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山とか、街とか、喧嘩とか
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おはよう、よく眠れたかい?俺?まあ、普通だね、いつも通り起きたよ。でも・・・仕事を辞めてから毎日に張りがなかったんだが、人と話すだけでも変わるものだね。ずいぶんとすっきりと起きられたような気がするよ。おや、また写真が倒れている。もうこれも古いからな、いい加減新しい写真立てを買わなきゃいけん。あんた、ちゃんと朝ご飯は食べたか?最近は食べない人も多いと聞くし、話しているときに腹が鳴っても恥ずかしいだろ?せっかく録音してるんだし、綺麗に撮らなきゃ。・・・ん、良いのかい。準備はばっちりて感じだね、じゃ、話そうか。
昨日はどこまで話したっけ。そうそう、山で遊んだって話だっけ。はは、今じゃ想像もできないよ。あんな、山の中で半袖と半ズボンで走り回ったなんてな。山の中腹のあたりかな。秘密基地だって言ってたな、あんな限界過疎集落の中で秘密も何もないだろうにな。それでも、「秘密」なんて言葉に心躍るのは年齢も場所も関係ないんだろうな。鬱蒼とした木立ちの中に少し開けたところが急に現れるんだよ。正に、秘密、さ。木の葉がすべてを隠す基地のは幼い子供が全てを忘れて笑いあうには十分だった。どこからか持ってきたお菓子やら雑誌が散乱してる場所だったよ。あの時代にだってゲームぐらいはあったはずなのにな、なんだかそのことには考えもしなかったな。
今はどうか知らないけどさ、山っていろんなものが捨てられていくんだよ。定番なのはエロ本か?でも実際にはそんな程度じゃ済まないんだよ。というか、「捨てる」っていう表現だとわかりづらいか。不法投棄だよ。いろんな会社がいらないものをぽいぽいと捨てていくんだよ。その中には当然さっき言ったエロ本ももちろんあるけどさ、そんなのほんの一部だ。ソファーに机、椅子に棚、家が作れちゃうな。それだけじゃない、本に雑誌みたいなものから工具みたいなの、あとは、注射器もあったな。用途がわかるものはまだいいけど、ほとんどは名前どころかどう使うのか想像もつかないものばっかりだったよ。
それだけあれば、遊び道具に困ることはないよな、それこそ文字通りに時間を忘れて遊んだものさ。定番の秘密基地づくりから医者やらヤクザの真似事まで。それこそ玩具には困らなかったからな。エアガンもモデルガンもあったんじゃないかな。まあ、本物があったとしても俺たちに理解できるはずもなかったけどな。母は、…冗談だよ。そんな怖い顔をしないでくれ。ん?あいつも一緒だったよ。確かに外で遊ぶなら任せろっていう言葉に嘘はなかったさ、でもなぁ。でも、あいつ全く人と遊んだ経験がなかったんだよ。何で遊ぶかっていうのは大体こっちが提案していたような気がするな。
まあ、今思えばって話だし、あの時はそんなこと考えもしなかったけどね。でもそれでも何日もいれば流石に飽きて来ちゃうんだよ。しょうがないよな、同じ場所で同じ友達とずっと一緒なんだから。でもそれを正直に言うほど子供でもなくてね、なんとなく物足りないまま過ごしたんだったかな。別につまらないわけじゃない、でも何か足りない、みたいな感じだよ。わかる?そうか、ならいいいんだけど。
あんたにまだわかるかはわからないんだけどさ、子供の考えてることって意外と大人にばれてたりするんだよ。それが、いろいろあってナーバスになって家に来た子供なら尚更だ。しかも昨日まで我が世の春とばかりに遊び回っていた子供の笑顔に陰りがあればやっぱりばれちゃうもんなんだよ。何も言わなかったのにな。
