猫神様と妖かし達と僕の夏休み

くま

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ここはどこ!?少年との出会い

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《なあんも心配いらん。じいちゃんがそばにいる》

それがいつものじいちゃんの言葉だ。

昔から、お化けなのかよくわからない気配と視線を僕は感じていたのをじいちゃんは察したのか、ずっと僕の味方だったんだ。


「よーし!田代島についた!」


ミーンミーンと蝉の声が鳴り響き、波の音がよく聞こえる。毎年夏休みは、じいちゃんとばあちゃんが住んでいる東北の田代島へと遊びにいくのが決まってて楽しみにしている!僕はお気に入りのクマのTシャツを着て砂浜を歩いた。

「…高校の夏、彼女も出来ずに家族と島だけど、まっ、いっか」

ザプンと波の音と潮の香りは、東京では味わえない空気で僕この島が大好きだ。たまに、奇妙な視線を感じるけど…あまり気にしないようにしている。

「お、陸ー!ほら、見てごらん、カニさんだよー!」

僕は砂浜で見つけた蟹を小さな可愛い弟の陸に見せてあげた。

「かにしゃん、かあいいね!」

「カニさん、チョッキチョッキ!」

「うはは!にーに!やーめーてぇ!あははは!」

弟と遊んでいると、砂浜の階段から母さんが慌てた様子でやってきた。

「ここにいたのね!?もー海は危険なのに…!!ほらおじいちゃん達がまってるわよ。スイカも用意してるみたいだから、まずは挨拶しに行きましょう」

「「はーい」」

母さんは陸を抱いて注意しながら歩いた。確かに今日は一段と波が荒れてるからなあ。僕と陸は元気よく返事をしてじいちゃん家へと足を運んだ。

てくてくと坂道を歩くと、ノラ猫が数匹と沢山いる。この田代島は《猫の島》と呼ばれている。とにかく猫が多くて、島には猫神様というのが祀られてる。犬とかは絶対に踏み入れちゃ駄目らしい。僕の家はマンションだから、猫とか飼いたくても飼えないんだよなあ。この島にきたら、まずは猫ちゃん達とモフモフ撫でなでしまくりたい!

坂道をそのまま歩いてると、茅葺の屋根が見えた。よく昔話しの絵本に出てくるようなお家がじいちゃん家だ。畑あるから、ちょっぴり羨ましい、僕の家の場合ベランダでプチトマトくらいだ。

「やっとじいちゃん家着いた!」

僕は汗だくになりながらも、引き戸を開けて広い畳みの上にあがった。親戚のおじさんやおばさん達も集まっており、新鮮なスイカを渡されて、僕と陸は甘くて美味しいスイカを食べていた。

「あれ?じいちゃんは?」

「じーじはね、あっち!」

そう陸が指を指してる方向へ向かうと、じいちゃんは縁側のほうでボーッと空を眺めていた。

そんなじいちゃんの様子に母さんと父さん、叔母さん達は話しをしていた。

「あらやだ。お父さんが、またボーとしちゃってて……お母さんが亡くなってからボケてしまったから…ねえ、やっぱりウチで引き取ろうかしら?」

「そうだなあ。でもずっとこの島で暮らしてた人が突然都会に住むのもなあ」

「ほら、下の家の森川さんのおじいさん、もう長くないみたいよ?おじいちゃんと仲よかったみたいだけど…」

「あぁ、画家さんのひとよね。昔、島に住んでた方で、最近また戻ってきたとか…」

「そんなことより、もしおじいさんが亡くなったらこの土地どうする?」

とまあ、色々と大人のお話があるわけだろうけど、じいちゃんは元気だよ!?おじさんや、おばちゃん達は嫌な感じでちょっと腹立つなあ…僕と弟はじいちゃんの肩をトントンと優しく叩いて話しかけた。

「じいちゃん!ふうただよ。遊びにきた」

「じいじー!僕はりくだよー!」

おじいちゃんはゆっくりと振り返って、ジーッと僕達を見てニッコリと微笑んでくれた。じいちゃんの笑顔って、しわくちゃだけど、優しくて大好きだな!

