上 下
27 / 39

手汗凄いのに

しおりを挟む
「この前、あの馬鹿が失礼な事を言ったようで申し訳ございません」

今日はエリザベス様と二人でお茶会をしている時、この前の教会の炊き出しでダージリン王太子に言われた事が既にエリザベス様に知られていた。

私は後ろに控えて立っているセイを見つめるけど、セイは何食わぬ顔をしているけど‥‥セイがエリザベス様に伝えてたようね。

「あの、私は気にしてませんよ?んー、なんというか痛いところを突かれて‥‥色々と向き合わないといけないと考えてたところですから」

そう私は気にせずにトリュフを食べていたけど、それでもエリザベス様は申し訳なさそうな顔をしている。エリザベス様は悪くもなんともないのになぁ。

「リゼ様、あのお馬鹿は根は悪い方ではないんですの‥‥性格は少しばかり変わってるかもしれませんが」

「勿論わかってますよ。それにしても、教会でダージリン王太子と会うなんて驚きました。エリザベス様もよく一緒に行かれると聞きました!」

そう私が話すといつものようにエリザベス様は笑顔で話しだした。

「あぁ、あの教会ですか?そうですねぇ‥‥最近でしょうか。ふふ、一年くらい前かしら。ダージリンが慌てた様子で私の顔を見て来た時から、あの教会へよく行くようになりました」


え、あのダージリン王太子が慌てた?!ちょっとレアかも。いつも自由気ままに動いてる人で我が道を行くタイプだと思ってるから、慌てた様子見たかったかもなあ。


「ダージリン王太子の慌てた様子見てみたかったかもしれません。あ、これは内緒で」

「ふふ、では内緒話をもう一つ。実は、その時泣いてたんですよ」

「えっ!?泣いてたんですか!わあ‥‥」

「急に私に謝ってきて、男性の泣き顔は初めて見ました。何に対して謝ってきたのかよくわかりませんが‥‥あの時からでしょうか。色々と変わってきたような‥いえ、これはこちらの話ですわ」

そう話すエリザベス様に、私はフと思い出した。回帰前、死ぬ直前にセイは私を見て泣いていたんだ‥‥。チラッとセイを見ると目が合うものの、私はなんだか恥ずかしくてすぐにエリザベス様の方へと向き直る。

「‥‥確かに、男性の泣き顔は珍しいですね」

何故あの時の貴方は、すごく泣いていたの?と本人に聞きたいけど‥‥今のセイにその質問をしたところでわからないわよね。

それでも‥‥あの泣き顔は忘れられないかも。




こうして、私はエリザベス様と会った後、屋敷へと戻るとちょうどキャンディが買い物を終えて帰ってきたようだった。

「あら、リゼお姉様!見て見て!この宝石ね、ニルギリ叔父様に沢山買ってもらったの!」

私に宝石を見せびらかして、上機嫌のキャンディだけど、あんなに沢山の宝石いつつけるのよ?

「‥‥ニルギリ叔父様が来てたの?」

ニルギリ•リプトン‥‥お義母様の弟で、現リプトン家当主であり、薬など薬草の知識が長けておりその知識と経験により、国王陛下にも信頼されているのよね。
あまり、興味がなかったから関わりはなかったわね。たまに親戚同士の集まりで顔を合わせるだけだし‥‥。

だけど‥‥なんとなく気になる。

ダージリン王太子とアールグレイ王子の反応を見る限り、何かがあるに違いない。
実はエリザベス様には気にしてないと伝えたけど、ダージリン王太子遠回しに、私に喧嘩売ってるような言い方してるのも腹が立つのよね。

‥‥もし何かあれば、あれ?
グータラどころじゃないわよね?!

面倒事とか‥‥ないわよね?




「ニルギリ叔父様は姪っ子の私が可愛いみたい!お願い事も聞いてくれるもの!」

「へえ、そう。私はもう自分の部屋に戻るわ」

「リゼお姉様、学園のパーティーは参加するわよね?!‥‥あら。ねえ、学園の生徒でもある、セイロン、貴方も参加するのでしょ?」

キャンディは何故か、近くにいたセイロンに声をかけるとセイロンは頭を下げて挨拶をしてから答える。

「‥‥はい。学園の生徒というのもありますが、ダージリン王太子の命により強制参加とされております」

「え!?そうなの!?!ダージリン王太子が言ってきたの!?」

あの方は、どうしてもセイを自分の側近にしたがっているの丸わかりだわ!‥‥正直行く気がないけど‥‥。わからない!いまいち、ダージリン王太子という人物がよくわからないわ!

