我儘姫の二度目の人生は愛されちゅう?!

くま

文字の大きさ
上 下
2 / 16

回帰前 裏切られた女王

しおりを挟む
遠い昔の記憶を思い出す。病に侵された腹違いの兄アルファスお兄様によく言われていた。

『レテシア、よく周りを見て、聞いてみてね』

『は?何をですの?王位継承権をもつ私が邪魔なのでしょう?』

『違うよ、レテシア。私はーー』

何故かお兄様は困っていた顔をしていた。今なら、なんとなくわかる。

わかるわ。

お兄様‥‥今私は民衆達の前で処刑台に立たされています。



『この税金泥棒が!』

『悪魔な女王め!』

『優秀だったアルファス皇子を殺したのもその女だ!!』


いつものように過ごしていたら、私を女王と認めない反乱軍とらやに攻められ捕まってしまった。

ずっと牢にいれられたから、お腹が空いたわ。カビパンではなく、甘い蜂蜜パンが食べたい。


「殺せー!無能な女王など必要ない!」

ボロボロになった私に石を投げつける民と、反乱軍のリーダーと思われる青い髪色の青年が私を睨んでいた。

「ふん、ようやく僕達の恨みを晴らす時がきた」

「恨み?私は貴方なんて知らないわ!なんの恨みをーー」

「‥‥っ、僕はコメコ村の出身さ。あんたに言っても忘れてるんだろうけど、僕達の村が餓鬼で酷く病気で苦しんでいるとわかってて何も対策をしていなかったじゃないか!無能な王子も姫もいらないんだよ!」

「きゃっ!!」

私の頭を鷲掴みにしてから地面に額を強く当てられてしまい、血がぼたぼたと流してしまった。

「なんで泣いてるんだよ!泣きたいのはまわりにいるみんなだぞ!」


そう青年が騒いだ後、誰かがやってきたのか彼はハッと気づき頬を染めてから膝をついた。反乱軍達もザッと膝をついて頭を下げ民衆達はワアと歓声を出していた。

私の目の前には‥‥愛する婚約者ユウリ•ディアデム様。

アルカイド帝国、次期国王になるのではないかと期待されていた優しい兄が亡くなり、勉強も政治もろくに分からない私を支えてくれたのは、いつもそばにいてくれて頼りになり、憧れだった人。




「な、‥‥なんっ‥‥」

「あぁ、ようやくだよ。僕を馬鹿にしていた兄や父上も殺し、ようやく、この国は私達のものになったよ」

僕達?‥‥何を言ってるの?

彼の隣りにいたのは正教会で皆から、聖女と呼ばれ慕われている‥‥マリア嬢だった。

マリアは私の方を見て涙を流がしながら笑う。

『最後に‥女王様に神のご加護をお祈り致します』

何故貴女がユウリ様の隣りに、腕を絡みくっついてるの!?

「「革命だあ!これからは聖女マリア様とユウリ様がこの国の王と王妃だ!新しい国だ!!」」

そう歓声をあげる民衆達。

「ふふ、可哀想な我儘お姫様のまま。あの時私を婚約者に選ばなかった皇太子様がいけないのよ。私と婚約すれば教会は後押しをし、確実に王位継承権を得られたのに、あの男は死ぬまで抵抗してむかつくわ」

「お、お兄様は‥病気で亡くなったのではないの?」

私が震える声で話すと、ユウリ様はクスッと笑うだけだった。あぁ‥‥私のしっているユウリ様じゃない。

「‥ユウリ様‥‥私捕まって、ずっと心配してたのよ‥酷い目にあってたんじゃないかって‥‥私‥‥達は来月結婚をして‥‥幸せになってーー」

「あはは!本当に姫様は愚かな。愚かな貴女は可愛いですが、馬鹿はこちらから願い下げですよ。私にはすでに愛してるかたがいるのですから」

そう私の目の前でキスをする二人に私は涙を流した。兄を殺したのも、邪魔な奴を排除したのも、私を孤立させたのも、全てこの為だと嘲笑う二人‥‥。

あの幸せだったのは全て嘘‥‥嘘だった。

「‥‥我がアルカイド帝国軍!!女王様を助けろ!!!!」

聞き覚えのある声が響く。

反乱軍に対し、アルカイド帝国の旗を掲げてやってきた騎士を引き連れていたのは、幼馴染であり犬猿の仲であるシリウス•ラスタバンだった。
鎧を着て剣を握り次々と反乱軍を倒していき、私の元へと駆け寄ってくる。

