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2】恋人になって初めての②
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2】恋人になって初めての②
「じゃあ、短いですがエスコートします」
部屋を出て、レオ殿が私の手を引く。移動する目的が、厭らしいことをするためと思うと、なんてことを思うが我慢が出来なかった。
初めての恋、初めての恋人。更には初めて「その先」のことをする。全てが初体験という状況が、私を普段と異なる状況にさせてしまうのだ。レオ殿の家の中では、騎士団長としての意識が薄れ、ただのアランという一人の人間になってしまう。
「着きましたよ」
城ではない家だ。レオ殿が言う通り、時間はかからずあっというまに部屋に着いた。ギィッ……と廊下を抜けてレオ殿の寝室へ。開いていたカーテンを閉めて、部屋を幾分暗くする。立ち尽くすままの私は、どうしたらよいかと迷いながらレオ殿を見ると、クスリと笑われてしまった。
「緊張しないで下さい」
「だって……」
自慰を手伝って貰う時と、同じかもしれないが気持ちの面で違っている。だって、私たちは恋人同士なんだ。自身を慰めるため、業務的な処理の性行為とは別物。
「とりあえず座って下さい」
先にレオ殿がベッドに腰かけ、隣に座るように空いている個所をポンポンと叩いた。それから、履いていた靴を脱いで素足になる。私は黙ったまま隣に座り、同じように靴を脱いだ。綺麗に並んだ靴が二足。それをレオ殿がベッドの端の方へと寄せていく。それから、もう一度座りなおし、ギシリとベッドが軋む音がした。
ドキドキドキ。
「アラン様」
緊張する私の手を、レオ殿が上から握る。同性同士。私の手もレオ殿の手も同じような大きさだ。重なるように。手の平が私の拳に触れるだけで、身体の熱が上がる気がした。
「……っ!」
「アラン様。こっちを向いて下さい」
ドキドキドキ。
緊張で喉が渇く。心臓の音だって大きくなって、レオ殿の声が小さく聞こえる程だった。
「アラン様」
私の名前を呼ぶ声が嬉しい。それからレオ殿と視線が合えば、また整った顔が近づいてきた。
(ああ、また口づけをされる────)
家に入って、突然された口づけと異なり。今度は静かに目を瞑って、訪れるであろう感触を待った。
──────ちゅっ。
「んっ……ぅ……」
ちゅぷっ……ちゅぷっ……♡ レロッ……♡♡
(唇同士を合わせる口づけ……♡恋人同士の口づけ……♡)
薄目を開ければ、私の顔をしげしげと見つめるレオ殿と目が合った。
「ふ、ぁ゛……!?♡」
思わず顔を後ろに下げれば、互いにチロリと伸びていた舌先の糸が伸びてプツリと切れた。
「何で見てるんですか……!」
「可愛いからですかね?」
悪びれる様子も無く、後ろに下がった私を逃がさないと引き寄せる。
(賢者というのに、文官殿たちと違ってこんな……!)
強い力だ。騎士団員に入団しても良いくらいの、鍛えられた身体つきをしているレオ殿。そのまま私を押し倒し、レオ殿が私を見下ろした。
(そういわれれば、こんな風に誰かに対して天を向いて倒れこむのは、いつぶりだろうか)
不意に、身体全体を投げだして相手を見上げたことは久しくないなと思ってしまった。だが、そんな些細なことにも、レオ殿は気づく。
「アラン様。今ちょっと違うことを考えていますね?」
ちゅっ、と私の額に口づけをしてレオ殿が唇を尖らせている。
「すみません。違うことというわけではないんですが、こうやって人を見上げるのは騎士団に入った頃ぶりかと懐かしくて」
「それって、訓練で負かされた時じゃないですか……」
ガクッと肩を落としたレオ殿。だがそれも数秒で、すぐに顔を上げた。
「……俺のベッドの上で、他の男のことを思い出すのは駄目ですよ」
その声色は、先ほどとは別のもので。
甘いような、それでいて普段よりも色っぽさを含む声だった。
*******
更新しました!
