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■すきだらけ■

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■すきだらけ■

「それで?」

結局、先輩の家から逃げることも出来ないまま。おまけに俺は、涙を我慢することが出来ず泣いてしまうし、更にはズビッと鼻をすする音までしている。言葉も可愛くなければ、顔だって可愛くないだろう。

一周回って、もう今さら気にしたって腫れた目は元に戻らない。もういいやと開き直りながら話しているのは、「あの時の」こと。まるで答え合わせをするように、先輩の口から言葉が続く。その表情が、俺とは違って機嫌が良く、無駄に顔が良いだけに俺の気持ちはぐぬぬ……と複雑だった。(面倒臭いのは分かっているが、分かるだろ? ほら、推しの顔が良いと、行き場のない感情を消化するために、とりあえず一発殴りたい的な気持ちのせめぎ合い)

「怒るなよ? 卒業した後にも、何度か告白されたんだが、やっぱり違ったんだよな」

「先輩、モテますからね」

それだけ顔が良ければモテるでしょうね。

「そういう刺がある言い方は止めてくれ。何人に告白されたって、いつも水野が俺の頭にチラついて離れなかったんだから」

な? と仕事の時と違う。それこそ、お互い年を取り良いおじさん。良い大人だというのに小首を傾げるように近づいて来た顔は、幼く見えた。(何人もという言葉に引っかかりを感じたが、聞かなかったことにする)

(そういえば、学生時代も制服姿か体操服姿くらいしか知らないし)

(スウェットって結構レアなのでは……?)

ああ~~~~! 本当に俺ってば、チョロ過ぎ!!
それもこれも、数えるのを止めたが、目の前の先輩の顔の良さが悪い。ギュッ! と抵抗に目を瞑れば、先輩の笑う声が聞こえた。

「いいのか、水野。隙だらけだぞ?」

「は?」

好きだらけ? ちょっと何を言っているんですか? ああ、違うか。隙だらけか。
そんな文字変換に時間が数秒かかったが、本当に隙だらけだったらしい。ポカン……と小さく口を開けたままにしていると、「ちゅっ」と不意をつくように頬に柔らかな感触を頬に感じた。

……ちゅっ。

「は?」

待て、待て待て。今のは、どう考えてもキス……。

「はぁぁああああ!?!?!?」

信じらんない! いきなり俺の許可なくキスする?

「ちょっ、先輩、何してるんですか!」

「キス」

「挨拶だったとしても、突然は止めて下さいよ!」

「んー……、こんな時に挨拶のキスなんてしないって、水野だって分かってるだろう?」

「な、なんっ……」

「このまま、なし崩しは無理かなって思ったんだが……」

な? と、また首を傾げた先輩。

(ズルイズルイズルイ!)

「そんなの……っ」

ちゅっ。

「水野」

「ぅあっ……」

小さな耳穴に吹き替えるように先輩が俺の耳元で囁いて、ビクリと身体が震えた。

■すきだらけ■

*******
次あたりで終わらせようかな?と思っています
とりあえず健全endかなぁ。繁忙で次回早めに上げられればと思っていますが、変わらず詰んでいるので
ゆっくり待って頂けると嬉しいです。拍手?有難うございます!
■宣伝)skeb始めました!
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