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学園の聖女様vs我儘お姫様

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城の廊下でマリアは悔しそうな顔をしていた。

「マリア嬢、今日も美しいですね」

そうマリアに声をかけてきたのは、ユウリ•ディアデムだった。マリアは彼を見て溜息を出したあと笑顔を向ける。

「ふふ、私をそう心から言ってくれるのは、ユウリ様だけだわ」


こうして賑やかな誕生日パーティーが終わった。

夢を見た。あの生々しい出来ごと‥‥処刑された日をまた見る。

『殺せ!女王を殺せ!!』

無能な女王を殺せと。
私を嘲笑うあの二人が昨日の事のように思う。

ありのままの私が好きだと言ってくれていたのに‥‥私は‥‥

「ハッ‥‥!」

バッと目が覚めると、今が現実なのか夢なのかいまいちわからない。時計を見るとまだ朝方四時だった。

「‥‥毎晩毎晩‥‥最悪な夢ね。情けない‥‥」

今日から学園へ通う事となり、私は早く制服に着替えて準備をし、一緒に通う事となるシリウスを待っていた時だ。

「本当に学園へ通うのだな」

あまり顔を合わせたくない人の声だった。

「‥‥おはようございます。お父様」

お父様は少し怪訝な顔をしながら話す。

「‥気まぐれかもしれないが、王族としての自覚があるなら少しは私を期待させてくれ」

「私は別にお父様からの期待なんていりませんけど?」

「な‥‥、」

私は別に褒められたくて、学園へ通うわけじゃないしね。そのままお父様を無視して外へ出ると、シリウスが驚いた顔をしていた。

「‥‥早いな。朝は弱いはずなのに。朝は食べたのか?」

「肉を三枚食べたわ」

「‥‥朝から‥‥はあ。聞いた俺が馬鹿だった」

朝からシリウスの小言がうるさいけれど、少し眠いせいか私は黙って一緒に馬車へ乗り学園へと向かう。

「‥‥一つ忠告する。学園へ通う事になるけど、全員がお前の味方だとは限らないぞ」

そう本を読みながら私に話しかけるシリウス。

「私が友達作りにでもいくと思ってるの?」

「違うのか?」

少し沈黙が続く。沈黙が続いてもシリウスはまた何か聞き出すわけでもなくまた本を読み始める。本当にいつもしつこく文句を言うのに、こういうときはあまり聞いてこないのよね。泣いた時も、何かする時も。

「アルファス兄様を次期国王にする為よ」

そう私が答えると、シリウスは本を読むのを辞めて私の方を見る。

「‥‥その発言は危ないぞ」

「今この馬車にいるのはシリウスと私だけじゃない。今のお兄様には確かにお父様という強力な後ろ盾はいるけど、まだ正式に王太子として任命がされてないもの。お兄様を次期国王にするのを反対にしている貴族が沢山いるからね。おおかた、操りやすい私を王にしたい人達がいるからね」


国の事を丸投げして、遊んでいた私だったものね。

「私は面倒な事は嫌い。大嫌いだけど‥‥
アルファスお兄様を助けたいのよ。少しは勉強もして、手助けできればなって」

「自分は王に向いてないと?」

「向いてないわ。自分の事は一番わかってる。私が王なんてなってみなさい。‥‥反乱されて国がボロボロになっていくだけよ。シリウス、あんたもお兄様になって欲しいから影でコソコソ何かしてるのを知ってるわよ」

そう言い切る私にシリウス少し溜息を出す。

「‥‥そうだな。俺はアルファス王子を支持している」

「お兄様を守ってあげてね。ほら、学園に着いたわ」

白を基調とした建物だ。貴族と成績が優秀な平民も通える学園ね。以前の私は平民と一緒に通うなんて嫌と言っていたっけ。

「ある意味懐かしいわね」

「何が?」

「別に、さあ!いざ行くわよ!」

「急に声を出すな。耳が痛い‥‥」

私達が馬車へと降りて門をくぐると、生徒達の視線が突き刺さる。

私がなんでいるんだ?という生徒と
シリウスを見つめている女子生徒達もいた。え、シリウスのくせにモテるわけ?陰険眼鏡なのに。家柄ね!それしかないわ!

