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27】久保君じゃないお客さん

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27】久保君じゃないお客さん

 「先生、さようなら~」

「はい、さようなら。また明日ね」

今日も一日を終え。子供たちが一人、また一人と親御さんと帰って行く姿を見守っている時だった。

「水野先生」

「?」

教室の廊下から、僕を呼ぶ声がする。斎藤先生が呼んだらしく、教室へ入って来て、僕の隣へ。どうしたんだろう? と思っていると、「お客さんだよ」と教えてくれた。

「水野先生に、お客さんだよ」

「お客さん?」

久保君かな? と思ったが、今では久保君が来ていると教えてくれるはず。一体誰だ? と思わず首を傾げた。

「久保君じゃなくてですか?」

「あら、久保君が良かった?」

「そういうわけじゃ……」

「まぁまぁ、冗談よ。水野先生は、人気者ねぇ。今日はなんと、女の子のお客さんです!」

「女の子?」

「まぁ、会ってみてのお楽しみですよ。職員室で待っているので、行って下さい」
「分かりました。有難うございます」

知り合いに、女の子と表現される子は少ない。親族の子どもくらいだけれど、わざわざ勤務先へ来ないだろう。卒園したばかりの子たちかな? と思うのが半分。久保君の件もあり、何となくデジャヴも半分。

(僕に女の子のお客さん……?)

だめだ。全然思い浮かばないと、足早に職員室へ向かう。あっという間についた職員室のドアを開けば、久保君の時のように嬉しそうな園長先生と、久保君と同じような制服を着た女の子が一人座っていた。


「あ! 水野先生! お久しぶりです!」

「水野先生、誰だか分かるかい?」

これまた今どきの女子高生が一人、僕の方へやって来てくれたが如何せん。全く分からない。男の子と違い、メイクまでされてしまえば、手も足も出ないというもの。園長先生もクイズだよと笑っているが、せめてヒントを与えて欲しい。

「……」

「先生? どう? 私のこと、思い出した?」

「どうだね、水野先生?」

「……~~~~~っ、すみません。完敗です。きっと僕の受け持ったクラスの卒園生だということは分かるんですが、女の子は男の子以上に綺麗になるので……」

「やった! 綺麗になったって! 圭介に自慢しちゃお」

「圭介?」

「水野先生、ヒントですよ。久保君と同じクラスだった子です」


クラス皆仲が良かったが、久保君の隣にいた子は誰だっただろう? そうだ。同じ男の子が隣にいるというよりも、女の子が隣にいることが多かった。モテるという意味ではなく、異性の友達という感じの。

「うぅーん……久保君の隣によくいた女の子……女の子……」

「え、やだ先生! 私圭介の隣によくいたわけじゃないよ! 圭介が百合の隣にいたの!」

「「「あ」」」

百合。ポロリと出た言葉に、三人一緒に声を合わせた。そうくれば、あとは思い出せる。


「……山野百合ちゃん……?」

「正解です」

ぴえん、と泣きマネをした百合ちゃんを残し。また園長先生が「では、また若いお二人で」なんて言いながら職員室を後にした。


******
詰゛み゛ま゛し゛た゛
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