僕らの想い

かの

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一通の手紙

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 ある日、とつぜん君は姿を消した。
 一通の手紙だけを残して。

『 手紙、書くなんていつぶりやろうか。
     会いに行かんくてごめん。
     何も言わんくてごめん。
     ただ1つだけ言いたかった。
     俺の心残り。愛してた。
     今までも。今も。
     そしてこれからも、
     俺はお前を愛してる。
     でも俺は弱すぎた。
     だからごめん。
     お前の未来に俺がおらんでも、
     お前なら絶対幸せになれるから。
     だから大丈夫。
     俺の分まで幸せになってくれ。
     今までありがとう。さよなら。』

 僕は1人で静かに手紙を読んだ。
 外ではセミがうるさく鳴き、
    波の音が小さく聞こえてくる。
 僕の頬をなにかがつたう。
 汗か涙か…。
 そして僕の傍らでスマホが振動する。
 スマホを見ると君の名前が書いてあった。
 すぐに出たが君の声ではなかった。

「連絡先に俺の大切な優、そう書かれていたこちらの番号しかなかったのでお電話させていただきました。
  先ほど海に人がういていると通報がはいり、かけつけたところこうさんが心肺停止した状態で見つかり、すぐに病院に搬送しましたが、心肺停止した状態が長がかったため助かりませんでした。
  すぐに海原病院まできていただいても大丈夫ですか。」

 僕は、はい。とだけ返して電話を切った。

 鼓動が早くなるのが分かる。
 息が苦しい。耳鳴りがうるさい。
 視界が歪む。声が出ない。
 喉の奥が熱い。喉がつまる。

 手足に力がはいらなくなり、
 僕はその場に泣き崩れた。

 僕が読んだ手紙は遺書だったのだ。
 君はどんな想いでこの手紙…
 遺書を書いたのだろうか。
 僕は泣きながら心の中で君に話しかけた。

『だめに決まっとるやないか。
 なにが俺がおらんでも幸せになれるや。
 勝手に決めんなよ。
 僕にはお前がおらんといけんのや。
 お前がおらん未来なんて、
    なんの価値もないのに。
 ほんまバカやで。お前。
 …そんでもって僕もバカやから
 君が嫌がることやってやる。
 今おるとこで待っときや。
 すぐそっち行っちゃるけん。
 さよならなんて言わせんよ。
 残念やったな。』

   
 僕も愛してるから。
    寂しい事言わんでや。
 お願いやから。僕を1人にせんといて。

    





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