先輩に食べられる高校生の話

神谷 愛

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第2話 寂れた部室の攻防

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 次の日、私は言われた通りに部室へと来ていた。別に来ない選択肢もあった。別に何か握られているわけでもない、でも、私の足は自然と部室に向かっていた。
クラスで誘われる色々な友人を断り、一人静かなあの部室へと来る。友達の誘いを断ることに思うところが無いわけでもない。それでも、先輩の言葉にはそれだけの魅力があった、ような気がする。
部室の前で思わず足が止まる。いったいどうやって入ればいいのだろうか。昨日あんなことをされて笑顔で入れるほど私は豪胆じゃない。かと言ってムスッとしながら入るのもなんだか違う気がして少し迷う。
「優里さん、何してるのかな」
急に耳元に聞こえてきたのは先輩の声。中にいるとばかり思っていたので心臓が止まるかと思った。
「なーんて、鍵開いてなかったもんね」
「え、あ、そ、そうですね」
どもって、噛んで、もういいところなしだ。・・・いや、別にいいところを見せたいわけではないけれど。
ガチャリと先輩がカギを開ける。
「ほら、おいで」
先輩に誘われるままに部室の中に入る。ここから何をするのか、何をされるのか、何となく理解しながらも先輩の手を拒絶できないし、足も止まらない。この気持ちが一体なんという名前なのか、私はまだ知らない。
「そういえば、私の噂って何を聞いたの?」
「え、なんか学校を支配しているとか、すごい頭が良いとか、ですかね?」
「え、そっち?」
「そうですけど、なんかおかしかったですか?」
「おかしくは無いけどね・・・」
「どういう噂を聞いて来たと思ったんですか」
「え?聞きたいの?」
「ええ、まあ」
「・・・私がいろんな子に手を出しているって言う話が一番聞くかな」
「手を、出すっていうのは聞いたことないです。でも、事実じゃないんですか?」
「事実ね。現にあなたにも手出したしね」
「それは・・・噂なんですか?」
「知らない人にとって見れば噂よ」
それもそうだ。というか、噂になるほどいろんな子に手を出しているのだろうか。見た目に反して随分遊んでいるんだなと思うと、何となく見る目も変わってくる。
「そんな目で見ないでよ、興奮してくるから」
変態だ。
「ま、せっかく来てくれたんだし、おもてなししないとね」
「おもてなし?」
「そ、おもてなし」

 しっかりと抱きしめられて、また唇が塞がれる。昨日初めてキスをしたというのはばれていたみたいだし、きっと今日も好き放題にされるのだろう、なんてきっと思われている。
でも、負けっぱなしは気に食わないし、なにより悔しい。私は意趣返しのつもりで先輩の口の中に舌を滑り込ませた。
「んん」
先輩の目が驚きで丸くなる。昨日の分の仕返しはできたなんてほっとしたのも束の間。口の中に入れた舌が先輩の舌と絡まる。今まで感じたことのない感触が脳内に溢れる。
熱くて、厚くて、そして自分の意思で動かない、自分と同じ部分と触れ合っているのは少しだけ気持ち悪かった。
でも舌を他人に弄ばれる感覚は初めてで、少しだけ気持ちいいと思ったり、ちょっとだけだ。ちょっと、少しだけ気持ちいい気がしないこともない、ただそれだけだ。
キスで他人の舌なんか、しかも女同士でのキスが気持ちいいなんてこと、あるはずがない、あるはずがない。きっと、たぶん。
「気持ちよかったでしょ?」
「まぁ、ちょっと、だけ?気持ちよかったと思います」
「ふぅん」
私の返事が気に食わなかったのか、不満そうな表情をこちらに向ける先輩は少しだけ、昨日とは違って子供っぽい表情で可愛かった。
先輩の手が私の顔に伸びる。がっしりと顔を両側から押さえ、いたずらっぽい顔で笑っている。
「何を・・・?」
「生意気な後輩にお仕置きしようと思って」
私の返事を待つことなく、先輩のキスが迫る。
先輩の厚めの唇が私と三回目の邂逅を果たす。三回目だからこそ、少し余裕が出来てきて、先輩とのキスを少し冷静に見ることが出来る。
あわさった唇からは甘い良い匂いがして、私と違って集めの唇は私の唇を吸い込んでしまいそうだ。
てっきりさっきの私みたいに舌がすぐに入ってくると思ったが、そんなこともなく、私の唇を味わうように、ねっとりと、しっかりと、長いキスをする。
長いキスで酸素が足りないのか、気持ちいいからか、あんまり頭が回っていないのを感じる。
段々と自分の唇が開いていくのを感じる。先輩を受け入れるように、快楽が足りないと思ってしまっているのかのように。先輩の舌がさっきと同じように入ってくる。
ぬるりと、ねちゃりと、先輩の舌が滑り込んでくる。先輩の唾液と私の唾液が混ざって舌の上で泡立っているのが感じる。
先輩の舌が私の口の中を這い回る。泡が私の口の中を覆っていく。口の中がどんどん先輩のものに塗り替わっていく感覚がする。
さっきより口の中の状況がわかってしまうのが余計に気持ちよさを倍増させる。
先輩の手が私の耳を覆う。
さっきまでほとんど聞こえてこなかった口の中の音が一気に聞こえてくるようになる。私と先輩の舌が交わる音。泡立った唾液が口の中で糸を引く音。いろんな音が反響して、頭の中で鳴り響く。
私はただ先輩にちょっとした意趣返しをしただけなのにいつの間にか口の中が先輩の色で染まって、今や脳内も先輩に支配されようとしている。

 永遠にも感じるキスの時間は唐突に終わる。急に離れた口から大量の酸素が入ってきて、意識が冴えていく。思わず目をやった時計を見ると入ってからあ五分ほどしか経っていない。
「まだまだ放課後は長いんだから。仲良くしましょうね」
「・・・」
どう答えればいいのかわからなかった。
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