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■自覚を持てといわれても■
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■自覚を持てといわれても■
その日は、何となく加藤先輩の機嫌が悪いなぁと感じ取っていた。
ただその機嫌の悪さは、俺だけしか気づかないような些細な。むしろ、俺だけが分かるようにワザとそういった素振りをしている? と思うくらいの本当に些細なもの。それでも気になったので、つい先輩に聞いてしまったのがいけなかった。
「あの、加藤先輩」
「何だ?」
「先輩、ちょっと機嫌悪いですか?」
(おっと。俺ってば、ストレートに聞きすぎたな? オブラートに何一つ包まれてないぞ)
自分にツッコミを入れたところで、時間は戻らない。平常心と自分に言い聞かせながら先輩の返事を待った。
「別に……悪くない」
プイッと、今まで合わせていた視線を逸らし。明後日の方向でも見るように、首を自分のパソコン画面へ。カタカタと難しい数字や何かを打ち込んで資料を作り始めた先輩。
(いや…、いやいやいや!! その態度知ってますよ? 学生時代の図書室でも同じ態度取りましたよね?)
経験のある俺だからこそ分かる。これは、間違いなく先輩の機嫌が悪い。俺は何かしただろうか? と思ったが、別段何もしていない。仕事でギリギリセーフな失敗はしたが、寸前で気づいたのでセーフ……のはず。それに先輩は、仕事のミスはきちんと注意してくれる。
(つまり、俺は悪くない!!!)
そうと分かれば、俺はこの場を離れよう。時間が解決して、休憩から戻ったら先輩の機嫌も戻っているかもしれない。
仕事もひと段落し、小腹が空いてきた時間。頭を使ったあとは、腹が減るなぁと席を立とうとした時だった。
「……ちょっと休憩行ってきますね」
「嫌だ」
「は?」
立ち上って俺の手を、先輩が握った。「嫌だ」と駄々を捏ね、俺を制止する先輩。田中さんや山本さんを始め、先輩がクールなイケメンだと思っている人たちが見たら驚くような子供っぽさ。
「嫌だって何ですか」
当然の質問。俺が休憩に行きたいんだから、好きにして良いはず。周囲に人が居なければ、最近の俺は結構先輩に強気に出たりする。(うーん……結構、学生時代のノリに戻っている部分があるな。気を付けなきゃな)
俺の言葉に、小さく呟く先輩。
「水野に隣にいて欲しい」
「だって先輩、機嫌が悪いじゃないですか」
オブラートって何ですか? と言ってしまう勢いで、何も包むなんてせず。つい本音が、そのまま出てしまった。
「悪くない」
「いや、悪いでしょ。それとも……俺の前だけですか?」
自分で言っておいて何だが、思った通りに正解だったら少し凹む。
「……そ、れは……」
え? 何ですか。本当に俺の前でだけ機嫌悪かったんですか! 分かってはいたけど、やっぱり少し凹む。うわあああ! という気持ちを押さえつつ、先輩の言葉を待った。
「お前が……水野が、皆にニコニコしてるから」
「は?」
「水野は俺の後輩で部下だし。俺のなのにって……つい……」
「はぁああ……??」
どこからツッコんだら良いか分からず、思わず大きな声が出てしまった。思いのほか大きかった声量に、チラリと数名こちらの方を振り返る。いけないと思いつつ、すぐに笑顔を向け「何も無いです」という素振りを取った。
「俺は別に先輩の物でもないですし」
当たり前のことを言えば、また拗ねたように唇を尖らせて先輩が言った。
「なら、俺が好きだってことを自覚してくれ」
「我儘が過ぎますよ」
はぁ~……っと溜息をつけば、あまりの子供っぽさに呆れてしまい、また自分の席についてしまった。
■自覚を持てといわれても■
そんなの。どうしたら良いか分からないですよ、俺は。
******
久しぶりに更新しました!
別の「くっコロ~」の方を詰んで頭を抱えています
その日は、何となく加藤先輩の機嫌が悪いなぁと感じ取っていた。
ただその機嫌の悪さは、俺だけしか気づかないような些細な。むしろ、俺だけが分かるようにワザとそういった素振りをしている? と思うくらいの本当に些細なもの。それでも気になったので、つい先輩に聞いてしまったのがいけなかった。
「あの、加藤先輩」
「何だ?」
「先輩、ちょっと機嫌悪いですか?」
(おっと。俺ってば、ストレートに聞きすぎたな? オブラートに何一つ包まれてないぞ)
自分にツッコミを入れたところで、時間は戻らない。平常心と自分に言い聞かせながら先輩の返事を待った。
「別に……悪くない」
プイッと、今まで合わせていた視線を逸らし。明後日の方向でも見るように、首を自分のパソコン画面へ。カタカタと難しい数字や何かを打ち込んで資料を作り始めた先輩。
(いや…、いやいやいや!! その態度知ってますよ? 学生時代の図書室でも同じ態度取りましたよね?)
経験のある俺だからこそ分かる。これは、間違いなく先輩の機嫌が悪い。俺は何かしただろうか? と思ったが、別段何もしていない。仕事でギリギリセーフな失敗はしたが、寸前で気づいたのでセーフ……のはず。それに先輩は、仕事のミスはきちんと注意してくれる。
(つまり、俺は悪くない!!!)
そうと分かれば、俺はこの場を離れよう。時間が解決して、休憩から戻ったら先輩の機嫌も戻っているかもしれない。
仕事もひと段落し、小腹が空いてきた時間。頭を使ったあとは、腹が減るなぁと席を立とうとした時だった。
「……ちょっと休憩行ってきますね」
「嫌だ」
「は?」
立ち上って俺の手を、先輩が握った。「嫌だ」と駄々を捏ね、俺を制止する先輩。田中さんや山本さんを始め、先輩がクールなイケメンだと思っている人たちが見たら驚くような子供っぽさ。
「嫌だって何ですか」
当然の質問。俺が休憩に行きたいんだから、好きにして良いはず。周囲に人が居なければ、最近の俺は結構先輩に強気に出たりする。(うーん……結構、学生時代のノリに戻っている部分があるな。気を付けなきゃな)
俺の言葉に、小さく呟く先輩。
「水野に隣にいて欲しい」
「だって先輩、機嫌が悪いじゃないですか」
オブラートって何ですか? と言ってしまう勢いで、何も包むなんてせず。つい本音が、そのまま出てしまった。
「悪くない」
「いや、悪いでしょ。それとも……俺の前だけですか?」
自分で言っておいて何だが、思った通りに正解だったら少し凹む。
「……そ、れは……」
え? 何ですか。本当に俺の前でだけ機嫌悪かったんですか! 分かってはいたけど、やっぱり少し凹む。うわあああ! という気持ちを押さえつつ、先輩の言葉を待った。
「お前が……水野が、皆にニコニコしてるから」
「は?」
「水野は俺の後輩で部下だし。俺のなのにって……つい……」
「はぁああ……??」
どこからツッコんだら良いか分からず、思わず大きな声が出てしまった。思いのほか大きかった声量に、チラリと数名こちらの方を振り返る。いけないと思いつつ、すぐに笑顔を向け「何も無いです」という素振りを取った。
「俺は別に先輩の物でもないですし」
当たり前のことを言えば、また拗ねたように唇を尖らせて先輩が言った。
「なら、俺が好きだってことを自覚してくれ」
「我儘が過ぎますよ」
はぁ~……っと溜息をつけば、あまりの子供っぽさに呆れてしまい、また自分の席についてしまった。
■自覚を持てといわれても■
そんなの。どうしたら良いか分からないですよ、俺は。
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