「…なあんも心配いらん。じいちゃんがそばにいる」

うん?急に僕達の頭を優しく撫でてくれたのは嬉しいけど、どうしたんだろう?でも、ボケてそうには見えないなあ、だってきちんと挨拶してるし。だけど、そんなじいちゃんを遠くで見ていた母さん達はやっぱり心配そうにしていた。


「ふうた、散歩しようか」

「ん?今から?二人で?」

「んだ。ふうた、猫神社までデートじゃ」

「オッケー!って、僕はもう高校生だから手を繋がなくていいのに」

僕はじいちゃんに手を繋がれて、少し山の中の方へと散歩した。蝉の鳴き声がよく響いて、暑さで少し喉がカラカラだった。

「これをお前に渡そう」

「ん?」

じいちゃんは僕に少しボロボロと痛んでる水晶玉の腕輪をくれた。いや、今どきの子にボロボロの腕輪をあげるって、まあいいけどね!なんかレトロな感じで気に入ったし。

「じいちゃん、ありがとう!大切にするね」

じいちゃんはまた僕の頭をまたそっと撫でて、鳥居がある猫神社へと足を運ぶ。

「ふうた。良く聞けな。…猫神様がいつもこの島をみんなを見守ってるんじゃ」

「ははっ、その話何百回も聞いたよ。毎年お盆のこの時期となると、ここに来て一緒にお参りするもんね」

僕はニコッと話すと、じいちゃんはまた頭を撫でながら、山から少し見える海の方へを眺めていた。いつのまにかじいちゃんと僕の周りには沢山の猫達が集まってきた!めちゃくちゃ可愛い!モフモフ天国ではないか!?

「可愛いーネコちゃん!おいでー!」

僕はモフモフをしたくて、猫を触ろうとした時、なんとなく生暖かい風が吹いた。猫達の輪の中に、黒いものが見えた。よく見ると猫だ!?

「ちょっと太っちょな黒猫さんだなー」

太っちょな黒猫は僕の方を見た。

「いや、吾輩は決してデブでないニャ」

「しゃっ!しゃしゃしゃべった!?じーちゃっ」


しかも、この太っちょ黒猫ちゃんの尻尾が三つある!?
僕は隣にいるおじいちゃんを呼んだけど、突然おじいちゃんはいなくなっていた。僕の周りには浮いた魚さん達や、猫や、ちょうちんや鈴?とかなんだかとても不思議な世界に入り込んだのかな…。沢山の鳥居が出てきたし、頭が追いついてない僕を太っちょの黒猫は見て笑った。

「お前さん、ツトムの孫かニャ」

「ふぁ!?じいーちゃん知ってるの?」

「ふむふむ。なるほど……お前さんに頼みがあるニャ」

黒猫さんは私のおでこをポンと押した。

「ツトムと一緒に吾輩の代わりに妖の悩みを聞いてやってくれいニャ」

「へ?」

「今からお前さんが吾輩の代わりだニャ。がんばれニャ~ゴ」

おでこをトンと押された瞬間、何故か海の中!?!ザザーンと波に呑まれて僕は慌てた。ちょっとまってー!実は僕泳げないのにい!!!誰か助けて!

……じいちゃん!!

意識がなくなりかけ、溺れかけた瞬間海の中から、小さな手が見え、僕の手を引っ張りだしてくれた。

「ぶっはー!!…ゲホッゲホッ!じぬがとおもっ…た」

「…おい、大丈夫か!?つか、おめぇー何処からきたんだ?」

僕の目の前には、ずぶ濡れの短髪の黒髪で白いタンクトップに半ズボン姿の少年がいた。僕を助けてくれた…のかな?

「…ゲホゲホッ!助けてくれてありがとう!太っちょな猫がドン!って背中を押してきて!助かったあああ!僕ありがとうね!お兄さん助かったよ!」

「《僕》?どう見ても俺と同い年だろ?」

少年は僕をジーッと見て首を傾げた後、急に僕の顔を見て笑い出した。

「……おめぇーのおでこ、なんで猫の手型なんかついてるんだ?」

「へ?」

僕は自分のおでこを触ったみたものの、鏡がないからどういうことかよくわからず、そうアタフタしてると、あれ?なんだろう…海って…こんなに透き通って綺麗だったけ??

海に水もに映る僕を見ると確かにオデコに肉球がついてる…。凄く変だ!恥ずかしい!いや、てか…体が妙におかしい。目線が…いつもより低いし、あれ…手が…小さくないか!?え!!どういうこと!

「なななに?!これ!ちょっと僕!鏡ない!?」

「俺、女じゃないから鏡ねーぞ。そんなに自分の顔見たいなら、そこの岩に溜まってる潮の中見ろよ??」

僕は慌てて、岩の窪みに溜まっている透き通った、水面の中を覗いた。

「ぼぼぼぼぼく、ち、小さくなってる!!!ってうああ!?僕のiPhoneがあ!これ、新しくでたばかりなのにい!」

「あふぉん?それイカよりうまいの?」

「iPhone!!スマホだよ!」

「??」

僕は急いで海から出て砂浜へと足を運んでみたけど、あれ?ここの島…こんなに砂浜広かったっけ??ゴミもない…。それに…いつもの砂浜にある階段はないけど、ホタテとか貝殻で作っている階段がある?どういうことだ!?

「おーい?お前さ、何処いくんだ?」

「…じいちゃん家」

「え?迷子か?島のもんじゃないみたいだから俺が案内するよ!…あっ!おい!?」

僕はダッシュで坂道を走った。なんだろう…いつもの坂道だけど、なんで沢山家があるんだろう?
私と同じくらいの子とかもいる、赤ちゃんもいる…お年寄りばっかりだったのに…。それにお菓子屋さんがある!?え、ここ空き家だったはず。

おかしい!なんか全体的にこの島はおかしくなってる!!

じいちゃん家にたどり着いた時、後ろからさっき助けてくれた少年が追いかけてきたみたいで僕の肩を強く掴む。

「おめぇーやっぱり《妖》か?」

「何いってるの?あやかしって何?てか、僕はただじいちゃん家に戻ってきただけよ」

「ここ…俺んちだ」

「……え!!?」

「「………」」

なんとなく、僕は目の前にいる少年を見つめた。少年も何かを感じたのか、僕をジッと見つめた。

昔、亡くなったばあちゃんに、僕はよく小さかった頃のおじいちゃんに似てると言われてたっけ。
改めて見つめると、確かに小学生の頃の自分みてるようだった。僕は恐る恐る少年に聞いた。いや、まさか。そんなはずはない。でも、確かめてみよう。

「……ね、ねぇ。僕は、なんてお名前かな?」

「…え?俺?んー…」

少年はチラッと僕をジッと見てから、何故か頭を抱えた。だけどすぐに、ニッコリと笑いながら僕に握手をしながら自己紹介をした。

「津田ツトム!やっぱりお前、ここの島のもんじゃないよな?この俺を知らないなんてさ!しっかし、海の底から出てきて化け物かと思ったわ!あはは!」

「じじじじじいちゃん!?」

「へ??」

「まさかの、タイムスリップとやらですかい!?」

「お前、本当何言ってーー…ちょっとまて。お前の腕につけてるのなんだ?」

ツトムと名乗る少年は僕が先程おじいちゃんに貰った水晶玉の腕輪を指さした。

「え?これはさっき、おじいちゃんに貰ったやつで…」

「なんで…ありえねえ!」

少年は何故か青ざめながら、自分の右腕につけてる腕輪を見せてくれた。僕が付けてる腕輪よりかは新しく感じるけど、同じ物っぽい。傷みたいなのも一緒だった。

「俺、さっきこの水晶玉の腕輪に《ツトム参上!》って書いて掘ったのに、なんで同じ物が!?しかも俺の『霊力』もが篭ってる?なんで、まるっきり俺のと一緒じゃん!本当にお前何もんだ!」

「え、これは傷じゃなかったんだ」


……じいちゃんだ。フと私はじいちゃんの言葉がよぎる。

(なあんも心配いらん。じいちゃんがそばにいる)

僕はじいちゃんに抱きついた。

「じいちゃん!これわけわかめだ!」

「え?ちょっ!??男に抱きつかれる趣味はねーぞ!わかめなら、この海に沢山あるけど意味わからねー!」

どうやら、僕は昭和時代?じいちゃんが少年だった時代にタイムスリップしたみたいだ。










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