11 / 39
11】【Side.K】高校生になったら
しおりを挟む
11】【Side.K】高校生になったら
幼稚園の担任の先生が好きだった。
それだけ聞けば、きっと他の友達も「分かる」と言ってくれるだろう。だが、俺が好きになった先生は自身と同じ性別の「男」。
どうして好きなのか? と言われれば、理由はうまく説明できない。皆そうじゃないか? ていうか、好きになるのに理由がいるか?
まぁそうだな……ただ優しい先生が好きで、笑っている笑顔が可愛い。そんな理由だったと思う。だけどそんな先生は人気者で、いつだって誰かが「先生!」と袖を引っ張っている。「先生は俺の!」なんて言ってしまえば、喧嘩は良くないと先生に叱られてしまう。それは嫌だと、子供ながらに我慢した。そんな時だ。
「ねぇ、圭介君知ってる? 結婚したら、パパとママみたいにずっと一緒にいられるんだよ」
「そうなのか?」
「うん。だって、圭介君のパパとママも一緒にいるでしょ?」
「確かに……。悪い、ちょっと俺、抜けるな」
「あ! 圭介君。待ってよ!」
そう言われればそうだ。つまり、結婚すれば、先生と一緒にいられるのか? と、子供心に考えて、すぐに行動に移した俺。いつもと変わらない、皆が教室で遊んでいる中で先生の側に駆けて行った。その後は、人生初めての告白。
『俺、先生が好き』
『先生、俺本当に先生が好きなんだ! 大きくなったら俺と結婚して!』
今思い出せば、少しだけ恥ずかしい。だが、素直に伝えることが出来る俺ってば偉いな? とポジティブに考える。過去の告白を思い出している俺は、もう幼稚園児じゃない。あの時、先生が言った「高校生」になっている。
(12年か……あっという間だったのような、長かったような……)
小学校生活の6年間。それから中学校の3年間。そして高校生活も3年目。
先生が精一杯の優しさか。俺の告白を断ることもなければ、同性同士は結婚できないと伝えることもなく。ただ高校生になったら先生に、もう一度会いに行っても良いとチャンスをくれた。
『うーん……じゃあさ、久保君が高校3年生になって先生のこと忘れてなかったら、また来てよ』
忘れなかったら? 先生は、俺が先生を忘れるかもと思っていたんだろう。
俺は12年、先生の事を忘れなかった。それどころか、早く高校生になりたいとすら願ってどうにかして飛び級できないか調べたくらいだ。
「はぁー…………っ」
とはいっても。どうやって会いに行けば良い? 先生が転勤とか、あの幼稚園を辞めていたら? それどころか、結婚していたら?
高校生になるにつれ、嬉しさと同時に押し寄せて来る不安。思わず教室から見える外を見て、長い溜息をついた。
「圭介。どうしたのよ、凄い溜息ついて」
「百合」
放課後になり、教室に残っているクラスメイトもまばらな中、声をかけてきたのは幼稚園から知っている百合だった。
「圭介、最近ずっと溜息ばっかついてんじゃん。どうしたの? 悩み事?」
「んー、別に? そういうわけじゃねぇし」
「はい、嘘」
「ぐ……っ!べ……つに。会いたい人がいるけど、まだいるかなって思ってただけだし」
誰にとは言わず。どうせ嘘をついたところで、百合にバレてしまう。
「ふーん……」
俺の返事を聞いた百合が、適当に返事して言った。(適当に返事するなよ。俺は悩んでるっていうのに)
「なら、今から会いに行っといでよ」
「は?」
「行ってみなきゃ、いないかなんて分からないじゃん。それに、もう圭介の溜息聞きたくないし」
「おまっ……!」
酷くねぇ? と思ったが、背中を押されるのはこれくらい勢いが必要だったんだろう。
「いいから! ほら、開いてる場所なら行ってるみる! じゃあ、また明日ね!」
グイグイと背中を押され。俺の足は、うん年ぶりに思い出の幼稚園へと向かったのだった。
********
久保君サイドの小話を入れました。
たまに入るかもしれません。今日の分更新してしまったのと、詰んだので次の更新は来週になるかもです><
幼稚園の担任の先生が好きだった。
それだけ聞けば、きっと他の友達も「分かる」と言ってくれるだろう。だが、俺が好きになった先生は自身と同じ性別の「男」。
どうして好きなのか? と言われれば、理由はうまく説明できない。皆そうじゃないか? ていうか、好きになるのに理由がいるか?
