【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華

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■子供っぽかったのは俺の方だったようで⑥

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■子供っぽかったのは俺の方だったようで⑥

 店を出て夜風が身体を冷やす中、残ったのは俺と加藤先輩だけ。どうにか理由を付けて一人で帰ろうとしたが、先輩は俺を放っておいてくれないらしい。

「水野は可愛いから、ナンパされたりたしたら、また俺が嫉妬する」

そんなことを、俺の手首を掴んで言ってくる始末。まるでドラマのワンシーンみたいなことを、恥ずかしげも無く言えるものだと思うが、顔が良いので違和感がない。
それに、「何言ってるんですか」と言い返そうにも、先輩の目が真剣で何も言えなかった。

(何で、そんなに真剣な目で俺を見るんですか)

「俺は……」

駄目だ。いつもみたいに、可愛いですし? なんて強がったり胡麻化したりすることが出来ない。 
真剣に俺を見ながら、その目がどこか縋るようにも見える。「逃げるな」と訴える目から視線を逸らすことも出来ず。先輩の言葉を待った。

「水野。俺がこの前、お前を傷つけたり、怒らせるようなことを言ってしまったのなら謝る。考えなしだった。自分の気持ちや願いばかり押し付けてた。ごめん」

「先輩……」

先輩の方が、俺よりよっぽど大人だ。それに、俺より傷ついたんだろう。こんな顔、今まで見たことがない。

「久しぶりに、先輩って呼ばれたな」

ふふっと笑った先輩が、言葉を続けた。


「水野を好きになってごめん」

最後に小さく呟いた言葉に、俺はヒュッ……と息を飲んだ。

「嫌だ」

「水野?」

「嫌だ。先輩がやっと俺のこと好きになったのに、好きになってごめんなんて言わないでよ」

最近気づいた俺の一面。俺って先輩げんだけど、やっぱり我儘だ。
口を尖らせながら呟いた声は、呟くように小さかったけれど、先輩の耳にはちゃんと聞こえたらしい。

「水野」

俺の手首から、手の平へと先輩の手が移動して手を繋ぐように握りなおした。

「やっぱり酔っているだろう? 送る。駅で良いか?」

周囲の目を気にしながら、酔っぱらいを介抱する様子で対応する先輩。それでも手は繋いだままで、どちらの手も熱く感じた。少しずつ近づいて来た先輩が、駅まで送ると聞いて来る。ここまできて? と思いながら、俺の返事は確認だった。

「先輩。本当に俺のこと、好きなんですか?」

「好きだ」

「なら……」

「ん?」

「なら……先輩の家に連れてって下さい」

ヒソッと耳元で囁いた言葉に、先輩はどう返すんだろう?

「酔ってるからって、そういうこと言うな」

(変なところで、真面目なんだから)

そういう人だって、昔から知ってるけど。

■子供っぽかったのは俺の方だったようで■

 「分かりましたよ。俺も、すみません。俺がまだ子供だったんです。明日……は休みか。来週から、ちゃんとするので。大人らしい対応もするので」

元通りになりましょう?

*******
終わらせたいですが、先を考えていませんでした>< うーん

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