中へ入ろうとしていた時だ。フと庭先でマリア達が見えた。

「‥‥マリア」

そう私が呟くとシリウスはマリアの方を見る。

「もう一つ忠告。あの女は蛇みたいな奴だ。今は何も問題を起こすなよ。周りは彼女を崇拝している者達だらけだからな」

「‥‥‥‥知ってるわ‥‥」




そばかす顔の女子生徒一人が何故か泣いていた。そんな彼女をクスクスと笑う学生達に違和感を感じる。

「クラリスさん!貴女がマリア様に嫌がらせや虐めてたなんて酷いことするのね!?」

「ち、違います!私はただ‥‥」

「コレだから平民は!!」

あのそばかす顔の子‥‥

「シリウス。あの生徒‥‥誕生日パーティーでお兄様と踊った子じゃない?」

「よく覚えてるな」

二度目だからね。覚えているわ。パーティーで私が馬鹿にした相手だもの。

平民の子を招待して踊るなんて王族として恥ずべきだとお兄様に文句を言ってた。そして嫌がらせかのように問い詰めましたとも!

「みんな!やめて!彼女は悪くないわ」

潤んだ目で女子生徒を庇うマリアに、生徒達は感心する。マリアは取り巻きであろう女子生徒に目配せをした後、取り巻きの一人がカビたパンをそばかす顔の女子生徒に投げつけた。

「ねえ、ならこのパンを食べてみてよ」

クスクスと笑いだす生徒達に、地面にうずくまるそばかす顔の女子生徒は泣きながら、震えた手でパンを取る。

「シリウス‥‥これがこの学園の過ごし方なの?」

「いまだに格差が凄いからな」

「私を見てるようで‥‥腹が立つわ」

「あ、おいっーー」




そばかす顔の女子生徒がカビたパンを食べようとした時、ザワザワと生徒達が騒だす。
スッと彼女が持っていたパンを取り出したのは、レテシア姫だったからだ。


「レテシア姫様がなんで‥‥」

「今日から学園へ通うみたいだぞ」

「あの我儘姫が‥‥?」


黙ったままパンをもつ、レテシア姫に生徒達は戸惑っていた。


「このパン」

「「は、はい?」」

「カビてなんかないわよ。ただの硬いパン。本当に、カビてたら、黒くなったりするもの、アレを食べたらお腹を壊すわよ」

牢獄で食べていたパンと比べると、まだこんなの可愛いもんよ。

「ほら、大丈夫だから。貴女も一度食べて見なさい」

そう私が彼女に渡すと、女子生徒達は半泣きをしながら逃げていく。え、なんで逃げるのよ。まだ食べれるわよと教えただけじゃないの!!

「レテシア!お前何してるんだよ」

「私はただ食べれると言っただけよ!これはカビパンじゃないわ!」


そうシリウスと話す私の前にマリアが話しかけてきた。

「レテシア姫様‥‥流石にそんな酷い事を強要したくありませんわ」

「ならば、何故取り巻き達を止めなかったの?」

「か、彼女達は友人です!」

「友人ならば、すぐに止めるべきでしょう。お優しい聖女と呼ばれているマリアさんはただニヤけて一緒に笑っていたかと見えたもの」

「‥‥なっ‥私はただ‥‥」

突然泣き出すマリアを無視して、私は疼くまっていたそばかす女子生徒に一応ハンカチを渡す。

「‥‥あ、ひ、姫様‥‥あ、ありがーー」

「これ、カビパンじゃないわよ」

「へ?え、あ、ハイ‥‥」


グイッと私の手首を掴むシリウスと私はその場から立ち去る。

学園初日、何故か私はマリアを泣かせた事になったようだった。

コレを後に、カビパン事件と皆呼んでるらしい。カビパンじゃないのに!



































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