まぁそうだな……ただ優しい先生が好きで、笑っている笑顔が可愛い。そんな理由だったと思う。だけどそんな先生は人気者で、いつだって誰かが「先生!」と袖を引っ張っている。「先生は俺の!」なんて言ってしまえば、喧嘩は良くないと先生に叱られてしまう。それは嫌だと、子供ながらに我慢した。そんな時だ。
「ねぇ、圭介君知ってる? 結婚したら、パパとママみたいにずっと一緒にいられるんだよ」
「そうなのか?」
「うん。だって、圭介君のパパとママも一緒にいるでしょ?」
「確かに……。悪い、ちょっと俺、抜けるな」
「あ! 圭介君。待ってよ!」
そう言われればそうだ。つまり、結婚すれば、先生と一緒にいられるのか? と、子供心に考えて、すぐに行動に移した俺。いつもと変わらない、皆が教室で遊んでいる中で先生の側に駆けて行った。その後は、人生初めての告白。
『俺、先生が好き』
『先生、俺本当に先生が好きなんだ! 大きくなったら俺と結婚して!』
今思い出せば、少しだけ恥ずかしい。だが、素直に伝えることが出来る俺ってば偉いな? とポジティブに考える。過去の告白を思い出している俺は、もう幼稚園児じゃない。あの時、先生が言った「高校生」になっている。
(12年か……あっという間だったのような、長かったような……)
小学校生活の6年間。それから中学校の3年間。そして高校生活も3年目。
先生が精一杯の優しさか。俺の告白を断ることもなければ、同性同士は結婚できないと伝えることもなく。ただ高校生になったら先生に、もう一度会いに行っても良いとチャンスをくれた。
『うーん……じゃあさ、久保君が高校3年生になって先生のこと忘れてなかったら、また来てよ』
忘れなかったら? 先生は、俺が先生を忘れるかもと思っていたんだろう。
俺は12年、先生の事を忘れなかった。それどころか、早く高校生になりたいとすら願ってどうにかして飛び級できないか調べたくらいだ。
「はぁー…………っ」
とはいっても。どうやって会いに行けば良い? 先生が転勤とか、あの幼稚園を辞めていたら? それどころか、結婚していたら?
高校生になるにつれ、嬉しさと同時に押し寄せて来る不安。思わず教室から見える外を見て、長い溜息をついた。
「圭介。どうしたのよ、凄い溜息ついて」
「百合」
放課後になり、教室に残っているクラスメイトもまばらな中、声をかけてきたのは幼稚園から知っている百合だった。
「圭介、最近ずっと溜息ばっかついてんじゃん。どうしたの? 悩み事?」
「んー、別に? そういうわけじゃねぇし」
「はい、嘘」
「ぐ……っ!べ……つに。会いたい人がいるけど、まだいるかなって思ってただけだし」
誰にとは言わず。どうせ嘘をついたところで、百合にバレてしまう。
「ふーん……」
俺の返事を聞いた百合が、適当に返事して言った。(適当に返事するなよ。俺は悩んでるっていうのに)
「なら、今から会いに行っといでよ」
「は?」
「行ってみなきゃ、いないかなんて分からないじゃん。それに、もう圭介の溜息聞きたくないし」
「おまっ……!」
酷くねぇ? と思ったが、背中を押されるのはこれくらい勢いが必要だったんだろう。
「いいから! ほら、開いてる場所なら行ってるみる! じゃあ、また明日ね!」
グイグイと背中を押され。俺の足は、うん年ぶりに思い出の幼稚園へと向かったのだった。
********
久保君サイドの小話を入れました。
たまに入るかもしれません。今日の分更新してしまったのと、詰んだので次の更新は来週になるかもです><
10
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
魔術師の卵は憧れの騎士に告白したい
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
魔術学院に通うクーノは小さい頃助けてくれた騎士ザイハムに恋をしている。毎年バレンタインの日にチョコを渡しているものの、ザイハムは「いまだにお礼なんて律儀な子だな」としか思っていない。ザイハムの弟で重度のブラコンでもあるファルスの邪魔を躱しながら、今年は別の想いも胸にチョコを渡そうと考えるクーノだが……。
[名家の騎士×魔術師の卵 / BL]
【完結】《BL》拗らせ貴公子はついに愛を買いました!
白雨 音
BL
ウイル・ダウェル伯爵子息は、十二歳の時に事故に遭い、足を引き摺る様になった。
それと共に、前世を思い出し、自分がゲイであり、隠して生きてきた事を知る。
転生してもやはり同性が好きで、好みも変わっていなかった。
令息たちに揶揄われた際、庇ってくれたオースティンに一目惚れしてしまう。
以降、何とか彼とお近付きになりたいウイルだったが、前世からのトラウマで積極的になれなかった。
時は流れ、祖父の遺産で悠々自適に暮らしていたウイルの元に、
オースティンが金策に奔走しているという話が聞こえてきた。
ウイルは取引を持ち掛ける事に。それは、援助と引き換えに、オースティンを自分の使用人にする事だった___
異世界転生:恋愛:BL(両視点あり) 全17話+エピローグ
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる