上 下
28 / 29

夏休みが始まった

しおりを挟む
夏休みが始まりました。以前いた世界では夏休みは2ヶ月ほどだったけど、日本は約1ヶ月しかないみたいね。
由美と文香と買い物へ行く約束、西園寺さんとお団子を食べに行く約束、サッカー部の合宿参加に夏季講習参加など1ヶ月はあっという間のような気がするわ。

真斗はサッカーの練習で部活へ行き、私は宿題を少し進めていた。やはり一人ではまだわからない事もあり、両親には夏が終わったら家庭教師をつけるようお願いしたものの不安だわ。
本屋さんに行ってこようかしら。何度か真斗と行ったことあるし。


「セバスチャン、私本屋さんへ行ってくるわ」

以前真斗と出かけた時、本屋へ寄り道もわかるもの。

「外は暑いでしょうし、お嬢様はまだ乗り物をお一人で乗られるのは無理かと・・・
何か調べ物がお有りでしたら、ご自宅にあるパソコンなどはいかがでしょうか?」

「セバスチャン、私はバスなら大丈夫よ。何回か真斗に連れていってもらったし。それに、私そのパソコンで調べるより沢山の本を見て調べてるほうが合っているわ」

白いワンピースを着て初めて一人で外をでてバスに乗り本屋へ向かった。
馬車でもなく、誰かメイドや付き人がいるわけでもなく、一人で自由に歩ける。誰からも見られず、
素晴らしいわね。


「おい、あそこに歩いてる女の子めちゃくちゃ可愛いくね?」

「モデルかなんかか?」

「俺声かけちゃおかなーめちゃくちゃエロい体だし顔は可愛いってやべーわ」



・・・何故、歩いてると男性方はこちらを見るのかしら。変な格好して、ないわよね?
もしかして、朝から団子を食べてしまったのがバレたのかしら?口の周りには何もついてないし。

本屋へ行き、参考書と料理の本を買い帰ろうとしたとき細い路地裏から猫の叫び声が聞こえた。

「なあなあこの猫の叫び声めちゃくちゃウケるわ!あー受験のストレス発散発散!」

男性高校生数人が一匹の丸々と太った猫を・・・とても酷い事をしているわ!

「貴方!おやめなさい!」

猫を掴んでいた男子学生達は私を見てニヤニヤしながら近づいてきた。

「え?まぢ?可愛いんだけど、タメ?」

タメってどういう意味かしら・・タメ?ため息のため?

「あー猫より君みたいなこと遊びたくなってきちゃった!今からカラオケいかない?ね!」


「猫を虐めていた方と遊びたくもありません!・・・きゃっ!」

男性高校生の一人が私の手首を強く握って離してこなかった。

「あぁ、そう睨まれてもめちゃくちゃ興奮してきたかもー!」

ゲラゲラ笑う男子学生に離して!と叫んでもここは路地裏のため誰も気づいてくれなかった。

その時


「ん?あれー4代目ー!なんか可愛い女の子が絡まれてるっす!」

壁からヒョコっと金髪で少し幼い男子が私を見つけて誰かを呼んだ。

「おいっ、タクヤ!いつもいってんだろうが!4代目ー!きゃー!みたいな呼び方はやめろって・・あれ?

紫苑ちゃん?」


あらまあ、鬼頭さんだわ。

私が彼らに絡まれている事を察した鬼頭さんは、直ぐに私の手首を掴んでいた学生に蹴りを一発入れた。痛そうね・・・

「お前らさ、紫苑ちゃんに何しようとしてたわけ?」

鬼頭さんは一緒にいた友達のほうへ、振り向き

「ヤレ」

そう低い声で彼らに指示をし、私の手を引っ張りだしたが、怪我をしていた猫を思い出し、

「あっ!猫さん・・!」

私は怪我をした猫を抱きかかえ、その場から離れた。

私達は近くの公園へ行き、猫の様子を見ていた。

「猫、怪我してんのか?どれどれー」

鬼頭さんは、近くのお店で消毒や包帯を買ってきて
なんだか手慣れた手つきで猫を手当てしてくれた。

「動物を扱うの慣れているのね」

「ははっ、まあ動物は大好きだからねえー特に猫ちゃんはね」

「まあ、では将来は動物を助けるお医者様を目指してるのかしら?」

そう、私が聞くと、少しだけ困った顔をしながらも笑顔で彼は否定をした。

「・・昔はそうなりたかったけどね。でも家を継がなきゃならないしなあーカタギにはなれないわ」

猫を優しく撫でてる彼は何処か寂しそうに言っていた。カタギとか意味はわからないけれど・・

「何故かしら?」

「え?」

「家を継ぐのは跡継ぎとしては立派だけど、すぐ諦めるのは良くないわ。二つとも欲しいのなら、なりたいのなら、そうするべきよ。何もまだ努力もせずすぐ諦めるのは勿体ないわ」

