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■机の端のプリン■
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■机の端のプリン■
「……静かだ」
今日は隣に先輩がいない。珍しく一人で外回りへと出て行った。午前に出て、今はお昼過ぎ。
『じゃあ、水野。行ってくる』
『はい、行ってらっしゃい』
俺の行ってらっしゃいを聞くと口角を上げて笑った先輩。俺の一言が、そんなに嬉しいのかとちょっと俺の方が恥ずかしくなったが、プイッと照れた顔を隠すように自分のパソコンへ向きなおした。
先輩が来る前までは、隣は空席だったのに。今は静かで、少しだけ寂しく感じてしまうから不思議だ。カタカタと打ち込む文字を見ながら、加藤先輩はいつ戻って来るんだろうと思った。
「よ! 水野」
ポンッ、と肩を叩かれ、振り向けば田中さんが立っていた。その片手には、缶コーヒー……ではなく。ミルクたっぷり! と書かれたココアが一本。
「お疲れ~。ほら、差し入れ。水野コーヒー苦手だったよな?」
「有難うございます。ははっ……コーヒーは飲めないことは無いんですけど、苦いのが苦手で」
「子供舌かよ」
「で? どうだ。イケメンには慣れたかよ」
「加藤主任ですか? まぁ、そうですね」
正直、まだ顔の良さには慣れないけど。(多分、一生慣れることはないと思う)
「ふーん。ま、なら安心だな。この前の昼時に現れた時は、顔が怖かったからよ。神経質なのかなって心配したんだぞ」
あの不機嫌な先輩の顔かと、思い出したら少し笑いそうにあった。
「田中さん、いつも俺の心配してくれますね。有難うございます! 加藤主任、あの時はカップ麺が伸びるって心配してたみたいで」
「え、意外。あのイケメン、カップ麺とか食べるのか?」
「結構ジャンキーなの好きみたいですよ」
「それで腹が出てないんだから、羨ましい限りだよな~」
田中さんは、部下思いだなぁと思っていれば「ただいま戻りました」と声がした。
「お、噂をすれば何とやらだ」
「加藤主任。お帰りなさい」
「おかえりなさーい」
迎えの声掛けに、ペコリと頭を下げながら加藤先輩が当たり前だが俺の隣へと戻ってきた。田中さんに「こんにちは」と挨拶をし、「お疲れ様です」と短い会話。加藤先輩の手には、ガザリと白いビニール袋が握られていて加藤先輩が田中さんに小さなお菓子を手渡した。
「差し入れです」
「わっ! 有難うって……。キャラクターのセリフ付きチョコ! 意外でビックリしました」
「色んなセリフがあって、面白そうだったので」
「主任、そのキャラクター好きですもんね」
田中さんの手に渡されたチョコレートのパッケージには、学生時代にアニメで見ていたキャラクターとセリフが描かれていた。
「イケメンさん、ちょっと親近感湧いて安心しました。じゃあ、俺はこれで」
「水野、ココア買ったのか?」
「良いでしょ? 田中さんに貰いました」
「そうか……」
田中さんが席に戻り。先輩も俺の席の隣に着くかと思えば、コトンと机の端で音がした。
「ん?」
置かれていたのは、小さなプリン。ガサガサと音がしたから、ビニール袋から出したのだろう。
「加藤先輩?」
「水野、そのプリン好きだっただろう?」
いや、確かに。このプリン好きですけど。
「俺も、水野の好きな物知ってるし」
スプーンもあるぞと、一緒に渡してきた。
■机の端のプリン■
「……何、対抗意識燃やしてるんですか」
やれやれと思いながら、俺は早速プリンを食べた。やっぱり美味しかった。
******
「……静かだ」
今日は隣に先輩がいない。珍しく一人で外回りへと出て行った。午前に出て、今はお昼過ぎ。
『じゃあ、水野。行ってくる』
『はい、行ってらっしゃい』
俺の行ってらっしゃいを聞くと口角を上げて笑った先輩。俺の一言が、そんなに嬉しいのかとちょっと俺の方が恥ずかしくなったが、プイッと照れた顔を隠すように自分のパソコンへ向きなおした。
先輩が来る前までは、隣は空席だったのに。今は静かで、少しだけ寂しく感じてしまうから不思議だ。カタカタと打ち込む文字を見ながら、加藤先輩はいつ戻って来るんだろうと思った。
「よ! 水野」
ポンッ、と肩を叩かれ、振り向けば田中さんが立っていた。その片手には、缶コーヒー……ではなく。ミルクたっぷり! と書かれたココアが一本。
「お疲れ~。ほら、差し入れ。水野コーヒー苦手だったよな?」
「有難うございます。ははっ……コーヒーは飲めないことは無いんですけど、苦いのが苦手で」
「子供舌かよ」
「で? どうだ。イケメンには慣れたかよ」
「加藤主任ですか? まぁ、そうですね」
正直、まだ顔の良さには慣れないけど。(多分、一生慣れることはないと思う)
「ふーん。ま、なら安心だな。この前の昼時に現れた時は、顔が怖かったからよ。神経質なのかなって心配したんだぞ」
あの不機嫌な先輩の顔かと、思い出したら少し笑いそうにあった。
「田中さん、いつも俺の心配してくれますね。有難うございます! 加藤主任、あの時はカップ麺が伸びるって心配してたみたいで」
「え、意外。あのイケメン、カップ麺とか食べるのか?」
「結構ジャンキーなの好きみたいですよ」
「それで腹が出てないんだから、羨ましい限りだよな~」
田中さんは、部下思いだなぁと思っていれば「ただいま戻りました」と声がした。
「お、噂をすれば何とやらだ」
「加藤主任。お帰りなさい」
「おかえりなさーい」
迎えの声掛けに、ペコリと頭を下げながら加藤先輩が当たり前だが俺の隣へと戻ってきた。田中さんに「こんにちは」と挨拶をし、「お疲れ様です」と短い会話。加藤先輩の手には、ガザリと白いビニール袋が握られていて加藤先輩が田中さんに小さなお菓子を手渡した。
「差し入れです」
「わっ! 有難うって……。キャラクターのセリフ付きチョコ! 意外でビックリしました」
「色んなセリフがあって、面白そうだったので」
「主任、そのキャラクター好きですもんね」
田中さんの手に渡されたチョコレートのパッケージには、学生時代にアニメで見ていたキャラクターとセリフが描かれていた。
「イケメンさん、ちょっと親近感湧いて安心しました。じゃあ、俺はこれで」
「水野、ココア買ったのか?」
「良いでしょ? 田中さんに貰いました」
「そうか……」
田中さんが席に戻り。先輩も俺の席の隣に着くかと思えば、コトンと机の端で音がした。
「ん?」
置かれていたのは、小さなプリン。ガサガサと音がしたから、ビニール袋から出したのだろう。
「加藤先輩?」
「水野、そのプリン好きだっただろう?」
いや、確かに。このプリン好きですけど。
「俺も、水野の好きな物知ってるし」
スプーンもあるぞと、一緒に渡してきた。
■机の端のプリン■
「……何、対抗意識燃やしてるんですか」
やれやれと思いながら、俺は早速プリンを食べた。やっぱり美味しかった。
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