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第1話 変な先輩
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高校に入った。ピカピカの一年生で、自分で言うのもなんだが、整った顔をしている私はすぐに先輩、同級生構わず囲われた。それなりに顔が広がればいろいろなことを聞いたりするわけで、その中で一際私の心を惹いたのはとある先輩の話だった。
曰く、学校どころか、国内でもトップクラスの頭脳を持つ。
曰く、この学校を実質的に支配している。
曰く、とてつもない富豪の娘である。
突拍子のない噂だけが独り歩きし、尾ひれがつき、腕が生え、足が生え、いつしかわけのわからない集合体になったらしい。ほとんどが本当のことではないだろうし、本気で信じている生徒なんてほとんどいない。でも、その生徒が学内にその美貌で有名になっていることが噂を噂のままにしてくれないらしい。
場所は部室棟の文化部エリアの一番奥の部屋。彼女以外が幽霊部員の「歴史研究部」にいるらしい。
「行くのは君のは勝手だけど、おすすめはしないよ。あっちだっていい気はしないだろうし」
・・・思ったよりもいい人だった。丁寧にお礼を言ってその場を後にする。行くのはもちろん「歴史研究部」とやら。
ドアをノックする。まぁ、今日は来ていない可能性もあるし、居留守を使われる可能性だってある。というか話を聞く限り居留守を使うだろう。私だって使う。
「開いてるよ」
前言撤回。意外と他人に興味が無いのかもしれない。
「し、失礼します」
部屋の中にいるのは思わず息をのむほどに綺麗な女性がいた。同じ高校生には見えない程度には頭一つ抜けた綺麗さを持っている女性がいた。
ソファに座ってつまらなそうに本を読んでいるだけの姿は絵になっていて、写真をとって賞に応募したら入賞できるのではないだろうか、そんな風に思えるぐらい彼女は綺麗だった。
「誰?」
「あ、一年生の甘井優里と言います」
「ふぅん、私は譲島優子。よろしくね」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「それで、何の用?」
「あの、先輩の噂をたくさん聞いて、会ってみたくって、その」
「私の噂を聞いて会いに来るなんて度胸あるわね」
「?」
「ま、いいや。こっちおいで」
優子さんに手を引かれるままに部屋の中に入れられる。
後ろ手に鍵を閉めた姿を見て、彼女との間に何か決定的な齟齬があるのかもしれないなんて、思った。
「えと、その」
「ここまで来て、今さらビビるの?」
何か勘違いされている、しかも何か怖いことが起ころうとしている。そんな思考は上澄みを走ることしかできなかった。
「んっ」
先輩の顔がすぐ傍にあった。唐突なキス。いずれ誰かに捧げるであったであろう私のファーストキスは今日あったばかりの先輩に取られたらしい。
「私、初めてだったんですけど・・・」
「あら、そう」
「今日会ったばかりの、しかも女になんて・・・」
「あら、私じゃ不満?そこらの男より私の方が万倍うまいキスが出来るわよ」
「そういう話じゃ・・・」
「それに、女の気持ちいキスを知ってるのは女に決まってるでしょ」
「それは、そう、かも?」
思わず向けた恨めがましい目も、恨み言も、彼女は動じることも無く受け流す。丸め込まれているとわかってはいる、でも、それすら彼女の魅力になってしまっていて。それに乗っかるのが心地いいと思っている自分がいて。
先輩の手が私のブレザーのボタンを外していって、ワイシャツのボタンに手を掛ける。
「な、何を?」
「分かりきっていることを聞くのは感心しないわね」
「・・・」
言い返す言葉もない。ここでファーストキスどころか、純潔も捧げるなんてここに来る前の私は想像もしていなかったんだけど。先輩の出す雰囲気がそれでもいい、なんて思わせる。
「先輩・・・」
目を合わせるのも恥ずかしくて目を伏せる、でも彼女はそんなことは許さなかった。
「ちゃんとこっち見て」
しっかりと目と目が合う。さっきと一緒、キスをする直前の顔。
さっきとは違って不意打ちじゃない、しっかりと時間をかけたキス。
目と目を合わせたキス。
「んっ・・・」
キスをしながら、先輩の手が私の下着の中に入ってくる。自分で触ったことはある。でも対して気持ちいいわけでもなく、何となくくすぐったいという感想だけ残って何となく触らくなってしまった。
多少はませているとは言っても、やっと高校生になったばかりの私にとって「性」は何となく怖いものだったから。
でもそれが、先輩に犯されている。自分だけの聖域を侵されている感じがする。
自分で触った時とは違う、確かな気持ちよさが、背中を這い回るような快感が、確かにある。
「せんぱっい、何か、きそうっで」
「あら、随分ませてると思ったけど、イったこともないの?」
「そっんなことは、ない、っけど、こんっなの、しらない」
「ああ、そういうこと。じゃあ、覚えておきなさい。これがイクってことよ」
先輩の指が私の突起を軽く弾く。
「ふっ、んんんぅぅ、んっ、あっ」
下腹部をすごい力で圧迫されているような、殴られているのとも違う衝撃が覆う。
今まで自分で慰めていたのとは明らかに違う。重く深い快感が身体に染みる。
「はっ、はっ、はっ」
ただ呼吸を整えるだけで疲れる。今、たった一回絶頂を迎えただけなのに呼吸を整えるだけの行動すらままならない。
「また明日同じ時間にいらっしゃい」
先輩は私を襲ったわけだ、強姦とも言う。誰かに言ったとして誰かが信じるのだろうか。いや、信じなかったとして、またここに来る理由が私にはないはずだ。
