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2】12年ぶりの再会
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2】12年ぶりの再会
自身の勤める園を卒園していく子供たちを、何人も見て来た。
これから小学生になる嬉しさと、園を卒業する寂しさと交じり合った表情。僕たち先生
たちにとっても寂しいが、それ以上に教え子たちが成長する姿を見るのは嬉しくて笑顔で皆を見送って来た。
卒園してからも小学校の運動会を見に行ったり、たまに中学生になった教え子がフラッと来て、今度運動会があるんだと教えてくれた時は見に行ったりして。だが流石に高校生ともなれば、幼稚園の頃の思い出は友達のことだろう。それに、受験だとか忙しい学生生活だ。きっと僕のことなんて覚えていないと思っていたのに……。
「先生、また明日~!」
「はい、また明日」
今日も僕の毎日は、12年間特に変わることなく。
賑やかながら、何をしでかすか分からない子供たちに注意しながら接していた。朝早く迎えた時間が、お昼を過ぎて夕方へと近づいていく。バス送迎の子もいれば、親御さんが迎えに来る子もいる。今日は、園に残ってお迎えに来る組の当番だ。
「水野先生」
「?」
そんな時、不意に聞こえた声に、振り返れば学生服を身に纏っている青年が立っていた。幼さも少なくなって、もう大人に近いのだろう。中学生というよりは、高校生だろうか。僕よりも高い身長で、テレビをあまり見ないが随分と顔が良く。きっとこの子は、俗にいうイケメンなんだろうと思った。
「誰かのお兄さんかな? 名前を教えて頂けますか?」
「俺だよ! 久保圭介。先生が言った通り、高校生になったから会いに来たんだ」
「え……?」
「まさか先生……。俺のこと、忘れちゃった?」
イケメンの顔が、一気に曇る。そこはどこか年下らしい可愛さがあるが、聞こえた名前に内心驚いた。
「いや。覚えているけど……本当に久保君?」
「そうだよ!」
ニカッ! と笑った顔は、幼い頃と変わらず。
(ああ、本当に久保君なんだ)
変わらないなぁと思いつつも、「あの告白」が僕の頭を過ったのだった。
『俺、先生が好き』
あの時────僕は何と言った? いや、覚えているには、覚えているんだ。
『うーん……じゃあさ、久保君が高校3年生になって先生のこと忘れてなかったら、また来てよ』
(だって、まさか本当に高校生になって会いに来るなんて思わないじゃないか……!)
固まったままの僕に、「せんせー!」とまた声を掛けて来たのは今の教え子たち。そうだ、今はまだ帰りの時間帯。それは久保君も分かったようで。
「あ! 安心して。俺ちゃんと園長先生に連絡して、許可貰って来てるから! 先生の仕事が終わるまで、職員室で待ってるね」
「待゛」
待ってる?
現在っこ怖いと思うほど、さらりと言って手を振っていくものだからおじさんの僕には少し刺激が強かった。
*********
短期くらいの話で終わると良いなぁと思っています
自身の勤める園を卒園していく子供たちを、何人も見て来た。
これから小学生になる嬉しさと、園を卒業する寂しさと交じり合った表情。僕たち先生
たちにとっても寂しいが、それ以上に教え子たちが成長する姿を見るのは嬉しくて笑顔で皆を見送って来た。
卒園してからも小学校の運動会を見に行ったり、たまに中学生になった教え子がフラッと来て、今度運動会があるんだと教えてくれた時は見に行ったりして。だが流石に高校生ともなれば、幼稚園の頃の思い出は友達のことだろう。それに、受験だとか忙しい学生生活だ。きっと僕のことなんて覚えていないと思っていたのに……。
「先生、また明日~!」
「はい、また明日」
今日も僕の毎日は、12年間特に変わることなく。
賑やかながら、何をしでかすか分からない子供たちに注意しながら接していた。朝早く迎えた時間が、お昼を過ぎて夕方へと近づいていく。バス送迎の子もいれば、親御さんが迎えに来る子もいる。今日は、園に残ってお迎えに来る組の当番だ。
「水野先生」
「?」
そんな時、不意に聞こえた声に、振り返れば学生服を身に纏っている青年が立っていた。幼さも少なくなって、もう大人に近いのだろう。中学生というよりは、高校生だろうか。僕よりも高い身長で、テレビをあまり見ないが随分と顔が良く。きっとこの子は、俗にいうイケメンなんだろうと思った。
「誰かのお兄さんかな? 名前を教えて頂けますか?」
「俺だよ! 久保圭介。先生が言った通り、高校生になったから会いに来たんだ」
「え……?」
「まさか先生……。俺のこと、忘れちゃった?」
イケメンの顔が、一気に曇る。そこはどこか年下らしい可愛さがあるが、聞こえた名前に内心驚いた。
「いや。覚えているけど……本当に久保君?」
「そうだよ!」
ニカッ! と笑った顔は、幼い頃と変わらず。
(ああ、本当に久保君なんだ)
変わらないなぁと思いつつも、「あの告白」が僕の頭を過ったのだった。
『俺、先生が好き』
あの時────僕は何と言った? いや、覚えているには、覚えているんだ。
『うーん……じゃあさ、久保君が高校3年生になって先生のこと忘れてなかったら、また来てよ』
(だって、まさか本当に高校生になって会いに来るなんて思わないじゃないか……!)
固まったままの僕に、「せんせー!」とまた声を掛けて来たのは今の教え子たち。そうだ、今はまだ帰りの時間帯。それは久保君も分かったようで。
「あ! 安心して。俺ちゃんと園長先生に連絡して、許可貰って来てるから! 先生の仕事が終わるまで、職員室で待ってるね」
「待゛」
待ってる?
現在っこ怖いと思うほど、さらりと言って手を振っていくものだからおじさんの僕には少し刺激が強かった。
*********
短期くらいの話で終わると良いなぁと思っています
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