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ハゲと呼んだから駄目だったのか

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私には家庭教師のアン先生という、物腰が柔らかくとても素敵な女性の先生にレディとしてのマナーや他の勉強を教わっている。それなりに地位が高い貴族のご婦人は働かないのに、アン先生は沢山の令嬢達に勉強を教えている。

「スカーレット、貴女は本当に優秀ですわ」

「ありがとうございます!これもアン先生のおかげです」

そうアン先生に褒められていい気分になっていた時、アン先生は少し浮かない顔をしながら私の頭を撫でる。

「先生、どうされました?お菓子でも食べますか?」

「……ふふ、スカーレットは本当に良い子になりましたね。教え子では一番だわ。…私の弟もだけどね」

「え?アン先生、弟さんいらっしゃるんですか?なら、今度私と一緒にお勉強をしましょう!誰かと一緒にお勉強するのも楽しいですし!」

「弟がいるわよ。父の後妻の子で母親違いだけどとても可愛いらしいこよ。スカーレットと同い年くらいだから、仲良くなれるかしら」

「もちろん!」

そう私が誘ってしまったのがいけなかったとこの時私は知らなかった。

翌日ーー

「スカーレット、こんにちは。この子は私の弟アベル・サンフラン。さあアベル挨拶を」

「こんにちは。スカーレット嬢。アベル・サンフランです」


綺麗な淡い青い髪の毛を束ねている少年…幼さいけれど……この子は…

攻略対象者その2さんじゃない!!?え?あれ、アン先生の弟がアベルなの!?ハッ!アン先生って…確かアン・サンフランだったわよね?サンフランで気付くべきだった!

アベル・サンフランは攻略対象者の一人で女たらしさん。騎士団長の息子であり、将来の騎士として期待されているのを面倒だと思っている時ヒロインと出会い始めて、守りたい子ができ目標に向かって頑張る…という流れ。

「……スカーレットです」

自ら、攻略対象者と接近してしまうなんて私は馬鹿だ!!面倒この上ない!でも、アン先生は嬉しそうにしているし……とりあえずこれは黙ったまま授業を受けるしかないかな?

一時間、私とアベルはアン先生の授業を一緒に受けた。

「私は少し今日の授業内容をスカーレットのメイド長に伝えにいってくるわね。その間二人はここの中庭で仲良くお茶しててちょうだい」

「はい、姉様。そこまでエスコートさせてください」

「あら、小さな紳士様ありがとう」

姉弟の歳の差が離れているせいか、とても仲がよいのね。
アベルは少し先までアン先生をエスコートして見送り、私が座っているテーブルへと戻り椅子へと座り足を組んで一口紅茶を飲みニッコリ私に微笑みながら話す。

「で、スカーレット嬢。何が目的なんだい?」

「え?何が」

「僕の姉様は最近、君の話ばかりしている。気にいっているようだけど…なんせ君は可愛いらしい令嬢とは違うからね」

ハッと鼻で笑いながら私のモジャモジャした髪の毛を見て笑う。うん、いったん殴っていいかな?


「…私はアン先生の授業が楽しいだけよ。今回はアン先生に弟さんがいると聞いて楽しみにしていたけど、ただのシスコンさんだということはわかったわ」

「姉想いなだけだよ。姉様は優しいからね、危険人物かどうか見極めなきゃ」

…いや、シスコン決定だね。なるほど、女性たらしの原因はシスコンのせいでもあるのかな?

バチバチと笑顔で睨みあう私達に、控えていた護衛のナルさんが心配して出てきた。また、怪我をしてしまうのではないかと、大丈夫なのに。

「ナルさん、私は大丈夫よ」

「…しかし、スカーレットお嬢様。この前のように…それにサンフラン家の子息であるアベル様は相当腕が強く、将来我々を超える騎士になると有名な子です」

そうナルさんが話すと、不快な顔をするアベル。

「…いくらモジャモジャ令嬢でも一応女性だから、何もしないよ。それに……僕は騎士にならないよ。弱い護衛さんは黙っててよ」

そうアベルが話すとナルさんは慌てて頭を下げて、3歩後ろに下がる。

「あら、ではお強いというのはただの噂なんですね」

「君には関係ないだろう」

「関係あるわ。我が家の護衛騎士を侮辱したもの。貴方より強いわ」

「じゃあ、証明するために君が僕と闘うのかい?
それとも僕がそこにいる護衛と闘うのかい?」

ニッコリ笑って話す、アベルがとにかく腹が立つわね。私はバン!とテーブルを立ちアベルの口の中にめいいっぱいクッキーを詰め込んだ。

「貴方馬鹿!?まずは私が貴方と闘うって剣で!?負けるに決まってるでしょう!剣なんてわからないもの!それと私の護衛と闘う!?大人と子供で真剣に闘ったらいくら貴方でも怪我をするでしょう!私が強いといっている強さとは、腕の力の事でないわ!

心の強さのことよ!このハゲ!いつかハゲになるわよ!」


「……。」

シンと静かになり、私の後ろにいるナルさんは鼻水を垂らしながら嬉し泣きをしている。やめて、せっかく貴方の強さを証明したかったのに、男泣きはやめてちょうだい。

クッキーをモゴモゴと黙って食べ終わったアベルは少し俯いたまま黙っていた。

「……ぷっ…あははは!」

え、なんで急に笑うのかしら。

「あはは!ねえ、君って根暗で意地悪だと噂だったけど、また違うみたいだね」

「…噂はただの噂でしょ」

「はは、そうだね」

アベルは嬉し泣き中の護衛のナルさんに頭を下げて謝ってくれた。

「すいません、酷い事を言いました。騎士であるという誇りを馬鹿にしたような事を…今度またこちらへ遊びに来たとき手合わせをお願いしてもよろしいですか?」

「アベル様が!?え?私とですか?えぇ、一緒に楽しく手合わせいたしましょう!」


「……え、何。この流れ何。…また来るの?」


私がアベルにそう質問すると、彼はイタズラをするような小悪魔な笑顔を私に向けた。…腹黒だ。絶対アベルは腹黒決定よ!!単純馬鹿な王子とは違う!!


そうこうしているうちに、アン先生が帰ってきた。

「まあ、二人共仲良くなったみたいで嬉しいわ」

「はい、姉様。僕もスカーレット嬢とは長く仲良くなれるかと思います」

「え?いや、ちょーー」

「僕はハゲにならないように気をつけなきゃ」

ニッコリそう微笑みながら私の手を握るアベル…

どうしよう、ハゲって呼んだのが駄目だったのかしら…。








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