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第1話 堕落の予感

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 静かな図書室。誰もいない図書室。私だけの図書室。テスト前ですらほとんど人が来ない学校の隅にあるそこは今や私の城と化していた。最初は押し付けられる形でなった図書委員もこうなっては居心地がいい。
誰も来ない図書室のなかで本を読み、時間が来たら鍵を閉めて先生に渡してそれで帰る。それが週に一度の私の日常だった。でもいつしかそれも色褪せる。だから、魔が差した。
本棚の奥隅に隠されるように置いてあるそれはいわゆる官能小説と言われているものだ。いつかの図書委員が置いていったのかはたまた司書の秘めやかな趣味なのか。それはわからないけど、とにかく私はそれを見つけてしまった。見つけてしまったものはしょうがない。選択肢は二つ、見なかったことにするか、それとも。
ともかく私は後者を選んだ。

前の続きからページを開き、読む。一文ずつ読み進めるごとに下着が湿っていくのを感じる。いつもそうだ。読むごとに濡れていく下着を意識しながら読んでいることに興奮している。己が変態かもしれないという疑問がまた興奮を後押しする。
読み進めながら、我慢が限界に達したのを感じる。そこで初めて下着に手を伸ばす。下着の下からゆっくりとなぞる。指に伝う液と感触がきもちいい。
正直、本の内容がほとんど関係ないと気づいたのはその時だった。私は要するに誰かが来るかもしれない状況でひとりオナニーに耽ることが好きなのだ。

そこからは早かった。今や、もう手には本も教科書もない。ただ己の性欲に逆らうこともなく醜く手を動かす女の出来上がりだ。
「ふぅ、ふっ、ふぅ」
手を動かすごとに漏れる吐息が熱い。風邪でも引いたかのように全身が熱い。委員用のあまり大きくない椅子に座り、足を大きく広げ、スカートをたくし上げる。ぐっしょりと濡れそぼって、もう役に立たない下着を脱ぎ捨て涼しくなった下半身がまた気持ちいい。
かき混ぜられて泡が立ち始めた膣がすえた匂いを鼻まで届ける。それを気にすることもなく、指を激しく突っ込む。最初は少し痛かったそれも、今はもうただただ気持ちいい。ぐちゃぐちゃと音を鳴らす自分の指すらも愛おしい。
「あぁ、あっ!んぅぅ、くひっ」
ぐちゃ、ぐちゃ、ぬちゃ、ぬちゃ。
最初は静かだった図書室が今や私の全身から出る音で埋まっている。喘ぐ声が、いやらしい水音が、手を余計に加速させる。
頭の中にあるのはいつだって横のドアから誰かが入ってくる妄想だ。ある時は生徒会長が、またある時は顔が好みの先生が。押し倒され、全身で彼らの欲望を受け止める妄想が今日も捗る。
今日の妄想に出てきたのは生徒会長だった。少し目つきの悪い彼が、私の痴態を見て、大きく見開いた目は私の恥部から離れようとしない。まるで視線の熱が移ったかのように身体が一層熱くなる。その驚いた目線と、興奮を隠しきれない彼の下半身が迫ってくる。貪るようなキスと、抗いきれない男女の力の差が私が無力な弱い女であることを実感させる。その熱く滾りいきる肉棒が、何も帯びていない私の下半身に容赦なく襲い掛かる。避妊具も、同意もなく、荒っぽくて、人よりも獣に近くなった彼が肉棒を叩き込んでくる。抗うこともできない、いや最初から抗うつもりなど毛頭ないけれど、激しく動かす腰の一回一回の動きに合わせて軽い絶頂を感じながら、彼の限界が近いことを私の膣中で大きくなった彼の男根が教える。まるで私もそれに合わせるように絶頂の準備を始める。下がり始めた子宮が妊娠したいと叫んでいる。
「うっ」
彼の射精が私の無防備にされた子宮に叩きつけられる。
「い”く”、イ”ックゥゥゥゥゥ」
絶叫とともに溢れる快感に腰が負けて座り込む。我に返った彼が心配そうに私の頭を撫でるその手の大きさがまた心地いい。


「お前、何をしているんだ?」
唐突に降ってきた声は妄想ではない。だって私あまりこの人のことが好きじゃないから。そこにいたのは暑苦しい体育教師。私が学校で一番嫌いな教師だ。
でも、心の隅で何かを期待している自分が確かに疼いた。
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