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■どういう人が■
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■どういう人が■
加藤先輩が転勤してきて、一ケ月が過ぎ、二か月が過ぎ。
一ケ月が過ぎた頃には、もう一ケ月かと言っていたのに、もうそれ以上の月日が過ぎた。未だに先輩の顔の良さには慣れないが、隣にいることには慣れて来た。
そんな先輩も、当たり前ながら俺と毎日一緒ということはなく。今日だってまた一人で外回りの最中。帰って来ると、大体新規の営業を得て来るので凄い。そんな先輩は、変わらず女性陣に大人気。例えば、そう。今だって──────。
「ねぇ、水野君」
「はい、どうしました?」
俺に声を掛けて来たのは、女性社員の先輩。静かに俺の隣にやって来て、内緒話をする音量でもないが口元を片手で壁を作りながら言った。
「加藤主任って、どういう人がタイプなのかな?」
こんな感じ。
恋する乙女に限らず。好きな人に好かれるようにするには、好みを攻略するのが近道だもんな。分かる。俺もそうするし。
(ああー……やっぱり先輩ってば、モテるなぁ)
笑顔で対応しながら、内心こんな感じだった。
「えっと……うーん。すみません。あんまり俺は主任と、そういった話はしないので分からないですね」
「そっかぁ……水野君なら、何か知ってると思ったんだけど……。主任、この前手作り作って来た時に、ピシャリと何か断ったって聞いたから迂闊に踏み込めなくいのよねぇ」
「あはは」
自分でも作り笑顔に、作ったような笑い声だと思った。
加藤先輩の手作りおにぎりの件は、やっぱり広がっているんだなと思いつつも何も言わない。
「山本さん、加藤主任のこと好きなんですか?」
「だって、あんなに顔が良くて仕事が出来る独身って超レアじゃない!? 性格に難ありなのかしらって思ったけど、見た感じそうでもないし。指輪やアクセサリーも見かけないから、彼女もいないと思ってるんだけどなぁ……」
「そんなところまでチェックしてるんですね。凄いですね」
「あ! やだ! 引かないでよ!? 私だけじゃないからね、結構女性陣で主任狙っている人多いし、普通にチェックするポイントだからね!」
若干慌てた様子の山本さん。
俺自身から先輩に好意を向けているわけではないが、先輩をそういった目で見ている話を聞きたくない。この話を早く終わらせたいと、「ああ、そういえば……」と、思い出したように、俺は言葉を続けようとした時だった。
「お? 何だ? 面白い話でもしてるのか?」
「「田中さん!」」
「よ!」と、俺たちの背後から現れた田中さん。山本さんが今度は田中さんへと質問を向けた。
「それが……加藤主任のタイプが知りたくて水野君に聞いてみたんですけど、知らないみたいで……田中さんは知ってますか?」
「か~~っ! まーたイケメンの話かよ~。俺と水野も良い男だぜ?」
「良いじゃないですか~!」
「ま、イケメンのタイプ何て聞かなくても分かるだろ?」
「「え??」」
田中さんの言葉に、俺と山本さんは声を合わせた。
「いや。あのイケメン、水野のこと好きだろ? めちゃくちゃ可愛がってるし」
「「ええっ!?」」
その一言に、内心喜んだ俺がいた。
■どういう人が■
「ライバルは水野君だったか~~!」
「え、あ……ははっ……」
そう言う山本さんの隣で、今度の笑いはどこか嬉しそうな声が混じっていた。
*******
加藤先輩が転勤してきて、一ケ月が過ぎ、二か月が過ぎ。
一ケ月が過ぎた頃には、もう一ケ月かと言っていたのに、もうそれ以上の月日が過ぎた。未だに先輩の顔の良さには慣れないが、隣にいることには慣れて来た。
そんな先輩も、当たり前ながら俺と毎日一緒ということはなく。今日だってまた一人で外回りの最中。帰って来ると、大体新規の営業を得て来るので凄い。そんな先輩は、変わらず女性陣に大人気。例えば、そう。今だって──────。
「ねぇ、水野君」
「はい、どうしました?」
俺に声を掛けて来たのは、女性社員の先輩。静かに俺の隣にやって来て、内緒話をする音量でもないが口元を片手で壁を作りながら言った。
「加藤主任って、どういう人がタイプなのかな?」
こんな感じ。
恋する乙女に限らず。好きな人に好かれるようにするには、好みを攻略するのが近道だもんな。分かる。俺もそうするし。
(ああー……やっぱり先輩ってば、モテるなぁ)
笑顔で対応しながら、内心こんな感じだった。
「えっと……うーん。すみません。あんまり俺は主任と、そういった話はしないので分からないですね」
「そっかぁ……水野君なら、何か知ってると思ったんだけど……。主任、この前手作り作って来た時に、ピシャリと何か断ったって聞いたから迂闊に踏み込めなくいのよねぇ」
「あはは」
自分でも作り笑顔に、作ったような笑い声だと思った。
加藤先輩の手作りおにぎりの件は、やっぱり広がっているんだなと思いつつも何も言わない。
「山本さん、加藤主任のこと好きなんですか?」
「だって、あんなに顔が良くて仕事が出来る独身って超レアじゃない!? 性格に難ありなのかしらって思ったけど、見た感じそうでもないし。指輪やアクセサリーも見かけないから、彼女もいないと思ってるんだけどなぁ……」
「そんなところまでチェックしてるんですね。凄いですね」
「あ! やだ! 引かないでよ!? 私だけじゃないからね、結構女性陣で主任狙っている人多いし、普通にチェックするポイントだからね!」
若干慌てた様子の山本さん。
俺自身から先輩に好意を向けているわけではないが、先輩をそういった目で見ている話を聞きたくない。この話を早く終わらせたいと、「ああ、そういえば……」と、思い出したように、俺は言葉を続けようとした時だった。
「お? 何だ? 面白い話でもしてるのか?」
「「田中さん!」」
「よ!」と、俺たちの背後から現れた田中さん。山本さんが今度は田中さんへと質問を向けた。
「それが……加藤主任のタイプが知りたくて水野君に聞いてみたんですけど、知らないみたいで……田中さんは知ってますか?」
「か~~っ! まーたイケメンの話かよ~。俺と水野も良い男だぜ?」
「良いじゃないですか~!」
「ま、イケメンのタイプ何て聞かなくても分かるだろ?」
「「え??」」
田中さんの言葉に、俺と山本さんは声を合わせた。
「いや。あのイケメン、水野のこと好きだろ? めちゃくちゃ可愛がってるし」
「「ええっ!?」」
その一言に、内心喜んだ俺がいた。
■どういう人が■
「ライバルは水野君だったか~~!」
「え、あ……ははっ……」
そう言う山本さんの隣で、今度の笑いはどこか嬉しそうな声が混じっていた。
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