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第四章 啼いて血を吐く魂迎鳥
エピローグ㈢
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数日後。
正月で浮足立った空気は去り、銀座の街にもいつもの日常が戻ってきた。
雪の降る銀座通りを過ぎ、新橋花街に足を踏み入れると、笠を被った俥夫たちの力強い掛け声が響く。
芸者衆が赤や紫といった色とりどりの蛇の目傘を並べて、座敷を出入りする。
忙しない三箇日を過ごした小弟と兎田谷先生は、いま──
とある小待合で、芸者遊びをしていた。
「兎田谷先生たら、女給を同伴して芸者遊びだなんて、贅沢ですね。わたしにもチップを弾んでくださるのかしら」
「あーもういい、いい。いくらでも持っていき給え」
「とりあえず、お酒追加しておきますね」
先生はほぼ酔い潰れ、座布団を抱いて半分眠っている。
だいたい騒ぐか、周囲に絡むか、他の座敷にいる文学関係者を見つけて野次を飛ばすかなのだが、この酔いかたはめずらしい。
ツケになっていた酒代を返済し、残った報酬をこのように使うのは小弟も反対しなかった。
先生が不貞腐れているので、あまり手元に置いておかないほうがいい気がしたのだ。
「烏丸さんも、もう一杯どうぞ」
「いや、小弟は先生を連れて帰らねばならないのであまり……」
「そのへんに転がしとけばいいですよ。路上とか」
「外は雪なんだが……」
本日は二人の同行者がいる。
まずカフェー・レオパルドの女給、千歳さんだ。
人に呑ませることに関しては玄人意識を感じる。
「わたしったら、仕事中でもないのにお酌が癖になってしまって。はい、巡査さんも」
「おええ」
そして真っ先に潰れてしまった、酒に弱い鶯出巡査。
結末まですべて明かしたのだが、巡査も某教授のことは昔から知っているようだ。「いっそ任せたほうがいい」と、兎田谷先生と同意見だった。
そのせいで自棄酒しているのである。
さらに、先生が玉代を奮発して座敷に呼んだ芸者が一人──
「ちょっとぉ、アンタら!! ちゃんと見てんのかい!? こっちは真剣に踊ってんだからね!!」
「綺麗です、吉江さん!」
千歳さんが楽しそうに手を叩いている。
正月らしい正月ができなかった我々には、ちょうどいい賑やかさであった。
【第四章 啼いて血を吐く魂迎鳥】 了
正月で浮足立った空気は去り、銀座の街にもいつもの日常が戻ってきた。
雪の降る銀座通りを過ぎ、新橋花街に足を踏み入れると、笠を被った俥夫たちの力強い掛け声が響く。
芸者衆が赤や紫といった色とりどりの蛇の目傘を並べて、座敷を出入りする。
忙しない三箇日を過ごした小弟と兎田谷先生は、いま──
とある小待合で、芸者遊びをしていた。
「兎田谷先生たら、女給を同伴して芸者遊びだなんて、贅沢ですね。わたしにもチップを弾んでくださるのかしら」
「あーもういい、いい。いくらでも持っていき給え」
「とりあえず、お酒追加しておきますね」
先生はほぼ酔い潰れ、座布団を抱いて半分眠っている。
だいたい騒ぐか、周囲に絡むか、他の座敷にいる文学関係者を見つけて野次を飛ばすかなのだが、この酔いかたはめずらしい。
ツケになっていた酒代を返済し、残った報酬をこのように使うのは小弟も反対しなかった。
先生が不貞腐れているので、あまり手元に置いておかないほうがいい気がしたのだ。
「烏丸さんも、もう一杯どうぞ」
「いや、小弟は先生を連れて帰らねばならないのであまり……」
「そのへんに転がしとけばいいですよ。路上とか」
「外は雪なんだが……」
本日は二人の同行者がいる。
まずカフェー・レオパルドの女給、千歳さんだ。
人に呑ませることに関しては玄人意識を感じる。
「わたしったら、仕事中でもないのにお酌が癖になってしまって。はい、巡査さんも」
「おええ」
そして真っ先に潰れてしまった、酒に弱い鶯出巡査。
結末まですべて明かしたのだが、巡査も某教授のことは昔から知っているようだ。「いっそ任せたほうがいい」と、兎田谷先生と同意見だった。
そのせいで自棄酒しているのである。
さらに、先生が玉代を奮発して座敷に呼んだ芸者が一人──
「ちょっとぉ、アンタら!! ちゃんと見てんのかい!? こっちは真剣に踊ってんだからね!!」
「綺麗です、吉江さん!」
千歳さんが楽しそうに手を叩いている。
正月らしい正月ができなかった我々には、ちょうどいい賑やかさであった。
【第四章 啼いて血を吐く魂迎鳥】 了
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みんなの感想(16件)
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ヤシャシーンさま
感想ありがとうございます!
今回は長かったですが読んでいただけて嬉しいです。
白井銀歌さま
最後まで読んでくださり、こんなに丁寧な感想までありがとうございます!!
もうこれだけで書いてよかったなって感じがしてます!!
きっとまた兎田谷たちとは対峙するポジションで登場するであろう3人組ですが、そのときは面白い対決が書けたらいいなと思います。
ありがとうございました!!