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アデライト 逆行復讐編
アデライトの仮面
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「アディー、元気?」
「‥‥‥まだ具合が悪いわ」
「そっか」
朝と学園が終わるとルカは必ず私の部屋の前まで来て声をかけてくれている。無理矢理部屋に入るわけでもなく、私達はドア越しで話しをしていた。ルカのお店の繁盛が良い事や、学園の事、最近ルカのお母さんとマックスがようやくデートをしたという、たわいもない話ばかり。
‥‥気を使ってくれてるのね‥‥。
「あ、そうだ。アディーが興味ありそうな美容に良い薬草学の本があったからドアの前に置いておくから後で感想を聞かせてね。約束だよ」
「‥‥‥わかったわ。ルカ‥‥ありがとう」
「うん、どういたしまして」
そう声を聞いてルカは帰っていった。
キィとドアを開けてルカがもういない事を確認して本を手にする。
「‥‥花の女神と呼ばれていた私が‥‥引きこもりだなんて笑えるわね」
私が醜くなったと世間ではずっとウワサされていた。「ルチータ王子の婚約者を狙って罰が当たった」という声もある。
友好国となったフォース国とは少し気まずい関係ともなり、フレデリック王子とルチータ殿下は特に問題がないと仲良くアピールはしているみたいね。
因みに私の信者というべき者達もちらほらいるようだけど‥‥とにかく、ルカだけにはどうしても、こんな顔を見せたくないのよね。
「ふふ、惨めで情けない私ね‥‥」
「にーんじんを食べましょう♫たべましたあ♪今日もー明日もー王子さまーのお嫁さんにーなるんだよぉお♪あ!ルカ兄!」
アメリーは後ろ姿のルカを見つけて話しかけた。ルカの手を握ろうとした時、ピタッと止まるアメリーに、振り向いたルカが首を傾げながら微笑み返した。
「アメリーちゃん、こんにちわ。ん?顔になんか付いてるかな?」
「‥え、ううん。カッコいいよー、4番目だけど」
「あはは、僕4番目か」
「‥‥一番はルチータ王子で、二番は、アル兄なの。で、三番目はジェイコブお兄さま‥‥ルカ兄、コレあげる!私お手製のお花の香りをしたお守り!」
「匂い袋だね。ありがとう」
「うん、バイバイ、またね‥‥」
そうルカが帰る様子をアメリーは心配そうにジッと見つめていた。
「‥‥‥うーん、目が笑ってなかたなあ。なんか‥‥やらかしそうな顔してた。うん」
そう呟いていた。
真夜中の夜、何故か胸騒ぎがした。
「‥‥水‥‥」
チリンと呼び鈴を鳴らしてもメイドが来る気配もなければ、いつもなら邪魔なあの三人の誰かが私の部屋にいるのに、兄と妹達もいなかった。
まだ歩くには全身が痛いけれど、部屋に出て廊下を歩いていると、外から声が聞こえた。
ジェイコブお兄様とソフィアに‥‥青ざめたルカのお母様とルカのお母様をなだめていたマックスもいた。
「‥‥‥あれは‥‥ルチータ王子とアルフレッド王子‥‥それに王族直属の騎士団?」
嫌な予感がするわ‥‥。ずっと前から警戒をするべきだった。私らしくもなく、ぬるま湯に浸かっていたから‥‥大きな落とし穴を見失ってんだわ‥‥。
「ルカが!突然知らない人達に襲われて‥‥ルカは私の背中を押して隠してくれたのだけど‥‥お、お願いします、私の息子を‥‥ルカを‥‥助けてください。なんでもしますから!お願いします!」
「お、落ちついてください!犯人はもうわかっているので‥‥!ルチータ王子!これは、、」
「うん、フレデリック王子達も彼を探してる。遠くには行ってないはずだから、今はこんなに騒いでしまったら彼女が起きてーー‥‥おや‥まいったな」
