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11】慰めに酒を飲みに来た時のこと

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11】慰めに酒を飲みに来た時のこと

 ガヤガヤと賑やかな場所は、いつもの酒場。
左右には可愛い女性が……ってことは、俺にはない。別に良いことだが、隣にいつか俺の好きなアラン様がいればなんて思ってしまうのは、片思いをしているからだと許して欲しい。だが、俺の願いは、未だに叶うことなく。代わりに「ガハハ!」と野太い声が響いている。

「ト~マ~、今日も残念だったな~~! せっかくアラン様がいらっしゃったのにな~~」

「うるせぇ!」

バンバンと俺の肩を叩きながら親父が言う。今日もアラン様と一緒に酒を飲むことが出来なかったと慰めの会と生じて、ただ親父たちは酒を飲みたいだけなんだ。

「今日でフラれたのは何回目だ?」

「フラれてねぇよ!」

左右からの言葉に、ギャンギャンと吠える。親父たちの顔もだいぶ出来上がっていて真っ赤だ。全くこれだから酔っぱらいは……と思いながらも、俺の方も酒を飲むスピードが速い。

「おら、トーマ。飲め! 飲んで忘れちまえ!」

ドンドン目の前に並ぶコップに、言葉通りやけ酒だと俺は腕を伸ばし。酒を飲み干した時には────。


「~~~~~~っ! お偉いさんが何だって言うんだよぉぉ~~! 俺だって、俺だってアラン様に会いたいし、話したりしてぇよぉぉぉ゛~~!」


この辺りは、推測だが見事に新しい酔っぱらいの出来上がりってわけ。

「知らないお偉いさんにアラン様を取られて悔しいよなぁ? お前さん、アラン様大好きだもんなぁ?」

「そうだよ! 俺は! アラン様が大好きなんだよ!」

「おい、トーマが潰れたぞ」
「面白そうだな。ちょっと色々聞いてみようぜ」
「あんまり虐めてやるなよ? 全員、酒もほどほどにしとけ」

酔っぱらいが酔っぱらいに話を聞くなんて、ろくな話は無い。かろうじて店主の親父が、俺たちに注意した。皆明日には何も記憶を残していない状況でいろ。

「まぁまぁ。トーマほどアラン様の忠犬はいないから安心しろって」
「俺たちもアラン様っていったら、トーマを思い出しちまうからな」

「だろう~? やっぱり俺はアラン様が大好きだからなぁ~」

機嫌良く今度は笑いだす俺。変なことを言うなよ? 絶対に言うなよ? こんな状態の俺は、親父たちの良いカモだ。

「そうだ、トーマ。お前さん、アラン様のどういったところが好きか俺たちに教えてくれよ」

多分、親父たちからしたら今度俺を揶揄うためのネタ探しに。俺の口から変なことを出ることを期待したんだろう。
うっかり、アラン様を性的に見ているとか。アラン様の尻を見てしまうだとか、この間は朝からアラン様で抜いてから訓練に来た、とか言ったら色々と終わる。(結構俺もやらかしてるな?)
トーマと名前を呼ばれ、考え込む俺。絶対絶命。今一番この店で冷静な店主、頼む助けてくれ。そんなことを考えながら、当の俺はといれば。




「……嫌だ」

「なんでだよ!」

「素面の時に話すのは良いが、酔ってる時に話たくない。俺の好きなところが減っちまうだろ」

と。意外なことに、親父たちからの質問に答えることなく終わったらしい。
何で知ってるかって? そりゃあ……酒場の店主が現在進行形で教えてくれてるから。


「トーマ、お前のことだからアラン様の自慢でもするかと思ったんだがな。そりゃあもう、俺だけの秘密だと言い張って最後まで言わなかったぞ」

「そうなのか……」

(俺って意外と独占欲が強いかもしれないな)

********
どのくらいで終わらせるか悩み中です><
軽率に別にシリーズを始めるかもしれません
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