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■子供っぽかったのは俺の方だったようで②
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■子供っぽかったのは俺の方だったようで②
仕事も終わり、またもや花の金曜日。
俺の目の前には、一人暮らしでは滅多にお目にかかれない。美味しそうな刺身や野菜、お通しの枝豆に良く冷えたビールが並んでいる。今日は楽しく会社の人と羽目を外さない程度に飲み会……というわけでもなく。
「まずは乾杯だ。ほら、かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「かんばーい……」
カキン、と音を鳴らしたあと、まずはビールを数口。プハァァッ! と良い飲みっぷりを見せ、俺の前に座る二人がグイッと前に出て来て言った。
「さぁ、水野君!」
「水野!」
「……はい」
「イケメンと」
「加藤主任と」
「「何があったんだ(のよ)?」」
ピィッと子鳥のような鳴き声を漏らしそうになった。思わず枝豆に手を伸ばして、餌のように食べたい。二人とも、俺を心配してのことだと分かっているが、どう話したら良いのか分からない。
「別に何も……」
「いや、あるだろ!」
ビシッ! とツッコミを入れた田中先輩に首を大きく縦に振る山本さん。とりあえず俺の緊張を解そうとしつつ、それから皆お腹が減っているので運ばれてきた料理を口に運ぶ。
「天ぷら美味しい~」
「刺身も上手いぞ」
「この揚げ出し豆腐も出汁が染みて美味しいです」
(このまま……! このまま俺よりも先に二人が酔って、ただの飲み会になってくれれば……!)
頼む~! 酔っぱらってくれ~!!
心の中で駄々を捏ねながら、現実の俺は唐揚げを食べていた。料理が一品来ては、一皿を空ににして店員さんへ返す。同時に。空になったグラスが並び、田中さんと山本さんは結構な量のビールを飲んでいた。二人ともまだ会話は出来るが、案外と田中さんの方が山本さんよりも顔が赤い。
「……っと、このくらいで良いか? なぁ、水野」
「そうよね、水野君」
ニコリと俺を見て笑う二人が、まだ俺から興味を失っていないことにヒクリと口角が上がった。
「何のことでしょう?」
しらばっくれるように、作り笑顔を浮かべてビールを一口。可愛い俺に免じで、それ以上は……と願ってみるも、山本さんが「だ~~か~~ら~~」と首をガクガク回しながら言った。
「もう水野君の気持ちもバレてんの! 主任のこと、大好きだな~ってオーラ全開なの! 小型犬がご主人! ご主人僕です! ってジャレついてるようにしか見えないんだから!」
「小型犬……」
「知らねぇだろ? イケメンはイケメンで、水野の事すっっっっげぇ~~聞いてくるからな?」
「Oh……」
「何かすみません」と、うっかり口から漏れそうになるのを、唇を押さえて止めた。
「何があったかは分からねぇけどさ、水野の方が大人になってやっても良いんじゃねぇかな」
「俺が大人に?」
「そ。イケメンは、子供っぽいんだろ?」
「確かに。最近の主任、チラチラ水野君見ながら声かけたいな~って感じで、お母さんに叱られた子供みたいですよ」
「水野が声かけてやれば一発だって」
「そうですか?」
「そうそう」
また俺を囲むように田中さんと山本さんが、畳みかけて来る。俺も他社から見た先輩の様子が聞けて、そんな風に見えているとはと新発見もあり気持ちが強気になってくる。
「ほら、水野もたまには飲めよ」
手渡された新しいビールのグラスを、ええい! と喉へ。
ゴッゴッゴッ、と喉が上下したあとグワンと揺れた視界。頭の隅に残っていた冷静な俺(多分、最後の理性)が「あ、駄目だ。これ」という顔をしていた。)
「だって仕方ないじゃないですか」
「水野?」
「水野君?」
「気を張っとかないと、好きだって認めちゃうじゃないですかぁぁっ……!」
(ああ、俺。酒に弱かったんだ)
飲まないと分からないもんだな。
******
前回の話にラッパのマーク?パチパチ有難うございました!嬉しいです(^^)
宣伝)久しぶりにPixiv投稿しました!また、skebも登録してみました…!