ルチータは罰が悪そうな顔で屋敷の玄関先で包帯姿のアデライトを見つめた。
ソフィアとジェイコブはハッ!と後ろを見てアデライトがいる事に驚いていた。
「‥‥‥‥‥どういうこと?‥‥‥ルカ‥‥‥
【また】‥‥拐われたの」
ソフィアは私の元へ駆け寄り、体を支えてくれた。駄目だわ。全身が寒くて震えてる‥‥。
また、殺されるの?そうなる運命なの?いいえ、運命などそんな言葉は嫌い。違う‥‥
殺されてなんかいない‥‥
嫌‥‥
嫌だ。
私は‥‥まだルカと‥‥会えてないわ‥‥。
「‥‥ルカと‥‥約束をしたのよ。私に美容のいい‥‥いい本だと渡して‥‥‥‥だから‥‥私、無視してたから‥‥謝って‥‥‥うっ‥‥」
目の前が真っ暗だわ。泣きたくもないのに、涙が沢山でた。
色々な人間を虐め、殺していった私が泣くなんて、誰も許さない筈。許してはいけない。
どんなに叫んでいても、私にこんな事を言う資格なんてない。
「アデライト、大丈夫さ。僕が直ぐに見つける!」
「アデライトお姉さま!泣かないで!人参たべる?食べて元気だして?」
「アデライトお姉様‥‥必ず見つかります!だからーー」
喚いても、見苦しくても、醜くくても良い‥‥‥
だから、どうか‥‥‥一度だけ‥‥
「‥‥い‥‥ごめ‥‥‥んなさ‥」
必死にソフィアの腕を弱々しく震えて掴むアデライトにソフィアは戸惑っていた。
「‥‥‥ソフィア‥‥‥私は貴女が羨ましかったわ‥‥‥私よりも真っ直ぐで、美しくて‥‥‥わかってたの、あの時も、正しいのは貴女だった!!いつも‥私の影にいた貴女だったけど、結局‥‥貴女が眩しかった!!ジェイコブお兄様やアメリーにも‥‥酷い事をしていた‥。沢山アメリーを叩いたわ!アメリーが泣いてても、私はその分笑ったわ!ソフィアに嫌がらせをしていたのも、ジェイコブお兄様の殻を閉じ込めたのも!!馬鹿にしたわ!
全部私がやったわ!!」
「‥アデライトお姉さま?私アデライトお姉さまに叩かれたことないよ??」
「いや、僕はあるけどな。でも、僕の趣味を馬鹿にしたかもしれないが‥‥いつも黙ってお菓子を食べてくれたじゃないか」
違う‥‥今のあなた達じゃない。前の‥‥前のあなた達に私はどれだけ酷い事をしていたか数えきれないほどしたのよ。それが楽しかったのよ。
私は深々と頭を下げた。
「‥‥‥‥私が悪い女性なのは自分自身わかってるわ。でも‥‥‥お願い‥‥‥ルカを助けて‥‥お願い」
クシャクシャな顔と、動いたせいか、包帯はとれて火傷の跡を兄妹達に見られてるのにもかかわらず、土下座をしながら泣いて何度も謝るアデライトに、ソフィアはぎゅっと抱きしめた。そんなソフィアにジェイコブとアメリーも一緒に抱きしめた。
「アデライトお姉様は確かに性格は少し悪いですね」
「‥‥‥」
「確かに。その自己中な部分を取り除けば可愛い妹なんだけどなあ。僕は我儘な妹をもって苦労するよ」
「‥‥‥」
「ソフィア姉さま!アデライト姉さまの性格は少しじゃなくて、かなーり、性格悪いよ!人参食べないもん!私ね、同い年だったら、絶対ともだちなりたくないもん!」
「‥‥‥」
‥‥なんか涙を流して土下座はらしくなかったような気がするわね。やっぱり私はこの家族はーー‥‥
「「「マカロン家のモットーは、やられたらやり返す!」」」
そうジェイコブお兄様、ソフィア、アメリーは笑って私に話しながら手を引っ張り、立たせてくれた。
「‥‥‥そんなモットー初めて聞いたわね」
「今僕達が決めたんだ。僕は次期マカロン家当主だろう?なら、決まりは僕が決めるのさ!」
「あ、アデライトお姉さま。たぶん、ルカ兄に場所わかるよ?すこーし目印つけておいたの!よく、ルチータ王子にも別な目印を持たせてたんだけどね!余ってたやつルカ兄に持たせてるはずだから居場所わかるよー!」
