ジェイコブお兄様は咳払いをしながら、目を逸らした。
ジェイコブお兄様は一体何がしたいのだろう。意味不明なので、本当に黙っていてほしい。
私は泣いているアデライト姉様にチラッと視線を向けた。
姉様は私に怯えている様子を見せる。
「私はアデライト姉様に暴力を振るってなどおりません。ご自分で傷をつけたんです。頭がおかしいのはアデライト姉様ですわ」
そう説明すると、お父様とお母様は私を化け物でも見るかのような目で見てきた。
「ソフィア! なんという態度だ。嘘まで吐くとは、反省しろ。とりあえず……まだ夏休みだ! その間、シリウスの所に行って頭を冷やせ‼」
お父様の言葉に、すかさずアデライト姉様が割って入る。
「お父様! シリウス伯父様は変わった方で、既にマカロン家の者ではないわ! 可愛いソフィアが可哀想よ!」
「アデライト……こんなことをされたのに、なんて優しい子なんだ」
「それに比べてソフィア……お前は」
私がウンともスンとも返事をしていないのに、アデライト姉様は前に出て、妹を庇う優しい姉を演じた。そんな姉様を見て、お父様たちが感動したように涙ぐむ。
「え? そこ感動するところです?」
その一言に、お父様はプルプルと真っ赤な顔を小刻みに震わせる。少ない髪の毛が猫のように逆立っていた。
「うるさい! ソフィア! お前は夏休み明けまで、あの馬鹿兄貴だった奴の所にいろ! そこで充分反省するんだ!」
「まあ! 馬鹿兄貴とは、ジェイコブお兄様のことでは?」
「「ソフィア‼」」
お父様とジェイコブお兄様は更にヒートアップする。お母様は悲しそうな顔をして、アデライト姉様は……困った顔をしつつも口元が笑っていた。
「……分かりました」
今の私には、反撃できる武器が何もない。
残念だけど、あるのは口だけだわ。
とりあえず、伯父様の家で謹慎しろ、ということね。
シリウス伯父様――一度も会ったことのない、お父様のお兄様。本来ならマカロン家を継ぐはずだった方だけど、変わり者? らしく、絶縁されたと聞いている。
絶縁した人の所へ行けというのは、本格的に私は見捨てられたってことかしら?
構わないけど、うん、そうね。やられっぱなしと言われっぱなしは身体に悪い。
私は部屋を出る前に、お父様に近づく。
お父様は私が泣きつくのだろうと思っているみたいだけれど、違うわよ。
そっと手を伸ばして、一気にお父様の髪の毛を引っ張った。
ブチィ‼
「ぎゃあああああ‼ わ、わわわ私の髪の毛が‼」
「きゃあ! お父様⁉」
「あわわわ‼ ちっ、父上!」
見事に綺麗なハゲができて、スッキリしたわ。
「ソフィア! お前は悪魔か‼ 私の大事な髪の毛があ!」
「天からの声が聞こえたの。そのウザったい髪の毛を引っこ抜けと」
「……何、馬鹿なことを言ってる⁉ あわわわ! く、薬を! せっかく、生えてきそうだったのに! 何をしている、早く毛生え薬を!」
私はお父様の肩をポンと叩いて優しく教える。
「お父様、既に毛生え薬は全て捨てましたわ」
「なっ……え、ちょ……あれは凄く高い……」
「捨てました」
そこで私は、みんなにレディらしくお辞儀をした。
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