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■気になるピョコン■

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■気になるピョコン■


 「……ハネてる」

朝から気にしている寝ぐせを、柔和に微笑みながら。さらには、不意に髪に触れながら指摘され、俺の頭は朝から忙しかった。無駄に良い顔で、微笑んで。
何なんですか! その微笑み? ねぇ! 俺が、その顔に弱いの知ってるでしょ!! と言いたくなるのを我慢する。もう先輩に振り回されるのは御免だ。
内勤にしてやると思ったが、先輩と外回りだと現実を伝え大人しく席につく。仕事だから、外回りはしかたがない。それが俺の仕事だし。だけど、これだけは約束して貰わなければ。

「とにかく! 俺の寝ぐせには触れないで下さい」

そう言えば、先輩からの返事は無いまま。静かに業務を始めたのが今日の朝。


……スリッ。

…………スリッ。

朝、お昼時、移動のふとした時髪に感じる感触。

(我慢だ、俺。相手は先輩。先輩は上司……)

呪文を唱えるように、心の中で自分に言い聞かせ続けた。先輩も、一体何が面白いというのだろう? ただのハネた寝ぐせ一つ。そんなに触らなくったって良いだろうに。だが先輩は、飽きることなく俺の寝ぐせを何食わぬ顔をして触り続けた。

午後からの外回りは、知った取引先の人からも「あら」だとか、「おや」と言われたが、可愛いと思いのほか好評。可愛い俺に、寝ぐせで更に可愛いが増してしまったな!(ヤケクソ)と思いつつ、会社に戻り。外回りで貰った注文の手配、報告。
ちゃんと社会人してるなぁと、自分を褒めている時だって、先輩の手は止まることなく。

カタカタとパソコンを打ちながら、もうすぐ定時。さぁ帰ろうと思っていた時にも、俺の寝ぐせに触れてきた。

「~~~~っ、もう……!」

流石に人目のある場所で、止めて下さい! と言うのは気が引ける。ギィッと椅子を動かし、俺の髪に触れる先輩を現行犯逮捕。そのまま、パクパクと口を動かして。音を発することなく言った。

「や め て く だ さ い」

ピクリと止まった先輩の指先。どちらかといえば、表情の大きな差がない先輩が、心なしか照れたように見えた。そのまま止まった指先が、ゆっくりと先輩の口元を覆う。おまけに、何だか俺と合っていた視線を逸らし、違う方を見つめている。

(……ん?)

先輩の様子が変だな? と小首を傾げれば、先輩が小さく「悪い」と呟いて言った。


「悪い……無意識だった……」

「なっ……!」

無意識で、あんなに俺の寝ぐせ触ってたんですか!?

■気になるピョコン■

 つられて俺まで、顔が赤くなった。

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