どうやら、いつもルチータ王子に特殊な匂い袋をもたせていたアメリー。いつどこにいるかわかるためとそう話すアメリーに、ルチータ王子は「これのことか」と呆れて固まっていた。
ずっと黙っていたアルフレッド王子が私の方へと近く。
「‥‥‥‥これ。ルカが特注でアンタに買ったもの。結構デザインも悩んでた」
そう私に話して渡したのは、半分顔が隠れる仮面だった。白と薄くひまわり模様のあるものだった。
ルカはいつも私に向日葵のようにキラキラしていると言っているけれど、私にとって貴方の方が向日葵のようよ。
今ここで泣いてもしょうがない。誰かに縋って泣いてお願いするなんて‥‥私のプライドが許さないわね。
私は仮面をつけて決意した。
「なんで、私はついてっちゃだめなのー?!私役にたつよ!?ジェイコブお兄さまと、ソフィア姉さまは、あまり頭つかわないでしょー?すぐに頭に血が昇って誰が止めるの?ここは兄妹末っ子のアメリー・マカロンに任せて!」
「我儘を言わないで、貴女はアデライトお姉様と屋敷で待機しててちょうだい。ジェイコブお兄様も甘やかしてはいけないですよ」
「う、うむ。そうだな、可愛い天使アメリー、僕達は行ってくるから‥‥さあ、アデライトもーー」
そうジェイコブが振り向くと、アデライトは騎士団の馬に乗っていた。
「ふふ。愚図過ぎるわよ、早くあなた達も準備なさい」
「あ、アデライト?あれ、いつのまにフードを着て‥」
「二度言わせないで、早く出る準備なさい。そこの王子二人も、全員」
冷たい眼差しを放つアデライトに、何故か近くにいた騎士団達は顔をこわばらせた。
「アデライトお姉様、無理はしないようにしてくださいね」
「ふふ、ソフィアの割に気がきくじゃない。鞭ね‥‥」
アデライトに鞭を渡し、アデライトの隣には、しれっと馬に乗っているソフィアもいた。そんな二人にジェイコブは冷や汗を垂らした。
「あ、アデライト‥‥ソフィアもだけど、僕は正直二人には大人しく」
「「早く」」
「あ、ハイ。うん。そうだね。みんな行こうか」
ジェイコブは深呼吸しながら編み物をし始め、ルチータ王子とアルフレッドは少し呆れていた。
ルチータ王子はクスクス笑いながらでアメリーに声をかけた。
「頭に血が昇って暴走している姉達がいるみたいだから、末っ子の登場じゃないかな?」
「へへ、あれは無理!!!」
王子二人がいるのにも関わらず、先頭に立って走りだすアデライトの姿がそこにあった。
仮面をつけた【魔女】と、この日からそう彼女は呼ばれる。
「‥‥‥まだ具合が悪いわ」
「そっか」
朝と学園が終わるとルカは必ず私の部屋の前まで来て声をかけてくれている。無理矢理部屋に入るわけでもなく、私達はドア越しで話しをしていた。ルカのお店の繁盛が良い事や、学園の事、最近ルカのお母さんとマックスがようやくデートをしたという、たわいもない話ばかり。
‥‥気を使ってくれてるのね‥‥。
「あ、そうだ。アディーが興味ありそうな美容に良い薬草学の本があったからドアの前に置いておくから後で感想を聞かせてね。約束だよ」
「‥‥‥わかったわ。ルカ‥‥ありがとう」
「うん、どういたしまして」
そう声を聞いてルカは帰っていった。
キィとドアを開けてルカがもういない事を確認して本を手にする。
「‥‥花の女神と呼ばれていた私が‥‥引きこもりだなんて笑えるわね」
私が醜くなったと世間ではずっとウワサされていた。「ルチータ王子の婚約者を狙って罰が当たった」という声もある。
友好国となったフォース国とは少し気まずい関係ともなり、フレデリック王子とルチータ殿下は特に問題がないと仲良くアピールはしているみたいね。
因みに私の信者というべき者達もちらほらいるようだけど‥‥とにかく、ルカだけにはどうしても、こんな顔を見せたくないのよね。