次の日起きたらいつもはいない二人がまだ家にいたんだよ。いつも顔を合わせるのは夕ご飯の時だったのにな。そしたら急に隣町に連れてくれるっていうんでな。あいつに待ちぼうけを食らわせるのはそれなりに罪悪感があったんだけど、好奇心に負けて行っちゃったんだ。せめて、次の日とかにしてあいつに一言でも言えば良かったのに。別にいつもだって約束してるわけじゃないって言う言い訳だけはすぐに思いついたよ。子供の時のこととはいえ、今思い出しても惨めな気分になるな。
一緒に連れてってもらった隣町はそう遠くなかったんだよ。もちろん山を越えるからそれなりに危ないんだろうけど、車でどれぐらいだったかな。まあ、あっという間だったことは覚えてるよ。山に囲まれてるから隣に街があることも思い出しもしなかったよ。不思議な場所なんだよ。別に他と隔絶してるわけじゃないのに、デカい山に囲まれてるせいで認識できないんだ。あの、何だっけ、どこぞの遊園地もそうなっているんだっけ?ああ、そうそう、そこだよ、へえ、やっぱりそうなんだ。偶然じゃなくて意図的に作ったんだろ?すごいな、流石に外国企業だ。
また話しが逸れたな。そうそう、街はそんなに小さくなかったよ。田舎ではあっても、田んぼに囲まれたような場所ではないんだよ。ま、普通の田舎都市さ。必要なものがほとんど一か所にある。田舎に行く前に住んでいた場所に比べれば田舎さ、でも山の間に過ごしてたと思ってたから、心底驚いたよ。一日遊び歩いて、意外と近いからすぐに来れることを覚えて、帰ったわけだ。
あの日が初めてだったよ。あそこに行ってあいつと過ごさなかった日っていうのは。それで、次の日、いつもの場所に行ったよ。一緒に街に遊びに行こうって言うためにな。いつまでも山の中じゃ飽きると思ってさ。いや、あれには驚いたな。いつもの場所に行って、昨日のことを話したんだ。不安そうな顔はしてたよ、そりゃいつも会っている奴が何の連絡もなく来なかったんだから。そこまでは良かったんだよ、いや、よくはないけどさ。
どうしても街には行かないって聞かなくてさ。いつもならそこで俺も引いたかもしれないけどさ。ずっと山で遊んで、そこで街なんかに行ったら街のほうが楽しそうに見えてしょうがないんだよ。行けば楽しいことがわかってもらえるはずだって、必死に食い下がったんだよ。え?結果なんて聞かなくてもわかるだろ。喧嘩だよ、喧嘩。あんな大声で怒鳴ったことなんてあの時ぐらいしかないよ、本当に。
ん、また写真が倒れてる。また新しいのを買うのを忘れた。年齢かな、全く・・・。
昨日はどこまで話したっけ。そうそう、山で遊んだって話だっけ。はは、今じゃ想像もできないよ。あんな、山の中で半袖と半ズボンで走り回ったなんてな。山の中腹のあたりかな。秘密基地だって言ってたな、あんな限界過疎集落の中で秘密も何もないだろうにな。それでも、「秘密」なんて言葉に心躍るのは年齢も場所も関係ないんだろうな。鬱蒼とした木立ちの中に少し開けたところが急に現れるんだよ。正に、秘密、さ。木の葉がすべてを隠す基地のは幼い子供が全てを忘れて笑いあうには十分だった。どこからか持ってきたお菓子やら雑誌が散乱してる場所だったよ。あの時代にだってゲームぐらいはあったはずなのにな、なんだかそのことには考えもしなかったな。
今はどうか知らないけどさ、山っていろんなものが捨てられていくんだよ。定番なのはエロ本か?でも実際にはそんな程度じゃ済まないんだよ。というか、「捨てる」っていう表現だとわかりづらいか。不法投棄だよ。いろんな会社がいらないものをぽいぽいと捨てていくんだよ。その中には当然さっき言ったエロ本ももちろんあるけどさ、そんなのほんの一部だ。ソファーに机、椅子に棚、家が作れちゃうな。それだけじゃない、本に雑誌みたいなものから工具みたいなの、あとは、注射器もあったな。用途がわかるものはまだいいけど、ほとんどは名前どころかどう使うのか想像もつかないものばっかりだったよ。