「‥‥な、なんで‥‥なんで。私の事嫌いじゃん‥」

女王になった時、いや、それ以前から口うるさく反抗的なアイツが嫌いだった。だから私は嫌がらせのようにシリウスを遠い辺境の地へと追いやったのだ。なのに、必死にもがいて助けようとしている。

「‥こんの馬鹿!!!気をしっかりもて!!このアンポタリンが!!!」

「‥‥シリウ‥‥ッ」

あと一歩といったところで‥‥シリウスは胸を刺された。シリウスを指したのはユウリ様だった。シリウスは必死で私の元へと行こうとする。

なんで‥そこまで‥‥。


「まだ帝国に軍を率いる力があったとは。なるほど‥ずっと我々の邪魔していたようですね。昔から貴方だけでしたよ。僕を疑っていのは。いや、死んだ王子もか」

「‥ガハッ!!」

うつ伏せのシリウスは足蹴りにされ沢山の血を吐き出していた。

「馬鹿!!なんでっ‥きたのよ!アンタいつもわけわからないのよ!文句ばっか言って‥意地悪で!なのに‥‥!」

ボロボロと涙を流す私に意識がなくなりかけてるシリウスは鼻で笑う。

「‥‥‥‥ばーか‥‥」

そう呟いて死んだ。

私のせいで。

そして私は、処刑された。

亡くなったお母様、ごめんなさい。
仲は良くなかったけれどお父様もごめんなさい。


‥‥アルファスお兄様ごめんなさい。


国の騎士や民もごめんなさい。

‥‥シリウス、無駄死にさせてごめんなさい。


全て私のせいだわ。



あぁ‥‥真っ暗だ。私死んだのね。天国って何処かしら?いや、地獄?
昔から勉強もせず、怠けてばかりだったし、お菓子ばかり食べていたわ。宝石やドレスばかり買っていた。

シリウスにいつも怒られてたなあ‥‥

私はそっと目を覚ますと馴染みのある天井が見えた。天井の模様は空色模様‥これは女王になる15歳くらいまでの‥‥

「‥‥使っていた部屋だわ‥‥」

え?え?私生きてる?夢?さっき、私は愛する人に剣を向けられて‥‥それで‥‥

ガチャとドアが開くと、昔私がクビにしたメイドがいた。

「姫様、またグーたらと寝てたのですか!?今日はアルファス皇子様とお茶をする予定ですよ?」

「‥‥お兄、様が‥‥」

お兄様が生きている!!!?

「あ!姫様!」

私は無我夢中で走った。まだ病に侵されていないお兄様‥‥!!

庭園へと着くとそこには、お兄様が紅茶を飲んで座っていた。私の存在に気づいたのか、ニッコリと微笑んでいた。

「ハアハア‥‥ア、アルファスお兄様‥‥!!」

私はぎゅっとお兄様を抱きしめている。

「おや、いつも私を無視してたのに‥‥どうしたんだい?」

「生きてるっ‥うぇ‥‥あ、会いたがっだあぁあああ!ごめんなざいっ!ごめんなさいっ‥‥!」

私がワンワンと泣いて、お兄様に、 抱きつくのが珍しいのか、周りにいる護衛騎士やメイド達は困惑していたのにも関わらずお兄様はそっと頭を撫でてくれていた。

「うん?君から私に抱きついてくれるなんて‥‥‥子供のとき以来だね。いや、まだまだ子供だね」

「ぐずっ‥‥りっばなレディよ‥」

あぁ‥‥私は、

ずっと避けてたのは私だったんだわ。


「うるさいよ、国の姫として恥ずかしくねえのかよ。アンポタリン姫」

「‥‥‥うそ。シリウス‥‥?」

「あ?なんだよ。いちゃわりーのかよ」

「うそ‥‥チビで、陰険メガネの変人シリウスも生きてる!!!」

「はあー!?俺はまだ成長期なんだよ!ちょ、てかなんで泣いてんだよ!?」

何故かわからないけれど、私は15歳の時代に戻っていた。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

処理中です...