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■子供っぽかったのは俺の方だったようで④

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■子供っぽかったのは俺の方だったようで④

 一度「好きだと認めてしまう」と言ってしまえば、誰に言うわけでもない小さな愚痴だとかが、同じくポロポロと出てしまった。それから最後に、一つ。

「…………加藤主任、顔が良すぎるんですよ……もう俺、全部許しちゃいそうで」

本当、全部これ。先輩の顔を見たら、顔が良いで全部許してしまう。チャラくなって再会した先輩に、チョロくなった俺。初恋の時から、ずっと俺の弱点。認めるのが怖い。認めたくない、悔しい。冷静に理由を並べると、やっぱり俺が子供っぽい。でもあるじゃん? 引くに引けない戦いってやつ。

「……」
「……」

「?」

急に二人が黙り込む。惚気に聞こえたか? と顔を上げれば、嬉しそうに口元を押さえている山本さんと、目を瞑っている田中さん。それから二人の間に黒いスーツの足元。つまり、もう一人いるってこと。

「…………あ゛あ゛っ!!!!」

二度目の悲鳴は、「あ」が一つ多くなっていた。

ダンッ! と二度目の打ち付け。今度は顔を上げたくない。

「なんで……!」

何でいるんですか!! と叫べば、この中で一番素面な先輩の声が聞こえた。

「水野」

ええ、俺が水野ですけど!?

「田中さん、山本さん、何で!?」

酷い! と突っ伏したまま言葉を続ける。「いや~」だとか「そりゃぁ……」と言葉を濁しながら返事をしたのは、また先輩だった。

「水野が酔っていて帰りが心配と連絡があってな。ああ、二人とも乾杯。俺も少し食べて良いかな?」

カキンと、またグラスを合わせる音がした。俺を置いて本当に食事を取っているんだろう。別に良いが、何でそんなに先輩は普通なんだ。

「っていうか、何で主任がここにいるんですかぁあ!!」

畜生! と顔を上げれば、ん? とエビマヨを食べている先輩。それから、皆同じ社用の携帯を取り出して、無言の田中さんと山本さん。そうだよね! 社用は皆番号が分かるもんね!!

「うぅ゛―……」

「ごちそうさまでした」

先輩は行儀が良いまま。満腹になったらしく、食後の挨拶をしていた。


「田中さん、コレ。俺と水野と山本さんの分です」

「山本の分は俺が奢るから、水野の分だけで頼む」

「分かりました。では、半分で」

「わ~い、ご馳走さまです! やったね、水野君」

「ご馳走様です」

ふぅ~満腹だとか、上手かっただとか。俺を置いて会話は続く。
構えとは言わないが、置いて行かないでくらいは言いたい。そろそろお開きの空気を感じ取り、とりあえず俺も帰り支度を整えようと上着を引っ張れば、「じゃあ、イケメン。水野を頼むな」と聞こえてすぐに後ろを振り返った。

「え?」

(まさか、本当にこの状態で俺と先輩を二人きりにすると?)

今度は待って下さいと言えなかった。

******
先ほどより少し加筆しました><
ラッパ反応有難うございます!このシリーズは近々終わらせる予定です。これを書き終わったら、終わらせても良いかな? な感じです。
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