「ふふ、惨めで情けない私ね‥‥」
「にーんじんを食べましょう♫たべましたあ♪今日もー明日もー王子さまーのお嫁さんにーなるんだよぉお♪あ!ルカ兄!」
アメリーは後ろ姿のルカを見つけて話しかけた。ルカの手を握ろうとした時、ピタッと止まるアメリーに、振り向いたルカが首を傾げながら微笑み返した。
「アメリーちゃん、こんにちわ。ん?顔になんか付いてるかな?」
「‥え、ううん。カッコいいよー、4番目だけど」
「あはは、僕4番目か」
「‥‥一番はルチータ王子で、二番は、アル兄なの。で、三番目はジェイコブお兄さま‥‥ルカ兄、コレあげる!私お手製のお花の香りをしたお守り!」
「匂い袋だね。ありがとう」
「うん、バイバイ、またね‥‥」
そうルカが帰る様子をアメリーは心配そうにジッと見つめていた。
「‥‥‥うーん、目が笑ってなかたなあ。なんか‥‥やらかしそうな顔してた。うん」
そう呟いていた。
真夜中の夜、何故か胸騒ぎがした。
「‥‥水‥‥」
チリンと呼び鈴を鳴らしてもメイドが来る気配もなければ、いつもなら邪魔なあの三人の誰かが私の部屋にいるのに、兄と妹達もいなかった。
まだ歩くには全身が痛いけれど、部屋に出て廊下を歩いていると、外から声が聞こえた。
ジェイコブお兄様とソフィアに‥‥青ざめたルカのお母様とルカのお母様をなだめていたマックスもいた。
「‥‥‥あれは‥‥ルチータ王子とアルフレッド王子‥‥それに王族直属の騎士団?」
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「お、落ちついてください!犯人はもうわかっているので‥‥!ルチータ王子!これは、、」
「うん、フレデリック王子達も彼を探してる。遠くには行ってないはずだから、今はこんなに騒いでしまったら彼女が起きてーー‥‥おや‥まいったな」
ルチータは罰が悪そうな顔で屋敷の玄関先で包帯姿のアデライトを見つめた。
ソフィアとジェイコブはハッ!と後ろを見てアデライトがいる事に驚いていた。
「‥‥‥‥‥どういうこと?‥‥‥ルカ‥‥‥
【また】‥‥拐われたの」
ソフィアは私の元へ駆け寄り、体を支えてくれた。駄目だわ。全身が寒くて震えてる‥‥。
また、殺されるの?そうなる運命なの?いいえ、運命などそんな言葉は嫌い。違う‥‥
殺されてなんかいない‥‥
嫌‥‥
嫌だ。
私は‥‥まだルカと‥‥会えてないわ‥‥。
「‥‥ルカと‥‥約束をしたのよ。私に美容のいい‥‥いい本だと渡して‥‥‥‥だから‥‥私、無視してたから‥‥謝って‥‥‥うっ‥‥」
目の前が真っ暗だわ。泣きたくもないのに、涙が沢山でた。
色々な人間を虐め、殺していった私が泣くなんて、誰も許さない筈。許してはいけない。
どんなに叫んでいても、私にこんな事を言う資格なんてない。
「アデライト、大丈夫さ。僕が直ぐに見つける!」
「アデライトお姉さま!泣かないで!人参たべる?食べて元気だして?」
「アデライトお姉様‥‥必ず見つかります!だからーー」
喚いても、見苦しくても、醜くくても良い‥‥‥
だから、どうか‥‥‥一度だけ‥‥
「‥‥い‥‥ごめ‥‥‥んなさ‥」
必死にソフィアの腕を弱々しく震えて掴むアデライトにソフィアは戸惑っていた。
「‥‥‥ソフィア‥‥‥私は貴女が羨ましかったわ‥‥‥私よりも真っ直ぐで、美しくて‥‥‥わかってたの、あの時も、正しいのは貴女だった!!いつも‥私の影にいた貴女だったけど、結局‥‥貴女が眩しかった!!ジェイコブお兄様やアメリーにも‥‥酷い事をしていた‥。沢山アメリーを叩いたわ!アメリーが泣いてても、私はその分笑ったわ!ソフィアに嫌がらせをしていたのも、ジェイコブお兄様の殻を閉じ込めたのも!!馬鹿にしたわ!