それだけあれば、遊び道具に困ることはないよな、それこそ文字通りに時間を忘れて遊んだものさ。定番の秘密基地づくりから医者やらヤクザの真似事まで。それこそ玩具には困らなかったからな。エアガンもモデルガンもあったんじゃないかな。まあ、本物があったとしても俺たちに理解できるはずもなかったけどな。母は、…冗談だよ。そんな怖い顔をしないでくれ。ん?あいつも一緒だったよ。確かに外で遊ぶなら任せろっていう言葉に嘘はなかったさ、でもなぁ。でも、あいつ全く人と遊んだ経験がなかったんだよ。何で遊ぶかっていうのは大体こっちが提案していたような気がするな。
まあ、今思えばって話だし、あの時はそんなこと考えもしなかったけどね。でもそれでも何日もいれば流石に飽きて来ちゃうんだよ。しょうがないよな、同じ場所で同じ友達とずっと一緒なんだから。でもそれを正直に言うほど子供でもなくてね、なんとなく物足りないまま過ごしたんだったかな。別につまらないわけじゃない、でも何か足りない、みたいな感じだよ。わかる?そうか、ならいいいんだけど。
あんたにまだわかるかはわからないんだけどさ、子供の考えてることって意外と大人にばれてたりするんだよ。それが、いろいろあってナーバスになって家に来た子供なら尚更だ。しかも昨日まで我が世の春とばかりに遊び回っていた子供の笑顔に陰りがあればやっぱりばれちゃうもんなんだよ。何も言わなかったのにな。
次の日起きたらいつもはいない二人がまだ家にいたんだよ。いつも顔を合わせるのは夕ご飯の時だったのにな。そしたら急に隣町に連れてくれるっていうんでな。あいつに待ちぼうけを食らわせるのはそれなりに罪悪感があったんだけど、好奇心に負けて行っちゃったんだ。せめて、次の日とかにしてあいつに一言でも言えば良かったのに。別にいつもだって約束してるわけじゃないって言う言い訳だけはすぐに思いついたよ。子供の時のこととはいえ、今思い出しても惨めな気分になるな。
一緒に連れてってもらった隣町はそう遠くなかったんだよ。もちろん山を越えるからそれなりに危ないんだろうけど、車でどれぐらいだったかな。まあ、あっという間だったことは覚えてるよ。山に囲まれてるから隣に街があることも思い出しもしなかったよ。不思議な場所なんだよ。別に他と隔絶してるわけじゃないのに、デカい山に囲まれてるせいで認識できないんだ。あの、何だっけ、どこぞの遊園地もそうなっているんだっけ?ああ、そうそう、そこだよ、へえ、やっぱりそうなんだ。偶然じゃなくて意図的に作ったんだろ?すごいな、流石に外国企業だ。
また話しが逸れたな。そうそう、街はそんなに小さくなかったよ。田舎ではあっても、田んぼに囲まれたような場所ではないんだよ。ま、普通の田舎都市さ。必要なものがほとんど一か所にある。田舎に行く前に住んでいた場所に比べれば田舎さ、でも山の間に過ごしてたと思ってたから、心底驚いたよ。一日遊び歩いて、意外と近いからすぐに来れることを覚えて、帰ったわけだ。
あの日が初めてだったよ。あそこに行ってあいつと過ごさなかった日っていうのは。それで、次の日、いつもの場所に行ったよ。一緒に街に遊びに行こうって言うためにな。いつまでも山の中じゃ飽きると思ってさ。いや、あれには驚いたな。いつもの場所に行って、昨日のことを話したんだ。不安そうな顔はしてたよ、そりゃいつも会っている奴が何の連絡もなく来なかったんだから。そこまでは良かったんだよ、いや、よくはないけどさ。
どうしても街には行かないって聞かなくてさ。いつもならそこで俺も引いたかもしれないけどさ。ずっと山で遊んで、そこで街なんかに行ったら街のほうが楽しそうに見えてしょうがないんだよ。行けば楽しいことがわかってもらえるはずだって、必死に食い下がったんだよ。え?結果なんて聞かなくてもわかるだろ。喧嘩だよ、喧嘩。あんな大声で怒鳴ったことなんてあの時ぐらいしかないよ、本当に。
ん、また写真が倒れてる。また新しいのを買うのを忘れた。年齢かな、全く・・・。
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