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推しの匂い

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あれから、たまに、いや…ほぼ毎日シオン王子が遊びにやってきて大迷惑状態!まずは、我が家が婚約者候補として一番になってしまった事が理解不可能なのよ!悪役令嬢のローズじゃないの!?私はあくまでもローズの取り巻き令嬢の筈で、候補にすら入っていないのに…。

しかも、昨日の夜からモブ男情報集めに徹夜してしまったから正直眠い!

「はあ…」

「どうした、スカーレット嬢。お腹が空いてるなら肉まんでも食べるか?」

「シオン王子……帰ってください」

「う、うるさい!俺はここで肉まんを食べるのが好きなんだ!いや、すす好きというのは肉まんだぞ!?」


相手にするのはもう面倒になり、冷たい態度をとっても何故か肉まんを持ってきては遊びにやってくる…。私はモブ男様を探しに行きたいのに…何かヒントでもあれば。私は借りていた《ペガサスと星物語》の本を読みはじめると、何故かシオン王子は不愉快な顔をしていた。

「その本…好きなのか?」

「え?えぇ、好きよ。16冊もあるので、一冊読みます?」

そう私はシオン王子に渡すと、少し難しい顔をしながらシオン王子はパッと私に笑いかける。

「ありがとう、また読んでみるわ。とりあえず、もう帰るな」

そうシオン王子は帰っていった。

以前にも読んだ事のある口振りよね??まあ、童話の本だしみんな読んでるものよね。

シオン王子が帰ってひと息ついたので、私は今日は第三図書館へと足を運ぼうとしていた時また嵐のようにやってきた。

「あら、スカーレット!貴女本を読む事ができるのね!」

「……げ。ローズ嬢…」

「今、貴女!げって嫌な声を出しましたわよね!?生意気な!」

シオン王子の次はローズ嬢…いや、もう勘弁してほしい。眠いのよ。図書館いってから私は寝たいのに。

護衛のナルさんは少し身を構えていたけれど、子供同士の話だし私はナルさんに、少し離れて欲しいとお願いをした。ナルさんは、心配そうに離れたところで私を見守る。

私はため息を出した後、ローズ嬢に頭をペコリと下げさっさと挨拶をして図書館へ行くと、何故かローズ嬢もついてくる。何故よ!?

「ローズ嬢、私に何か用があるのですか?」

「…モジャモジャの髪の毛で全然可愛くないのに、家柄も私より格下なくせに、シオン王子の婚約者候補一番になったからって、調子に乗ってるんでなくて!?」

「あの、私は別に婚約者になろうとも思ってませんし、まだ候補の話ですよ。それと図書館の中では静かにして下さいな」

そう私はシーッとローズ嬢を注意すると、ローズ嬢は顔を真っ赤にしてプルプルと拳を震えながら、近くにあった分厚い本を取り出した。

「本当、お前は生意気になったわ!モジャモジャ令嬢のくせに!」

ビュン!ッと分厚い本の角がガン!と私のオデコに当たる。後ろからは護衛のナルさんの声がしたけれど、私のオデコからは少し血が出てしまった。

「あ、血!?」

私はキッとローズ嬢を睨むと彼女は笑ってその場から逃げていった。私は倍返ししてやる!と後を追うつもりが徹夜のせいなのか立ちくらみをしてしまい、その場で意識を失ってしまった。

眠たくて、意識は少しあるけれど…体が動かない。誰かが私の肩を掴んでる。護衛のナルさんかな?いや、あの人は鉄臭いもの。…なんだかフワッとラベンダーの香りがして落ちつく…優しいあたたかさを感じる……

「スカーレットお嬢様!」

「お客様大丈夫ですか!?」

ガヤガヤと騒ぎたてる声の中…微かに…微かに匂いがするラベンダーの香り…

わからないけれど、私の直感がザワつく。

コレは、もしや、もしかして。


「モブ男様かー!!!?」

そう叫んで目を覚ますと、護衛のナルさんと図書館の人や、私を心配しに見に来てくれた大人達…


「……あれ?あの、誰か私の肩をそっと支えてくれた人…いたわよね?」

そうナルさんに聞いても、ナルさんは首を横に振る。え?気のせい?誰も私を支えてくれたのが誰なのか見ていなかったみたい。

「スカーレットお嬢様、もう帰りましょう。額に怪我もされてますし、すいません。俺が不甲斐ないばかりに…」

「……匂ったのに」

「え?俺ですか?臭いですか?」

「ラベンダーの香りだったわ」

「俺ラベンダーの香り付けてませんよ?」

「あぁ!もう違うわ!とりあえず…もう…限界。眠い…」

そう私は深い眠りについてしまった。

護衛のナルが眠ってるスカーレットを抱き上げて帰ろうとした時


「………あの…」

「ん?」

「…このヘアピン、彼女のでは?」

「スカーレットお嬢様のです、ありがとう!少年!」

知らない少年がスカーレットのヘアピンを拾ってくれた事にお礼を言い、護衛のナルはそのあとすぐに屋敷へと帰っていった。


「…むにゃ…」

すやすや寝てるスカーレットの姿を見て、クスリと笑う護衛のナルはフと先程いた少年の図書館へと見る。

「そういえば、さっきの少年、ラベンダーの香りしてたな?ま、いっか」


とても大事なヒントと出来事があったこの日、スカーレットは明日の朝まで深い眠りについていた。
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