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15】飲みたい気分だってある
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15】飲みたい気分だってある
今日は花の金曜日。
行事がある月ではなく、週末は出勤せずに休みを謳歌できる。特にこれといった予定はない。だが、休み前だからこそ出来ることが一つある。
「飲むぞ……!」
テーブルの上に並んだ、数本の缶ビール。ちょっと控えめに350mlを買っているところが僕らしい。普段はお酒を飲む方ではない。飲んだとしても、付き合い程度に少しだけ。そんな僕でも、お酒を飲まずにはいられない時だってあるわけで。
例えばそう……今みたいな気持ちの時。
「ううっ……」
日に日に頭から離れなくなっていく、久保君のこと。
『恰好良いかは、さておき……そうなの。俺もね、片思いしてるの』
『俺もね、振り向いてもらえるように頑張ってるんだ』
青春真っただ中であろう、青少年が爽やかに言った言葉一つに心が乱されてしまう。
恋することは素敵だと思う。キラキラとした瞳で、誰かにあんなに思われれば幸せだろう。
もし、僕が。ゆりちゃんじゃなく、僕がそんな相談を受けていたら久保君は悪い人じゃないから、考えてみたら? なんて、おせっかいを焼いてしまうかもしれない。だが、僕は久保君の恋する相手を知っている。あの時だって、最後にチラリと送られた視線にだって気づている。
「やー!」
思い出してしまった久保君の顔をかき消すように、ビールをグラスに注いでは一気に飲み干した。一杯、二杯を飲み干して、缶が軽くなっていく。身体が熱くなってきて、眠たさを感じるが頭は妙に冴えていて。
(片思いの相手は僕ってことでしょう!?)
自分だけが知っている事実に、表現しがたく。誰かに相談しようにも、どう話したら良いのやら。残り少ないビールをゴクリと飲んで、プハァ……ッと炭酸が喉を抜けるの感じつつペタリとテーブルに頬を擦り付けた。
「はぁっ……」
溜息しか出ない。
(相談といったところで、困っている状態じゃないのが一番問題なんだろうけど……)
そうだ。
よっぽど困っているのか? と問われれば、そこまでは……と返してしまう程度のもの。それどころかだ。
「本当に、格好良く成長しちゃって」
こんなおじさんに好きだなんて。
空きっ腹にアルコールは良くないと、おつまみに買ってきたポテチを一枚口に運びながら、程よい塩味が美味しいと思いながら悶々としてしまう僕の心。
「久保君は、僕みたいなおじさんのどこが良いんだろうねぇ……?」
あ゛―……と、テーブルの上でそのままゴロゴロと頭を転がし。
「恋って難しいなぁ」
誰か教えてよ、と駄々をこねたかったが僕の瞼はだんだんと重たくなって視界が真っ暗になっていったのだった。
*********
詰み始めて頭を抱えてます
今日は花の金曜日。
行事がある月ではなく、週末は出勤せずに休みを謳歌できる。特にこれといった予定はない。だが、休み前だからこそ出来ることが一つある。
「飲むぞ……!」
テーブルの上に並んだ、数本の缶ビール。ちょっと控えめに350mlを買っているところが僕らしい。普段はお酒を飲む方ではない。飲んだとしても、付き合い程度に少しだけ。そんな僕でも、お酒を飲まずにはいられない時だってあるわけで。
例えばそう……今みたいな気持ちの時。
「ううっ……」
日に日に頭から離れなくなっていく、久保君のこと。
『恰好良いかは、さておき……そうなの。俺もね、片思いしてるの』
『俺もね、振り向いてもらえるように頑張ってるんだ』
青春真っただ中であろう、青少年が爽やかに言った言葉一つに心が乱されてしまう。
恋することは素敵だと思う。キラキラとした瞳で、誰かにあんなに思われれば幸せだろう。
もし、僕が。ゆりちゃんじゃなく、僕がそんな相談を受けていたら久保君は悪い人じゃないから、考えてみたら? なんて、おせっかいを焼いてしまうかもしれない。だが、僕は久保君の恋する相手を知っている。あの時だって、最後にチラリと送られた視線にだって気づている。
「やー!」
思い出してしまった久保君の顔をかき消すように、ビールをグラスに注いでは一気に飲み干した。一杯、二杯を飲み干して、缶が軽くなっていく。身体が熱くなってきて、眠たさを感じるが頭は妙に冴えていて。
(片思いの相手は僕ってことでしょう!?)
自分だけが知っている事実に、表現しがたく。誰かに相談しようにも、どう話したら良いのやら。残り少ないビールをゴクリと飲んで、プハァ……ッと炭酸が喉を抜けるの感じつつペタリとテーブルに頬を擦り付けた。
「はぁっ……」
溜息しか出ない。
(相談といったところで、困っている状態じゃないのが一番問題なんだろうけど……)
そうだ。
よっぽど困っているのか? と問われれば、そこまでは……と返してしまう程度のもの。それどころかだ。
「本当に、格好良く成長しちゃって」
こんなおじさんに好きだなんて。
空きっ腹にアルコールは良くないと、おつまみに買ってきたポテチを一枚口に運びながら、程よい塩味が美味しいと思いながら悶々としてしまう僕の心。
「久保君は、僕みたいなおじさんのどこが良いんだろうねぇ……?」
あ゛―……と、テーブルの上でそのままゴロゴロと頭を転がし。
「恋って難しいなぁ」
誰か教えてよ、と駄々をこねたかったが僕の瞼はだんだんと重たくなって視界が真っ暗になっていったのだった。
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詰み始めて頭を抱えてます
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