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16】単純な俺②
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16】単純な俺②
頭の中に思い出すのは、アラン様や他の皆に向けるような。周囲が知っているイケメンで恰好良いと評判のレオ殿とは別の、言葉と表情。
『ああ、気絶しなかったのか。凄いじゃないか』
言葉こそ柔らかいが、見下ろす俺への視線と表情は普段と随分と異なっていた。戦いとなれば、そりゃあ性格だって変わるだろう。アドレナリンが出て興奮だってする。俺相手に負けたとなっちゃあ、レオ殿の面目丸つぶれになるわけだし。でもさ。あの様子はやっぱり……。
「……いや、絶対性格悪いだろレオ殿」
(あの様子だと、Sに違いないぞ。人の尻とか平気でバシバシ叩くタイプのドS)
そう呟きながら、俺はまだあの一戦を引きずっている俺。(アラン様の尻が叩かれなくて良かった)
はぁぁぁぁぁっ……とまたクソデカ溜息をつくしかなく、家に帰ろうともせず地面に座ったままでいれば背中を小突かれた。
「おい、トーマ。溜息ばっかりついてんじゃねぇよ。こっちまで辛気臭くなっちまうだろうが」
いつもの親父たちだ。さっさと帰れよと思ったが、口は悪いが親父たちなりに心配してくれているかもしれない。(多分違うだろうが)
「うるせぇな。俺は今、悩める青少年なんだよ」
そうあしらえば、今度はそんなことを気にしないとばかりに親父が俺をあしらった。その後ろから別の親父が現れて、お開きにならない。
「あー、はいはい」
「どーせアラン様のことか、この前速攻で負けたことを気にしてるんだろ」
「う、うるせぇな!」
図星だ。アラン様関係のこと以外で俺が落ち込むことなんて無いと自分でも分かっているだけあって、周囲も俺の事を分かっている。「うるさい」と言った声も上ずっていて、親父たちも「ほらな」という顔をした。
「ったく! お前は!!」
「いてぇっ!!」
しっかりしろと言うように、今度は小突かれた時以上の強さで背中を叩かれた。バシン! と乾いた音と、俺の声は同時に聞こえ、訓練場に残っていた連中が俺の方を振り向いた。俺の背を叩いた親父はといえば、立ち上がりズンズンと前へと進んで行く。何て奴だと思っていると、親父が向かった先は何とアラン様の方。
「あっ! おい!」
親父たちは俺なんかよりも長く騎士団にいるし、人によってはアラン様が入団する前から騎士団に所属している親父だっている。だからアラン様は、親父たちには親しく話してくれる。(羨ましい)
正直、一人でアラン様の方へ出向き羨ましいと思いながら俺も混ぜてと言えるはずもなく。一体何を話しているんだ? とアラン様の側に着いた二人の様子を見ることしか出来ない。軽く談笑をして、微笑むアラン様。可愛い。そう思っていると、親父が俺の方を指さしてアラン様も俺の方を向いた。
「トーマ、良かったな。あれは何かお前の話をアラン様にしてくれてるぜ」
「変なことじゃねぇと良いんだが」
ぐぬぬ、と思いながらワンチャン俺の良い所を話してくれと願った。
********
次くらいでこちらのシリーズ終わる予定です
良かったら見て頂けると嬉しいです
頭の中に思い出すのは、アラン様や他の皆に向けるような。周囲が知っているイケメンで恰好良いと評判のレオ殿とは別の、言葉と表情。
『ああ、気絶しなかったのか。凄いじゃないか』
言葉こそ柔らかいが、見下ろす俺への視線と表情は普段と随分と異なっていた。戦いとなれば、そりゃあ性格だって変わるだろう。アドレナリンが出て興奮だってする。俺相手に負けたとなっちゃあ、レオ殿の面目丸つぶれになるわけだし。でもさ。あの様子はやっぱり……。
「……いや、絶対性格悪いだろレオ殿」
(あの様子だと、Sに違いないぞ。人の尻とか平気でバシバシ叩くタイプのドS)
そう呟きながら、俺はまだあの一戦を引きずっている俺。(アラン様の尻が叩かれなくて良かった)
はぁぁぁぁぁっ……とまたクソデカ溜息をつくしかなく、家に帰ろうともせず地面に座ったままでいれば背中を小突かれた。
「おい、トーマ。溜息ばっかりついてんじゃねぇよ。こっちまで辛気臭くなっちまうだろうが」
いつもの親父たちだ。さっさと帰れよと思ったが、口は悪いが親父たちなりに心配してくれているかもしれない。(多分違うだろうが)
「うるせぇな。俺は今、悩める青少年なんだよ」
そうあしらえば、今度はそんなことを気にしないとばかりに親父が俺をあしらった。その後ろから別の親父が現れて、お開きにならない。
「あー、はいはい」
「どーせアラン様のことか、この前速攻で負けたことを気にしてるんだろ」
「う、うるせぇな!」
図星だ。アラン様関係のこと以外で俺が落ち込むことなんて無いと自分でも分かっているだけあって、周囲も俺の事を分かっている。「うるさい」と言った声も上ずっていて、親父たちも「ほらな」という顔をした。
「ったく! お前は!!」
「いてぇっ!!」
しっかりしろと言うように、今度は小突かれた時以上の強さで背中を叩かれた。バシン! と乾いた音と、俺の声は同時に聞こえ、訓練場に残っていた連中が俺の方を振り向いた。俺の背を叩いた親父はといえば、立ち上がりズンズンと前へと進んで行く。何て奴だと思っていると、親父が向かった先は何とアラン様の方。
「あっ! おい!」
親父たちは俺なんかよりも長く騎士団にいるし、人によってはアラン様が入団する前から騎士団に所属している親父だっている。だからアラン様は、親父たちには親しく話してくれる。(羨ましい)
正直、一人でアラン様の方へ出向き羨ましいと思いながら俺も混ぜてと言えるはずもなく。一体何を話しているんだ? とアラン様の側に着いた二人の様子を見ることしか出来ない。軽く談笑をして、微笑むアラン様。可愛い。そう思っていると、親父が俺の方を指さしてアラン様も俺の方を向いた。
「トーマ、良かったな。あれは何かお前の話をアラン様にしてくれてるぜ」
「変なことじゃねぇと良いんだが」
ぐぬぬ、と思いながらワンチャン俺の良い所を話してくれと願った。
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次くらいでこちらのシリーズ終わる予定です
良かったら見て頂けると嬉しいです
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