私が行くか行かないか迷っている時、キャンディは嫌っているはずのセイロンの腕を絡めて笑顔で話かける。

「あら!それって凄く楽しみよね!?」

‥‥いや、ベッタリしすぎじゃない?!なんでいちいち腕を絡めるわけ!?

私はセイの腕を引っ張り、キャンディから引き離してキャンディを睨む。

キョトンとした顔をしたキャンディは一気に顔を真っ青になる。なんでよ。

「‥‥まさかリゼお姉様‥‥こんなやつ‥」

「学園パーティーに行くわよ。参加する、だからいちいち絡まないでちょうだい!ほら、セイ!いくわよ!」

「‥‥あ、ハイ」

私はキャンディを無視して、セイを引っ張り出し自分の部屋へと戻るため速足で歩く。

「リゼお嬢様」

「なに?」

「‥‥‥手を離してもらえますか」

「ふぁ!?!」

私はセイの手を握ったまま、ずっと歩いてた!?!セイもジッと手を見つめすぎでは!?

「「‥‥‥‥」」

私がアワアワと固まって手を離そうとした私に、クスッと笑ったセイはもう一度私の手を握り直す。

「な、なんでまた手を‥‥!誰かに見られたら‥私手汗ものすごいのよ」

そう私が言うと、セイはシーと人差し指で静かに、何も言わず一緒に歩いた。


手汗‥‥凄いのに!!









しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

マルフィル嬢の日々

夏千冬
恋愛
 第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。  それも王命により屋敷に軟禁状態。肉襦袢を着込んだ肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!  改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットを始めた。そして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することをスタート目標に、更生計画を開始する! ※こちらはアルファポリス様、小説家になろう様で投稿させて頂きました「婚約破棄から〜2年後〜からのおめでとう」の連載版です。タイトルは仮決定です。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

かつて悪役令嬢と呼ばれた彼女は悪役お嬢様に転生してしまったようです

くま
恋愛
「リリー・シルベリア!今夜を持って婚約を破棄する!おまえは嫉妬に狂い、愛しのユリアンに酷い嫌がらせをしていると報告を受けた!悪役令嬢めが!」 大好きだった婚約者ルイに、婚約破棄をされた。そしてルイの新しい恋人のユリアンに、殺された令嬢リリーは目を覚ましたら知らない世界へと転生さ、知らない黒髪の女の子姿になっている自分に驚いた。 ここは日本という国らしい。 リリーは紫苑という日本ではちょっとしたお嬢様に生まれ変わっていた。その紫苑という子、かなりのお転婆で《性悪》だったようです! 以前の世界よりかは自由がある、リリーは紫苑として生きていくことを決意! 変わり始めた彼女に周りの人たちは紫苑を慕い、無自覚にもモテ始める。基本はベタ甘々にされるけど、徐々にシリアス展開もありです。 でもなんだか、抜けてる主人公です。 主人公が転生する前の世界のお話もチラホラ出てきます、少し混乱するかもしれませんが…。 更新めちゃ遅いです! ※ざまあ…頑張ってざまあをしたいです!(ざまあしたいですはおかしいですね!) ※この作品はリメイク版です。かなり待ってくださった読者様がいたし、私自身もう少し話を練り再度チャレンジ!と思い書きました。この再度練り直しが本当に良いかわからませんが……自己満もあります。どうか広い心で読んでくださいませ。 初めて読む方もいると思いますが、元作品はあまり気にしないでいただければと。ネタバレとかもあるだろうし、そういうの嫌な方がいると思うので、元作品は非表示にしています^_^

婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました

花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。 クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。 そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。 いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。 数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。 ✴︎感想誠にありがとうございます❗️ ✴︎(承認不要の方)ご指摘ありがとうございます。第一王子のミスでした💦 ✴︎ヒロインの実家は侯爵家です。誤字失礼しました😵

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの! 私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。

処理中です...