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10】どこぞのお偉いさんが羨ましい!

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10】どこぞのお偉いさんが羨ましい!

 今日の訓練も、いつも通りに終了。身体は疲れてはいるが、視線の先にアラン様がいると思うと、嬉しくて元気になるから不思議だ。
地面に座り込みながらも、アラン様を見つめていればコツンと肩を小突かれた。

「トーマ、良かったな。アラン様が久しぶりに最後までいらっしゃったぞ。ほら、いつもみたいに飲みに誘えよ。もしかしたら今回こそはOKして貰えるかもしれないぞ」

これだ。
そりゃあ、アラン様と飲みたい。あわよくば隣の席を陣取って、色んな話がしたい。酔って普段色の白いアラン様の肌が赤く染まっていく様を、至近距離で堪能したい。気分はジェットコースターながら、周囲の言葉に前向きになる俺。ここはアラン様の忠犬らしく、飲みに誘う選択をした。
一度座り込んだ身体を起こし、立ち上がる。俺は此処です! と主張するように、ブンブンと手を振って大きな声で叫ぶ。

「アラン様~! 今日こそ、皆で飲みに行きましょう!」

俺の声に、近くにいた連中以外も「またトーマだ」という雰囲気になる。だがそれで良い。これはある意味、俺なりの牽制。俺がアラン様の忠犬で、アラン様といえば俺だと周囲が認識すれば、ライバルなんかが減らせる……はず!
だが周囲は俺の牽制を気にすることなく。それどころか、便乗するように「はいはい!」と手を上げ始めた。

「アラン様! 俺も飲みたいです!」
「俺も!」

(こ、コイツら~~~~!!)

便乗してきやがった! とクルリと周囲を見れば、ニヤニヤと笑っていた。俺たちの声かけに、脚を止めるアラン様。有難うと言いながら、うーん……と微笑んだ顔が申し訳なさそうな表情へと変わる。その顔を何度も見てきた俺だから、すぐに返事が分かった。

(あ、駄目なやつだ)

「すまない。今日は、これから来客があるんだ」

ほらな。アラン様はお忙しいからな。うんうん、しょうがねぇ。断られるのは初めてじゃねぇし、悲しいことだが慣れている。

「ええ~~!」

と無駄に大きなリアクションをしつつ、気にしていませんよと明るく振る舞ってみる「残念だなぁ」と言いながら、最近どこぞの国のお偉いさんがやって来ると話していたのを思い出した。

「そういえば、今日は隣国のお偉いさんが来ているんでしたね」
「俺も見たぜ! 馬の行列!」

「こら、言葉遣いに注意しておけよ。今日は和睦を結んでいる隣国の騎士団の方々が、
交流に来ると話しただろう」

「ああ! そうでしたね!!」

「明日以降、もしかしたら一緒に稽古をするかもしれない。互いに切磋琢磨することは良い事だ。私は迎えがあるので、ここまでだ」

「アラン様、今度こそ飲みましょうね!」
「トーマお前は、酒の話ばっかりだな」

「良いだろ!」

俺は! アラン様と! 飲みたいんだよ! と思いながら訓練場を後にするアラン様の背中を見送った。

「アラン様! 隣国の方々がお見えになりました」
「連絡有難う。今から向かう」

俺は! アラン様と! 飲みたいんだよ! と思いながら訓練場を後にするアラン様の背中を見送った。

「……トーマ。飲みに行くか」

「おぅ……」

(今日に限って、親父たちが無駄に優しい)

*******
完結済・「くっコロされたい騎士団長様」の部分と少しズレがあるかもしれませんが、そっと見て頂けると嬉しいです(^^)
健全で終わらせるか少し迷い中です><

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