全部私がやったわ!!」
「‥アデライトお姉さま?私アデライトお姉さまに叩かれたことないよ??」
「いや、僕はあるけどな。でも、僕の趣味を馬鹿にしたかもしれないが‥‥いつも黙ってお菓子を食べてくれたじゃないか」
違う‥‥今のあなた達じゃない。前の‥‥前のあなた達に私はどれだけ酷い事をしていたか数えきれないほどしたのよ。それが楽しかったのよ。
私は深々と頭を下げた。
「‥‥‥‥私が悪い女性なのは自分自身わかってるわ。でも‥‥‥お願い‥‥‥ルカを助けて‥‥お願い」
クシャクシャな顔と、動いたせいか、包帯はとれて火傷の跡を兄妹達に見られてるのにもかかわらず、土下座をしながら泣いて何度も謝るアデライトに、ソフィアはぎゅっと抱きしめた。そんなソフィアにジェイコブとアメリーも一緒に抱きしめた。
「アデライトお姉様は確かに性格は少し悪いですね」
「‥‥‥」
「確かに。その自己中な部分を取り除けば可愛い妹なんだけどなあ。僕は我儘な妹をもって苦労するよ」
「‥‥‥」
「ソフィア姉さま!アデライト姉さまの性格は少しじゃなくて、かなーり、性格悪いよ!人参食べないもん!私ね、同い年だったら、絶対ともだちなりたくないもん!」
「‥‥‥」
‥‥なんか涙を流して土下座はらしくなかったような気がするわね。やっぱり私はこの家族はーー‥‥
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そうジェイコブお兄様、ソフィア、アメリーは笑って私に話しながら手を引っ張り、立たせてくれた。
「‥‥‥そんなモットー初めて聞いたわね」
「今僕達が決めたんだ。僕は次期マカロン家当主だろう?なら、決まりは僕が決めるのさ!」
「あ、アデライトお姉さま。たぶん、ルカ兄に場所わかるよ?すこーし目印つけておいたの!よく、ルチータ王子にも別な目印を持たせてたんだけどね!余ってたやつルカ兄に持たせてるはずだから居場所わかるよー!」
どうやら、いつもルチータ王子に特殊な匂い袋をもたせていたアメリー。いつどこにいるかわかるためとそう話すアメリーに、ルチータ王子は「これのことか」と呆れて固まっていた。
ずっと黙っていたアルフレッド王子が私の方へと近く。
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ルカはいつも私に向日葵のようにキラキラしていると言っているけれど、私にとって貴方の方が向日葵のようよ。
今ここで泣いてもしょうがない。誰かに縋って泣いてお願いするなんて‥‥私のプライドが許さないわね。
私は仮面をつけて決意した。
「なんで、私はついてっちゃだめなのー?!私役にたつよ!?ジェイコブお兄さまと、ソフィア姉さまは、あまり頭つかわないでしょー?すぐに頭に血が昇って誰が止めるの?ここは兄妹末っ子のアメリー・マカロンに任せて!」
「我儘を言わないで、貴女はアデライトお姉様と屋敷で待機しててちょうだい。ジェイコブお兄様も甘やかしてはいけないですよ」
「う、うむ。そうだな、可愛い天使アメリー、僕達は行ってくるから‥‥さあ、アデライトもーー」
そうジェイコブが振り向くと、アデライトは騎士団の馬に乗っていた。
「ふふ。愚図過ぎるわよ、早くあなた達も準備なさい」
「あ、アデライト?あれ、いつのまにフードを着て‥」
「二度言わせないで、早く出る準備なさい。そこの王子二人も、全員」
冷たい眼差しを放つアデライトに、何故か近くにいた騎士団達は顔をこわばらせた。
「アデライトお姉様、無理はしないようにしてくださいね」
「ふふ、ソフィアの割に気がきくじゃない。鞭ね‥‥」
アデライトに鞭を渡し、アデライトの隣には、しれっと馬に乗っているソフィアもいた。そんな二人にジェイコブは冷や汗を垂らした。
「あ、アデライト‥‥ソフィアもだけど、僕は正直二人には大人しく」
「「早く」」
「あ、ハイ。うん。そうだね。みんな行こうか」
ジェイコブは深呼吸しながら編み物をし始め、ルチータ王子とアルフレッドは少し呆れていた。
ルチータ王子はクスクス笑いながらでアメリーに声をかけた。
「頭に血が昇って暴走している姉達がいるみたいだから、末っ子の登場じゃないかな?」
「へへ、あれは無理!!!」
王子二人がいるのにも関わらず、先頭に立って走りだすアデライトの姿がそこにあった。
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