仕事も終わり、またもや花の金曜日。
俺の目の前には、一人暮らしでは滅多にお目にかかれない。美味しそうな刺身や野菜、お通しの枝豆に良く冷えたビールが並んでいる。今日は楽しく会社の人と羽目を外さない程度に飲み会……というわけでもなく。
「まずは乾杯だ。ほら、かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「かんばーい……」
カキン、と音を鳴らしたあと、まずはビールを数口。プハァァッ! と良い飲みっぷりを見せ、俺の前に座る二人がグイッと前に出て来て言った。
「さぁ、水野君!」
「水野!」
「……はい」
「イケメンと」
「加藤主任と」
「「何があったんだ(のよ)?」」
ピィッと子鳥のような鳴き声を漏らしそうになった。思わず枝豆に手を伸ばして、餌のように食べたい。二人とも、俺を心配してのことだと分かっているが、どう話したら良いのか分からない。
「別に何も……」
「いや、あるだろ!」
ビシッ! とツッコミを入れた田中先輩に首を大きく縦に振る山本さん。とりあえず俺の緊張を解そうとしつつ、それから皆お腹が減っているので運ばれてきた料理を口に運ぶ。
「天ぷら美味しい~」
「刺身も上手いぞ」
「この揚げ出し豆腐も出汁が染みて美味しいです」
(このまま……! このまま俺よりも先に二人が酔って、ただの飲み会になってくれれば……!)
頼む~! 酔っぱらってくれ~!!
心の中で駄々を捏ねながら、現実の俺は唐揚げを食べていた。料理が一品来ては、一皿を空ににして店員さんへ返す。同時に。空になったグラスが並び、田中さんと山本さんは結構な量のビールを飲んでいた。二人ともまだ会話は出来るが、案外と田中さんの方が山本さんよりも顔が赤い。
「……っと、このくらいで良いか? なぁ、水野」
「そうよね、水野君」
ニコリと俺を見て笑う二人が、まだ俺から興味を失っていないことにヒクリと口角が上がった。
「何のことでしょう?」
しらばっくれるように、作り笑顔を浮かべてビールを一口。可愛い俺に免じで、それ以上は……と願ってみるも、山本さんが「だ~~か~~ら~~」と首をガクガク回しながら言った。
「もう水野君の気持ちもバレてんの! 主任のこと、大好きだな~ってオーラ全開なの! 小型犬がご主人! ご主人僕です! ってジャレついてるようにしか見えないんだから!」
「小型犬……」
「知らねぇだろ? イケメンはイケメンで、水野の事すっっっっげぇ~~聞いてくるからな?」
「Oh……」
「何かすみません」と、うっかり口から漏れそうになるのを、唇を押さえて止めた。
「何があったかは分からねぇけどさ、水野の方が大人になってやっても良いんじゃねぇかな」
「俺が大人に?」
「そ。イケメンは、子供っぽいんだろ?」
「確かに。最近の主任、チラチラ水野君見ながら声かけたいな~って感じで、お母さんに叱られた子供みたいですよ」
「水野が声かけてやれば一発だって」
「そうですか?」
「そうそう」
また俺を囲むように田中さんと山本さんが、畳みかけて来る。俺も他社から見た先輩の様子が聞けて、そんな風に見えているとはと新発見もあり気持ちが強気になってくる。
「ほら、水野もたまには飲めよ」
手渡された新しいビールのグラスを、ええい! と喉へ。
ゴッゴッゴッ、と喉が上下したあとグワンと揺れた視界。頭の隅に残っていた冷静な俺(多分、最後の理性)が「あ、駄目だ。これ」という顔をしていた。)
「だって仕方ないじゃないですか」
「水野?」
「水野君?」
「気を張っとかないと、好きだって認めちゃうじゃないですかぁぁっ……!」
(ああ、俺。酒に弱かったんだ)
飲まないと分からないもんだな。
******
前回の話にラッパのマーク?パチパチ有難うございました!嬉しいです(^^)
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