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34】【Side.K】会わないことにした
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34】【Side.K】会わないことにした
「圭介。話があるんだけど」
ダンッ、と朝から不機嫌そうな百合が、俺の机を叩くように手を置いて言った。見るからに機嫌が悪い。
「……俺は無い。てか、授業始まるだろ」
「圭介」
「百合。俺たちは受験生で、センター試験なんてすぐだぞ。俺は勉強したい」
「……なら放課後、話すからね。教室いてよ」
「気が向いたらな」
ピリピリとした空気だったが、気にしないフリをする。
本当のことだ。俺たちは高校生で、すぐに受験がやって来る。大人からしたら、きっとまだ高校生なんて肩書は子供の部類だ。進路だって決まっていない。ただの子供。どうしたら子供じゃないと思われるだろう? 成人式を迎えれば、流石に大人だと認知されるだろうが、それにはまだ時間がかかる。
(俺だって、将来のことを考えてるだってところを見せたら、少しは変わるんだろうか)
『久保君』
チラリと浮かぶ先生の顔をかき消して、俺は真面目に授業を受けることにした。
先生に会わないと言ってから、机の傍に置いていた写真をしまった。園へ伸びそうになる足を止めて、図書館へと向かい勉強を始めた。
(この一年だ。もう一年のうち、数か月経っている。全部終わるまで、先生に会わない)
意固地のような、俺の決心。
(きっと百合には分からないだろうけど)
そんなことを思いながら、俺は真面目に授業を受けることにした────。
*******
****
「圭介。待って」
「……」
「圭介」
一日が終わり。今日も図書館へ行くかと準備していると百合に引き留められた。どうやっても、俺を逃がすつもりは無いらしい。キョロキョロと周囲を確認しつつ、人が減っていくのを待つ百合。
「分かったよ。なら人が減るまで、俺は単語でも覚えとくな」
パラリと英語の単語帳を出して、ページを捲る。百合は黙ったまま、俺を見つめているが視線を気にせず単語を見るのに集中した。1ページ、2ページとページが進む。耳に聞こえる周囲の声が段々と少なくなって、ようやく百合が口を開いた。
「圭介。何で最近、先生のところ行ってないの?」
「……会わないって決めたから」
「何で? 先生のこと、諦めるの?」
「…………ちげーし」
「じゃあ何で? 圭介の気持ちって、そんなすぐに諦められるものだったの?」
「諦めないために、会わないことにしたんだよ」
「何それ。先生、悲しそうだったよ」
「俺だって……俺だって、会えるなら会いてぇし。でも、そうしたら色々揺るぐし。だから全部終わるまで会わないことにしたんだよ」
「不器用なの。なら私が沢山先生に会うけど良いの?」
「百合なら別に先生取らねぇから良い」
「……はぁ~~……圭介。アンタ、案外とクソデカ感情だったのね」
「俺が幼稚園の頃から片思いしてるって、お前知ってんだろ」
「だけどさぁ……もう少し言い方ってのをさぁ……。圭介いない間に、先生別の人に取られても知らないからね」
「その時は、その時で諦めないからいい」
はぁ~~……、とまた溜息をついた百合は、もう怒っておらず。俺に、クソデカ感情男と口を尖らせて言った。
*********
更新しました
もうあと2,3くらいで終わらせる予定です
駆け足ですみません><
「圭介。話があるんだけど」
ダンッ、と朝から不機嫌そうな百合が、俺の机を叩くように手を置いて言った。見るからに機嫌が悪い。
「……俺は無い。てか、授業始まるだろ」
「圭介」
「百合。俺たちは受験生で、センター試験なんてすぐだぞ。俺は勉強したい」
「……なら放課後、話すからね。教室いてよ」
「気が向いたらな」
ピリピリとした空気だったが、気にしないフリをする。
本当のことだ。俺たちは高校生で、すぐに受験がやって来る。大人からしたら、きっとまだ高校生なんて肩書は子供の部類だ。進路だって決まっていない。ただの子供。どうしたら子供じゃないと思われるだろう? 成人式を迎えれば、流石に大人だと認知されるだろうが、それにはまだ時間がかかる。
(俺だって、将来のことを考えてるだってところを見せたら、少しは変わるんだろうか)
『久保君』
チラリと浮かぶ先生の顔をかき消して、俺は真面目に授業を受けることにした。
先生に会わないと言ってから、机の傍に置いていた写真をしまった。園へ伸びそうになる足を止めて、図書館へと向かい勉強を始めた。
(この一年だ。もう一年のうち、数か月経っている。全部終わるまで、先生に会わない)
意固地のような、俺の決心。
(きっと百合には分からないだろうけど)
そんなことを思いながら、俺は真面目に授業を受けることにした────。
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「圭介。待って」
「……」
「圭介」
一日が終わり。今日も図書館へ行くかと準備していると百合に引き留められた。どうやっても、俺を逃がすつもりは無いらしい。キョロキョロと周囲を確認しつつ、人が減っていくのを待つ百合。
「分かったよ。なら人が減るまで、俺は単語でも覚えとくな」
パラリと英語の単語帳を出して、ページを捲る。百合は黙ったまま、俺を見つめているが視線を気にせず単語を見るのに集中した。1ページ、2ページとページが進む。耳に聞こえる周囲の声が段々と少なくなって、ようやく百合が口を開いた。
「圭介。何で最近、先生のところ行ってないの?」
「……会わないって決めたから」
「何で? 先生のこと、諦めるの?」
「…………ちげーし」
「じゃあ何で? 圭介の気持ちって、そんなすぐに諦められるものだったの?」
「諦めないために、会わないことにしたんだよ」
「何それ。先生、悲しそうだったよ」
「俺だって……俺だって、会えるなら会いてぇし。でも、そうしたら色々揺るぐし。だから全部終わるまで会わないことにしたんだよ」
「不器用なの。なら私が沢山先生に会うけど良いの?」
「百合なら別に先生取らねぇから良い」
「……はぁ~~……圭介。アンタ、案外とクソデカ感情だったのね」
「俺が幼稚園の頃から片思いしてるって、お前知ってんだろ」
「だけどさぁ……もう少し言い方ってのをさぁ……。圭介いない間に、先生別の人に取られても知らないからね」
「その時は、その時で諦めないからいい」
はぁ~~……、とまた溜息をついた百合は、もう怒っておらず。俺に、クソデカ感情男と口を尖らせて言った。
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更新しました
もうあと2,3くらいで終わらせる予定です
駆け足ですみません><
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