まだ何もせず諦めて何もならない事より、沢山努力して知識や経験を得て、もし結局動物のお医者様にならなかったとしても価値はあるもの。

そう話をしていたら、鬼頭さんは笑い出した。

「はははっ!いやあ紫苑ちゃんは欲張りな子だね!」


そう二人で話をしていた時、先程鬼頭さんと一緒だった金髪の少年?と黒髪で背が高い方がこちらに向かって手を振っていた。

「4代目ー!終わったよー!帰りましょうよぉ!」

二人は私の元へ駆け寄り

「ちわっ!俺らも同じ学校の者です!てかアンタが噂の紫苑さんなんすね!俺タクヤ!宜しく!」

金髪で耳に沢山飾りをつけているのがタクヤさん。

「・・同じく加藤だ」

黒髪で背が高く無口な感じの方は加藤さんね。


「いやあーさっきさ、執事姿のおっちゃんが現れてすげぇー強かったんだよ!な!加藤!」

「あぁ、あの人は相当なやり手だ」

私達があの場離れた瞬間、私に絡んできた男子学生をお仕置きしたのはどうやら執事姿のオジ様・・?

ん?セバスチャンかしら?

いつのまに・・・


「ねえ紫苑ちゃん、この猫さー俺貰ってい?」

猫を抱き撫でながら私に声をかけた。

「えぇ、別に私の猫でもないですし・・時々見に行ってもよいですか?」

「え?俺ん家?」

だって猫さん気になるんですもの、これ以上太らせたらこの猫大変よ。。

「4代目の家には俺らもいるんでいつでもどーぞ!どーぞ!」

と、明るく返事をしたのはタクヤさんと無言で頷く加藤さんに鬼頭さんは、
「なんでお前らが先に返事するんだよ」と二人に注意していた。
直ぐに振り返って
「うん、いつでもきてきて。むさくるしい奴らばかりだけど、紫苑ちゃんは大歓迎だし。あ、俺のラインとか教えるねえ~何かあったらすぐ呼んでね」

なんともまあ、軽いノリで自分の連絡先を私に教えてきた。あまり携帯を知らないと言ったら私の携帯に自分の連絡先を登録したみたい。

「それと、さん付けはやめてね」

「えと、なんて呼べば・・あ、4代目かしら?」

「それは嫌だなあー千君とかダーリンとかっ」

「・・鬼頭君にしますね」

鬼頭君達は途中まで送ると屋敷の近くまで送ってくれた。


「あの、今日はありがとうございました」

ペコと頭を下げて三人にお礼を言い、鬼頭君は私の頭をポンと撫でて
「うん、こっちもありがとね」

何もしてないわよ?私。

こうして私は三人に別れの挨拶をし、屋敷へ帰っていくと、玄関のホールには、悪魔…いえ、確か図鑑でみたことがあるわ。ツノの生えた怖い生き物。

鬼のような形相で仁王立ちして私をまっていた真斗がいた。
後ろにはセバスチャンもいたわ。

「セバスチャン今日助けてくれたのよね?ありがとう」

セバスチャンにお礼を言っただけなのに、真斗は
「それ、反則だろ・・」
と、何故か、顔を赤くして怒っていたわ。

この後私は初めてお説教をしてもらった。

真斗には何故か迷子カードとやらを持たされた。


夏休み1日目、色々あったわね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。

ゆちば
恋愛
ビリビリッ! 「む……、胸がぁぁぁッ!!」 「陛下、声がでかいです!」 ◆ フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。 私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。 だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。 たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。 「【女体化の呪い】だ!」 勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?! 勢い強めの3万字ラブコメです。 全18話、5/5の昼には完結します。 他のサイトでも公開しています。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

処理中です...