別に脅されているわけでもない。ただ私の自由意思に任せているだけだ。でも。
「・・・はい」
私の口は勝手に答えを出していた。
曰く、学校どころか、国内でもトップクラスの頭脳を持つ。
曰く、この学校を実質的に支配している。
曰く、とてつもない富豪の娘である。
突拍子のない噂だけが独り歩きし、尾ひれがつき、腕が生え、足が生え、いつしかわけのわからない集合体になったらしい。ほとんどが本当のことではないだろうし、本気で信じている生徒なんてほとんどいない。でも、その生徒が学内にその美貌で有名になっていることが噂を噂のままにしてくれないらしい。
場所は部室棟の文化部エリアの一番奥の部屋。彼女以外が幽霊部員の「歴史研究部」にいるらしい。
「行くのは君のは勝手だけど、おすすめはしないよ。あっちだっていい気はしないだろうし」
・・・思ったよりもいい人だった。丁寧にお礼を言ってその場を後にする。行くのはもちろん「歴史研究部」とやら。
ドアをノックする。まぁ、今日は来ていない可能性もあるし、居留守を使われる可能性だってある。というか話を聞く限り居留守を使うだろう。私だって使う。
「開いてるよ」
前言撤回。意外と他人に興味が無いのかもしれない。
「し、失礼します」
部屋の中にいるのは思わず息をのむほどに綺麗な女性がいた。同じ高校生には見えない程度には頭一つ抜けた綺麗さを持っている女性がいた。
ソファに座ってつまらなそうに本を読んでいるだけの姿は絵になっていて、写真をとって賞に応募したら入賞できるのではないだろうか、そんな風に思えるぐらい彼女は綺麗だった。
「誰?」
「あ、一年生の甘井優里と言います」
「ふぅん、私は譲島優子。よろしくね」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「それで、何の用?」
「あの、先輩の噂をたくさん聞いて、会ってみたくって、その」
「私の噂を聞いて会いに来るなんて度胸あるわね」
「?」
「ま、いいや。こっちおいで」
優子さんに手を引かれるままに部屋の中に入れられる。
後ろ手に鍵を閉めた姿を見て、彼女との間に何か決定的な齟齬があるのかもしれないなんて、思った。
「えと、その」
「ここまで来て、今さらビビるの?」
何か勘違いされている、しかも何か怖いことが起ころうとしている。そんな思考は上澄みを走ることしかできなかった。
「んっ」
先輩の顔がすぐ傍にあった。唐突なキス。いずれ誰かに捧げるであったであろう私のファーストキスは今日あったばかりの先輩に取られたらしい。
「私、初めてだったんですけど・・・」
「あら、そう」
「今日会ったばかりの、しかも女になんて・・・」
「あら、私じゃ不満?そこらの男より私の方が万倍うまいキスが出来るわよ」
「そういう話じゃ・・・」
「それに、女の気持ちいキスを知ってるのは女に決まってるでしょ」
「それは、そう、かも?」
思わず向けた恨めがましい目も、恨み言も、彼女は動じることも無く受け流す。丸め込まれているとわかってはいる、でも、それすら彼女の魅力になってしまっていて。それに乗っかるのが心地いいと思っている自分がいて。
先輩の手が私のブレザーのボタンを外していって、ワイシャツのボタンに手を掛ける。
「な、何を?」
「分かりきっていることを聞くのは感心しないわね」
「・・・」
言い返す言葉もない。ここでファーストキスどころか、純潔も捧げるなんてここに来る前の私は想像もしていなかったんだけど。先輩の出す雰囲気がそれでもいい、なんて思わせる。
「先輩・・・」
目を合わせるのも恥ずかしくて目を伏せる、でも彼女はそんなことは許さなかった。
「ちゃんとこっち見て」
しっかりと目と目が合う。さっきと一緒、キスをする直前の顔。
さっきとは違って不意打ちじゃない、しっかりと時間をかけたキス。
目と目を合わせたキス。
「んっ・・・」
キスをしながら、先輩の手が私の下着の中に入ってくる。自分で触ったことはある。でも対して気持ちいいわけでもなく、何となくくすぐったいという感想だけ残って何となく触らくなってしまった。
多少はませているとは言っても、やっと高校生になったばかりの私にとって「性」は何となく怖いものだったから。
でもそれが、先輩に犯されている。自分だけの聖域を侵されている感じがする。
自分で触った時とは違う、確かな気持ちよさが、背中を這い回るような快感が、確かにある。
「せんぱっい、何か、きそうっで」
「あら、随分ませてると思ったけど、イったこともないの?」
「そっんなことは、ない、っけど、こんっなの、しらない」
「ああ、そういうこと。じゃあ、覚えておきなさい。これがイクってことよ」
先輩の指が私の突起を軽く弾く。
「ふっ、んんんぅぅ、んっ、あっ」
下腹部をすごい力で圧迫されているような、殴られているのとも違う衝撃が覆う。
今まで自分で慰めていたのとは明らかに違う。重く深い快感が身体に染みる。
「はっ、はっ、はっ」
ただ呼吸を整えるだけで疲れる。今、たった一回絶頂を迎えただけなのに呼吸を整えるだけの行動すらままならない。
「また明日同じ時間にいらっしゃい」
先輩は私を襲ったわけだ、強姦とも言う。誰かに言ったとして誰かが信じるのだろうか。いや、信じなかったとして、またここに来る理由が私にはないはずだ。
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「・・・はい」
私の口は勝手に答えを出していた。
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