お気に入り・エール・イイネ有難うございます!
「じゃあ、短いですがエスコートします」
部屋を出て、レオ殿が私の手を引く。移動する目的が、厭らしいことをするためと思うと、なんてことを思うが我慢が出来なかった。
初めての恋、初めての恋人。更には初めて「その先」のことをする。全てが初体験という状況が、私を普段と異なる状況にさせてしまうのだ。レオ殿の家の中では、騎士団長としての意識が薄れ、ただのアランという一人の人間になってしまう。
「着きましたよ」
城ではない家だ。レオ殿が言う通り、時間はかからずあっというまに部屋に着いた。ギィッ……と廊下を抜けてレオ殿の寝室へ。開いていたカーテンを閉めて、部屋を幾分暗くする。立ち尽くすままの私は、どうしたらよいかと迷いながらレオ殿を見ると、クスリと笑われてしまった。
「緊張しないで下さい」
「だって……」
自慰を手伝って貰う時と、同じかもしれないが気持ちの面で違っている。だって、私たちは恋人同士なんだ。自身を慰めるため、業務的な処理の性行為とは別物。
「とりあえず座って下さい」
先にレオ殿がベッドに腰かけ、隣に座るように空いている個所をポンポンと叩いた。それから、履いていた靴を脱いで素足になる。私は黙ったまま隣に座り、同じように靴を脱いだ。綺麗に並んだ靴が二足。それをレオ殿がベッドの端の方へと寄せていく。それから、もう一度座りなおし、ギシリとベッドが軋む音がした。
ドキドキドキ。
「アラン様」
緊張する私の手を、レオ殿が上から握る。同性同士。私の手もレオ殿の手も同じような大きさだ。重なるように。手の平が私の拳に触れるだけで、身体の熱が上がる気がした。
「……っ!」
「アラン様。こっちを向いて下さい」
ドキドキドキ。
緊張で喉が渇く。心臓の音だって大きくなって、レオ殿の声が小さく聞こえる程だった。
「アラン様」
私の名前を呼ぶ声が嬉しい。それからレオ殿と視線が合えば、また整った顔が近づいてきた。
(ああ、また口づけをされる────)
家に入って、突然された口づけと異なり。今度は静かに目を瞑って、訪れるであろう感触を待った。
──────ちゅっ。
「んっ……ぅ……」
ちゅぷっ……ちゅぷっ……♡ レロッ……♡♡
(唇同士を合わせる口づけ……♡恋人同士の口づけ……♡)
薄目を開ければ、私の顔をしげしげと見つめるレオ殿と目が合った。
「ふ、ぁ゛……!?♡」
思わず顔を後ろに下げれば、互いにチロリと伸びていた舌先の糸が伸びてプツリと切れた。
「何で見てるんですか……!」
「可愛いからですかね?」
悪びれる様子も無く、後ろに下がった私を逃がさないと引き寄せる。
(賢者というのに、文官殿たちと違ってこんな……!)
強い力だ。騎士団員に入団しても良いくらいの、鍛えられた身体つきをしているレオ殿。そのまま私を押し倒し、レオ殿が私を見下ろした。
(そういわれれば、こんな風に誰かに対して天を向いて倒れこむのは、いつぶりだろうか)
不意に、身体全体を投げだして相手を見上げたことは久しくないなと思ってしまった。だが、そんな些細なことにも、レオ殿は気づく。
「アラン様。今ちょっと違うことを考えていますね?」
ちゅっ、と私の額に口づけをしてレオ殿が唇を尖らせている。
「すみません。違うことというわけではないんですが、こうやって人を見上げるのは騎士団に入った頃ぶりかと懐かしくて」
「それって、訓練で負かされた時じゃないですか……」
ガクッと肩を落としたレオ殿。だがそれも数秒で、すぐに顔を上げた。
「……俺のベッドの上で、他の男のことを思い出すのは駄目ですよ」
その声色は、先ほどとは別のもので。
甘いような、それでいて普段よりも色っぽさを含む声だった。
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