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銀髪の方がマシ

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「いいか、誰とも喧嘩をするな。むやみやたらと物を投げるな。授業中はお菓子を食べては駄目だからな」

「‥‥あんたが私に喧嘩を売ってる事だけはわかったわ。お、お菓子なんか食べないわよ!あ、ちょ、まって!何急にポケットをーー」

無言のまま、私のポケットに手を突っ込むシリウスはチョコと飴を持っていく。あぁ、やはりこの男は冷たいやつだわ。チョコの一つや二つや三つ!!授業中は何を楽しみにしてればいいわけ!?

「とにかくもう教室へ入るわよ!」

教室へ入るとザワザワと賑やかだった声が静かになり、皆私の顔色を伺っていた。城と同じくここでも腫れ物扱いみたいね。窓際の後ろの席には、そばかす顔の女子生徒であるクラリスさんもいたから声をかけようとしたら、彼女に目で訴えられた。

【絶対、声かけてこないでくださいねー?】

うーん、そんな圧を感じるわ。私の後ろにいたシリウスは、自分の席に座りクラリスさんを無視していた。

「レテシア、立ったまま授業を受けるのか?座れ」

「ねえ、クラリスさんとはお互い無視してるの?」

「‥‥っ耳元で話すなよ!」

「は!?大きい声で話すと駄目かと思って小声で話しただけじゃないの!」

遠い席で喧嘩をし始めるレテシアとシリウスを少し呆れた顔をするクラリスだった。

「マリア嬢だ!」

「マリア様!おはようございます!」

「今日も美しいですわ!」

‥‥彼女が現れるとクラス中が明るくなっていた。この学園の生徒達は、今の王族をよく思っていないようで正教会というより、マリアを崇拝している。

‥なんだろう。色々と違和感を感じる事があるのだけど、考え過ぎるとまた熱が出そう。

マリアをエスコートして現れていたのは、かつての婚約者だったユウリだ。
回帰前、私が城で遊んでた時から二人はこうやって仲良くしてたのねえ。
同じクラスって、神様って絶対性格が悪いわね。

「レテシア姫様、おはようございます」

そう私に優しく声をかけてきたマリアとユウリ‥‥。

独りぼっちだった私に手を差し伸べてきて、あの時、どれだけ救われたか‥。
それが全て嘘だった。

「慣れない学園生活ですので、一人では心細いかと。学園の案内を僕がしたいのですが、どうでしょうか」

一人?今の私は‥‥今の私には‥

「その必要はないわ。学園の案内はシリウスにしてもらうから」

「‥彼がですか?レテシア姫様はあまりご存知ないかもしれませんが、彼はアルファス王子を支持している方でーー」

「だからなに?私の顔色を伺う人達よりかはよっぽどマシよ」

そうキッパリと断わると、ユウリの顔は一瞬‥‥歪んでいた。爽やかな笑顔が簡単に崩れてるわ。マリアは私達の間に入り話す。

「そうだわ!レテシア姫様!私がお世話になっている正教会主催で教会近くにある村へのボランティアへ行くのですがどうです?アルファス王子様とご一緒にレテシア姫様もーー」

「お兄様は一緒に行くと?私行かないわよ」

「まだ返事はいただいてはいないのですが‥‥やはり姫様には貧民村など興味がないのですよね」

「いや、あなた達に興味ないわ。正教会近くの村‥‥ん?その村の名前は?」

「コメコ村です。あぁ、でもレテシア姫様は城の外に出た事がないから、無理はしないほうがいいですわ」

そう話す時予鈴がなりマリア達は自分の席へと戻る。

誘っておいて、やはりお前は世間知らずの姫だとみんなに見せているようだけど、コメコ村。コメコ村‥‥って確か‥えーと‥‥

【僕はコメコ村の出身さ。あんたに言っても忘れてるんだろうけど、僕達の村が餓鬼で酷く病気で苦しんでいるとわかってて何も対策をしていなかったじゃないか!無能な王子も姫もいらないんだよ!】

思い出したわ!!!反乱軍のリーダーがいた村だわ!

ジーと私を見つめるシリウスの視線に気づいた私はシリウスに声をかける。

「なに?隣りの席が嫌なのはお互い様でしょ?チョコも食べないわよ」

「見た目は好みだろ」

「何が?」

「ユウリ•ディアデム。見た目は好みだろうなって」

確かに。ドンピシャね。サラサラの髪にタレ目な感じに物腰が柔らかい感じは‥‥。

「確かにあんたとは正反対ね」

「うるさい。この後学園の案内とかしないぞ」

何を苛々としているんだか、たまにわからないけど‥‥確かに昔はそうだったかもしれない。好みとかはもうよくわからないけど‥‥

「‥‥金髪サラサラより、あんたの癖っ毛ある銀髪の方がマシよ」

そう私が微笑んで褒めたのに、シリウスはただ黙って本を読み始める。腹立つわね!!?



遠くの席から眺めていたクラリスは、耳が微かに赤くなるシリウスを見て笑う。


「はあー青春だなー」

そう呟く。















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